「たくさん好きって言いながら、優しく抱いてくれればいいよ。って言ってんのに」
そうやって気にして、罪悪感に苛まれてくれてるだけで、なんかもうホント、もういいやって思えてしまう。もちろんそれは、自分たちはちゃんと両想い、っていう前提があってこそではあるけれど。
「お前、もう、ほんっと、お前っ」
「ええ〜」
言葉に詰まっているらしい相手に少しばかり笑ってしまえば、やっと抱きつく腕の力が弱まって、相手ががばりと身を離す。
「お前のそういうとこ、ほんっと、好き」
スッと顔が寄せられて、ちゅっと唇を吸っていくから、嬉しさと安堵とで、うへへとしまりのない笑いが溢れた。
「ただ、俺以外にも甘いの知ってるからマジ不安だし、好きって言ってキスしただけでそんな顔されんのも、ちょっとチョロすぎて色々不安にはなるよな」
そゆとこも可愛くてたまんないけど笑い返されながら、再度唇を吸われて、頭の中に疑問符が飛んだ。
可愛いって言われた最後の部分と柔らかな笑顔につられて流しそうだけど、その前に言われた言葉はなにやら不穏な単語が混ざってた気がする。不安だとか、チョロいとか。
「えと、俺いま、けなされてる?」
「けなしてないだろ。お前が好きでたまんないって言ってる」
「不安って2回も言ってた気がするけど。あと俺がチョロいってバカにした」
「チョロくて可愛いって言ってるだけでバカにはしてない」
「いやチョロくて不安って言ってたろ」
「チョロくて可愛いから不安になるんだっつの。あとバカにはしてないし、可愛いって言ってる」
騙されないぞと思いながら睨んでやったけど、相手はあまり悪びれる様子がない。
「バカにしてないがホントなら、お前はもちょっと言葉選べよ」
「それはごめん。お前に対してひねくれた言動するの、止めなきゃと思ってるし、気をつけてるつもりなんだけどな。それで散々失敗してきてんのに、どうにも拗らせ期間が長過ぎて。ってこれ、みっともない言い訳でしかないな」
ホントごめんと再度謝られて、仕方ないやつだなぁと思いながら、ため息一つで許してやった。こういうとこが、やっぱチョロいって思われるのかもだけど。
「もしかして今、ほんとチョロいってまた思った?」
「まぁ、思ってないとは言わないけど」
「だよな」
「でもお前のそういうとこが好きなのもホントだし、甘すぎて不安になるのもホント。お前がチョロいの、俺にだけならいいのにな」
「なんだそれ」
「お前が俺を好きになってくれたから、独占欲が暴走しそう」
「なんだそれ」
「なんで俺、お前と同じ大学通ってないんだろ」
「俺がお前の通ってる大学に落ちたせいだな。てかお前ホント言葉選べ、って、あぁっ!?」
唐突なひらめきに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「どうした」
「お前、もしかして俺と同じ大学通うつもりで、志望校選んだ?」
「そうだよ。お前と志望校晒し合えるような関係じゃなかったし、結局、第一志望のとこくらいしか探れなかったけど」
「マジ、か」
「お前こそ、俺の本気っつうか、そういう拗らせまくってた気持ち、今更知ってドン引きじゃねぇ?」
ドン引きってよりは、徒労感が強い気もする。お互いかなり無駄な時間を過ごしたんじゃないだろうか。
いやまぁ、彼への気持ちが育ちまくったのは大学入学後だし、高校時代にそれを知って喜べたかは謎だけど。でも本気で好きなら本気で好きって、もっと早く、言ってくれればよかったのにと思う気持ちはやはり止められそうになかった。
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