酔った弟に乗られた話4(終)

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「は、はいったぁ」
 へにょっと嬉しげに笑う顔に、こちらも安堵の息を吐く。
「うへへ」
 ちんぽかたぁい、などとヘラヘラ笑う顔に興奮が煽られる。痛いと泣かれて若干萎えていたペニスが、硬度と質量を増していくのがわかる。
「俺んなか、気持ちぃ?」
 気持ちぃよと返せばやっぱり嬉しそうにフニャフニャと笑ってから、深呼吸を一つ。それから意を決したように、ゆっくり腰を持ち上げていく。
「んんんっっ」
「おいっ、痛いなら無理すんなよ」
「へー、き」
 痛くないよーと間延びした声で返しながら、今度はゆっくりと腰を落としてくる。
 そうして何度か往復するのを若干ハラハラと見守っていたけれど、確かに、痛いと漏らすこともなければ、痛そうに呻くこともなかった。
 ならいいかと、こちらも与えられる快楽に気持ちを集中させる。今度こそこのままイッても良いはずだ。
「はぁ……」
 自身の口からこぼれる息が熱い。
「気持ちぃ?」
「ん、いい」
 再度聞かれて頷けば、良かったぁとはっきりいわれた後で、だんだん腰を上下させるスピードがあがっていく。
「もっと、もっと、俺で、きもちくなってぇ」
「ぁっ、……ぅんっ……」
 必死で頷き快感を追った。
 多分弟自身はこの行為で快感を得られているわけじゃなく、痛みはなくともそこそこ苦しさが伴っているんだろうとは思う。こちらを見下ろし嬉しそうに笑うことはあるが、基本、息遣いにも表情にも甘さはほとんどない。気持ちよさそうに蕩ける様子はないし、開かれた股間で揺れる弟のペニスはとっくに硬さを失い垂れている。
 こっちに主導権があれば、一緒に気持ちよくなれただろうか。
 自分ばかりが気持ちいい現状に申し訳ないような残念なような気持ちはあるが、でもそれを今、どうこうしようとするのは無駄だ。というか無理だ。だったら、さっさと気持ちよく果ててしまう方がいい。
 少なくとも、こちらがイッたら弟も一度動きを止めるだろう。口でしてやれるかはわからないが、手でなら自分だって弟のペニスを握って扱いてやれるはずだから、とりあえず一度終わらせてから弟のことも気持ちよくしてやればいいかと思う。
「ぁ、あっ、も、いきそぉ」
「ん、イッて、イッて、あああっっ」
 ますます激しく上下される腰に合わせて、こちらも少しばかり下から突き上げてしまったけれど。辛そうな声を上げさせてしまったけれど。
「出るっ」
 その宣言に合わせてぎゅっと落とした腰を押し付けてきた弟の中に、すべての熱を吐き出した。
「はぁ、あにきのちんぽ、ドクドクしてるぅ」
 やたら満たされた顔で、お腹ン中あつぅい、などと言っているが、それを聞いてザッと血の気が引いていく。良かったなと悠長に思えないのは、コンドームというものの存在をすっかり失念していたせいだ。
 つまりは、弟に中出しした、という事実を今更認識して焦っていた。
