人の目の前で電話をするというのは、緊張とともになんだか恥ずかしい。それでも、これは会話を聞かせるためのものだから、席を立って別の場所でというわけにはいかなかった。
少し待たされて電話に出た親友に、考えたんだけどと告げれば、電話越しにも相手の緊張が伝わってくる。
「ゴメン、俺はお前と、親友という関係以外を持ちたいと思えないみたい」
吐き出す声ははっきりと震えていた。頭の中は相手への申し訳無さでいっぱいだ。
『そうか……うん、わかった。というか知ってた』
「本当に、ゴメン」
『いいよ。謝んなよ。というか、俺こそ今更、長年培ってきたお前との関係変えようとしてゴメンな』
これからも親友では居てくれる? という質問に、もちろんと返して電話を切った。
グッと胸が詰まって、泣きたいような気持ちになる。散々好き勝手に好きって言葉をぶつけてきたくせに、いざ相手から求められても応えられないなんて、随分酷い話だと思う。相手が受け入れてくれる事に甘えまくっていた自分の、身勝手さが招いた結果だということはわかっている。
浮かんでしまった涙が流れる前にグイとふき取り、目の前で渋い顔をしながら黙ってこちらを見ている友人を睨んだ。
「聞いたろ。俺は今この瞬間だってあいつのことが大好きだけど、でもそれは大好きで大事な、親友、なんだ。これは恋人になりたい好きじゃない。恋という意味でなら、俺の初恋はずい分昔に終わってた」
終わったことを自覚してなかったのは、終えたくない気持ちが強かったせいだろう。はっきりと彼に恋をしていたあの頃が、あまりに楽しくて幸せだったから、その幸せを追いかけるように、戻らない時間を見つめ続けていた。
「これが、俺が出した答え」
満足? と聞いたら、相手は困ったように苦笑する。
「ああ、満足だよ。じゃあ俺も、本腰入れてお前口説くけど、お前、それでいいんだよな?」
「あー……うん、お願いします?」
「なんで語尾上げてんの。っていうかお願いされるとか変な気分なんだけど」
「いやだって、俺もよくわかんないんだよ。正直言えばお前に恋したいわけじゃないし、でもお前に本気で口説かれたら、お前好きになりそうな気もしなくはないっていうかさ」
話の流れとして、あのやり取りの後親友に断りの電話を入れたのだから、身を引くな本気で口説けと言ったようなものだというのは理解していないわけではない。でも本気で口説かれるってようするに、エロいこと含んでの付き合いを了承するハメになるかどうかって事だろう?
「正直すぎ。まぁ、その素直さが好きだってさっきも言ったし、お前の魅力の一つだけどさ」
「じゃあ素直ついでに言っとくけど、俺、お前とエロいことする覚悟とか全く無いから。したくない気満々だから」
「知ってますー。こっちだって別に、むりやり襲う気なんてさらさらないから安心しろって」
「バカか。安心できるわけないだろ。むりやりは襲わなくても、俺の気持ちはがっつり弄る気でいるくせに。俺の気持ち弄って、お前にエロいことされたいって気にさせる気だろ?」
「当然だろ。なんのために本気だすと思ってんだ」
取り敢えず今日中にキスくらいはしておきたいよねと宣言されて、警戒心が思い切り膨らんでしまう。なのに、こうやって警戒してしまうことすら、相手の術中なんじゃと思う自分も居て、だんだんわけがわからなくなってくる。
全く敵う気がしないから、きっと今日中にキスをしてしまうんだろうなと思った。
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