別れた男の弟が気になって仕方がない35

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 結局その目論見は失敗したけど、多分それで良かったんだと思うと言った相手は、ありがとうございますと続けた。更には、初めての相手があなたで良かったとも続ける。
「でもさっき、俺に抱かれたの失敗だったって言ってなかった?」
「失敗したって思ってますよ。なんでこんな事になってんだろって、凄く思ってるし。でもだからって、あなたが教えてくれた色々が帳消しになるわけじゃないですよね。あなたで良かったと思う気持ちも、ちゃんとあります」
 やっぱりまだ子供だなと思うことも多いのに、こうして静かに言葉を重ねる姿は、見た目相応に大人びて感じてしまう。
「そう言って貰えると、少し安心するな。というか、保護者気取りの余計なお節介が、少しでもお前に響いてたなら良かった」
「まぁ、保護者気取るなら保護者のまま終えてればよかったのに、とは思ってますけど」
「お前が俺の名前呼んで好きって言っても、初めてのセックスに気持ち引きずられちゃったなーって流せば良かったって?」
「そういう風には、考えなかったんですか? 気持ちよくセックスしたら、なんだかんだ情が湧くもんだって、そうあなたに言われたら信じてたと思うし、正直、そう言って欲しかったのかも知れないんですけど」
「ビックリしすぎたのと、お前が本当に俺を好きって言ってるのかもと思ったら、それどころじゃなかった。というか、そもそも保護者意識からお前抱いてやったわけじゃないんだけど、そこわかってる?」
 違うんですかというから、違うよと返した。でもそう思われてても仕方がないとも思う。
「誰でもいいから抱いてほしいなんて無茶する子供を放って置けないってのはもちろんあったし、お前が危ない橋を平気で渡って行かないようにとアレコレ話した上に一部実践までしちゃったけど、誰でもいいなら俺でいいよなって思ったのは、お前の中に、人に言えない隠しておきたい想いがあると思ったからだよ」
 性癖教えたろと言えば、思い当たることがあったようで納得顔で頷いている。
「兄の本命を、俺も好きなんだと思ってた、ってやつですか」
「そう。お前頑なに、誰でもいいからすぐにでも抱いてほしい理由、言わなかったからな。好きだった相手と実の兄貴が付き合い始めて、自棄になってるせいかなとか考えてた。そういうの、一時的な慰めってわかってても、優しく甘やかしてやりたくなる」
「ホント、難儀な性癖ですね」
 言われなくてもわかってるとは言わず、苦笑だけ返しておいた。
「ああ、でも、それで思い出した。お前、俺に抱かれたせいで俺を好きになったっての、嘘だろう」
「どういう意味ですか?」
「抱かれる前から好きって思ってたろって意味だけど」
「なんでそう思うんですか?」
「キスする前から、端々に、好きな相手がいるって態度漏れてたから。それどころか、兄貴絡みで片想いしてるってバレバレなことも言ってた、はず」
 だからこそ、まさか自分が対象とは思わず、兄の本命を彼もまた好きだったのだろうと、素直に思い込んでしまった。
「あー……まぁ、これからあなたに抱かれるって決まった時から、あなたを好きになるのわかりきってましたしね。逃れようもなく好きになる相手に、目の前で感染症予防のレクチャーされるとか、あの人の弟だから心配して抱いてくれるんだって思い知らされる感じで、なんかちょっと切なくはなりましたよね」
 責めるような口調ではなかったが、それでもやはり申し訳無さで胸が痛い。今更どうしようもないし、彼の気持ちを知った状態でやり直すことなんて出来はしないのだけど。
「そういやなんで俺に抱かれる気になった? 誰でもいいなら俺でもいいだろ、とは言ったけど、俺じゃない誰かが良かったんだろう?」
 考えてみたらあなたが適任ってわかったからと言っていたような気がするが、それはどういう意味だったんだろう?

