親父のものだと思ってた37

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「今も、上手く出来るかわかんないとは思ってるけど、でも、お前泣かせてまで拘るとこでもないかなって思って」
 言いながら、こちらに向かってカパッと足を開いた相手が、手の上に出していたローションを先程まで繋がっていた穴へと運んでいく。
「んっ……」
 体勢的にしっかり見えているわけではないが、ローションをまとった指が抵抗なく穴の中へと入っていったのはわかる。
 なにこれエッロい。
 何を見せられているんだとは思うものの、もちろん目は相手の股間に釘付けだった。
「見てるだけじゃなくて、早く、ゴム、替えなよ」
 ハッとして顔を上げれば、こちらを見ていただろう相手が逃げるみたいにすっと視線を伏せたので、視線が合うことはなかったけれど。顔を上げたことで、いつの間にやら顔をずいぶんと赤くしていた事に気づく。
「まだ、気持ちに切り替え、出来ない?」
 目は逸したまま、相手が少しばかり腰を浮かす。浮かすというか、突き出すというか、つまりは指がはまった穴をこちらに見せつけてくる。
 間違いなく煽られていた。早くその気になってハメろと誘われている。
 こんなの、興奮しないわけがない。ただ、真っ赤になった顔から相手も相当恥ずかしい思いをしているのが伝わってくるから、その頑張りにもギュンと興奮が煽られた気がする。
「替えた」
 手早くゴムを付け替えて、短くそれを宣言した。こんな短な言葉を発するだけでも、興奮と緊張とで若干声が詰まって掠れている。
 小さく頷いて、相手が中に埋めていた自身の指を抜いていく。
「来て」
 返されたのも同様に、たった2つの音しか発されていないのに、かすかに掠れて震えていた気がする。少なくとも、相手も緊張はしているようだと思う。
 短な距離をにじり寄れば、相手は黙って背を倒す。膝を立てた足は開いたままだった。
 さっき指で慣らす時は背中を向けられてしまったが、向きを変える様子がないのでこのまま正面から抱いていいらしい。まぁ、既に正面から乗られ済みなので、今更ってことだろうか。
 後ろからじゃなくていいのと確かめる気はない。言って相手の気が変わったら大変だ。
 膝に手をかけ軽く持ち上げるように力を掛ければ、眼下には濡れた穴がヒクヒクと小さな穴を開閉しながら待っている。そこにペニスの先端を押し当てて、一度相手を窺った。
 顔は赤いままだが、視線は逸らされていない。むしろこちらもガッツリ見られているようだ。
 さっき、こちらが気持ちよくなるのを見たいだとか、こちらの興奮を見て興奮する、みたいなことを言っていたのを思い出す。
 相手の痴態に興奮が増すのなんてお互い様だ。こちらの興奮がちゃんと伝わって、少しでも相手の興奮が増せばいいなと思う。
「いい?」
「なるべく、ゆっくり、な」
「わかってる」
 視線をまた穴へと戻して、少しずつ腰を進めていく。ぐっと押し込まれていた穴がその圧に負けて広がり、ゆっくりと亀頭を飲み込んでいった。
「んっっ」
「くっ」
 相手が小さく呻くのに合わせて、こちらも思わず歯を食いしばる。カリの下側がきゅっとはまれる気持ちよさに耐えていた。
 欲に負けて押し込んだら、その勢いであっさり二度目の射精を果たしてしまいそうだ。
 一度果てて余裕があるはずだったのに、あれこれ話して時間が経っているのと、なにより、相手が身を任せてくれている喜びや、さきほどとはまた違う視覚からの情報に興奮しっぱなしで、あったはずの余裕はあっさりどこかへ飛び去った。
 だからって、2回も挿入直後に射精だなんて醜態はさらしたくないし、今度こそじっくり相手を堪能したい。可能な限り、相手のことだって気持ちよくしたい。
 少なくとも今回は、自分のペースで進められる。落ち着いて進めれば大丈夫なはずだ。指で相手が気持ちよくなれていた場所だって、ちゃんと覚えている。
 大丈夫。大丈夫。
 気持ちを落ち着けるように何度か深い呼吸を繰り返しから、ゆっくりと腰を押し込んでいった。

