今までも可愛いと言われながら触れられることは多々あって、恋人になったからといって、その言葉や響きに大きな変化があったわけじゃない。変わってしまったのはその言葉を受け取る自分自身だ。
「ん……、ふっぁ…ぁ……」
薄いインナーシャツの上から両胸の先をいじられるだけでも、熱い吐息が抑えられない。胸の先がしびれるように疼いて、連動するように、触れられても居ないペニスの先まで疼いてしまう。
「胸だけでそんなに感じて、相変わらず可愛いな」
少し楽しげに、そしてどこか嬉しげに笑む顔は優しい。この表情だって、前とそんなに変わったわけじゃない。ただ、気づけることが増えたのだ。
そういえば、最初は楽しげだとか嬉しげだとかという表情だって、読み取れはしなかった。こちらにそんな余裕がなかったのもあるが、目の前の男はあまり感情表現が豊かではないせいが大きい。
なのに今はどうだろう。可愛いという言葉の響きの中に、柔らかに笑む瞳の中に、愛しくてたまらないといった彼の感情が溢れているのを感じるようになった。パッとはわかりにくい彼の感情表現にも、ずいぶんと慣れてきたたようだ。
嬉しくて、けれどまだ少し恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じるから、きっと赤面しているんだろう。
「いや、最近はますます可愛くなったか」
「だ、って、お前が……」
「俺が?」
「俺のこと、すごく好きって、わかるから」
「隠すのをやめたからな」
好きだよと続く言葉に、やはり嬉しさ半分照れくささ半分。
「ねぇ、前は、本当に隠してた?」
「どういう意味だ?」
「好きって言ってくれるようになった以外、実はそんなに変わってない。気もして」
気づこうとしなかっただけで、前からずっと、愛しいという気持ちで触れてくれていたに違いない。それを「優しい」という一括りにして、目をそらしていただけなんだろう。そのほうが都合が良くて、なにより彼と向き合うのを怖がっていたから。
「まぁ、最初からお前が好きで誘ったし、途中で気持ちが変わったわけではないからな」
「ずっと、気付かなくてゴメン。お前だって辛かったろ?」
別の相手を好きだと言い続ける相手を、ずっと優しい態度で抱き続けてきたのだ。
「それを気にされると困るな。人がいいのもお前の魅力の一つではあるが、俺はお前の弱みに付け込んだだけだぞ」
感度の良さと快楽への弱さは嬉しい誤算だったが、と続けながらシャツをまくり上げられ、胸の先を直に摘まれて捏ねられた。
「ぁああっっ」
油断して上げてしまった大きな声が恥ずかしいが、相手はしてやったりと満足気だ。
そのまま胸の先を緩急をつけつつクリクリと摘まれ続ければ、既に張り詰めたペニスの先から、トロリとこぼれる先走りを感じてしまう。
「ぁっ、あっ、ダメぇっ」
その訴えに、彼はちらりと視線を下腹部へ落とす。
シワになるからと制服のズボンは最初に脱いでいたので、きっと下着に広がる先走りのシミを見られてしまった。そう思うと体の熱が更に上がっていくのがわかる。自分で自分を追い詰めるような悪循環だった。
「このままイッてみないか?」
「ヤぁ、だっ」
「替えの下着はあるんだろう?」
まだ恋人関係になる前、一度下着の中で果ててしまって以降は、確かに一応持参している。ただ、あの時は下着の上から握られ擦られたのが原因で、胸を弄られるだけでイきたくなんてなかった。
両親共働きで案外家事スキルの高い相手は、汚してもまたウチで洗ってやるぞと言いながら刺激を強めてくるから困る。
「やっ、やぁっ、ダメ、ムリっ、むりだっ…て」
「仕方ないな」
やめてもらえると思ってホッと息を吐いたその瞬間。
「あぁあっだめぇっっ」
股間の膨らみをグリっと圧迫される刺激に、たまらず声を上げて果ててしまった。何が起きたかわからなくて呆然としていたら、汚れた下着を脱がされる。
「奥、触るぞ」
「今、何したの?」
「ん? ああ、膝で押した」
「ひざ……」
そうか、あれは膝の刺激なのか。
「やだって言ったのに」
「だから胸だけでイかせるのは諦めた」
「ずるい……」
「言っただろう。もっとたくさんの快楽を刻みこんでやると」
いつか胸の刺激だけでもイけるようになって貰うと宣言されて、今は触れられていない胸の先が、先ほどの刺激を思い出して疼いてしまうのだから、きっとそんな日もそう遠くなく訪れそうだ。
「お前から離れられないように?」
「そうだ」
「とっく、んあぁっ」
とっくにそうなってる。と告げるより先に、ローションをまぶし終わった彼の指先に入口を掻かれて、別の声があがってしまう。
「お前が思うより、きっと俺は欲深い。この場所も、もっともっと気持ち良くしてやりたいが、しかし恋人になったことを後悔してる、などと言われるのも困るな」
「言わねーよ」
即答したら、彼にしては珍しいほど、随分と嬉しげに笑われてマイッタなと思う。だって恋人になったら、なんだかだんだん相手が可愛くなってしまった。正確には、可愛いと感じるようになってしまった。
だから、ぬるりと入り込んできた彼の指が与えてくれる、まだ緩やかな刺激に甘い吐息をこぼしながら。
「お前が好きだよ。お前こそ、もっともっと欲深く俺を求めて、俺なしじゃいられなくなればいいよ」
告げたら中を弄る指の動きが止まった。驚いた様子でこちらを見下ろす呆然とした顔に笑いそうになる。というか笑った。
「本気だよ」
笑いながらもダメ押しとばかりに本気を伝えれば、うっすらと相手の頬が色づいていくから困る。照れる彼なんて初めて見た。
可愛いなぁという気持ちはどうやらそのままこぼれたらしく、ますます驚き照れさせてしまったので、彼が持ち直して行為が再開するまで少しばかり待たされたけれど、こんな風にまだ知らない彼を、これから先もたくさん知ることになるのだろうと思うと楽しみで仕方がない。この男と、恋人という関係に進めてほんとうに良かったと思った。
< 終 >
数話で終わるつもりだったのに、長々とお付き合いどうもありがとうございました。
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コメント失礼します
pixivから拝見しました。
個人的にとても気に入ったお話で、全て一気に読んでしまいましたw
とても、身勝手なお願いなのですが
このシリーズの続きをリクエストとかは、受け入れてもらえますか?
コメントありがとうございます。
お話、気に入ってもらえて嬉しいです(*^_^*)
リクエストももちろん大丈夫ですが、どのような続きが読みたいとかの希望を、もう少し詳しく聞かせて貰えますか?
希望に添えるかはわかりませんが、参考にさせてもらいますので。
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