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別れた男の弟が気になって仕方がない34

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 そっと頭に手を伸ばして、髪を梳くようにゆっくりと撫でてやる。
 泣くほど辛い話なら、これ以上話さなくてもいいと、そう言ってしまいたい気持ちを飲み込んだ。それは相手を想う優しさというよりは、相手の泣き顔を見るのが辛いという、どちらかといえば自分本意な感情だろう。あれだけしつこく食い下がって話せと訴えたこちらが、せっかく話し始めた相手の覚悟を、砕くような真似をするわけにいかない。
 どんな理由でも受け止めると言ったのだから、彼が全て話し終わるのを、まずは待とうと思った。
 相手は黙って頭を撫でられながら、微かに震える呼吸を繰り返している。なのでこちらも、その呼吸が整うまで、黙って頭を撫で続けてやった。
「す、みません」
「謝らないでよ。俺が無理させてるの、わかってるからさ。でもゴメンね、これ以上話さなくていいとは、言ってやれない」
「わかって、ます」
「うん。ありがとう」
「さっきの、続きですけど」
「もう落ち着いた? 続き、話してくれるの?」
「はい」
 はっきりとした声音に、頭に置いたままだった手を下ろす。
「じゃあ、聞かせて。どんなバチが、当たったと思ったの?」
「あなたのことばっかり考えるようになった、がソレですよ。もっと正確に言うなら、あなたにベッドの上でされたことが忘れられなかった、かもですけど」
 確かに今日、慣らす最初の段階で、あの日のことを思い出しながら自分で弄っていた可能性の高さに気付いていた。でもそれを、バチが当たったせいでと言いながら、肯定されるとは思わなかった。
「たいしたことはされなかった、ってのはわかってるんです。あなたは本気で俺を抱こうなんて思ってなかったし、今にして思えば、俺が恋敵と思ってたあなたに、意地悪されてただけなんでしょう?」
 ドタキャンされて苛ついてた八つ当たりとか、タイミングの悪さも大きく影響しているとは思うのだけど、意地の悪い誘いを掛けて相手を試したことも事実ではある。
「恋敵へ意地悪してた、だけ、ではないけど、な」
 それでもやっぱりこれだけはわかってて欲しくて、だけ、という部分を強調した言い方をすれば、意地悪って意味なら随分と生易しい意地悪でしたもんねと返される。
「でも中途半端に優しい意地悪だったから、今まで俺が目を逸らしてきた事と、向き合う羽目になったんです。男が好きなのか、とか、男に抱かれたい性癖があるのか、とか。それともあなたを好きになったのか、とか。なんかもう色々グチャグチャになって、わけわかんないくらいあれこれ考えましたよ」
 つまりその結論が、誰でもいいから抱いて欲しい、に繋がったんだろうことはなんとなくわかった。
「抱かれることで何が変わると思ってるのかって、聞きましたよね。何をそんなに焦って急ぐのかって」
「聞いたね」
「焦ってたのは、俺の中でのあなたの存在が、どんどん大きくなっていくのが嫌だったからですよ。兄の恋人だった人、というだけで、ほぼ何の接点もない、一度しか会ったことない相手が、自分の中を占めていくって、なんか怖くないですか?」
 それを恋や一目惚れと呼ぶ場合もあるんだろうけれど、残念ながら、そんな発想にはならなかったようだ。あなたのせいであなたに恋をしたらしい、なんて言われながら再会していたら、最初は躊躇うかもしれないが、きっと今と同じようにその想いを受け入れたいと思っただろう。年齢差や付き合っていた相手の弟という部分やらの躊躇いで、多少なりとも揉めるかもしれないが、少なくともここまでややこしいことにはなっていなかったはずだ。
 でも最初から恋したって言ってくれれば良かったのに、なんて軽々しく言えるはずもなかった。
「何が変わるか、何を得られるか、なんてのを考えながら相手探してたわけじゃなくて、とにかくあなた以外の誰かに抱いて貰わなきゃって焦ってたんです。あなたじゃない誰かに抱かれても、その相手とキモチヨクなれたら、その相手の事が気になって、もしかしたら好きになったりするのかもって思ってて、多分、それを確かめたかったんだと思います。あなたのことが気になるのは、あなたに触られたせいだろうって思ってたから。あなただから特別ってわけじゃないって、思いたくて」
 これもあなたが言ったんですけどと、彼は言葉を続けていく。
「エッチが上手い人とやって善い思いしたら、体が気持ち良くなれる相手となら誰でも平気になっちゃう事が多いって。それを狙って意図的に抱かれるような人は稀だって言ってましたけど、多分、その稀なタイプが俺です」
「あー……エッチの上手い人、ってとこには、なんか拘ってたもんな、お前」
 確かに、年齢や体格や性格への希望は薄かったけれど、上手な人を紹介して欲しいとは言われた。抱かれたことがないのは知っていたから、もっと単純に、少しでも上手い人と安心して初体験がしたい程度の意味に捉えていた。