「ちょ、おまっ、中出しなんかして大丈夫なのか?」
 確か腹を壊すんじゃなかっただろうか。けれど弟にはピンときてないらしい。
「え〜めっちゃ嬉しいけど」
 兄貴に種付けしてもらったぁ、などとヘラヘラ笑われて、これでは埒が明かないと思う。
「お前ちょっと一回降りろ」
「え〜」
「えーじゃない。早めに掻き出した方が絶対いいだろ」
 ほら早く尻を上げろと、下からペチペチと尻を叩いてやれば、不満そうにしながらも腰を上げて繋がりを解いていく。
「あ、出ちゃう」
「ばか。出ちゃうじゃなくて出すんだよ」
 尻の中から垂れてくる白濁を押し止めるためか、股の間に差し込まれた弟の手を取り引き剥がした。
「あ、あっ、出ちゃう〜汚しちゃう〜」
 足の間からたらりと垂れたものがラグを汚すが、そんなことに構っていられない。
「いいからそのまま全部出せ。つか指突っ込んで掻き出すか?」
「やだぁ。もったいない〜」
「もったいないじゃないだろ。てか腹壊すんじゃないのかよ」
「お腹べつに痛くないよ?」
「後でそうなるかもって話だろ」
 などと言い合っているうちに、どうやら重力に従い全て流れ出たようだ。しばらく待ってこれ以上垂れてこないのを確認してから、やっと掴んでいた弟の手を放した。
 とりあえず早急にラグの汚れを落とした方がいいだろう。放置した結果の買い替えなどは絶対避けたい。
 そしてこちらの意識がラグに向かっている間に、弟はあっさり寝落ちしていた。
 まぁ掃除を手伝わせなかった時点で、この結果は見えてたけども。というよりも、既に半分寝かけていて、手伝えと言えなかったが正しい。
「あー、もう、気持ちよさそうに寝やがって」
 横向きに寝ていたので、一応確認しておくかと尻肉を割って弟のアナルを晒した。赤く腫れぼったくなってはいるが、傷がついている様子はない。流れ出た白濁にも赤色は混じってなかったから、多分、中を傷つけたりもしていないはずだ。
 ホッと安堵の息を吐いてから、脱ぎ散らかしたボトムスをどうにか履かせてやり、その後一度リビングを出て弟の部屋に掛布を取りに行く。逆ならどうかわからないが、抱き上げて運ぶなんて選択肢はないし、叩き起こすのも躊躇われる。かといってあのままリビングに放置というわけにもいかないだろう。
 寒い時期ではないけどせめて何かかけてやりたい。
 ベッドの上には、弟が使ったのだろうローションのボトルが転がっていて、近くにはコンドームの箱もある。
「あいつ……」
 襲いに来るならこれも持参してこいよとため息を吐きだしたが、後の祭りもいいところだ。
 色々溜め込んでたのが飲みすぎて爆発したって感じだったし、弟もそこまで頭がまわってなかった……いや、あの中出しの喜びっぷりを考えたら、わざとって可能性もた高そうか。
 弟の気持ちを察しながらも放置していたこちらにも多少の責任はあるだろうし、こちらも反省する点は多々有りそうだけれど、とりあえず、明日起きたら一言言ってやらないと、と思う。とても一言で済みそうにはないけども。

