トキメキ10話 感じ合う

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 顔を離して様子を窺う。神崎は呼気を乱してはいたが、先ほどと違って、苦しそうな顔を見せてはいなかった。
「気持ちい?」
「……はい」
 恥ずかしそうに、けれど肯定の声ははっきりと発された。
「俺も、気持ち良かった」
 笑ってやれば、釣られたというよりもきっとこちらに応じようとして、同じように笑い返してくる。本当に、可愛い。それを素直に口に出したら、一転、困ったような顔になってしまった。
「可愛いって言われても、そりゃ、あんまり嬉しくはないよな」
 確かに男に対する褒め言葉ではないだろう。けれど口にせずにはいられない。
「でも、嘘じゃないんだ。お前が、可愛くってしかたないよ」
 本心からの言葉は、けれどなんの慰めにもならないどころか、却って傷つけたのかもしれない。考えてみれば当然だ。本気で可愛いだなんて、余計に性質が悪い。
 ゴメンと告げて、詫びるように目元にキスを贈った。滲んでいた涙が唇に触れて、微かな塩味が口内に広がって行く。
 そのまま唇を耳元へと滑らせれば、この後与えられる快楽を予期してか、神崎の身体に緊張が走った。
「もっといろんな所にキスしても、構わない、よな?」
 囁く声にも感じるようで、はい、と返す声は小さく震えていた。
 弱い場所は既にわかっている。そこをなぞりながら、先ほどと同じように声を噛んでしまう神崎の唇に、そっと指先を滑らせた。少しばかり力を込めて、閉ざされた唇を割り開く。
「あっ、やぁああ、あー、……うぅー」
 声を聞かせてくれと告げながら、いささか強引に指先を突きいれ、口腔内をかき回してやれば、非難めいた声があがった。
「嫌なら噛んでいい」
「うーっ、あぁー」
 嫌がって振ろうとする首を、顎を捉えて固定する。声が聞きたいだけなんだよと再度耳元で囁いた。
「どうしても嫌なら、本当に噛んでいい。噛んで、俺を止めてくれ」
 やはり嫌そうな声を発していたが、それでも噛まれることはなかった。それは神崎の優しさなのかも知れない。たとえそうだとしても、今はその優しさにつけ込む気でいっぱいだった。だから遠井は、神崎を感じさせることに意識を集中させる。聞きたいのは、快楽を混ぜてこぼれる艶やかな声だ。
 耳から首筋を辿り、肩から胸へ。触れて弄る前から、乳首の先がツンと尖っていた。軽く爪弾いただけで、ビクビクと肌が震える。高い声があふれ出す。
「あーっ、あっ、んふっ、ふぁっ」
 今度こそと、指で弄る反対側の突起へしゃぶりつき、舌で転がし、吸い上げ甘噛んでやれば、益々高くなった声が絶え間なく耳に届いた。そっと指を引き抜いても、閉じることを忘れたように、その声がおさまることはない。
「やぁ、やだぁ、……ああ、んっ」
 けれど、口腔内を弄って充分に濡れた指を、下腹部で熱を持つ陰茎へと絡めれば、喘ぐ声に嫌だという単語がはっきりと混じった。喘ぐ声も、どこか啜り泣きに近いものへと変わってしまう。
「ハルさん、ハルさんっ……おねが、い……待っ、て」
 切なく名を呼ばれ、待ってくれと懇願されて、それを無視など出来るはずもない。お手上げだと言うように両手をあげて見せた後、遠井は神崎の顔を覗き込んだ。
 ふーふーと荒い息を吐き出すその顔は上気し、赤くなった目元には今にもこぼれそうな涙が溜まっている。けれどどう控えめに見ても、嫌悪の感情は見当たらない。むしろ、中途半端な所で放り出され、開放されない熱を内に湛えた神崎の潤んだ瞳は、先ほどこぼした言葉とは裏腹に、遠井の手を待っているようにさえ見えた。
 正直、何がそんなに嫌なのか、本気でわからない。
「まだ、早いか? 俺の手が嫌なわけじゃ、ないんだよな?」
 こんなに感じて、早くイきたいだろう?
