一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた2

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 待ち合わせ場所にほぼ時間通りに到着すれば、このデートを楽しみにしていたとわかる顔ではなく、はっきりと不安そうな顔をしてこちらを待っていた相手は、めちゃくちゃぎこちない口調で「お久しぶりです」と告げる。
「おう、久しぶり」
「すみません、なんかすごく、緊張しちゃってて」
 早速だけどなんだこの対応、と思いながらも反射的に挨拶を返せば、理由はあっさり相手が教えてくれた。
「あー、緊張、ね。うん、緊張、か……」
 緊張だけって感じにも思えないんだけど。でも、取り敢えずはそういうことにしておこうか。なんて気持ちから、思わず2度ほど繰り返してしまえば、相手は少し焦るような様子を見せる。
「だ、だって、初めてなんですよ」
「え、何が?」
 本気で意味がわからない。だって前回とほぼ同じコースなデート予定なのに。違うのは連れ回す店と連れ込む予定のビジホだけだ。
「何って、デートするのが、です」
 俺に恋人いた事ないの知ってますよね、と不安げに尋ねられて、いやそりゃ知ってるけども、と思う。
「つっても、連れてく店と宿が違うだけで、前回とそう代わり映えしないコースだぞ?」
「けど前回はまだその、こ、恋人、とかってわけじゃなかった、ですし」
 心構えがぜんぜん違う、らしい。
「しかも3週間ぶりだし、なんか夢見てたみたいなとこあって信じられないというか」
「待て待て待て。3週間ぶりになったのはお前が今日まで会おうとしなかったからで、つか夢ってなんだ。まさか、なかったことにしたいわけ? いや待て。長くなりそうだから取り敢えず店行くか。すぐそこだし」
 今日のデートがすんなり行かない可能性はあると思っていたが、会って数分でここまで実感することになるとは思ってなかった。
 ほんと、顔出しも声出しもない動画にしてて良かった。しみじみとそう実感しつつ、不安げなままの相手を連れて最初の店に向かう。
「で、最初に確かめさせて欲しいんだけど、俺とお付き合い続ける気ってまだある?」
 注文を済ませて店員が下がったあと、取り敢えずこれは聞いておかないとと、ど直球に問いかければ、すぐにはっきりと「あります」と返ってきてホッと安堵の息を吐いた。
「夢見てたみたいなとか言い出すから、そこから覆されるのかと思ってヒヤヒヤしたわ。お前を恋人にするのめちゃくちゃ大変だったのに、デート1回すら出来ずに終わるのかと」
「やっぱ本当にこれ、デート、なんですね」
 え、そこから? という驚きとともに、この感じめちゃくちゃ覚えがある、とも思う。そう思ったら、なんだか笑いそうだった。
 さっき自分でも、デートするのが初めてだとか言ってたくせに。ちゃんとこれがデートだってわかってるくせに。でも、今実感しました、みたいな顔をしているこれが演技だとは思わない。
 こちらが彼を恋人と認める発言をして、これをデート扱いしたことで実感した。辺りだろうか。
「お前、この3週間で色々余計なこと考えまくったな?」
「え?」
「デートしよって誘ったんだから、デートに決まってんだろ。てか初デートなのに、また動画撮影がいいっつったの、お前だからね?」
「それは、そう、なんですけど」
「恋人できたら行ってみたいと思ってたデート先とかないの?」
「え……と、あなたとなら、居酒屋めぐりがいい、です」
 多分、かなり考えながら言葉を選んでいる。そう思ってしまうような間を感じた。
 メッセージのやり取りでは感じ取れないものも、こうして眼の前でやり取りすれば隠せない。
「それは俺が男だから? おっさんだから? こんな俺とじゃ、いつか恋人ができたらって夢見てたデートなんて出来っこないって思ってる?」
「ち、違っ、でも、どこ行きたいとか、わかんなくて」
「それ、俺がどこに行きたいかわからない、って意味でいい?」
「え?」
「違った?」
「えー……」
「そこですぐ違うって言えないの、そうですって言ってんのとほぼ同じなんだよなぁ」
 その指摘に次の言葉を発せず、小さく口を開けたり閉じたりしている様が可愛くて、やはり笑いを堪えるのが大変だった。

続きました→

 
 
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