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別れた男の弟が気になって仕方がない33

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 話したくないなら話さなくてもいいという態度を見せずに、本音を晒せと食い下がるこちらに、相手もいい加減観念はしているのかもしれない。誤魔化されてもやらないし、適当な言い分を信じて逃してやる気もないのだと、さすがにもう伝わっているんだろう。
 ただ、どうしてそんなに、とは思うらしい。困惑と諦観を混ぜたようなため息を吐いて、相手は口を開く。
「大概しつこい。あんなにあっさり兄との別れを受け入れたんだから、俺のことも、あっさり諦めてくれるものだとばかり」
「じゃあもういいよ。って言えないとこまで踏み込んじゃった自覚あるから、諦めてやるのは無理だなぁ」
 ここまで来て、そんなに嫌ならもういいやと、差し出した手を引っ込める真似なんて出来るわけがない。素気もなく拒否られ続けているならまだしも、相手の気持ちは揺れまくっているし、押してもダメなら引いてみろという言葉はあるが、引くより押しまくって、取り敢えず恋人という立場を手に入れてしまう方が良さそうな気がしている。
「もし、どうしても言いたくない、俺には教えたくない、これ以上むりやり聞かないで欲しいってなら、そこは取り敢えず諦めてもいいけどな。でも恋人にはなって」
 もっと時間を掛けて、ゆっくり引き出して欲しいならそうしてもいい。
「あと、諦めるのは取り敢えずだし、お前が話してもいいって気持ちになるのを待つってだけの意味だから。それは覚えといて」
 お前相手になぁなぁな付き合いする気はないからと言えば、唖然としてから、やはり不満げな顔になる。
「兄の本命も知らないまま、恋人やってた人のセリフと思えないんですけど」
「半分契約みたいな恋人という名のセックスパートナーと、初の両想いの恋人になる予定のお前とじゃ、扱い違うのは当然だろ。というか、俺が勘違いの思い込み激しいって言ったのお前でしょ。勘違いや思い込みで振り回されたくなかったら、お前だってもうちょっと俺に正直になるべきなんだよ」
 どんな恥ずかしい理由でも、しょうもない理由でも、もし本当にドMだったとしたって、ちゃんと受け止めてあげるよと笑えば、どう考えても茶化してるのはそっちという指摘が入った。ついさっき、お願いだから茶化さないで教えてくれと言ったけれど、確かにあれだって、先にドMという単語を口にしたのはこちらだった。
「ああ、ゴメン。色々雰囲気変えてみて、お前が話しやすいように持って行きたかっただけだったんだけど、お前がそれに乗っかって誤魔化そうとするのは許さない、ってのはオカシイよな。ただ、どんな理由でも、お前のことをちゃんと知りたいって思ってるのは本当だから。俺の方こそ、茶化すみたいな言い方して悪かった」
 言えば、仕方ないですねと言いたげに小さく息を吐く。そうしてから、おもむろに語りだす。
「抱かれることであなたを好きになったとしても、同時に失恋も出来るはずだったんです。あなたのことは兄から話を聞いていただけの頃からなんとなく気になってましたけど、兄の恋人なんて恋愛対象外もいいとこだし、そもそも、あの兄を見て育ってるので、恋愛とかセックスとか割と避けて生きてきたんですよね」
 それなのに、と彼の言葉は続いていく。口をはさむ気にはなれず、黙って耳を傾ける。
「気付いたらあなたのことばっかり考えるようになってて焦りました。初めて会った時、話に聞いてたより随分とクズな男だと思ったんですよ。でもあんな酷い誘われ方したら、逆にこれってチャンスかなと思っちゃって」
 チャンスってどういう事だと思いながらも続きを待てば、どうやら、恋愛もセックスも避けてきた人生の中で、あれが初めての直接的な誘いだったということらしい。
「突き詰めて考えるのを避けてましたけど、多分自分も兄と同じ側の人間だろうとは思ってて、だからあなたで試したんですよ。こいつクズだなとは思いましたけど、あの兄を変えた恋人ってことで、一方的にそれなりには信頼してましたし、抱かれるって言ったら焦ってたから、やっぱり思ったほどクズでもないのかなって思ったし。後、本気で嫌になったらいつでも逃げれるって思ったのもあったんですけど、とにかくそんな感じで試したら、あなたは俺を抱く気なんてサラサラないまま俺に合わせて構ってくれただけだったし、しかも兄とはあっさり別れてくれて兄の恋の応援までしてるから、だからまぁ、兄があなたに甘えまくってた理由にも納得はしたんですけど」
 兄の恋人相手に試すようなことしたから、きっとバチが当たったんですよと、ふにゃっと顔を歪ませる。また、泣きそうになっている。