 そんな問いかけに、困ったように眉を寄せた神崎は、遠井の視線から逃げるように、目元を両手で覆ってしまった。
「太一?」
「あの、……だって、その、……お、俺ばっか、感じて、は、恥ずかしくて……」
 酷く躊躇った後で小さく吐き出されてきた理由に、口の端が持ち上がる。
「バカだな」
「ご、ごめんなさい」
 極力優しく告げたつもりだったが、怒られたとでも感じたのか、神崎は身を竦めて謝罪の言葉を口にする。そんな神崎に、遠井は困惑と諦めと愛しさとを混ぜ込んで、溜息を一つ吐き出した。
「ホント、どうしてそんな可愛いんだよ、お前」
「え、? ……っと、ごめ、」
「謝らなくていい」
 再度告げようとする謝罪の言葉を途中で遮り、そっと目元を覆う両手首を握って、ゆっくりと外させる。抵抗はなかった。そして現れた瞳に向かって、わかってなかったのかと柔らかに笑ってやる。
「恥ずかしがらせたいと思ってやってんだから、恥ずかしいのは当然だろ。嫌なのを我慢してるってならともかく、恥ずかしいからって逃げても、そんな理由じゃさすがに逃がしてやれないよ。それに、俺だって充分感じてる」
 掴んでいた片手を引き寄せ、遠井は自身の股間へと導いた。神崎は驚いたように目を見張った後、恐る恐るといった様子で、熱を持って存在を主張する遠井の性器へ指を絡める。確かめるように、握り締める。
「な? 俺なんか、どこも触られてないのに、既にこんなに感じてる」
 どうしてだかわかるかと問えば、やはりどこか困った顔で、それでも頷いて見せた。さすがに神崎も、男として経験があるのだろう。
「ほ、ホントに? 俺で?」
「そう」
 ホントにお前でだよと笑い、もし嫌じゃないならと続ける。
「自分ばかり喘がされて恥ずかしいと思うなら、そのまま握って扱いて、俺のことも喘がせればいい」
 その代わり、頼むからもう待ったはなしにしてくれと、苦笑と共に頼み込む。恥ずかしそうに頷いて、それからゆっくりと手の中の遠井を扱き始める。掴んでいた手を放せば、すぐにもう片手も股間へ伸びてきた。
 ぎこちない仕草ではあっても、さすがに自身で慣れているからだろう。快楽を誘う動きに、熱い吐息がこぼれ落ちた。
「気持ちいいよ」
 窺うように見つめる視線に笑いかけ、それから遠井も、再度神崎の性器へ指を絡める。そして、神崎の動くリズムを追うように手を動かした。
 だんだんと加速する動きを忠実に追いながら、先ほど感じる様子を見せた箇所へ唇を落とし、時に吸い上げ、軽く歯を立ててやる。
「あ、あっ、やぁっ」
「もっと感じて、恥ずかしい声を俺に聞かせて。その声で俺を煽って、そしてもっと感じさせてくれ」
 告げれば、遠井が与える快楽の刺激に、一旦止まってしまっていた神崎の手が再度動き出す。その動きに合わせるように腰を揺すった。
「いいよ。気持ち、イイ。お前は?」
「イイ、です。俺も、……気持ち、い」
「一緒に、イこうか」
 イきたいんだと、遠井から先に誘いをかける。はい、と返された応えに満足気に笑って、遠井は一度、張り詰めた自身を握りこむ神崎の手を開かせた。そしてその手の中に、神埼自身の怒張した陰茎をも握らせる。そうしてから、神崎の手を上から覆うように握り、激しく擦りあげた。
「ああっ、いいっ、イくっ、イっちゃう」
「いいよ。俺も、イく」
「っ、……はぁっんっ」
「クッ……」
 神崎の身体に緊張が走り、一度大きく身体を震わせた後、いっきに弛緩する。それとほぼ同時に、遠井も息を飲んで身を震わせた。
 どこか呆然と、それでも満たされた表情で荒い息を吐き出す神崎に、同じく満たされた気持ちいっぱいに笑いかけ、遠井は優しいキスを一つ落とした。
「少し、休憩な」
 汚れもそのままに、神崎の隣にゴロリと横になり、神崎の身体を引き寄せ抱きしめる。目を閉じれば、心地よい疲労感と共に、抗いがたい眠気が押し寄せた。
 次に意識が浮上した時には、腕の中で神崎が寝息を立てていた。眉を寄せた寝顔はどこか辛そうで、申し訳ない気持ちに襲われる。本気で拒まれはしなかったけれど、それでもやはり、そもそもは神埼から望んだ行為ではない。
 苦笑を飲み込み、遠井はゆっくりと身体を起こした。あれからどれくらいの時間が経ったのかはわからないが、神崎の腹の上に残った汚れはまだ乾いていないので、そう長いこと寝ていたわけではなさそうだ。
 ベッドを降りた遠井は、神崎の肌に残る汚れを簡単に拭った後、そっと掛布を掛けてやる。先ほど脱いだ服を着込み、神崎の服を畳んでベッド脇のスツールの上に置いた遠井は、その髪や頬に手を伸ばしたい気持ちを抑えて、静かに部屋を後にした。

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