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親父のものだと思ってた36

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 やばい。
 黙ってじっとしていた相手の背がピクリと震えて、間違いなく相手もこの状況を把握している。
 気持ちを鎮めようと焦れば焦るほど、なぜか興奮していく悪循環にはまってどうしていいかわからない。なのに。
「ぅあっっ」
 キュッと根本が締め付けられる感覚に、たまらず声を零してしまった。
「ぁ、ちょっ」
 キュ、キュ、と何度か繰り返されて、どうやら意図的にお尻の穴を収縮させているのだとわかったけれど、こちらの戸惑いは増すばかりだ。だって、これがやりたくて「もうちょっとだけこのままこうしてて」と言われたわけじゃないはずだからだ。
 しかも、腕の中から堪えきれなかったらしい笑い声が、小さく漏れてくる。
「うぅ、酷い……」
「ごめん、あんまりお前が可愛くて」
「意味わかんないんだけど。てか煽んないで欲しいんだけど」
「そうだな。じゃ、一回抜くか」
「えっ?」
「降りるから一回腕どけて。あと、ゴム、つけ直してよ」
「抱っこはもういいの?」
「うん。も、大丈夫」
 言われるまま背を抱いていた腕を下ろせば、上体を起こした相手がその流れのまま腰を持ち上げていく。といってもやはり動きは緩やかなので、根本から先端へと向かって、ゆっくりときつめの締め付けが移動していくのがたまらなく気持ちがいい。
「んっっ」
 開いた傘が引っかかって、そこが抜ける時は更に焦らされたけれど、そこが抜けてしまえばあとはつるっと亀頭すべてが抜けていった。
「……はぁ」
 残念な気持ちも少々混ざりつつも、相手が自ら降りてくれたことに小さく安堵の息を吐く。
「で、何してんの」
 降りた相手がベッドの上に転がっているローションボトルに手を伸ばすのを横目に見ながら上体を起こせば、お前はこっちねと、新しいゴムのパッケージが差し出された。思わず受け取ったけれど、さすがにすぐさまそれの封を開ける気にはなれず、手に持ったまま相手見つめてしまう。
「2回目する前に、俺の方もローション足して置こうかと思って」
 こちらの視線には気づいたようで、躊躇いなくローションボトルから中身を手のひらに出しながらそう返されたけれど、展開の速さに全くついていけない。いやまぁ、2回目するって話にはなってたし、繋がったまま大人しく待てずに反応させたのはこちらだけど。
「ちょ、待って。我慢できなくて体が反応しちゃったのは事実だけど、こっちの気持ちの切り替え、まだできないよ。てかさっきの何だったの」
「俺が、お前にちゃんと抱かれる覚悟、決めるための時間」
「え?」
「俺が張り切ってお前を気持ちよくしなくても、俺がお前に任せて体預けても、お前は間違いなくちゃんと自分で気持ちよくなれる。ってのはわかってるんだよ。ただ、お前は俺を気持ちよくしたい気持ちが強いうえに、俺より断然、筋力も持久力も精力もあるだろ。なんせ若いからさ。そのお前に主導権渡すのは、やっぱ、怖い。自分でコントロールできない中で、自分がどうなるかわからない不安がある」
「無理強いするつもりはないし、無理って言われたら、出来る限り、途中でもやめる。つもりは、あるよ?」
「わかってるよ。それに関しては実績もかなりあるし、信頼もしてる。俺が自分で主導権握ってたいなぁとか、お前に主導権渡すの怖いなとか不安だなってのは、そういうのじゃなくてさ。さっきも言ったけど、お前が可愛くて仕方ないってとこなの」
「え、つまり……?」
「つまり、お前が熱心に俺を気持ちよくしようと頑張って、それで本当に俺が気持ちよくなった時、お前が一緒に気持ちよくなるのを見逃すのが惜しい。ていうか正直いうと、お前が気持ちよくなってるとこを見て興奮してるとこがかなりあるから、自分の快感に意識向けるより、お前の快感に意識向けてたいんだよね」
「……は?」
「けど、お前に主導権渡しといてそれやると、お互い無駄に焦れて時間掛かる上に、俺の体が持たないから、もしお前に主導権渡すなら、俺はちゃんと自分の快感に向き合って、お前に気持ちよくして貰うことに集中しなきゃなんだけど、それが上手く出来るかわかんないってのも躊躇う理由だったんだよ」
「そ、そう、なの」
 なんと返していいのかわからなくて、とりあえず相槌を打ってしまったが、主導権を渡したくない理由が想像の斜め上を突き抜けている。