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別れた男の弟が気になって仕方がない32

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 ついつい勢い任せに疑問符を並べ立ててしまったことを反省しながら深呼吸を一つ。ここで自分まで相手の苛立ちに巻き込まれて、なぜ理由を話してくれないと苛立つわけには行かない。
 だから何と、なるべく柔らかな響きになるよう気をつけつつ続きを促せば、一瞬ムッとした様子で口を噤んだものの、それからすぐに、拗ねたみたいにまた少し唇を尖らせる。
「恋人になれって言われるとか、まったく想定してなかったんですって」
 はああと吐き出されてきたため息は重い。
「それは俺も同じだよ。恋人になって、なんて言うことになるとは思ってなかった」
「何言っても忘れてくれるって言ったくせに」
「いやそれはっ」
 想定外にもほどが有りすぎる名前が飛び出したからだと言いかけたけれど、でも言ったことを守ってやれてないのは事実なので、確かに自分が悪かった。
「あー、その、あれは、ゴメン。でもそれでお前が俺を好きって事に気づけたから、俺からしたら結果オーライでもある、かな」
 もう一度ゴメンねと言えば、やっぱり深い溜め息で返される。
「結果オーライじゃないですよ、もう。あなたの好きって絶対、俺が可哀想になっただけのものですよね」
「疑うねぇ。好きだって言葉だけなら気持ち盛り上げるために口にだすことは確かにあるけど、少なくともお前と恋人として付き合いたいってのは、こいつ可哀想ってだけで簡単に出てくる言葉じゃないんだけど。しかもお前、元々付き合ってた相手の弟だよ? どっちかって言ったら避けたい相手だよ?」
「だったら、あなたが抱いたりせずに、別の男紹介するか放っといてくれたら良かったんですよ。そしたらあなたを好きだなんて、思わなくて済んだのに」
「てことは、抱かれてその気になった、ってのは事実なのか。お前ほんっと危ないな。キモチイイに流されて相手好きになるなら、セックスする相手はマジでしっかり選べよ」
 言えば嫌そうに眉を寄せて、どこまでも保護者と吐き捨てられた。余計なことを言ったとは思ったが、もう口に出してしまった。
「でもまぁお前には不本意でも、俺にとってはやっぱりそれも結果オーライ、かな。お前の初めての相手が俺になって、本当に良かったと思ってるよ」
「俺は思いっきり失敗したって思ってますけどね」
「かわいそうに」
「それ絶対本気で言ってない」
「そりゃあね。だってもうお前の初めては俺になっちゃったし、お前は俺を好きって言っちゃったし、俺がお前を恋人にしたいと思っちゃった現実は変わらないし、それがお前にとってどうダメなのか未だにさっぱりわからない」
「いやだから、ダメっていうか、あなたと恋人になる予定がなくてどうしていいかわからないだけですって」
「それだとまるで、俺を好きになる予定はあったみたいだけど」
 抱かれてその気になっちゃったんじゃなかったのかと、からかうような気持ちで口に出しただけだったから、あっさりありましたけどと肯定されてびっくりした。
「は? えっ? 抱かれてキモチヨクなっちゃって、うっかり好きって思っちゃった、って話じゃないの? あれ?」
 また何か、盛大な勘違いと思い込みをしているらしい。またなのか、まだなのかは微妙な所ではあるが。
「うっかり好きになったりはしてないですね」
「え、でも、抱かれてその気になったのは? それは事実?」
「事実ですけど、あなたに抱かれたらきっとあなたを好きになるんだろうって、最初っから思ってはいました」
 そう思っていたなら、なぜあんなにあっさり抱かれることを了承したのかますますわからない。恋人になる予定はなかったというなら、好きになったって辛い思いをするばかりじゃないのか。
「ドMかな?」
「そういう自覚はないですが、やったこと考えたら違うとも言い切れないかもですね」
「いやゴメン。そんな冷静に返さないで。というか、それ、片想いになること前提で抱かれたって意味だよね? なんでそんなことしたの」
「ドMだから?」
「ゴメンナサイ。お願い茶化さないで教えて」
 きっと言いたくなくて誤魔化してしまいたい部類の話なのだというのはわかるけれど、少しずつでもどうにか彼の隠しつづける部分を引っ張り出したくて頼み込んだ。相手が言いたくないならと踏み込まず、相手から話してくれるのを待ってあげられる余裕はなかった。

