二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった18

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 彼が泣いている間に色々と考えすぎた。
 二十歳をこえて恋愛経験ほぼゼロらしいのは、実在しないと思っていた理想の男が、ある日突然、年を取った姿で現れたせいだ。一回り以上も年上のおっさんを意識し続けて、恋愛ができるような相手を見つけられないんじゃマズいと考えた可能性はある。
 クズだと聞いて誘う真似をしたのも、やたら献身的に抱かれようとするのも、理想を崩したい思惑があるんじゃないかと思い至った。
 好き勝手させた結果、本気で都合よく利用しようとするなら、理想イメージなんて早々に砕け散って丁度いいと考えたかも知れないし、自分勝手に抱かれるセックスを経験したら早々に飽きられても諦めが付くと思ったかも知れない。
 とはいえ、一番優先されているのが、今後もたまに一緒に飲みに行ったり出来る関係でいたい、という事を考えると、理想を崩したいだとか早く他の相手と恋愛が出来るようになりたい的な欲求があったとしても、そう強いものではないんだろう。一緒に過ごす時間を増やすことで、ゆっくりと自分の中で育てた理想と現実とに折り合いをつけて、初恋にケリを付ける気でいるならそれもいいと思う。
 だから正直に言えば、好き勝手させたら幻滅できそうだとか言われた方が、納得もするし安心もすると思う。献身的なのはわざとなのだと、言って欲しい気持ちがある。
 けれど、危なっかしいと口にした通り、そんな事は全く考えていない可能性だってあった。なんせ彼自身が告げた言葉からは、もっと会える時間が欲しいだけ、という結論にたどり着いてしまうからだ。
「それは、考えてなかった、です」
 ああほらやっぱり。
「けど、好き勝手する気、ないじゃないですか」
「え?」
「つけあがって好き勝手しないし、俺を都合よく利用する気もなければ、飽きてポイ捨てする気もないでしょ? あったら危なっかしいだの言って俺の心配してないで、とっくに好き勝手してますよ」
「それは、そうかもだけど。でも相手が俺じゃなかったらどうなってたか」
「俺が今、相手にしてるのはあなたで、あなた以外に好きにしていいとか言う予定、今の所カケラだってないんですけど」
 腕の中におとなしく収まり続けていた体が身動いで、少し距離を開けたあとで顔をあげる。少し下から見上げてくる顔は不満げと言うよりは、若干怒っているようだった。
「初恋相手に優しく抱かれようって時に、嫌われたくないと思うのなんて当たり前じゃないんですか。しかも相手は凄い年上で、準備の手伝いだって平気でしてくれるくらい色々経験してて、だからそんな相手に、どうしていいかわからないから好きにして下さいって言うは、多分相手への信頼です」
 実際その信頼は裏切られてないから愚行だなんて思わないと言い切られてしまって、どうにも面映い。そしてやっぱり、俺のこと好きすぎだろ、と思ってしまう。恋愛したいわけじゃないと、はっきり言い切られているのに。好きだと言われたら嬉しいより困ると、言われているのに。
 初恋相手というのだって、そのベースになっているのは確かに高校生ぐらいの自分かもしれないけれど、結局は相手が想像で作り上げた理想への想いだとわかっている。それを自分に向けられた想いだなどと、思ってはいけないのに。あまりに真っ直ぐで、勘違いしたくなる。

続きました→

 
 
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