竜人はご飯だったはずなのに6

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 お互い様だと言えばそうだなと返ったが、でもやはり申し訳なさそうな寂しそうな顔はそのままだった。もし彼にも自分と同じように、この関係に情が湧いているなら嬉しいのになと思う。
「こういうの、確かめてもいいのかわかんねぇんだけどさ」
「なんだ?」
「最中に好きだの可愛いだの言ってくれるの、俺がそうしようって言ったから続けてるだけで、今も食事を彩る言葉遊びのまま? 本当は欠片もそんなことは思ってないけど、薬で勃起してるから抱いてる感じ?」
「そんなわけがないだろう」
 即座に否定されてほっとすると同時に、小さく笑ってしまった。
「俺もだよ」
 体の欲求に従って彼を求めてしまうけれど、純粋に彼を想う気持ちだってちゃんと育っている。彼が与えてくれるものに、返す言葉は本心だ。味気ない食事を彩る言葉遊びでもないし、一晩限りの恋人ごっこを繰り返しているつもりもない。
 そう伝えたつもりなのに、相手はなにやら渋い顔になる。
「どういう意味だ?」
「どういうって、そりゃ、俺も言葉遊びで返してるんじゃなくて、ちゃんとあんたを本気で好きだと思ってる、って意味、だけど」
「何を言い出してるんだ?」
 ますます渋い顔で、困惑を混ぜてそんなことを言われる意味がわからない。
「え?」
「お前が本当に食べたいと思っているのも、好きだと言ってほしいのも、言いたいのも、世話係として置いてるあの子だろう?」
「えっ?」
「私に本気で好きだなんて言ったと知ったら、あの子がガッカリしてしまうよ?」
「ちょ、待て待て待て。てか一回抜いて」
「やはりそこまで腹が減っているわけではなかったらしいな」
 もっともっととこちらがねだるのが通常で、中断してくれなんて言ったことは確かに無かった。多分、さっきも言われたように、マズいものばかり食べさせられて美味しいものが食べたかったのが本音で、もう少し言うなら彼に来てもらうことそのものも目的の一つで、既にかなり満足しきっているんだろう。
「しかし先程も言ったように、こちらは薬を使って抱きに来ている」
「つまり?」
「完全に中断してゆっくり話を、というのはさすがに難しい」
 だと思った。
「欲情しきってる状態でこれ、とかあんたの理性強靭すぎだろ」
 もっとそれっぽく振る舞ってくれなきゃわかんねぇよとぼやけば、それも食事担当になった理由の一つだと言われた。なるほど。竜人の力を持って理性飛ばして抱き潰すみたいに扱われたら、そのままそれが死に直結しそうだし、こちらを生かし続けたい彼らからすればそこは細心の注意を払って選んだことだろう。
「じゃあ続きしよ。そっち優先で」
「だが、空腹なわけでもなく、気が乗らない状態でするのはキツイだろう?」
 そういや元々はそれを心配されていたのだと思い出す。
「んー、なんか大丈夫な気がする」
「何がどう大丈夫なんだ」
 そう聞かれた所で、わかりやすく理由を提示できそうにはなかった。だって今日は開始する前からして色々とありすぎで、ただでさえたいして良くない頭が、詰め込まれた情報を全然処理しきれてない。
「そうだな。強いて言うなら、あんたを好きって、かなり本気で言ったから、かな」
「全く意味がわからないのだが」
 そう言うだろうと思った。薬のせいとはいえ、好きな子が目の前で欲情しきった状態で耐えてるなんて知らされて、興奮しないわけがない。でも多分、そんな単純な理由だけでもない気がするから、ただの性癖と言い切ってしまうのは控えたい。こういう自分の直感は、割と信じる方だった。
「まぁまぁ、今はとりあえず続けようぜ。我慢して理性ぶっちぎるほうが怖いだろ?」
 言えば確かにそうだなと苦笑されて、ゆるりと腰を動かされる。あまり心配をかけないようにと、こちらも目の前の彼だけにしっかり意識を向けた。

続きました→

 
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