親友の兄貴がヤバイ9

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 一度体を起こして、二人一緒にベッドの中に潜り込む。前回相手がそう促したから、自分もそうしただけという話で、本当は部屋の明かりの下に全てを曝け出させたい気持ちもあるのだけれど、それは追々、相手の様子を伺いながらにしようと思う。嫌だという拒否の言葉を聞くのはなるべく避けたい。彼に対してはどうにも気持ちが弱くなる。
 前回ホテルで教わった通り、好きという気持ちを込めてちゅっちゅと軽いキスを繰り返す。もっとなどと言われる前に自分から何度も唇を触れさせながら、手だって動かし、相手の体の線をホテル備え付けの簡易な寝間着の上からゆるゆるとなぞる。
 抱いていいという許可を、直前にはっきりと貰った上で触れているのだから、不安で触れられないわけじゃない。がっつきたい気持ちが無いわけでもない。でもなんだか勿体なくて、性急に剥きあげて直接その肌に触れて撫で回したり、キスを落として吸い付き舐め回したいとは思わなかった。
 相手は時折目を開けて、少し困った様子でへにゃへにゃ口元を歪ませることがあるものの、結局何も言わずに、軽く触れるだけのキスも、酷くゆるやかにしか刺激を与えないその手も、受け入れている。
 そういえば前回も、ぎこちないこちらを急かすような言葉を吐くことはなかった。ただ今回以上に躊躇うこちらを気遣って、何度も繰り返しキスをねだられた。それとあの時は、目もほぼずっと開かれていたなと思う。
 でも顔は、あの時とそう差異がない。自分だって緊張はしていてきっと怒ったような顔になっているだろうから、緊張で口元が歪んでしまうだけのそれを、拙い自分を笑われているなどと思うことはないけれど。
 ああでも、こんな顔を見せていたのは、勃起ペニスに触れた後だった気もする。記憶の中にあるこの顔は、もっと熱に浮ついた色を乗せて、荒い息を吐いていた。
 あの顔をオカズに何度も抜いたなんて事実を告げるつもりはないが、思い出してしまったせいで腰が重くなる。自分の性器がゆるく勃ち上がっているのを自覚した。
 さすがに気持ちが急いて、簡易寝間着の上からさらりと触れて確かめた相手の股間も、既に随分と形を変えていたからホッとする。
「ぁ、っ……」
 小さく溢れた声を合図に口内へ舌を差し込んだ。寝間着をはだけて直接肌へも触れていく。
「ん、んぅっ」
 指先に触れた胸の先の小さな尖りを捏ね回していたら、抗議するような呻きが漏れて慌てて手を離した。
「すみません。痛かった、ですか?」
 口の中を探るようなキスも中断して、相手の様子を伺う。相手は恥ずかしさと戸惑いとを混ぜながら、逃げるように目を伏せている。
「痛くは、ない。ゴメン、気にしないで続けてくれて、いい」
「じゃあ、気持ちよかった、とか? 胸、感じますか?」
「わ、っかんない、よ。胸なんて、自分で弄らないし、誰かに弄られるのも初めて、だし」
 初めてと言う言葉に胸が高鳴る。嬉しくなる。
 彼の体を弄り回す積極的な恋人は居なかったということなのだろうか。男の恋人が居たことはなく、アナルが処女であることも聞いてはいたが、女の子だって好きな相手の体には触れたいと思うものだと、当たり前のように思っていたのだけれど。
 口での愛撫は普通だとか、次回は口の中で射精してくれるだとか、それなら飲んでもいいだとか言っていたから、若干潔癖気味でもそれなりに色々とするのもされるのも経験済みだと思っていた。それともペニスへの愛撫と、胸への愛撫は、女性からするとまったく別のものなのだろうか。
 男の胸だって性感帯の一つだなんてことは当たり前の知識だと思っていたけれど、なんせ初恋を自覚して以降、未成年でも情報を探りやすいネットを使って、ゲイ関連サイトを色々と読み漁ってしまったせいで、男女のセックスの当たり前が良くわからない。
「あの、それなら、舐めてみても、いいですか?」
 もちろん最初から、口を使った胸への愛撫だってするつもりでいた。でもまだ一度も、口以外の場所へ唇を落としたことがない段階で、その場所だけを舐めたいなんて言う気はなかったのに。
「えっ?」
「誰にも弄られたことがないなら、舐めたり吸われたりしたこともないんですよね?」
「したい、の?」
「したいです。というか、あなたが抱く側の時、そういうのしなかったんですか?」
「した、けど。でも、女の子のおっぱいと、俺の真っ平らな胸じゃ、なにもかも違う、だろ」
「俺が、性愛対象が男だけのゲイだって、あいつに聞いて知ってますよね? 女子の胸に魅力を感じたことなんてないですから、女子の胸なら舐めたくなるなんて気持ちはさっぱりわかりません」
「そ、そっか。そうだよ、な」
「それに男とか女とか、多分あんまり関係ないです。色々経験済みの年上の恋人が、経験したことがないなんて言ってること、試さずにいれますかって話ですよ」
 観念したように、わかったいいよの言葉が吐き出される口に再度ちゅっとキスを贈ってから、もぞもぞと頭を下げて、相手の胸の先にまずはそっと唇を押し当てた。

続きました→

 
 
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