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親父のものだと思ってた35

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「いや、ちょっ、そんなことな……くはない、部分もあるけど」
「あるの!?」
 まさかの肯定に、驚きすぎて涙が引っ込んだ。
「お前に自分だけイカされるのが屈辱だとか言ってるわけじゃないし、この先、お前にお尻でイカされる日も多分くるだろうなってわかってるし、それが屈辱だからちゃんと抱かせないって思ってるわけじゃないけど、お前がかなり年下で、小さい頃から知ってる、って部分で、俺が張り切っちゃう面があるのは事実」
「張り切っちゃう……?」
「今、お前がちゃんと抱かせてくれない〜って泣いちゃうような事になってるのは、俺がお前に乗っかって、俺が動いて、そのせいで気持ちよくなってイッちゃうお前が見たくて張り切っちゃってる結果だよ、ってことなんだけど」
 通じたか聞かれて、なんとなくと曖昧に返す。
 屈辱の否定が2回入ったから、つまりは年下なせいでって部分は、相手にも肯定されたってことだろう。屈辱とは思わないけれど、年の差があるから主導権を渡せないって話かもしれない。渡せないってよりは、主導権を握ってこちらを翻弄したくて仕方がない、みたいな話だった気もするけど。
 そんな主張をされても、そうなんだと納得して、じゃあ続きをどうぞとはなれないし、年齢差というどうしようもないものが明確に立ちはだかってしまって、手詰まり感で胸が苦しい。
「えと、つまり、俺が年下なせいで張り切っちゃうから、俺はちゃんと抱かせてもらえないし、一方的に気持ちよくなるのは有りでも、一方的に気持ち良くするのはダメ、って言ってる?」
 言いながら、これをはっきり肯定されたら結局また泣いてしまうかもと思う。
「そうじゃなくて」
 けれどすぐさま否定の声が返って、見上げる先で相手が困ったように眉尻を下げる。
 目が合うと、ますます困ったように口元をへにょっと曲げて、なぜか相手が体をゆるりと倒して抱きついてくるから、腰を押さえていた手を思わずその背に回して抱き返してしまった。
 ただ、腕の中で大きなため息が吐き出され、肩のあたりに相手の額がグリグリと押し付けられて、何をされているかわからない。いやでもこれは、甘えられている、んだろうか?
 何も言わない相手に、こちらも掛ける言葉は見つからず、結局、なだめるように背を撫でるしか出来なかった。
 やがて、また一つ大きな息が吐き出されて、相手の動きが止まる。
「俺はさぁ……」
「うん」
 やっと口を開いた相手に、続きを促すように相槌を入れた。
「お前のことが可愛くて仕方なくて、抱かれる側になっても、お前に気持ちよくされるより、お前を気持ちよくするほうが満足度高いのは確実なんだけど、でも、そのせいでお前を泣かすとか思って無くて……」
「うん」
「だから、……」
「うん」
「ごめん、やっぱもうちょっとだけ、このままこうしてて」
「えっ……」
「あ、重い?」
「それは、平気だけど」
「じゃあ、お願い」
「黙って抱っこしてて、ってこと?」
「そう」
「わか、った」
 わかったと返しはしたが、さっぱり意味がわからない。意味がわからないというか、相手が今、何を考えているのか全く想像がつかない。
 なんなんだこれ。とは思いながらも、今はただ、言われたとおりに黙って待つしかないんだろう。
 ただ、じっと相手を抱きしめていると、未だ繋がったままのその部分がどうしても気になってしまう。意識してしまう。
 不安を零して泣きかけて、連動するように若干萎え掛けていたそれが、意識すればするほどに、またじわりと質量を増していくのがわかる。

