3章 不眠の原因
【朝の寝室】
修司はベッドの上であぐらをかき話を聞く体勢を取る。
その正面に正座すれば一瞬戸惑う様子を見せた。 
しかし正座に言及されることはなかった。
修司:ねぇ、なんでいるの?
ケイ:修司さんが起きるの、待ってました
修司:それって大丈夫なの?
ケイ:大丈夫っていうのは?
修司:契約違反と言うか、業務違反?
  :契約通りに帰らないってのは、怒られるやつじゃない?
ケイ:まぁ、そうですね 
  :知られたら怒られますね
修司:あ、俺が先輩に黙ってればいいってことか?
ケイ:内緒にしてくれるんです?
修司:先輩には悪いけど、仕方ないだろ 
  :これでケイくんの立場悪くなって、来て貰えなくなると困る
ケイ:優しいんだ
修司:こういうのは優しいって言わないよ
ケイ:じゃあなんて?
修司:利害の一致、とか?
ケイ:なるほど
  :(俺が来れないのは困る、ってくらい必要とされてるんだよなぁ)
修司:で、何か理由があるんだよね?
ケイ:はい 
  :でもこれも、本当はやっちゃダメな奴で
修司:今更だろ 
  :いいよ、言ってみて
ケイ:その、もっと知りたいんですよ 
  :修司さんのこと
修司:えっと…… 
  :それも業務違反なの? 
  :客のことを知っておこうっていうのはキャストとして当然じゃないの?
ケイ:相手が話したいのを聞くのは仕事だけど 
  :でも、修司さんは違うというか
  :俺に自分のこと聞いて欲しいわけじゃないでしょ? 
  :それをこっちから、教えてってやるのは多分、ダメです
修司:ああ、まぁ 
  :それはわからなくはないな
ケイ:添い寝屋キャストとして失格というか
  :こんなの、他の子には絶対やらない自信があるのに…… 
  :でも、修司さんが……
修司:俺が? 
  :何かしちゃった?
ケイ:いえ、むしろ何もなさすぎなのが原因ですかね
修司:何もなさすぎ……?
ケイ:結構リピートしてくれてるのに、俺、修司さんのこと何も知らない
  :シュンさんが可愛がってた後輩で、何かが理由で酷い不眠で
  :俺の添い寝は効果あり、くらいしか知らないんですよ 
  :だっていつもすぐ寝ちゃうから
修司:俺と先輩の話、聞きたかったりする?
ケイ:それも興味ありますけど
修司:やっぱ、なんで眠れないか、ってのが気になってる?
ケイ:まぁ…… 
  :聞いていいなら、聞きたいです 
  :だってシュンさんは知ってますよね?
  :(あれ?) 
  :(俺、もしかしてシュンさんに張り合ってるのか?)
修司:まぁ先輩には情けない話もしやすかったし
ケイ:情けない話、なんです?
修司:まぁね :簡単に言うと、フラれたの
ケイ:恋人に?
修司:そう
ケイ:(これ、性別どっちなんだろ?)
  :(俺に添い寝されてるってことは相手男?) 
  :えっと、酷い振られ方だった、ってことですよね?
修司:そうだね 
  :先輩が相当怒ってくれた程度には
ケイ:シュンさんが相当怒るレベル…… 
  :(しかもそれ原因で眠れなくなるレベル) 
  :想像つきません
修司:想像ついちゃう方が嫌だよ
ケイ:それを聞かせて貰うことは?
修司は軽く頷いて話し始める。
修司:結構長いこと付き合っててさ
  :結婚とかも考えてたんだけど
ケイ:(あ、相手女性なんだ)
修司:他の男と婚約されちゃったんだよね
ケイ:は?え?婚約? 
  :他の男と?
  :結婚する気があるって、言ってなかったとか?
修司:いや、言ってたよ 
  :そろそろご両親に挨拶にって話もしてた
ケイ:な、なんでそれで、他の人と?
修司:それがさ、俺が知らなかっただけで 
  :俺より長く付き合ってる男がもう一人いたの
ケイ:えっ?えっ?
混乱しきれば自嘲めいた笑みを見せる。
修司:二股かけられてたんだよね 
  :しかも俺が浮気相手だったってオチ
ケイ:あー…… 
  :あああー…… 
  :それは…… 
  :キツい、ですね
修司:わかってもらえて何より
ケイ:それで眠れなくなっちゃいました?
修司:メンタル脆くて情けないだろ?
ケイ:そんなことないですよ! 
  :それほど相手のことを真剣に想ってたってことでしょ?
修司:今となってはどうかなぁ 
  :アイツのおかげでその後も散々だったしね 
  :眠れないのと人間不信で仕事にならなくてさ 
  :薬も軽めのじゃ効かないし眠れるのは副作用キツいし
  :で、結局、休職して引きこもりの完成だよ
ケイ:薬が合わなくて添い寝を?
  :あ、でも、シュンさんが強引に勧めたんですっけ?
修司:いや、最初は自分で頼んだよ 
  :先輩んとこじゃなくて、女の子派遣してくれるとこ
ケイ:え?
修司:ただこれも元カノの残したトラウマなんだろな
  :女の子と一緒のベッド入れなかった 
  :ってのを、先輩に愚痴ったのさ 
  :添い寝試すのすら無理でした〜って
ケイ:あ、それで男の、俺?
修司:そ 
  :先輩が、うちのキャストは男だし優秀だから試せって
ケイ:最初は渋ってたって、聞いてます
修司:まぁ男に添い寝してもらうとか考えたこともなかったし 
  :でもいい加減眠りたかったと言うか 
  :今後の生活かかってたと言うかで 
  :ダメ元で試してみる気になったよね
ケイ:結果、よく眠れたようで良かったです
修司:あれは本当に驚いたな
  :翌朝目が冷めて、時計何度も見直したよ
ははっと笑う声に思わず目を見開いた。
ケイ:今、笑いましたよね!?
修司:あー、うん、笑ったな
ケイ:嬉しい、初めて笑顔見れた
修司:そんなのを喜んでくれるとか、さすが売れっ子
ケイ:売れっ子?
修司:先輩のとこの売れっ子なんだろ? 
  :そんな子をこの頻度で呼んでて申し訳ないよね 
  :先輩が気にするなって言ってくれるから甘えちゃってるけど
ケイ:それはホント気にしなくていいです!
  :これからも気にせず呼んで下さい 
  :約束ですよ!?
修司:はいはい 
  :てか俺がお願いする立場なはずなんだけどな
ケイ:呼んでくれるの嬉しいって何度も言ってるじゃないですか!
  :本気って!
修司:うん、ありがとう
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