降ろされたベッドの脇には、既にアレコレ乗せられた棚が横付けされている。
「その上にあるものは好きに使っていい」
「はい……ぁ……」
棚の上の玩具やらに気を取られているうちに相手は離れてしまって、途端に心細さが増した。離れたって言ったって、ベッドから数歩分の距離に置かれた椅子に腰掛けたってだけなんだけど。
じっと見つめてしまえば、思いの外柔らかに笑い返される。
「始めるのはお前のタイミングでいいよ。やり方も、取り敢えずは一番やりやすいと思うやり方でいい。なんなら家にいるつもりで、俺に見せることは考えずにやってごらん」
優しい声音はこちらを気遣ってくれるようでいて、でももう既に、彼はこちらの観察を始めている。ただ待ってさえいれば、どうせすぐに、薬の効き目に耐えきれなくなるのがわかっているのだ。
お腹の中の強い疼きにも、アナル周りがむず痒さで熱を持っていることも、そのせいで時折もぞりと腰を揺すってしまうのだって、彼が気づいていないはずがない。
彼の目から逃れるみたいにもう一度、彼が座る場所とはベッドを挟んで対角の位置にある棚に顔を向けた。首の後に彼の視線を感じてゾワゾワする。
彼に見せることは考えずにやっていいと言われたけれど、彼に見られていると強く意識することで、興奮が増してしまうのはわかっていた。わかっているからこそ、彼の目を意識する。
彼が見たいと言ったからそれに応じるだけなのだと、言い訳みたいに胸の中で唱えながら、とりあえずローションボトルを手に取って中身を手の平に出した。
手の中でローションを捏ねながら、体ごと少しひねって彼に背を向ける。前傾してお尻を少し突き出すようにして、背中側からローション濡れの手を伸ばす。
「ふぁあっ」
指先をアナルに押し当てただけで、待ち焦がれた刺激に大きく体が跳ねて、噛みそこねた声が漏れた。キモチガイイ。
「っ、……んっ……」
むず痒さを宥めるようにアナル周りを掻くように撫でれば、早くもっと奥も掻いてというように、アナルがヒク付いて指先を飲み込もうとする。自分の体の欲求に促されるまま、そろりと指を侵入させた腸内は熱かった。
「ぅ……ふっ……」
そのままツププと中指を押し込んでいく。でも初めて触れる自分の腸内を、じっくり感じている余裕などはない。わかったことは、一番疼いている場所には、そう簡単に指先が届かないってことだった。体勢が悪いのかもしれないが、今この場でそれを試行錯誤するのは、いくらなんでも憚られる。
落胆でこぼれかけるため息を噛み殺して、こわごわ中を掻き回し、ゆっくりと指を抜き差ししてみる。そうしている間は、間違いなく、体の疼きが多少なりとも満たされる。
もう片手でペニスを握った。お尻だけでイクところを見せろと言われたわけじゃないし、お尻を弄りながら気持ち良くなる所を見せればいいなら、構わないだろう。事実、彼からそれを咎める声は掛からなかった。
「……っは、……ふ……」
息が荒くなる。早くイッてしまいたい気持ちから、なるべく素直にキモチイイを追いかけている内に、お尻に挿し込む指は二本に増えたし、結構激しくズプズプと突いてしまってもいた。
そうしていても、肝心の所にはやっぱり指は届いていないのだけれど、そのもどかしさに安堵してもいる。やっぱり彼に弄ってもらうからこそ、あれだけ気持ち良くなれるのだ。
「ぁ、」
きゅうっとお腹の奥が重くなって、絶頂が近いのを感じる。
「い、きそ……ぁ、イクっ……いっちゃ、う」
本当に家で一人でしていたなら、それすら飲み込んでいたかもしれないけれど、さすがに彼に見られていることを意識して、密やかながらも絶頂を宣言した。
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