意識が浮上した際、聞こえてきたのは同期の友人が嫌だ止めて違うと抗うか細い声と、それを宥めているらしい甘やかな声だった。んっ、だとか、ふっ、だとか漏れ聞こえる息から、泣いているような、それでいてなんだか色っぽい気配を感じて、いったい同期に何が起きているのかと声のする方へ顔を向け、それから重い瞼を薄っすらと押し上げていく。
(えっ?)
驚きすぎると声は出なくなるものらしい。しかしあまりの衝撃に、酔いも忘れて意識がはっきりし、重かった瞼が嘘みたいに目を大きく見開いてしまった。
嫌だ止めてと零している同期は、恋する相手に組み敷かれて喘いでいる。違う、そんなつもりじゃない、という言葉の意味を自分は理解しているが、多分同期を組み敷く先輩だってわかっているだろう。年齢よりずっと若く見える可愛い顔は、随分と楽しげに同期を見下ろしている。
というか、風呂場共同だからって他人が入浴中なら遠慮して時間をずらすし、先輩の裸なんて見たことがなかったけれど、服の下の筋肉が随分とエゲツナイ。その体を知っていたら、果たして同期はその先輩に恋心を抱いたりしただろうか?
嫌だ止めて違うと繰り返しながらも、同期はもう完全に喘いでしまっているし、彼が想定していた役割が逆ではあるものの、好きになった相手から落とされるキスに嬉しそうな顔を見せてしまっているし、先輩はずっと満足げで楽しげだ。だから二人を止める気にはならなかったし、むしろだんだんそんな二人の情事を、ほぼ不可抗力とは言え覗き見ている気まずさが押し寄せてくる。
自分が潰れた後何があったか知らないが、いくら潰れたからって人のいる部屋でおっぱじめた向こうも悪い。でもこういうのは途中で気付いてしまっても、目を逸らして気づかぬふりをしてやるもので、向こうがこちらに気づいてなかろうとジロジロ見続けるものじゃない。とは思うのに、目の前で繰り広げられる二人の痴態から目が離せない。
「おい。向こうが気になるのはわかるが、せっかく起きたならそろそろこっちに集中してくれ」
ふいに落とされた声に、驚きそちらへ顔を向ければ、この親睦会を企画した先輩が自分を見下ろしていた。うっすらと汗の浮かんだ額や上気した頬からはっきり示される興奮の中、射抜くような鋭い瞳が自分を捉えている。
「っえ、なっ、ぅあっっ、ちょっ」
体を揺すられ反射で声が漏れ、それに伴い感じた自分の体の異変に戸惑い慌てれば、見上げた先の先輩が口角を釣り上げた。
「うそっ、うそっ、やだっ」
下半身は痺れるみたいにだるくて尻の穴が熱い。
「抜いてっ、嘘、ね、嘘でしょ、やだっ」
「起きた途端、随分騒がしいな」
ふっ、と笑いを零した後で、近づいてきた顔に口をふさがれた。容赦なく侵入してきた厚い舌が、好き勝手に口内を舐め啜って荒らしていく。
「んっ、んんっ」
抗議するような唸りも簡単に飲み込まれ、口の中の弱い場所を執拗に擦られてゾクゾクする。快感に震えてしまえば、連動するように尻穴がキュッと締まって、そこに咥えこんでいる先輩のペニスを意識せずにいられない。
嘘だ嘘だ違う。これは何かの間違いだ。なんていくら頭で否定しようと、自分の置かれた現状が変わるはずもなかった。
「気持ちぃ?」
キスの合間の問いかけに、けれど頷けるはずがない。
「も、やめっ」
「なんで? 気持ちよさそに見えるけど」
初めてでも痛くなんてないだろと続いた言葉に、体の熱が上がる気がする。痛くないとか気持ちいいとかそういう問題じゃないし、初めてってわかってて断りなく、しかも意識がない間に突っ込んだって部分を問題視して欲しい。
「そ、ゆー問題、じゃ、ない」
「知ってる。お前、俺のことなんてなんとも思ってないもんな」
「じゃ、なん、っで」
「んー、お前男同士あんま抵抗ないみたいだから、強引に押したら落ちるかもと思って?」
抵抗なく見えるのは同期が男の先輩に恋しようと自分は無関係と思っているからだし、そもそもこれは強引に押したら落ちるとかいうレベルを超えている気がする。
「でもこれレイプ、っすよ、ね」
そうだなとあっさり肯定が返るとは思っていなかったが、だからこそ、わかったらもうヤメロが通じる相手ではないと思い知らされる。
その後は話は終わりとばかりにキスが再開されてしまったが、そのキスが終わる頃にはあちこちメロメロにされていて、ケツ穴を擦られながらいつの間にか勃起していたペニスを握って扱かれるまま気持ちよくイッてしまって呆然となった。その頃にはすぐ傍らで同じように致していた二人も終えていたようで、同僚がやはり呆然とした顔でこちらを見ていたから、なんだか酷く恥ずかしい。
同僚があっさり先輩に押し倒されていた件も含め、なにもかもが想定外のメチャクチャな夜だった。
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