膝が震えて足に力が入らない。手だってまだ辛うじて相手の服を掴めているけれど、指の力を少しでも抜けば、腕はだらりと落ちてしまうだろう。すっかり相手の腿に乗りかかっている腰は、ゆらゆらもぞもぞと動き続けているけれど、でも達するための快感を得るほどの動きなんて出来ていない。
「ますますトロットロの可愛い顔になったね。俺とのキスは気持ちいい?」
「ん、ぁ、きも、ちぃい」
「いい子。これからも、気持ちいい時は、ちゃんと気持ちいいって、言おうな」
なんども頷いて見せれば、耳元にキスが落とされる。ちゅっちゅと小さなリップ音が耳に響いて、かすかなゾワゾワがそこに集まってくるようだった。
「ぁ、……ぁっ……」
「これも、気持ちいい、だろ?」
「ぁああっっ」
言いながら耳朶を柔く食まれて、ゾクリとした快感が背筋を這い登っていった。
「きもちぃ、これも、きも、ちい」
気持ちが良いと繰り返せば、いい子と言われながら、さらにしつこく耳を嬲られていく。片耳が開放されれば、次は反対の耳へ。乾いた耳元に唇が触れれば、また最初のゾワゾワが集まってくる。
「ぁ、……ぁっ……」
耳朶を食まれることを予想して、それだけで快感が背筋を這い登る中、けれどすぐには予想していた刺激は与えられなかった。
「そろそろイこうか?」
囁きが吹き込まれる。しかし体どころか頭の中までキモチイイでいっぱいになってとろけきっていたせいか、一瞬何を言われているのかわからなかった。というか、どこへ行くのかと思ってしまった。けれどすぐに、腿を揺すられ声を上げて、イクの意味を理解する。
「あんんっっ」
「ご褒美気持ちいいのわかるけど、どうしてご褒美貰えてるのか思い出そうな」
つまり、気持ちよさに身を委ねていないで、さっきみたいにちゃんと自分で腰を振れと言われているようだ。震える足と腰に力を入れながら、少しばかり持ち上げてくれたままの腿へ、グッと股間を押し当てていく。
「ん゛ぁ゛あっ」
ビリビリとした刺激が体を巡って、一瞬目の前がチカチカ明滅した。そのままの刺激が続けば確実に達していたと思う。けれど強すぎる刺激に腰が引けてしまったというか、体の力が入らないというかで、結局、荒い息を吐きながら相手の腿に身を委ねてしまっている。
「もうちょっとだな。ご褒美の続きあげるから、頑張ってイッてごらん」
言われた瞬間、頭のなかに大きく無理だと響いた。ムリムリムリ。出来っこない。もうちょっとだなんて、絶対相手の勘違い。
だって耳を嬲られたら体を支える根幹がまたグズグズに感じてしまうのは明白だ。自分自身の力で、グリグリと相手の腿に股間を擦り付け続けるなんて、とても出来そうになかった。
前回はキモチイイの波に飲まれながら相手の手で揺すられてイッたわけだけれど、思えば結構な力が掛けられていたような気がする。かなりガッシリ腰を掴まれていたし、グッと腿に押し込む力も強かった。
あれくらいの力を掛けなければ、ズボンを履いたままの股間を擦り付ける、なんて方法で達するのはきっと難しい。しかもそうやって達することに、こちらは全く慣れていない。
擦り付け系オナニーの存在も知らなくはないけれど、男でやってる作品はほとんど見たことがないし、だから自分もやってみようなんて思うこともなかった。
無理だ出来ないと思う理由は次々と思い浮かぶのに、じゃあどうしたらこれを回避できるか考えるのは難しい。絶対相手の勘違いだとは思っているけれど、それでも、もうちょっとで出来ると言われた内容に、無理だとか出来ないなんて言ってもきっと聞き入れてはくれないだろう。
そうこうしているうちに、ご褒美の続きが始まってしまった。耳朶を食まれて吸われてゾクゾクが体を這い登る。
「んぁあっ、おねがいっ……して。あなたが、して。俺を、イか、せて」
とっさに口をついて出たのはそれだった。だって自分で腰を振っていくのが無理なら、もう、相手に頼るしかない。終了条件のもう一つを忘れてはいなかった。
さすがに驚かせたのか、相手の頭が耳横から離れて、真正面から見下される。
「俺の聞き違いじゃないなら、今の、もう一回、言って?」
「一人じゃ、出来ない。イケない、から。お願い、手伝って」
どうにか頷いてもらおうと必死に口を開く。それを相手は、楽しそうに、嬉しそうに、見ていた。
「どんな風に手伝ってほしいの? 俺に何をして欲しいか、ちゃんと言わないと。ただ手伝ってだけじゃ、お前が思ってもみないようなお手伝いしちゃうかもよ?」
ニヤリと笑われ思わずホッとする。自分でイケなくてもいい。彼の手でして貰える。
チラリと、そんなことに安堵するなんてと思ったりもしたけれど、その違和感を気にする余裕なんて当然なかった。彼の望む言葉を探しながら、やっぱり必死に口を開く。
「え、っと……一人じゃ、気持ちよすぎて、強くグリグリ、続けられない、から。だから、あなたの手で、あなたの腿に、強く押し付けて揺すって欲しい、です。俺が、イケる、まで」
「お前が自分で、俺の腿に勃起ペニス擦り付けて精液漏らすところが見たかったんだけど、まぁ、二回目って考えたらかなり上出来な部類かな。じゃあ最後に、先走りでグチュグチュの下着の中にたっぷり精液吐き出せるくらい、うんと気持ちよくして、って言って?」
つっかえながらも言われた通りに繰り返せば、相手は良いよと言って笑った。
「うんと気持ち良く、してあげる。気持ち良くなれたら、どうすればいいか、わかってるよな?」
「ちゃんと、気持ちぃ、って、言う」
「いい子だ。じゃあ、気持ちいいって喘ぎながら、グリグリ俺の腿に勃起ペニス擦られて、いっぱい射精しような」
その言葉通り、何度も気持ちいいと繰り返しながら、ズボンの中の勃起ペニスを相手の腿に強く擦り付けるように揺すられる。ご褒美の残りなのか同時に耳も嬲られていたし、目の前はチカチカしっぱなしで、真っ白に爆ぜるのはあっという間だった。
今回は吐き出したものを確認させたらとか、着替えを見せたらとかの給料上乗せ提案があったけれど、断れば残念だと言いながらもあっさり防音室を出て行く。給料を用意しておくから身支度が整ったらリビングへと言うのは前回と同じだ。
帰宅後取り出した封筒の中身は、一万円札が二枚と千円札が三枚だった。
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