初恋は今もまだ 友人4

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 そろそろキスされたくなってない? という何度目かわからない質問に、なってるわけないと同じ返答をしながらも、どんどん警戒心を解いてしまっている自覚はあった。
 結構飲んだから、酔っ払って気持ちが良いというのももちろんある。でも相手の本気とやらがあまりにあけすけで、警戒心が続かないというのが大きい。
 仕事の話だとか、時事ニュースの話題やらも含む、誰とでもするような普通の会話をしているはずなのに、相手の「お前を本気で好きって思ってるよ」という気持ちがはっきりと伝わってくるから戸惑うしか無い。それどころか、可愛いと思われていることも、触れたいキスしたい欲望なんかも、言葉の端々と相手の表情やらなにげない仕草からはっきりと読み取れてしまう。なんだこれ。
 けっこう押し付けがましいのに、そう感じないのが不思議で仕方がなかった。
 しかも極めつけで、キスされたくない? を断っても断っても繰り返し言ってくるその図太い神経に脱帽だ。
「あのさ、これ、いつまで続けんの?」
「お前が俺にキスされたくなるまで」
「されたくはないけど、面倒だからもうするならしろよ、くらいの気にはなってきたんだけど」
「それはちょっとー」
「なんだよ。不満なの?」
「だってお前口説くの結構楽しい。だからもっと抵抗してくれていいよ?」
 なんっじゃそりゃ。
 さすがに付き合ってられないと大きくため息を吐き出した。でもこれで、面倒くさいからと相手の望む反応を返してしまうことこそが、相手の狙いなんだろうか。
 そう思うと、こちらからキスしてよと言って終わらせるのは、なんだか悔しすぎる気がする。
「お前がキスしてって言ってくれたら、今日の所はお前口説くの終わりにするけど、どーする?」
 そんなこちらの気持ちが伝わっているのか、相手がにやっと笑って提案してくるのがまた腹立たしい。
「てかさ、お前これからもずっとこんな調子続けんの?」
「こんな調子って?」
「言葉と態度の端々に俺を好き好き混ぜ込んだ感じ」
「あーうん。それは多分続く」
 狙ってわざとやってるわけでもないからと続いた言葉に驚きの声を上げた。
「えっ? わざとじゃないって何?」
「素?」
「いやいやいや。意味分かんない」
「キスしたくならない? っていちいち聞いてるのはわざと。でも他はお前を本当に好きだと思いながら接したらそうなるってだけ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃありませんー。だって本気で口説くってそういうことだよ。お前を本当に好きで、それを他の誰に気兼ねすることなく、好きを伝えていいって状態になったってだけなんだって」
 言われると納得しかけるが、どうにも信用しきれないのは長年培ってしまった友情ゆえなのだろう。
「でもなんか胡散臭い。だいたい、俺がキスしてって言えば今日は口説くの終わりにするって言ったろ。それ意識的にどうこう出来るってことじゃん」
「いつでもどこでもお構いなしに、好きな相手に好き好き垂れ流すほど理性なくないってだけですけど?」
「ふーん……」
「信じてないな?」
「だってなにもかもがお前の手口に思えてくる」
「疑心暗鬼すぎだろ。後、飲み過ぎ」
 そろそろお開きにしようかと言う言葉に、まだキスしてないけどと返したら、おかしそうに笑った相手が腰を浮かせてテーブル越しに顔を近づけてくる。さすがにもういいやと思ってそっと目を閉じれば、唇にふにゃんとした感触が少しの間だけ押し付けられた。
「お前、本当可愛いんだけど、どーしよっか」
 酔ったお前ホテル連れ込んじゃうとかもあり? などと言ってくるその言葉がどこまで本気かさっぱりわからない。
「あるわけない」
「でも俺とのキス、意外と抵抗なかっただろ?」
「お前の手の早さが怖い」
「それお前知ってたろー。煽ったのお前だからね?」
「ホテルなんか連れ込まれたら逃げられる気がしない」
「うん逃さないね。というかホテル連れ込まなくたってもうお前逃がす気なんかないっていうか、逃げる気あったならもっと早く逃げ出さなきゃダメだったろ」
 逃げろって言った時に逃げなかったの誰よと言われて、確かに自分だったと思ったら反論できなくなった。

続きました→

 
 
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