親友に彼女ができたらクラスメイトに抱かれることになったの少し未来のお話です。
学部学科は違うものの、同じ大学に進学して、ルームシェアという名の同棲を始めておよそ1年と半年。それなりに二人暮らしも板につき、相変わらずあれこれと甘やかすのが上手い相手に導かれて、めきめきと料理の腕を上げてきた本日の夕飯は、ひき肉から自分で作ったハンバーグだった。
家事は当然分担していて、料理は確実に相手が作ったほうが美味しいので、基本的には相手の担当だ。けれど学年が上がった春頃から、彼がバイトで帰宅が遅くなる火曜と土曜の夕飯は自分が作るようになった。
毎度律儀に今から帰るという連絡を入れてくれるので、彼の帰宅時間に合うように焼き上げたハンバーグはテーブルの上で湯気を立てている。
「おまたせ。ああ、美味そうに焼けてるな」
荷物をおいて手洗いを済ませてきた相手が席に着きながら、まずは見た目を褒めてくれた。比較的表情が少ないこの男は、それを補って余りあるほど言葉を惜しまない。
同時に頂きますを告げたものの、つい相手の反応が気になって、相手が食べるのを見つめてしまう。それを相手もわかっているからか、彼は真っ先にハンバーグを口に運ぶ。
「凄く美味しい。また腕を上げたな」
最初の一口を飲み込んだ後、目元を緩めながら告げられた言葉に、ホッとして嬉しくなる。
感情表現が控えめで表情が少なくたって、柔らかな瞳は雄弁だった。
お前が愛しい。
そんな気持ちが伝わって来るようで、なんだか照れ臭くもある。もちろんベッドの中では直接言葉で伝えてくれるし、その時には自分も想いを言葉にして返すけれど、たまにこうしてふいに読み取ってしまう事には、さすがに頻度が低くてまだあまり慣れていない。
「どうした?」
「嬉しいだけ。美味しいなら良かった」
表情が乏しい事を自覚している彼は、表情から感情を読まれる事に関しては無頓着だ。と言うよりも、こちらが読み取っている事に多分気付いていない。
気持ちを切り替えるように笑って、自分も食事を開始する。自分で食べてみても、ハンバーグはなかなかの美味しさだった。
「そういや今日、珍しい男から電話があったぞ」
食事をしながら一日の出来事を報告する事は多いが、「珍しい男」などという少々思わせぶりな言い方がらしくない。聞いたらこちらが驚くような相手からなのかと思いながら口を開く。
「俺の知ってるヤツ?」
「ああ」
肯定とともに返された名前に、確かに驚いた。
告げられた親友の名前に、なんで自分ではなく彼に連絡をとったのだろうという疑問がわく。先程弄っていた携帯には、彼からの電話もメールも来ていない。自分に連絡がつかなくて仕方なく、という可能性は薄そうだ。
「なんでお前に?」
「お前がメロメロになったテクを教えろだそうだ」
「は?」
「俺とのセックスが良くて付き合ってる、というような事をあいつに言ったのか?」
「やー……どうだったかな……」
「言ったんだな」
断定されてしまって、ごまかすようにフヘヘと笑う。
自分たちが恋人として付き合っている事を知っているのは親友だけだったから、まだ高校に通っていた頃は、惚気のようなものを聞かせてしまったことが何度かあった。相手が上手いのか体の相性が良いのか、男同士のセックスでもキモチイ思いしかしたことがない。と言ったことが確かあったはずだ。
「セックス目当てで付き合ってる、とまでは言ってないけど」
「別に咎めたわけじゃない」
事実だしなと続いた言葉に思わず口をとがらせる。
「セックスだけじゃなく、お前が好きで付き合ってるよ?」
「そうだな。すまん」
「まぁでも、セックス気持ち良いかは重要だよね。恋人になれなくてもいいからお前に抱かれてたい、とか思ってたくらいだし」
まだそう昔のことでもないのに、あの頃のことが既に懐かしい。
「けっこう酷い始まり方だったからな。お前がそう言い出した時、丁寧に慣らしたかいがあったと思ったよ」
「それ、前も聞いたかも。で、あいつには何をどこまで教えたの?」
「相手のペースを見て強引に事を進めようとしなければなんとかなるんじゃないか、とは言っておいた。それだけかと不満そうだったがな」
「てかそんなの聞いてどうすんだ、あいつ」
「また恋人ができた、とは考えないのか?」
「あー……そっか、もう1年半以上経ってるもんな」
小柄で笑顔の可愛かった彼女と親友は、結局卒業する少し前には別れてしまった。
体育館裏で自分たちが抱き合うシーンを見られた時の誤解は早々に解いたようだし、実際自分が付き合いを開始したのは親友ではなく目の前に居るこの男なのだが、さすがに男同士で付き合って居ることなどは公言できず、自分と親友とその彼女との三角関係をネタにした噂はなかなか消えずに燻っていた。
周りの噂なんかに振り回されてしまうのは可哀想ではあったが、周りに不安を煽られた彼女と、親友との仲が少しずつ冷めていくのは自分も感じていた。
自分も関わって親友が恋人と揉めているのは申し訳がない。なので親友との距離を置いてみたりもしたのだが、それは彼女にも周りの噂的にもわざとらしいと逆効果だった。
最後の手段として彼女にも真実を知らせるダブルデート案なども出してみたが、そちらは不安要素が大きすぎると親友の方から却下された。男同士で付き合っているというのを親友の彼女がどう捉えるか想像が付かないし、男が恋愛対象だと知られることで余計に疑いが深くなる可能性もあると言われてしまえばお手上げだ。
親友がお前はお前の恋を頑張れと言ってくれたことや、大学受験などもあって、なんとなく状況がわからないまま、気づけば二人は別れていたという感じだった。
「またちっさくて可愛い感じの子かな?」
「何も聞いてないのか?」
「聞いてない。お前は? 何か聞いたの?」
「聞いてはいないが想像はつく。なぜわざわざ俺に電話を掛けてきたかを考えれば、相手はきっと男だろう」
「は? えっ、ちょっ、そんな……いやでも、ありうる……のか??」
衝撃の発言に混乱していたら、珍しく声を立てて笑われたから、どうやら揶揄われたらしい。
「なんだよ。冗談かよっ!」
「いや。割と本気でそう思ってはいる。もし真相が違っていたら教えてくれ」
電話するんだろとこの後の自分行動を言い当てられて頷いた。
いったい親友の口からどんな真相が聞かされるのか気になって、せっかく美味しく出来たハンバーグなのに、いつの間にか食べ終えてしまったのが少しばかり悔やまれる。
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つ、続きありがとうございます!!
メルフォ返信の時にお礼言えなくて申し訳ないです…
リクエストにも応えて下さり有難うございました!
これもすごい続き楽しみですw
作者様のペースで完成するのを期待してます。゚(゚∩´﹏`∩゚)゚。
さっそく読んで下さってありがとうございます(*^_^*)
今回のも続き楽しみと言ってもらえてホッとしてます。良かった!
多分後1話か2話程度で終わると思いますが、続きもよろしくお願いします~