雷が怖いので9

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 口の中を舐め啜られる気持ちよさに翻弄される。頻繁に背筋をゾクゾクと這い上がる快感に、全身粟立つ肌が収まらない。膝は震えて足に力が入らず、相手の両腕を縋るように握っている手の握力だって、せいぜい腕が落ちてしまわない程度でしかなく、結局のところ、座り込まずに済んでいるのは両足の間に差し込まれた相手の腿に支えられているからだ。
「んっ、ぁっ、……ふぁ……ぁ……」
 鼻にかかった甘えるような吐息が、自分から漏れているなんて信じがたい。
「キスだけでこんなトロトロになって恥ずかしいね。気持ちよくなって腰揺すって、俺の足に勃起ペニスすりつけてる自覚、ある?」
 自覚はないわけではなかったが、指摘されると本気で恥ずかしい。カッと頬が熱くなって、目の奥が痛い。なんだか泣きそうだった。
「ああ、自覚はあるんだな」
 腰が揺れてしまわないようにと体に力を入れたせいで、自覚があるとバレてしまった事が、更に恥ずかしさを増していく。
「どうして止めるの? もっとたくさん腰振って、気持ちよくなっていいんだよ?」
 足の間に挟んだ相手の腿が持ち上がって軽くゆすられた。そんな小さな刺激だって、キスで蕩けた脳みそと、ガチガチに反応を示す股間のナニには強烈な快感を生む。
「んあああっっ、やっ……や、めて……」
「キスを? 自分でできるって言った事なのに?」
「ちがっ」
「じゃあ、何をやめて欲しいって?」
「あんま……いじわる、しないで……」
 言ったら一瞬変な沈黙と空気とが流れて、それから心底おかしそうに笑う声が聞こえてくる。
「いいね。凄く斬新。でもここが何のための部屋か、俺がどういう性癖持ちか、思い出そうな」
 もっといっぱい虐めてって言われてる気分にしかならないよと、やっぱり笑うように告げられて、再度唇を塞がれた。
「んんっ……」
 口の中の、歯の裏側から上顎とを擦るように舐められて、ゾクゾクとした気持ちよさにうっとりと目を閉じる。また腰を揺すってしまいそうで、崩れかける膝と添えてるだけになっている手にどうにか力を入れて、乗ってしまっている相手の腿から腰を浮かそうと試みたところで、ズクリと痺れるように重い腰を両手で掴まれてしまった。掴まれた場所にビリビリとした快感が走って、けれど次の瞬間にはもっとはっきりと強い刺激に翻弄される。
 強い力で相手の腿に押し付けられた股間を、先ほどの比ではなく、揺するというよりはグリグリと擦られた。
「やぁああっ、ダメっっ、やっ、やぁっ」
 背をのけぞらせて逃げようとしたせいでキスからは開放され、代わりに悲鳴に似た嬌声が部屋に響く。
「ん、気持ちぃな」
 うっとりと諭すような声に、ぐらぐらと気持ちが揺れてしまう。まるで気持ちが良いことを褒められているみたいだった。
 けれどそれと同時に湧き上がる恐怖。だって人から与えられる性的な刺激に、あまりにも不慣れだった。恋人と呼べるような相手が居た時期は短く、キスは出来たがそれ以上の関係には進めなかった。しかも今こうして自分を気持ちよくさせている相手は恋人なんかじゃないし、女の子でもない。
 怖くなって、なんだか混乱してきて、なのに固くなったペニスへの刺激は容赦ない。このまま続けられたら、間違いなく達してしまう。
「やっ、やだっ、気持ちぃの、やだぁっ」
「オナニー見せてくれるってならここでやめてもいいけどどうする?」
「やだっ、も、むりっ、むりだからっ……い、イッちゃうから……」
 逃れようと身を揺すったら、背後の壁にぐっと背中を押し付けるように詰められた。壁と相手とに挟まれて、圧迫感と恐怖とが増す。もはや脳内はパニック寸前だ。
「ははっ、なんかもう必死だね。俺の声聞こえてる?」
 この状態で逃すわけないでしょうという言葉と、塞がれてしまう口と、追い立てるみたいに注ぎ込まれる快楽と。
「ん゛ん゛ん゛っっ」
 全身がビクビクと震えて、とうとうイッてしまった。

続きました→

 
 
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