二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった17

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 相手だって最初から抱かれる気で押し掛けてきたはずがなく、どうせ酔ったついでの思いつきで誘っただけなんだろうし、気持ちの整理に時間がかかっても仕方がない。相手の想像した流れにはならなかったようだし、想定外の対応をされて困惑しても居るだろう。
 という気遣いは、どうやら伝わらなかった。
「このまま寝るって、抱かなくて、いいんですか?」
 気にするのそこ!? という驚きに、まだ抱かれたい気持ちでいるのかという驚きが重なって、すぐには言葉が出てこない。
「えと、セックス中断中だから、抱っこされてるわけじゃ……?」
「うん、ごめん。何を言われてるかさっぱりわからない」
「その、だから、このまま抱かないで終わったら、ホテル代も、俺の準備手伝ったのも、無駄になるし、中断する前、何聞いても抱くのやめるとは言わないって言ってたし、だから、腕の中で泣けっていうのも、セックス中断中だから、なんだろうって思ったっていうか、俺が、あなたがセックス楽しむためにしたい事はしていいみたいに言ったから、そんなのされたら俺が余計に泣いちゃうってわかってても、止めてくれなかった、のかと思って」
 どうやら彼の中では、セックスを続けるつもりでいたから抱っこで泣かせた、という認識になっているらしい。
「あーまぁ、確かにここで眠って終わりにしたら、無駄金に無駄手間掛けまくってヤれなかったって話にはなるけど、抱っこで泣かせたのはその方がセックス楽しいとかじゃなくて、目の前で泣かれて放っておけなかったのと、お前が、優しくされて嬉しくないわけないとか言ったせい」
「でも俺、俺が嬉しいかどうかなんて気にしなくていいって、言いました、よ」
「でもその後、自分勝手なセックスがしたいタイプのクズじゃねーぞって、教えたろーが」
「そ、ですけど。あんまり優しいのは困るっていうか、俺きっとまた泣いちゃうし、抱きながら泣かれるのが楽しいとかじゃなければ、止めて欲しい、です」
「俺が、抱いてる相手泣かせるのが好きだ、っつったら、諦めて泣くってこと?」
「諦めて、ではない、ですけど。多分」
 次から次へと、口を開くたびにわけがわからない事を言われている気しかしない。聞きたいのは泣いた原因で、今、優しくされたらまた泣くと言っていたから、そこをもうちょっと詳しく聞きたいとも思うのに。それでも気になりすぎて聞かずに居られなかった。
「諦めてじゃない、ってのは?」
「えー……と、泣いても楽しいって思われるだけで、面倒くさいなとか思われないならいいかなと」
「ああ。なんつうか、お前、ホント……」
 俺のこと好きすぎない、と言い掛けて口を閉じる。違った。好きなのは想像の中で育てた理想の男だった。
 だとしても、相変わらず献身的過ぎだとは思ってしまう。
「ほんと、なんですか?」
「危なっかしい」
 代わりに、彼が泣いている間考えていたことの一つを告げてみた。
「え?」
「嫌われたくないから相手の好きにしていい、なんてのは、俺はかなりの愚行だと思うって話」
「愚行?」
「何してもいいから嫌わないで、みたいなのが透けすぎてて、いっそ怖いっつうの」
「怖い……」
「お前がやってることは相手をつけあがらせるぞ。本当に好き勝手されて、都合よく使われ続けるか、飽きられて捨てられるか、少なくとも相手からの好意は確実に減っていくだろうから、言い換えれば確実に嫌われていく。お前、どこまで先のこと考えて好きにしていいって言ってんの」
「どこまで、って」
「だって相手の好きにさせたらまた誘って貰えるかもってのがお前の狙いだったんだろ。でもお前が一番優先してるの、俺と時々会える時間を持つことで、それって、俺がお前とのセックスを楽しめたら俺と会える時間増えるかもぐらいの感覚じゃないの? 好き勝手させたら、お前の相手しなくなるの早まるかもとか考えて無くない?」
 相手をしなくなるってのは一緒に飲み行ったりも全部含めて、お前に興味なくすって意味だぞと付け加える。彼が告げた色々から考えて、そんな事は望んでなさそうに思えるが確信はない。

続きました→

 
 
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