考えたってわかるわけがなかったし、どう行動するのが正解なのかも検討がつかない。そもそも正解なんてものがあるかも疑わしいが。
まいったなと思いながらも、小さく身を丸めながら泣いているらしい相手に手をのばす。優しくされたら誤解するだの、優しくされたいわけじゃないだのなんだの言ってはいたけれど、優しくされたら嬉しくないわけがないなら、優しさを見せることを躊躇うのはなんだか馬鹿らしい。
目の前で泣かれて放っておけるほど無関心でいられるなら、とっくに手を引いている。少なくとも、経験がないと知った段階で抱く気なんて失せているはずだ。洗腸を手伝うなどという真似までして、抱かれたいと訴える相手に応じようとはしないだろう。
「別に泣くなとは言わないけど、落ち着いたら理由、聞かせろよ」
くしゃくしゃっと頭を撫でた後。
「あと、どうせ泣くなら、俺の腕の中で泣きな。せっかく一緒に居るんだから」
ほらこっちと、膝を抱えている腕を引けば、驚いた様子で頭を上げた。赤く潤む目に笑いかけてやって、おいでと声を掛けながらも、こちらから腕を広げて抱きかかえてに行く。
「体勢キツイから体倒すよ」
一応言葉にして伝えながらも、そこそこ強引に抱えた体ごとベッドの上に倒れ込んだ。
「なっ、ちょっ」
慌てた様子ではあるが、痛いなどの声は上がってないので大丈夫だろう。慌てて身を起こそうとする様子もないから、驚きはしても、嫌がったり抵抗したりする気持ちもやはりないんだろう。
体勢を整えるようにもぞりと動いて、改めて相手の頭を胸の中に抱え込んだ。横になったのは、身長差があまりないので身を起こしたままだとなかなかこういった体勢になるのが難しい、というのもある。
「いい子だからこのまま抱っこされとけ。で、放して欲しかったら、まず泣き止んで、それから理由な」
「こんな、の、っ、され、たらっ」
苦しげに吐き出されてくる声ははっきりと泣き声で、続く涙をしゃくりあげるような息遣いからも、膝を抱えていた時より酷く泣いているのがわかる。間違いなく余計に泣かせてしまった。
多少の罪悪感はあるが、慌てる気持ちも驚きもないので、想定内の反応とも言えそうだけれど。
「文句も後で聞いてやる。まず泣き止んでが難しいなら、まずは好きなだけ泣いていい」
「ず、るいっっ」
「またそれか。俺からすりゃお前も相当ズルいからお互い様だな」
泣きながら喋ったら苦しいだろうに。
「いいからほら、少し黙って。泣くのに集中して、まずは泣ききれって」
いい子だからと宥めるように背を軽く叩いてやれば、さすがに諦めたように口を閉ざす。とはいっても、言葉を発するのをやめただけで、泣き声は耳に届いている。
どれくらいそうして抱きしめていただろう。時間とともにその泣き声が落ち着いていき、やがて静かになったけれど、こちらから話を促すことはしなかった。泣きつかれて寝てしまうなら、それでもいいと思っていた。
「起きて、ます?」
やがて囁くような小さな声が聞こえてきた。泣き止んでも話しかけなかったから、逆にこちらが寝落ちたと思ったのかも知れない。
「起きてるよ」
「そ、ですか……」
「がっかりすんなよ。寝てて欲しかった?」
落胆の滲む声に思わず苦笑する。
「泣いた理由、話す気になったなら聞くし、まだ話せないってなら待つつもりだけど、日を改めてくれってなら、このままお前抱っこして眠るのもありだな」
こちらと定期的に会う時間を持つことが一番優先されているなら、気持ちの整理がついたら呼び出せと言っておけば、ちゃんと連絡してくるんじゃないかと思う。
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