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親父のものだと思ってた34

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 ついでに言えば、次こそは相手のこともちゃんと気持ちよくしてやりたい。
 そんな決意とともに、まずはゴムを変えなければと考える。だって相手が腰の上に乗ったままなのだ。こちらは気持ちがいいばかりだったけれど、相手の動きはかなり慎重だったから、下手に動くと痛みを与えたりするかもしれない。
 なのに。
「ちょ、まって」
 上からどいて欲しい気持ちを込めて相手を見つめたら、小さく頷いた相手が、腰を持ち上げるのではなく、なぜかゆるっと腰を揺すり始めて慌てて止めた。
「何、してんの?」
「なに、って……」
 その顔は明らかに、だって二回目するんだろという疑問顔だ。
 そりゃするけども。でもこのまま続けるとは言ってない。
「二発目頑張りたいけど、とりあえず、ゴムは変えないとまずいよね?」
「万が一があっても妊娠はしないけど」
「お腹壊すって聞くけど」
「それは、まぁ、体験してみて初めて、二度と嫌だと思うかこれくらいなら平気と思うかわからないから」
 ああ言えばこう言う。つまりはせっかく体を繋げたんだから、相手としてはこのまま続けたくて仕方がないんだろう。
 次の言葉が出ずに黙ってしまえば、相手は了承と受け取って、またゆっくりと腰を揺する。そんな風に刺激されたら、あっという間に元通りに固くなってしまう。
 そして充分な固さをその身で持って確認したのか、それとも相手の体が慣れてきたのか、相手の腰がゆっくりと浮いていく。
 少し浮かして、戻す。というのを繰り返すうちに、少しずつ腰を高くまで浮かすようになっているし、スピードだって多少はあがっていると思う。
 一度吐き出しているのと、相手の動きがやたら緩やかなせいで、すぐに射精感が募ってくる感じではないが、このまま続けたらどうなるかわからない。というよりも、相手がこの動きに慣れてしまったら、きっとまたイカされてしまうだろう。
「ちょっと」
 不満そうな声が相手から漏れたのは、相手が腰を落とした時に相手の腰をグッと掴んで、腰を浮かすのを阻止したせいだ。
「二回目するって言ったけど、このまま俺だけまたイカされるのはなしでしょ」
「気持ちぃ?」
「気持ちぃし、見える景色がエロすぎだって」
「じゃあ、もっかいイッてよ」
「それはヤダ」
「お前が気持ちよくイッたら俺はめちゃくちゃ嬉しいし、俺が気持ちよくなるのはまた今度でいいっていうか、今日は俺の練習に付き合って欲しいっていうか……」
「俺に主導権渡したら、さっきみたいにお尻気持ちよくなるかも知れなくて怖いんじゃないの?」
「それは、そう。てかわかってるなら、」
「俺に気持ちよくされるの、なにがそんなに怖いの? 痴態晒したって、俺が萎えるどころか興奮しまくるの、わかってるでしょ?」
「そういう心配は、もう、してないけど」
「けど、なに? うんと年下の俺にお尻でイカされるのが屈辱、とかそういう話?」
「ん? なんだそれ?」
 勢い任せに、余計なことを言ってしまった。ずっと気持ちのどこかに燻っていて、でもそんなこと思うはずがないと否定していた気持ちだ。
 そして相手はある意味予想通り、何を言われてるかわからないと、呆気にとられた顔をする。
 そりゃそうだ。だって絶対に抱く側と主張したのはこちらだが、もし、抱かれてやるけど主導権は渡さない、なんて強い意志が相手側にあったなら、絶対にそれをこちらに了承させる。そういう人だと、わかっている。
 だから自己開発では感じなかったお尻が、他者の手で弄られて感じたことにまだ全然慣れていなくて、だから怖い。というのが事実であって、年齢差だの屈辱だのは、こちらの不安から生まれた言いがかりでしか無い。
 わかっているのに、口に出してしまったことで、抱えた不安が溢れてしまった。
「だって俺に一方的に気持ちよくされるの、嫌いだよね。てか今までずっとそうだったよね。恋人なのもエロいことするのも俺が全部初めて貰うんだからって思って、そっちが慣れるの待ってきたけど。絶対抱く側って主張したのも飲んでもらってるけど。でももし、俺が年下なせいで、ちゃんと抱かせて貰えないとかだったら、俺、どうすればいいの?」
 言いながら、なんだか泣きそうになる。馬鹿なことを口走っている自覚はあって、それが余計に涙を誘う。