<終>

とりあえず前夜にどんなことがあったのかを兄視点で書いてみました。
弟、かなり記憶飛ばしてますね。笑。
酒無し&兄が主導権握ったセックスも、気にはなってます。いつかまた機会があれば。

 
 
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酔った弟に乗られた話3

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 2個下の弟が同じ大学に通うことが決まり、親の負担を少しでも減らす目的で同居生活を始めておよそ2年半。弟の中にいつから自分へ向かう気持ちがあったのかは知らないが、弟が同じ大学を受験したということが、もう、そういうことなんだろうとは思っていたから、少なくとも2年半以上は気持ちを抱えたまま黙って一緒に暮らしていたことになる。
 こんな好都合としか言えない二人暮らし中、もし抱きたいという欲求だったなら、もっと早く口に出すなり態度で見せるなりしてたんじゃないだろうか。
 なるほど。なんて内心の分析をよそに、弟は着々と勃起ペニスに向かって腰を落としていく。
 部屋でたっぷりローションを仕込んできたというのは本当らしく、尻の間にペニスの先端が擦れただけで、そこが濡れて滑っていることがわかってしまった。
「はぁ……」
 やがて先端が尻の穴に導かれて、弟がうっとりと熱い息を吐く。その姿にペニスの硬度と質量がわずかに増すくらいには、なんとも色っぽかったのだけど。
 そんなうっとりとした表情は一瞬だけで、すぐに眉間にシワを寄せた苦悩顔になってしまった。
「ううっ……」
「おい、やっぱ無理なんじゃ」
「んーん、へーき」
 いや平気じゃないだろとは思うものの、弟の尻穴の中にゆっくりとペニスが飲み込まれているのも事実ではある。
 キツキツではあるが痛いほどではなく、仕込まれたローションの滑りは間違いなく気持ちがいい。苦しげな姿に若干萎えてはいるものの、しっかり硬度を保っている程度には、間違いなく期待していた。
「いたい〜」
 そんな泣き言と共にとうとうグスッと鼻を鳴らしたのは、3分の2ほど飲み込んだあたりだろうか。
「やめる?」
 辛そうな姿を見せられてもやめさせずにいたくらいには期待しているが、さすがに泣かれてまで頑張れとは言いにくい。
「やだぁ」
「なら代わる?」
 何を言われたかわかってないらしい弟に、一度抜いてくれたら俺が抱くけどと言ってみた。
 自分より体格が良い相手に腰を跨がれて乗られていては、こちらからどうこうするのは絶対に無理だ。この体勢をクルッとひっくり返してやれる筋力も技量もないのだから、下手に動いたら抵抗してると思われる可能性のが高い。
 こちらは極力動かず好きにさせるのが、一番相手を傷つけずに済むだろうと思っていたが、もし主導権を明け渡して貰えるなら、こんなに苦しそうな顔をさせずとも望みを叶えてやれそうなのに。
 しかしそこまで言っても、いまいち理解してなさそうな顔は変わらない。
「んー……抜きたくない、し、もちょっとだから」
 どうやら、一度抜いてと言った「抜いて」部分しか届かなかったらしい。
 酒のせいか、必死過ぎるのか。多分そのどちらもだし、もしかしたら相乗効果で、ただでさえ若干脳筋気味なのに、いっそう思考が滞って一途で頑固になっている可能性もある。
「ダイジョブ」
 そう言ってさらに腰をジリジリと落とそうとするくせに、やはり痛みがあるのか、苦しそうに浅い息を繰り返す。
「わかったから一旦落ち着け」
 体を起こしている弟の頭には手が届かないので、代わりに尻を支えるように両手を回して、なだめるみたいに優しく撫でてやる。
「ぁ……」
「痛いのにねじ込もうとすんなよ。痛くなくなるまでじっとしてろ」
「でもぉ」
 ちんぽおっきいうちに早く挿れないと、などと言われて、萎えるならとっくに萎えてるはずだろと言い返す。
「大丈夫だから。深呼吸して。落ち着いたら力の抜き方も思い出すだろ」
 ほら息吸って、と促せば、素直に息を吸っていく。
「はい吐いて」
 そうやって呼吸を促しながら、手の中の尻肉を撫で揉んだ。
「ぁっ……んっ……」
 やがて甘やかな吐息が溢れてくるのに合わせて、呼吸の声かけをやめてしばらく様子を伺ってみる。痛みで強張っていた尻肉も、しつこく撫で揉むうちに柔らかにほぐれ、甘い息を吐くたびに小さく震えていた。
 そろそろいいかと谷の合間に穴の縁ギリギリまで親指以外を潜り込ませながら、尻肉をぐっと掴み穴ごと広げるイメージで左右に押し開く。
「ゃぁんっ、な、なにっ?」
 ビクッと体を跳ねさせて戸惑うものの、声の甘さは変わっていないので大丈夫だろう。
「も、痛くないんだろ? 穴、広げててやるから降りといで」
 言いながら、掴んだ尻肉を下方に引き下げるように力を掛ければ、何をしろと言われたか察した様子で弟も腰を落としてくる。
「あああっっ」
 快感の声とは言い難いものの、苦痛とは違った様子の声を上げながら、先程までより断然スムーズに残りも全て熱に包まれた。

