エイプリルフールの攻防・エンド直後3

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 手の中のペニスが震えて、先端からトロリとした液体が吐き出されてくる。それを手のひらで受け止めながら、勝った、と思ってしまうのは仕方がないと思う。
 昨年一方的にイカされた身としては、同じようにこちらの手に感じて果ててくれたことに、安堵やら嬉しさやらももちろんあるけど。こっちは昨年一度されてるから、それで相手よりちょっと耐性があったのかも知れないけど。
 ただ、勝った、と思った気持ちはどうやら相手に伝わってしまった。
「あー……負け、た」
 キスを中断どころか、握っていたこちらのペニスすら手放してしまった相手は、現在、顔を隠すみたいに項垂れて、こちらの肩口近くに顔を埋めている。
 本当に情けなく項垂れてしまうとは思ってなくて、超楽しい、よりも若干焦った。あと、手の中に吐き出されたものがそのままなのを、どうしていいかもわからない。
「俺が先にイカセたら、笑ってる余裕なんか出せないように、俺をイカせるのに全力出すんじゃなかったの?」
「と思ってたけど、出したらちょっと冷静になった。後お前、別に笑ってないし。早漏野郎とかは思われてなさそう」
 本当に即イキされたら思ったかも知れないけど、さすがにそこまで早くはなかった。こっちだって中断されずにあの勢いで扱かれ続けたら、今頃はとっくに吐き出してたとも思う。
「そりゃ思ってないけど。え、で、この後どうすんの……? まさか自分だけイッてスッキリして終わり?」
「なわけないだろ。でも俺が先にイッたから、お前がイクのはちょっとお預けな」
 そう言いながら覆いかぶさっていた体を離した相手の顔は、先にイカされた情けなさとか悔しさなんかは無さそうで、イッてスッキリしたって方が前面に出ていた。
「えっ? それってどういう……」
 顔にはもう出てないけど情けなく項垂れていたのは事実で、負けて悔しいからイカせてやらない、みたいな意地悪をされているのかも。と思って不安になってしまう。
 相手が身を起こしたのを追いかけるように身を起こそうとしたら、それは制されて、キョロっと周りを見回した相手がティッシュの箱に手を伸ばす。
「元々、お前を手でイかせるのが目的で触ろうとしてたわけじゃねぇんだよ。って話」
「ぇえっ??」
 寝転がったまま相手に手だけ取られて、数枚抜き取ったそれで汚れを拭われながらそんな話を聞かされて、やっぱり口から出るのは驚きと疑問混じりの、言葉にならない音だけだった。
「自分がイッてスッキリしたから余計に思うけど、イッた後に尻穴解すより、同時に尻穴弄ったほうが良いんじゃないの?」
 同時に弄ると言われて、相手に勃起ペニスを扱かれながら尻穴に指を突っ込まれる、という状況を想像してしまい、一気に体の熱があがってしまう。
 優しく抱いてって言ったのはこっちだけど、望んでいるのは、好きとか可愛いとか嬉しいとかのリップサービスが欲しいのであって、丁寧な前戯をしてくれとかって話ではなかった。
 優しく抱いてって言われたら、そう思って当然かも。と思う気持ちはあるけど、でも同時に、抱かれるつもりで体を慣らしたって話はしたのに、とも思ってしまう。
「え、っと……その、別に弄……らなくても、いい、んだけど……?」
「は?」
「や、だから、お前に抱かれるつもりで慣らしてた、って」
「待て待て待て」
「なに?」
「え、お前の慣らしてたって、勃起ちんこ今すぐ挿れられるよ、みたいな意味なわけ?」
「た、多分、だいじょぶ、だと思う」
「マジで…………」
 ちょっと引きつるみたいな声と、その後に続く長めの沈黙に、やっぱりやらかしたか、と思う。
「えっと、ドン引き?」
「ドン引きっつうか、え、でも、優しく抱いて欲しいって言ってたのは?」
「や、だから、あれは好きだよっていっぱい言って欲しいな、っていう。その、お前に抱かれたくて準備までしてたの事実だから、そういうのからかわれたりしたら辛いなとか、そんなに抱かれたかったのかよとか、淫乱、とか指摘されたら、さすがにまた泣いちゃうと思うから、う、嘘でもいいから、抱かれる準備頑張ったの褒めて、欲しい」
 相手はこちらの言葉を聞きながら、どんどんとなんとも言えない不機嫌そうな顔になっていたから、こちらの声もどんどんと情けなく小さくなっていく。
「もうエイプリルフールじゃないけど、俺に悪いことしたと思ってるなら、嘘でいいから俺を喜ばせて、よ」
 無理そう? とこわごわ聞けば、相手は大きなため息を吐いた。
「ご、ごめん。無理なら、」
「違うっ」
 手を取られて引っ張り上げるように掛かった力に従って身を起こせば、すぐにぎゅっと抱きしめられる。
「お前にそこまでさせた、そんなことを言わせてる、自分に腹が立ってるだけだ」
 好きになってくれてめちゃくちゃ嬉しいのに、素直に喜べないし罪悪感でいっぱいだと、情けない声に嘆かれて、仕方のないやつだなと思いながら、その背をトントンと撫で叩いた。

続きました→

 
 
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