いつか、恩返し24

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「高校卒業する時にさ、この恩はいつか必ず返すって言ったじゃない。で、お前の誕生日の翌日にもさ、恩返しの話したの、覚えてる?」
 こちらの、微妙に噛み合わない会話への苛つきに気づいて居るのか居ないのか、唐突に話題が変えられる。
「そりゃあだいたいは覚えてるけど」
「あの時、いつか返したい恩が、積み上がってくばっかりだって言ったことは?」
「覚えてるよ」
「それ、お前の中で今、どうなってる?」
「どう、って?」
「俺がお前を好きだって知ったから、俺とセックスするような関係になっただろ。しかも、男なのに抱かれる側まで経験しちゃったわけだけど、これってお前なりの恩返しだったりする? お前の中で、恩を返したことになってる?」
「えー……いやぁ……」
 言葉を濁しながらも、どうだったかなんて振り返って探るほどのものでもない。
「そんなことは考えたこと、なかった、かも」
 実は好きなんだと聞かされて考えたのは、彼と恋人らしい行為が出来るか、したいと思うかどうかで、彼とセックスする関係になることが恩返しだなんて欠片だって考えたことがない。というか、そもそも好きだと告げた時の彼は、このまま恋人ごっこを続けさせてとしか言わなかった。どう考えても、セックスするような関係に発展したのは、こちらの好奇心が原因な気がする。たとえ、彼がそうなるように仕向けたとしても。
「つーか、お前が俺を好きだからセックスするようになった、の認識がまずオカシイだろ」
「でもお前を好きって打ち明けなかったら、俺とセックス出来るかどうかなんて、お前、考えなかったろ。これ、前にも一度言ったけど、お前は俺の策に嵌って、俺とのセックス考えるようになったんだよ?」
「だからさ。考えるとこまではお前の仕業だったかもだけど、考えて、出来そうって思って、してみたいなって思ったのは俺の意思だろ。で、お前は俺のそんな好奇心を満たしてくれた側で、ただ、お前がそうなったらいいなと思いながら仕向けたってのはあるだろうから、どっちかがってより、お互い様、みたいな?」
 こういうのをwin-winな関係って言うんじゃないのと思う。思ったついでに、口に出して言ってもみた。
「つまり、俺にいつか返すつもりの恩、お前の中まだあるって事でいい?」
「あー……わかった。かもしれない。つまり、恩を返せって言いたくなるような事、出来た?」
 当たり? と聞けば、最終的にはそれを出してでも欲しいものはある、という言葉が返って来たから、俄然テンションが上ってしまう。ついさっきまでは、そろそろ彼との話を切り上げたいと考えていたくせに。
「え、何。言って。聞きたい」
「それもう絶対ただの好奇心」
 一気に呆れ顔になった相手に、いやだって仕方ないだろと思う。
「まぁそれはそうだけど。お前がそれ出してまで、俺になにかして欲しいことあるって、純粋に嬉しいだろ」
「は? 嬉しい?」
「え、うん、嬉しい。だってお前、あんまりはっきり何かねだったりしないし。それこそ、欲しいものは相手の負担にならないやり方で、いつの間にか自分のものにしちゃうからさ」
 正直に言えば、恩返ししろだなんて言われなくたって、彼が素直にくれと頼んできたものなら、出来る限り応じてやりたいと思う。そう思ってしまうくらいには、彼への想いはちゃんと育っている。

続きました→

 
 
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