エイプリルフールの攻防・エンド直後6

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「あと可愛いのもホントだって」
 宥めるみたいに囁かれて、頬の肉をきゅっと引き締めた。だってこれでまたへらっと笑ってしまったら、またチョロいって言われるんだろうなと思って。
「変な顔」
「うっさい。てかホントお前は言葉を選べ」
 そういうとこだぞと思うのは、相手のそういう無粋な指摘にカチンときて、拗れた過去が何度もあるからだ。
「だって、チョロすぎて不安になるとは言ったけど、だからって素直に笑ってくれないのもそれはそれで癪だなって思って」
「わがまま〜」
「そうだな。今のは完全に八つ当たりだった。てか悪い。またいつもの癖出た」
「まぁお前がすぐ謝ってくれるのは、かなりの進歩って気はしてる」
 それに、悪い癖って認識してるなら、直してくれる気もあるのかもだし。
「お前が俺を好きって言ってくれたから、気持ちにかなり余裕が出来た気はしてる。せっかく両想いになれたのに、またお前怒らせて拗れるの絶対嫌だって思うしな。あと実は、変な顔もまぁまぁ可愛かった」
「は?」
「変な顔そのものは可愛かったよ」
「だったら癪だなんて言うなよ」
 平然と繰り返すから、何を言ってるんだこいつはと思ってしまうのは仕方がないと思う。今度はこちらが盛大に呆れた声を出してしまった。
「それはだな、俺がチョロすぎて不安って言ったせいで素直に笑えなくなった、って事実に腹が立つんだよ。つまり、あの苛立ちはお前に向かってんじゃなくて自分に向かってる」
 八つ当たりってのはそういう意味だと言われて、なるほど、とは思ってしまったけど。
「お前がもうちょっとそういうとこ素直だったら、こんな無駄な回り道しなかったかもって思うと、ホント惜しいよな」
「素直っていうか、変な八つ当たりしないように心がけてた時期もなくはない」
「あー……お前と比較的穏やかな距離保ててた時期な」
「でも結局それ以上には近づけなかったし、今更友だちになれるって感じでもなかったし、そもそも友達になりたかったわけでもないしな。だから俺には必要な回り道だったけど、でもお前を苦しめたいわけじゃなかったのもホント」
 てわけで、めいっぱい優しくするから尻穴弄っていい? なんてことを真顔で続けられて、そういやセックス真っ最中なんだったと思い出す。いやまぁ、意識的に相手の手元から視線をそらして、セックス中って事実を極力頭から追い出していたのは事実なんだけど。
 だって相手が持参したローションもゴムも未開封だったから、開封作業を見るのだけでも、なんだか妙に恥ずかしかった。
「い、いい、よ」
「なら下着も脱がすぞ」
 うん、と頷いて、相手が脱がせやすいように腰を浮かせて協力する。さっきまでの扱きあいでこちらも一度下着を摺り下げてペニスを露出していたが、手の汚れを拭かれた後にまたしっかり履いてしまっていたからだ。
 相手もその時に履き直しているので、つまりは自分だけ先に真っ裸という状況がやはり少し恥ずかしい。
「お、お前も脱げよ」
 道連れにしてやりたくてそう訴えれば、相手はあっさりわかったと言って下着を脱ぎ捨てる。
「あれ?」
「なんだよ」
「お前出したばっかなのに、俺より萎えてなくない?」
 思わず自身の股間と相手の股間とを見比べてしまったが、お預けを食らって放置された自身のペニスは既に結構落ち着いていた。なのに相手のは、さすがにギンギンに張り詰めてはいないけれど、未だしっかりと上を向いて勃ち上がっている。
「逆にお前は出しても居ないのに萎えてんな」
「ぁんっっ、ちょっ」
「お、でも反応は早い」
「当たり前、っだ!」
 萎えたペニスを掴まれ軽く扱かれれば、お預けされたペニスがすぐさま再度勃起するのなんて当然過ぎる反応だ。
「じゃあ、後ろも触るな。ゴム、使ったほうがいいんだよな?」
「う、うん」
 さっき自分のは風呂場に置きっぱなしと言ったから、指にゴムを着けて解していたのはわかっているんだろう。薄い膜一枚だけど、直接弄られないのはホッとする。
 でもゴムをまとったその指が目的の場所へ向かって伸びてくると、やっぱり安堵よりも緊張が勝って体が強張ってしまう。
「緊張する?」
「そりゃあ。だって、お尻の穴、だし。ゴム使ってるし、洗ってもある、けど」
 本当に抵抗ないの? と聞いてしまえば、お前の不安ってそれなの? となんだか少し驚かれてしまった。

続きました→

 
 
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