続きました→

 
 
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酔った弟に乗られた話2

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 拙いキスと股間ばかりを撫でさする手に、慣れてなさを感じてなんだか嬉しい。
 過去に恋人がいた様子はなかったから、当然という気もするけど。もしこれで妙に慣れた様子を見せられていたら、きっと焦ったり疑ったりしてしまうから、この予想通りとも言えるぎこちなさに安心していた。
 ただ、安心はするけど興奮が煽られるかというと、そこはやっぱり微妙ではある。もちろん、それを正直に言えるわけではないんだけど。
「あんま、きもちくない?」
「そんなことないけど」
「でも」
「酒のせいだろ。俺も結構飲んでるからだって」
「俺に触られるの、イヤじゃない?」
「嫌だったら触らせてない」
「そか……」
 本当に気持ちいいよと言いながら、ほんのりしょぼくれた弟の頭を優しく撫でる。気持ちがいいのは事実で、ただただ気持ちが良いだけ、って部分を言わないだけだから嘘じゃない。酒のせい、ってのも多分ある程度は事実で嘘じゃない。
 興奮が足りないんだよね、とか言ったところで何が出来るのか。何をされるのか。わからないことに踏み込むより、このままじわじわとした気持ちよさに揺蕩っていたかった。
 でも弟はどうやらそうじゃない。こちらの反応の薄さに明らかに焦れていた。
「舐めても、いい?」
「ん?」
「アニキのこれ、舐めたい」
 手の中のペニスをきゅっと握りながら、熱い視線が許可を求めて見つめてくるから困る。
 マジか、と思う気持ちと、そういうのも込みか、と納得する気持ちが、胸の中で交錯した。
「あ……っ」
 弟が小さな声を漏らす。こちらの股間を握っているのだから、気づくのは当然なんだけど。
 つまり、いいよと言うより先に、反応したのは股間の方だった。弟の大きな口に包まれる想像に、あっさり興奮したせいだ。
「いい? よね?」
「ああ」
 再度許可を求められて素直に頷けば、いそいそと下着ごとボトムスを抜き取られ、顕になった下半身に弟の頭が落ちていく。
「んっ……」
 気持ちの良さに鼻から息が抜けて、弟が微かに笑うのがわかった。はっきりと反応があって嬉しいんだろう。
 やっぱり慣れてはなさそうで、じれったい刺激ではあったけれど、でも間違いなく先程よりも興奮が煽られた。今度はしっかりとペニスに芯が通って勃ち上がっていく。
「勃った」
 ガチガチと嬉しそうに笑われて、満足そうで良かったとは思うものの、いやこれここで放置されんの? と思ってしまうのも仕方がないと思う。口の中でイカセてとまでは言わないが、ちゃんと反応してるんだからもうちょっと続けて欲しかったというか、つまるところ最後は手でもいいけどこっちがイクとこまで頑張って欲しかった。
 というかここで一旦放されるってことは、こっちを好きに弄り回してイカせれば満足。というわけではないらしいってことだ。
「で、このあと、どーすんの?」
 弟の股間はずっとけっこうな膨らみを保っているから、こちらにそれを握らせて、互いに互いの勃起ペニスを扱きあおうとでも言うんだろうか。
 なんて思っていたのに、弟の口からは全く想像もつかない言葉が飛び出てきた。
「んー、……乗る?」
「は?」
「あにきのちんぽ勃ったら、俺のお尻で気持ちよくしてあげたいなって」
「は? え?」
「挿れていいでしょ?」
 兄貴は痛くないからいいよねと言われて、絶対痛くしないってそういう意味かとやっと理解が追いついてくる。
「まじ、か……」
 さすがに驚きすぎて声に出た。
「つかそんなすんなり入るもんじゃないだろ」
「慣らしてきたからダイジョブ。多分」
「おまっ、トイレ長いと思ったら、そんなことしてたわけ!?」
「トイレで中洗ってるし、部屋でローションたっぷりいれてきたから、たぶん、ちゃんと気持ちくできると思う」
 だからいいでしょと言われて言葉に詰まっているうちに、弟もあっさり自身のボトムスを下着ごと脱ぎ去ってしまう。それどころか、素早くこちらの腰を跨いでくる。
 弟の体格で腰をまたがれたら正直そこでもう詰みだった。いやまぁ、マジかと驚く気持ちはあるものの、抵抗する気自体はあまりないので構わないんだけど。
 それに妙に納得している部分もあった。抱きたいのではなく抱かれたい、というのが弟の本音だったなら、あれだけ気持ちをダダ漏れにさせながらも手を出してこなかった事にも頷けてしまうのだ。