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別れた男の弟が気になって仕方がない31

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 まだ随分と迷ってはいるようだけれど、このまま恋人となることを了承してくれる可能性はありそうだし、だとしたらそこは確かめておきたかった。相手が自分の何を、どこを、好きだと思ってくれているのかを知るのは重要だ。
「えっ?」
 相手は突然何をと言いたげに、思考を中断してこちらを見つめてくる。噛み締めていたはずの唇は、呆気にとられてかうっすら開いていた。
「俺を好きだと思いながら、なのに俺以外の、お前を抱いてくれる人を探してた? それはなんで? だとしたら俺に抱かれる気になった理由も聞きたい。好きになれたら付き合う気があったのに、でも俺は別っての、お前の本音として確かに伝わってはいるけど、理由はやっぱわかんないんだよな。本気で年の差がダメとは言わないだろ?」
「質問、多すぎ」
 ちょっと聞きたいって内容じゃないですよと言いながらも、相手が酷く動揺しているのがわかる。
「そうだな。じゃ、さっきのはちょっと答えてに変更で。でもって、ちょっとずつお前のペースでいいから、答えて。ゆっくりでもいいけど、なるべく全部な」
 小さな声がズルいと呟いたようだったし、確かになと思いはしたが、聞こえなかったふりで相手の答えを待てば、やがて嫌だと吐き出されてきた。そう言いそうな気がしていた。
 やっぱりと思いながら、用意していた言葉を告げてみる。
「そんなに恥ずかしい理由なの?」
「ちょっ、恥ずかしい、って、なん、で」
「いや恥ずかしくて言えないってやつかなと思って?」
「別に、恥ずかしくも、そもそも大層な理由なんてのも、ない、です」
「じゃあ尚更、もったいぶらずに教えてよ」
 もう一度、いつから俺が好きだったのと繰り返せば、仕方がないと言った様子のため息を一つ吐いた後、相当気まずそうにさっきからと返された。
 さすがの衝撃に息を呑む。まだ淡い好意だとは感じていたが、そこまでとは思わなかった。というかそれって結局、キモチイイに気持ちが引きずられたってだけじゃないのか?
 いくら成り行きでそうなっただけだとしても、相手が自分を想っていなくても、出来る限り相手も気持ち良くなれるセックスをしようとした結果がこれか。
 相手は大学生とはいえ未成年で、男相手のセックスは間違いなく初めてだと知っていたのに。
 知識として、そういうこともあるとわかっているし、実際そういうタイプも居るんだろう。けれど今まで出会ってきた友人知人から、リアル体験として耳にしたことはなかった。自分自身、体の快楽と好きという感情が直結はしていない。気持ちいいセックスをした後、嫌いな相手が好きな相手に転化したことなんてない。というかそもそも、それなりの好意が育っている相手としか関係を持ったことがない。
 だからこそ、考えつきもしなかった。
「えー……っと、つまり、抱かれたら好きかもって気がしてきたとか、そういう、話? さすがに好きの自覚ははっきりありそうと思ってたけど、そこからして俺の勘違い?」
 絶対嫌われただろう相手に、好きだと繰り返された上で名前を呼ばれたりしたから、慌てて舞い上がり過ぎていたらしい。
「恋人になってに頷いてくれないのは、本当に俺を好きかどうかで迷ってるせいもあったりする?」
「ちがっ……ぁ、わない」
 思わずといった感じで否定を漏らしたものの、すぐにしまったと言いたげに更に否定を繋げ、またキュッと唇を閉ざしてしまった。
 えー、もう、本当に困る。こんな反応をされてしまったら、全てが疑わしく感じてしまう。自分に都合の良い部分だけを信じて、後は照れ隠しの嘘やごまかしって事にしたくなってしまう。もしくは真逆で、自分に都合の悪い部分だけ信じて、彼のことを諦めてしまいそうだ。
 そしてきっとまた、勘違いの思い込みが激しいなどと言われてしまうんだろう。そうしたら、勘違いするのはこちらばかりが悪いわけじゃないと、今度こそ口に出して言ってしまうかもしれない。
「はいダウト。というか頼むからもう、いい加減お前の本当を教えてくれ。で、どっから違うの? 俺のことは本当に好き? それはいつから? 抱かれてその気になっちゃった? それともさっきから、ってのからして、嘘だったりするの?」
「だからっ」
 焦れた様子で叫ばれたってわからない。ちょっと聞いていいかだとか、ゆっくり答えてくれればいいと言いながら、どんどん疑問符を並べ立てているのは事実で、それに苛ついているっぽいのはなんとなく感じているけれど。

