「8割もだったか?」
「そっちの認識とは違った? でも正確な割合はともかく、日本の男に包茎が多いって話は、間違いなくいっぱいあったよ」
「それは、まぁ……」
「俺も一緒ってわかったら、少しは安心する?」
「そ、だな」
口ではそう言うものの、やはり浮かない顔をしている。
「どんな状況で見られてトラウマになったのか知らないけど、大きくても小さくても、ズルムケでも被ってても、俺はそんなの気にならないよ。俺が一番気になってるのは、俺の手で気持ちよくなってくれるかどうか、って方だし」
トラウマ絡みで見られるのが怖いと言った相手を、少しでも安心させたくて言葉を重ねた。感じてくれるかが大事、という部分で少し笑ってくれた相手は、そうか、と言って頷いている。
その姿に、良かったと思う気持ちの中で、もう少し話を聞いてみたい気持ちが揺れた。
ニートの原因については未だ詳しく聞いていない。時期が高校時代だったことは知っているが、どんな風に人間関係がこじれたのかは知らない。でもさっき、人にペニスを見られたことが原因の一つになっていると言っていた。
どんな状況で見られたのか、相手とはどんな関係なのか。原因の一つということは別の原因もあるはずで、この件はどれくらいの比重を占めているのか。
気になることは色々あって、相手の様子を探ってしまう。
思いの外サラッと教えられてしまったが、彼の過去に関しては今までも、何気ない会話の中でサラリと告げられることが多かった。だから余計に、それ以上を聞いていいのか迷うと言うか、もしかしたら、それ以上を聞く隙がない状況を選んで告げられているのかも知れない。
今回だって、せっかく触ってもいいよと言ってくれているこの状況で、蒸し返してまで余計なことは聞かないほうがいいと思う気持ちは強い。それでも、さっき聞いたトラウマ話は、気持ちが落ち着けば落ち着くほどに、やっぱりちょっと聞き捨てならないと思ってしまうのだ。
だって恋愛未経験の童貞だって言ってたのに。それってようするに、好きでも恋人でもない相手と、ペニスを見られるような何かがあったって事じゃないのか。
「あ、のさ」
とうとう口を開いてしまった。
「どうした?」
「さっきのトラウマの話、なんだけど」
話を振って相手の様子を確かめる。これで相手が身構えたら、こちらが引こうと思っていた。
「気になる?」
「そりゃあ」
平然と聞かれて、どうやら引く必要はないらしい。
「てか、どこまで聞いていいのかわかんないから、言えないことは無理って言ってくれていいんだけど、聞いても、いい?」
「いいよ。多分、お前になら話せること、増えてると思うし」
「そうなの?」
「そうだよ」
隣りに座ってこちらに体を向けていた相手が、ゆるっと抱きついてくるのを抱きとめる。ハグやキスの頻度は多いので、別に慌てるようなことはないが、でも、ただ抱きつかれているだけだと色々迷う。
相手の言葉を待ったほうがいいのか、それとも、この体勢でトラウマ話に踏み込めってことなのか。ついでに言えば、なんで話せることが増えたのかだって、かなり気になっている。
このまま相手が何も言わずに居るなら、やっぱり最初は、トラウマ話から聞いていった方がいいだろうか。と思った矢先に、顔の横で相手が語りだした。
「お前が俺を大好きで、信頼してくれてて、俺が色々抱えてるっぽいのをわかってて、でも急かさず待っててくれるから、だよ」
「え?」
「お前になら、見られても触られても平気かもって思えたのも、お前になら、何があったか話しておいた方がいいかもって思ったのも、お前になら、俺が抱かれる側でもいいかなって思えるのも、」
「ちょっと!」
思わず相手の言葉を遮ってしまったが、相手の言葉のどこに反応したのか、相手もわかっているんだろう。
腕の中の体が楽しそうに小さく揺れている。
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