二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった19

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「それに、確かに会える時間増えたらいいな、くらいの気持ちでしたし、好きにしていいって言ったら嫌われてく、とか、飽きられやすい、なんてことは考えたりしませんでしたけど。でも、本当に好き勝手されて都合よく使われ続けるのは別にいいって、思ってると言うか、俺、そう言いませんでした?」
 やはり少し苛立たしげに告げられたそれを、覚えていないわけじゃないけれど。
「聞いた。本気かって確かめて、本気だって言われたのだって忘れたわけじゃないけど、でも、聞いてもわかんないって返した通り、今もなんでそんな風に思えるのかわかんないままだな」
「いや、だから、会える時間が増えたらいいな、って気持ちですけど」
 だってまた一緒に飲んでくれるとは言ったけど、たまにならって言われたし、次がいつかも決まってないし、と拗ねた様子で不満げに続いた言葉に、まぁ確かに明確に次の約束はしなかったなと、飲み屋でのやり取りを思い出す。今回は誕生日プレゼント代わりで奢ったが、じゃあ次回は割り勘となるかというときっとそんなことはなく、どうせ大半こちらが出すことになるのだろうと思ったせいだ。
 当初相手は自分の飲み代を出す気でいたから、次は割り勘なと言えばあっさり了承するだろうし、ケチだから奢りたくないだなんて言えば率先して金を出そうとするだろう事はわかっていたけれど、一回り以上も年下の、しかも従兄弟という間柄なら、こちらが金を出して当然という常識の中で生きている。少なくとも、双方の親や職場の同僚などはなんの疑問も持たないだろうし、逆に、一回り以上も年下の従兄弟と割り勘で安居酒屋を飲み歩くなんて事象は、軽蔑対象だと思う。
 相手に奢られたい気持ちが一切なかったと言うか、年上の従兄弟にたかってやろうという下心が見えなかった上に、純粋にまた一緒に飲み歩きたいと思っているようだったというか、安居酒屋のはしごを一緒に楽しんでくれたように見えたから、ケチのクズという話をした後ではあったが金の話は出さなかった。たまになら奢ってやってもいいな、と思ったのも事実だ。
 もし、夏休みで暇ならじゃあまた次の休みに付き合えよ、とでも言っていたら、ホテルに誘われるなんて展開はなかったのだろうか。だってまさか、そこまで自分と過ごす時間を欲しがっているなんて、思いもしなかった。
「うん、だから、そこは一応わかったつもりだけど。でも全然割に合わないだろっつうか、お前が差し出すものが多すぎだろって言ってんだけど」
「そんなことは、ない、です」
「なんでよ。俺とのセックス、気持ちよくして貰える前提でもなかったよな?」
 未経験者がセックスに夢見ていて、好き勝手抱かれても気持ちよくなれると思っている、とかならまだしも、自分は気持ちよくなくていいみたいな事を言ってもいるのだ。
「気持ちよくなんかならなくても、好きな人が抱いてくれて、その、俺で気持ちよくなってくれたらそれで充分、なんです、よ。そりゃ好きにしていいって言っても、そんな酷いことはされないだろう、とは思ったし、それはやっぱり信頼でしかないんですけど。でもその信頼は裏切られなかったし、それどころか、むしろ一緒に気持ちよくとか、初めてだから優しくとか、そんなのこっちが貰いすぎだし、もし俺のためにしてくれてるなら、割りに合わないのそっちだと思うんですけど」
 楽しくてやってるのか俺のためにやってるのか違いがよくわからなくて、と続いた言葉に、こちらが楽しいならいいという彼の訴えの意味が、少しだけ分かったような気がした。まぁそれがわかったことよりも、もっと根本的なところで、互いの認識が大きくずれてることが判明したことのほうが、どう考えても重要そうだけれど。

続きました→

 
 
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