続きました→

 
 
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酔った弟に乗られた話1

酔った勢いで兄に乗ってしまった話の兄視点です。兄×弟(騎乗位)。

 トイレと言ってリビングを出ていった弟が戻ってこない。ということに意識が向いたのは、弟が消えてから既に結構な時間が経ってからだった。
 なんとなくで点けっぱなしになっているテレビをぼんやりと見続けてしまったせいだ。
 自分もそれなりに酔っている自覚はある。
 もしかしてトイレで潰れているのだろうか。今日は二人して気分良く飲みまくってしまったから、その可能性は高い。
 様子を見に行ったほうが良さそうだと腰を浮かしかけたその時、リビングのドアが開いて弟が戻ってきた。
「大丈夫か?」
 ちょうど様子を見に行こうと思ってたとこだと告げれば、弟は曖昧に頷いて見せる。やはり相当酔っているのか、どこかぼんやりとしているし顔も赤い。
「大丈夫じゃなさそうだな。簡単な片付けは俺がやっとくから、お前もう、自分の部屋行っていいぞ」
「やだ」
「やだじゃなくて。お前にこれ以上飲ませられないって」
「飲まなくていいよ。けどもっと兄貴と一緒にいたい」
「なんだよ甘ったれモードなの?」
 酔って自制が効いてないのか、ずいぶん素直にもっと一緒にいたいなんて言われたら、どうしたって嬉しい。
 くすっと笑って、じゃあおいでと隣のスペースをペシペシ叩いた。さきほどまでは向かい合って座っていたのだから、どうやら酔って自制が効いてないのはお互い様だ。
 まぁ酒のせいってことでいいかと、嬉しそうな顔でそそくさとやってきて隣に腰を落とす弟を、こちらもニコニコと迎えいれる。
「酒はまじでナシな」
「ん、わかってる」
「お茶か水飲むか? 取ってきてやろうか?」
「いらない。それよりさ」
 じっとこちらを見つめる視線に気づいて振り向けば、熱に浮かされたみたいな、少し潤んだ瞳とかちあった。酒のせいで全体的に赤みを増した顔に潤んだ瞳で見つめられて、ドキリと心臓が跳ねる。
 あ、ヤバいかも。
 頭の片隅でそんなことを考えるも、既にあとの祭りだった。
「おれが欲しいの、兄貴、なんだけど」
 そんな言葉が耳に届くと同時に、体はラグの上に押し倒されていた。
「や、ちょ、欲しいとか言われても……」
 やばいやばいと心臓が跳ねまくって、酔いがいっきに冷めていく。しかし幾分冷静になったところで、この場を逃げ出せるわけじゃない。
 そもそも酔ってなくたって、自分より背も高く体格もいいこの弟に押し倒されたら、その時点で詰みでしかないんだけど。
 いつかこんな日が来るかも、という予想はあったのに、油断しすぎていた。
「兄貴が痛いようなことは絶対しない、から」
 どうしようと焦るこちらに何を思ったのか、弟が泣きそうな顔で見下ろしてくる。その顔に、緊張で固まっていた体から力を抜いた。
 いつかこんな日が来るかも、と思う程度には弟の気持ちは日々ダダ漏れだったのに、酔わなきゃ言い出せない程度には自制できてたわけだし、酔って口に出してしまうくらいには追い詰められても居るんだろう。
 だったら酒のせいってことにして、ちょっとくらいなら応じてしまってもいいんじゃないか。絶対痛くしないって言い切るってことは、尻の穴に突っ込もうとまでは考えてないのだろうし。
「あにき……?」
 力を抜いたのが不思議だったのか、不安げに呼びかけられて、じっと弟の目を見つめ返す。
「ホントだな?」
「う、うん?」
 頷くものの語尾に疑問符が見えてしまったので、再度確認するように言葉を重ねる。
「痛いの、絶対ナシだからな」
「うん!」
 勢いよく頷く弟の顔は嬉しそうに綻んでいて、思わず伸ばした手でその頭をくしゃくしゃっと撫でてしまう。
「大好き」
 ますます嬉しそうに笑った弟から、ほろりと溢れてきた好きには、胸の中が暖かくなる。言われて嬉しく思ってしまうくらいには、自分も、いつかこうなる日を待ち望んでいたのかもしれない。
「俺も好きだよ、お前のこと」
「じゃ、じゃあ、ちゅー、していぃ?」
 緊張気味に聞かれて思わず笑ってしまえば、嬉しげだった顔があっさり曇ってしまうから、ますます笑いながら弟へ向かって両手を伸ばした。
「いーよ」
 言いながら、掴んだ肩を引き寄せるようにして、自分からも顔を寄せていく。