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別れた男の弟が気になって仕方がない30

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 確かに嫌がる相手を抱くことはしないし出来ない。ただ、言いくるめてその気にさせて、もう一度抱くことは出来そうな気もする。抱きながら快楽で押し流すようにして、恋人になってと頼みこんで頷かせることもだ。
 問題は、そうやって頷かせた所で、本人が納得しなければ結局は逃げられてしまう気がする点だ。もう一度抱くことでこちらの本気が伝わったとしても、彼が危惧して嫌がったことをそのまま成してしまったら意味がない。下手したらかなりのマイナス評価で、せっかくの好意が嫌悪に変わる可能性だってある。
 そもそもその好意だって、本当はまだ随分と淡いもののような気がしている。
 好きだという想いそのものを疑う気はない。けれど相手は、聞かなかったことにして欲しい、知ったからと恋人になる必要はないと言って逃げ腰だ。恋人にならないかという誘いにこれ幸いと乗ってこないのは、きっとそこまで強い想いではないからなんだろう。
 本当にこの一度きりで終わりにしても、さして胸が痛むこともなく、消えてなくなる想いなのかもしれない。
「お前にとっては、俺に恋人になれって言われるのは、困るばっかりで欠片もチャンスじゃない?」
「なんの、チャンスですか」
「お人好しで不安だとか、俺の好きが信じられないとかで、叶うかもしれない恋を自ら諦めて手放しちゃうの? って聞いてる。心も体も求める相手が、自分を好きになってくれない事も多い。ってのは、お前が自分で言ったんだからわかってるだろう?」
「あなたの好きがなんであれ、好きって言ってんだから四の五の言わずに恋人になれ、ですか?」
「お前がそれで頷いてくれるならそれもありだけど、ちょっと違う。お前の恋愛経験知らないけど、今のこの状況、俺がお前を逃がせないなと思う以上に、お前にとって、またとないチャンスだと思うんだよな。って話。好きになった相手に交際相手が居なくて、気持ちよくなれるセックスが出来て、しかも恋人になりたいと言ってくれる。ってのが揃うことなんて、かなり稀なことだと思うけど。ここで逃げたら勿体なくない?」
 別に勿体無いなんて思わないと言われてしまったら、さすがにもうお手上げだ。つまりは彼の方こそ、その程度の好きなのだ。
 そう思いながらの質問に、相手はきゅっと唇を噛み締めながら何事か考えている。即答できない程度には、どうでもいい想いではないらしいとホッとする。
「ちょっと聞きたいんだけど、いつから俺が好きだった?」
 彼が答えを出してしまう前に、ついでとばかりに問いかけた。
 自分を好きだなんて欠片も思っていなかった理由の一つに、彼に好意を持たれるようなことをした意識が一切なかったからというのがある。
 そもそも彼と会うのは今日で三度目だ。もちろん、いきなり家に押しかけてきた日と、たまたまラブホ前で揉めていたのを見つけた日と、今日だ。ついでに言うなら、互いの連絡先の交換さえしていない。なんせ男を紹介したときだって、すんなり相手の男を呼び出し引き合わせることが出来たから、後日改めて連絡を取り合う必要がなかった。
 ただ、自分にとってはあの日押しかけられるまで、全く意識されていなかった存在ではあるが、彼からすると違うのだろう。彼は兄から自分のことを色々と聞かされていたようだというのは、話の端々から伝わっていた。
 でも初対面で兄と別れさせたいなら抱かれろなどという、かなりゲスな提案をしてしまっているし、もし彼の兄が好意的な話をしてくれていたってあれで台無しにしただろう。ラブホに連れ込まれそうになったのを助けたり、男を紹介したりはしたが、あの時にはもう彼は抱いてくれる誰かを探していたのだから、いったいどこで好きになられたのか、自分のどこを好きだと言っているのか、実のところさっぱりわかっていなかった。

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