勢いで立ち上がってしまった後、落ち着くように言われて再度座り直し、そこから更にいろいろと話し合った。もちろん、互いの想いについてが主な話題だった。
こちらの気持ちの変化はなんとなく感じていたものの、親友が好きだという態度を崩さなかったので、ずっと気づいていないふりをしてくれていたらしい。しかも、いつから好きだったのか聞いたら、あっさり声をかけた最初からだがと返ってきてなんとも言えない気持ちになった。彼はこちらの負担にならないようにと、ずっと自分の気持ちを隠していたようだ。
確かに初めて触れられた時、あまりの優しさに好かれている可能性を考えた。最初に感じたあれは、どうやら間違いではなかったらしい。
いつだって自分の都合のいいように解釈し、彼の気持ちを一度も確かめることをしなかったのは自分だ。なんてバカバカしい話だ。もっと早く確かめればよかった。
「お前を好きになったなんて言ったら、気持ちよさに気持ちが引きずられてるだけってか、こんな関係にあるからとか言われるんじゃって思ってた。関係解消したらそんな気持ちはなくなるだろうって言うかなって」
「実際それは間違ってないんじゃないのか?」
「それはそうかもだけど。だってこんな関係になってなかったら好きになりようがないだろ」
「そうだな」
「俺はさ、お前に好きって言えないことより、この関係をやめるって言われるのが嫌だった。気持ち隠してでも、お前に抱かれていたかった。臆病でごめん」
「いや、気持ちを隠していたのも、相手の気持を確かめずに居たのも、お互い様だろう」
「最初から俺を好きだったのに、俺の変化感じても俺の気持ち、確かめようとは思わなかったの?」
「確信があったわけではないからな」
お前とそう変わらない臆病者で、それどころか、相手の弱みに付け込んで抱こうと考えるような下衆だと続けて、彼は自嘲気味に笑う。
「でもお前はずっと優しかったよ。無茶しなかったし、キモチイばっかだったもん」
「それも、無茶して嫌われたくなかっただけだ」
「じゃあさ、いつ、確信したの?」
聞いたらあからさまに動揺されて、あまり感情を表に出さない彼にしては珍しくて驚いた。
「え、何? なんかヤバイこと聞いた?」
「あ、いや……それは、なんというか、少し後ろめたい事情が……」
聞かれたくないことには触れないほうがいいのかとも思ったが、口ごもるというのもやはり珍しくてますます興味が湧いてしまう。
「なにそれめっちゃ気になる」
彼は少し迷った後、わかったと言って立ち上がった。それからリビングの窓を開けて、こっちへ来いと誘う。
促されてベランダに出れば、彼は手すりの向こうを指さして、わかるかと言った。そこにあったのは先日親友と話しこんだ公園だ。ここが2階というのもあってか想像以上に近い。
マンション脇の公園というのは当然認識していたが、彼の家の位置などは頭になかった。しかも彼の部屋はリビングと反対側にあり、部屋から見える位置に公園はないのだ。
「え、嘘。俺らの声、聞こえた?」
「全部が聞こえていたわけじゃないが、それなりに」
すまないと言って彼は律儀に深々と頭を下げる。
怒る気にはならなかったが、それでもやはり、なんとなく恥ずかしい。あの日の会話を聞いて確信を持ったというなら、彼への想いを吐露した部分は聞かれているに違いないのだ。
「時々、お前が切なそうに泣いている理由が自分にあるとも、そこまで気持ちが育っているとも思ってなかった。だから俺も色々考えたんだ。お前があいつを好きだと言い続ける限り、このまま知らないふりを続けたほうがいいかどうか」
「そういうプレイかもしれないし?」
「完全に自覚があって、しかも既に抱きあう仲だというのに、好きだと言わない理由がわからなかったんだ。さっきまでは」
「けっこーくだらない理由で安心した?」
彼とのエッチが気持ちよすぎて、自分の心よりも体の快楽を優先した結果だなんて、なんともしょうもない理由だという自覚はあって、照れ隠しに笑ってみせた。
「丁寧に慣らしたかいがあったな。とは正直少し思ったが、理由を知って逆に不安になったこともある」
「不安?」
「これから先も気持ちが良い思いはさせてやれるが、俺自身はさっきも言ったように、弱みに付け込んででも好きな相手に触れようとするゲスな面もあれば、こうして盗み聞きだってするような男だからな。こんな男はお前の本来のタイプとはだいぶ違うだろう?」
確かに、親友と目の前の彼とでは随分と違う。似ているところがあるとすれば、自分に優しいところくらいだが、その優しさの表現はやはりだいぶ違っている。けれどどんな理由にしろ、好きだと思ってしまった気持ちは、いまさら変えようがないのだ。
「こんな話を聞いた後でも、まだ俺を好きだと言えるか?」
「言えるよ。好きだよ」
「お前の気持ちが肉体的快楽に引きずられたものである可能性が高くても、お前の想像とは真逆で、関係解消なんて欠片も考えないどころか、これから先もっとたくさんの快楽を刻みこんでやろうとか、それでますます俺から離れられなくなればいい。なんてことを考えていても?」
もっとたくさんの快楽を刻み込んで、なんてセリフだけで、期待にドキドキしてしまう。それくらい、既にこちらの体は、彼によってイヤラシく作り変えられた後なのだ。
「いー、よ」
「では、もう一度言うが、お前が好きだ。恋人として付き合ってもらえるか?」
今度はもちろん、嘘だなんて言わずに頷いてみせた。
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