続きました→

 
 
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バレたら終わりと思ってた(目次)

キャラ名ありません。
彼女が出来たつもりでいた(攻め視点)4話+バレたら終わりと思ってた(受け視点)13話の計17話。
社会人×女装大学生。

「彼女が出来たつもりでいた」は電車通勤で一目惚れしたと言ってきた女性と交際してたら、実は以前痴漢から助けたことがある男子大学生だった。という事実に驚きつつも、別れようとは全く思わなかった社会人男性の話。
続編の「バレたら終わりと思ってた」は受け視点で男とバレたあとの初デートがメインの話です。
一応18禁かなとは思うんですが、描写はかなり控えめ。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写がある話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

彼女が出来たつもりでいた
1話 久々の彼女
2話 女装だった
3話 あのときの男の子
4話 新しく始めよう
バレたら終わりと思ってた
1話 救世主
2話 男バレ
3話 やっぱり女装で
4話 このあとの予定
5話 普通のホテル
6話 女装のままのが(R-18)
7話 やり方を学ぶ
8話 どこに惚れてるか
9話 男の自分に自身がない
10話 無理はしないで欲しい
11話 崩れたメイク(R-18)
12話 狸寝入りの理由
13話 どうか、覚えていて

 
 
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バレたら終わりと思ってた13(終)

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 先に寝落ちしたからか、目覚めるのも先だった。
 結局同じベッドで眠っていたようだけれど、さすがに寝落ちる直前のように抱きしめられたままではなかったので、相手を起こしてしまわないようにそっとベッドを降りる。けれどトイレを済ませるついでに顔を洗ってバスルームを出たら、相手もベッドの上に身を起こしていた。
「おはよう」
「お、はよう、ございます」
「どうしたの?」
「え?」
 朝の挨拶を交わしただけなのに、いったい何を聞かれているのかわからない。
「いやなんか、ぎこちないっていうか、なんだろ、なにか後ろめたいことでもあるような?」
「そ、んなに……?」
 ちょっとギクッとしてしまうのは、相手が寝てる間に着替えもメイクも済ませてしまいたいと思っていたせいだ。
「あー、俺が気にし過ぎて疑心暗鬼になってる部分もあるかも。というか、なにか気になること抱えてるなら、一緒に解決したい。って気持ちが強すぎるのかも?」
 何も無いならいいんだよ。疑り深くてごめんね。なんて謝られてしまったら、自覚があるだけになんだか申し訳ない。
「あ、や、その」
「やっぱ何か抱えてる?」
「えー……と、その、あなたが寝てる間に、支度を済ませちゃいたかったな、って思ってただけ、です」
「支度……ってメイク?」
「そうです。あと着替えも」
 そっか、と言って黙ってしまった相手は、何かを考え込んでいる。
「え、えと、バスルームでメイクしてくるので、ダイジョブ、です」
 ちょっと狭いけど出来ないことはないだろう。ただ普段以上に時間がかかるかもしれない点と、3点ユニットバスなのでトイレを占拠してしまう点が問題かもしれない。
「なのでトイレ使うなら先にどうぞ」
「興味あるな、それ」
「えっ?」
「俺が見てたらダメな感じ?」
「な、なんで!?」
 会話が噛み合わない返答に疑問符を投げれば、もっと意味がわからない応えが返って困惑する。
「君が俺好みの女の子に変身するところを見ておきたい。っていう単純な興味かな。あと、男の子の君とのデートに慣れたら女装は必要なくなるはずだから、今のうちに堪能しておきたいなっていう気持ち」
「女装デート、やっぱ減らしたほうが嬉しいですか?」
「女の子の君とのデートももちろん楽しいけど、男同士のカップルより男女のカップルっぽく見えたほうが世間的には都合がいい場面が多いこともわかってるけど、女の子の格好で出歩くのが心底楽しいってわけじゃないなら必要ないって思ってる。女装に掛かるお金と時間を、もっと別のことに使ってほしいよ。学業とバイトと俺とのデートだけ、みたいな生活じゃなくて、残りの学生生活をもっと楽しんで欲しいというかさ」
 友達とも遊びに行ってほしいけど週末デートは譲りたくないエゴもある、なんて苦笑されて、ちょっとウルッと泣きかけた。
 この人がいなかったら、あの時助けて貰えなかったら、どのみち大学には通えなくなっていた可能性が高いのに。でも助けてもらえて、好きになって、大学をやめて実家に戻るなんて考えられなくなって、必死に日々を送っていたら少しずつ友だちって言えるような関係が増えて、今は大学に通うのも結構楽しくなっている。
 この人が優先順位不動の1位だから、恋人って立場を維持するために、他の何を犠牲にしたって辛いことなんて何も無いって思ってたけど。でも、学生生活をもっと楽しんで欲しいって言われて泣きそうになるほど嬉しいのは、友人の誘いをバイトやデートで断ってしまうのを惜しむ気持ちが少なからずあるせいなんだろう。
「じゃ、じゃあ、あなたのために目一杯可愛くなるので、見てて欲しい、です」
 どうか、覚えていて欲しい。
「うん。しっかり見とく。心に刻むよ」
 その言葉通り、ずっと後ろに立って鏡に映るメイク過程を真剣な目で見続けてくれた。鏡越しにチラチラと目があって、そのたびにほんのり微笑んでくれるのが、ちょっと恥ずかしくて、嬉しい。
「どう、ですか」
 手にした道具を置いて、鏡の中の相手に問いかける。
「うん。凄く、可愛い」
 こっち向いての言葉に振り向けば、優しいキスが降ってきた。

<終>

リクエストは「男バレ後の初デートに女装で来ちゃう受け」「女装するところを見たがる攻め」「男の子のままデートとイチャイチャエッチ」でした。
男の子のままデートの描写は入れられなかったのですが、次週は攻めが買ってくれた服を着てお家デートが確定しているので、彼らのイチャイチャお家デートをぜひ色々と想像してあげてください。

1ヶ月ほどお休みして、7月29日から「酔った勢いで兄に乗ってしまった話」の乗られちゃってる時の兄視点を書く予定です。これは多分1話かせいぜい数話で終わるはずなので、そこから先は短い話を幾つか書けたらいいなと思ってます。

 
 
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