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親父のものだと思ってた33

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「泣かないでよ」
 降ってくる声は優しい響きをしているけれど、笑いを含んでもいる。ますます情けなくて、きゅっと唇を噛み締めた。
「ねぇ、俺、今、めちゃくちゃ嬉しいよ?」
 嬉しくて笑ってるんだよ、と続いた声は言い訳だろうか。相手も自身の声に笑いが含んでいることを自覚しているのだ。
「笑ってごめんね。でも、ほんと、嬉しいだけだから。嬉しくてこぼれちゃう笑いだから」
 そう告げる声もクフクフと小さな笑いを含んでいるから、本当に、笑うのを止められないらしい。
「何がっ、そんな゛、嬉じぃ、のっ」
 無理やり吐き出した声は喉の詰まって、しかも涙声で濁っている。
「んー、それはやっぱ、俺の体でちゃんとイッてくれたから、かな。しかもお前が泣いちゃうほどの早さで、っていうのはさ、嬉しい上にめちゃくちゃ安心した。あ、安心したから笑うの止まらないのかも?」
 言いながら、またしてもフヘヘとおかしな笑いをこぼしている。言葉からも気配からも、まったくしまりがない様子が伝わってきて、顔の前に翳した腕をどけて相手の顔をみた。
 その顔も、へらへらと緩んで本当にしまりがない。でも、嬉しいの言葉に嘘がないこともわかる、幸せそうな笑顔だった。
「も、わかった、から、いい」
 目があって、相手が口を開く前に、素早くそれだけ告げる。告げてから一度大きく息を吐きだし、目元に残っと涙を払う。
「怒った?」
「え、何を?」
 嬉しくて笑うのが止まらないという状態なのはわかった、と言ったつもりだったのに、なぜか一転して不安そうな声を吐き出すから驚く。
「あ、いや、怒るっていうか、俺が、ずっとヘラヘラ笑ってるから、呆れたのかと思って」
「嬉しそうで何より、って思ってるよ。でもそれと俺が落ち込むのは別問題」
「それだけど、落ち込んで萎えたからもう終わり、ってつもりだったりする?」
「えっ?」
「不本意かもだけど射精したのは事実だし、今日はもういい、ってのも、まぁ、わからなくないんだけど……」
 そこで言葉を切ってしばらく迷うように躊躇った後。
「若いんだし、さ……その、二発目頑張るぞ、みたいなの、って、ない?」
 言いながら顔を赤く染めていくから、思わずマジマジと眺めてしまう。
 言葉からも相手の様子からも、落ち込むこちらを慰めるためのもう一度、というよりも、こんなのじゃ物足りないからもっと頑張れと言われているような気になるんだけれど、そう思っていいんだろうか。
「なんか言え、ぁっ……」
 なんと返すか迷う時間を待てなかった相手が返答を促してきたが、答える前に体が反応していたし、その反応を相手も自身の体で感じたようだ。
「二回目、する?」
「する」
 即答すればホッとした様子で、一瞬だけだったが、またしてもふにゃっと嬉しそうに笑う。嬉しそうで何よりと思うよりも先に、可愛さで胸がキュンとした。
 双方素っ裸で既に体が繋がった状態で、なのに相手のそんな些細な表情に、ドキドキとトキメイているのがなんとも不思議だ。相手から求められている、というのがあからさまに伝わってくるから、そのせいだろうか。
 童貞で、初めての恋人とのアレコレに興味津々で積極的。そう感じることは確かに多々あって、これもその延長と言えなくはないかも知れない。せっかく自己開発した上に色々と準備も重ねたんだから、あっさり終わったら惜しいと思ってるだけかも知れない。
 でも嬉しい嬉しいと繰り返しながらヘラヘラふにゃふにゃ笑って、もっとしようよと誘われたら、相手が本当はどんな気持ちで二回目を誘ったかなんて、そんなのはどうでもいいかという気になる。

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親父のものだと思ってた32

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「はぁ……」
 詰めた息を吐きだして、体の力を抜こうとしているのがわかる。
 チラりとこちらを窺った視線と一瞬だけ目があったけれど、その目はすぐに伏せられて、ついでに顔も俯けてしまう。じわりと赤くなっていく耳先に相当恥ずかしいのだとわかって、俯かないで欲しいとは言えなかった。
 まぁ、顔が見れると喜べたのはわずかな時間でしかなかったけれど、向かい合っているのだからチャンスはまだある。それに相手の状況は、表情以外からだって色々伝わってくるのだから。
 ひっそりと繰り返される深呼吸に相手の緊張が伝わってきて、こちらも息を潜めてその先を待った。
「んっっ!」
「うっ……」
 クッと腰が沈んで、小さな呻き声とともに相手の体が硬直するのを見ながら、こちらもたまらず小さく呻く。
 相手は動きを止めているのに、ペニスの先端の膨らみが入り込んだ穴は、キュウキュウと何度も収縮している。先端部だけなのに、肉の筒に包まれ揉まれている快感と興奮とで、あっという間に射精欲が湧き上がった。
 それを鎮めるために、硬直したままの相手の体をじっと見つめる。相手の体の状況へ意識を向ける。
「どっか、痛い?」
 吐き出す自分の声こそが、痛みを堪えているかのように苦しげだ。痛いわけではないが、快感をこらえる苦しさは確かにあった。
「へ、いき。でも、ちょっと、待って」
 ゆると頭を左右に振った相手が、再度チラッとこちらに視線を走らせたあとで、深めの深呼吸を始める。ひっそりと行う余裕はないようで、その息遣いははっきりと耳に届いた。
「ぁ……」
 声を漏らしたのは相手ではなく自分の方だ。
 深呼吸を繰り返しながらタイミングを図っているのか、止まっていた腰がゆっくりと落ちていく。
 締め付けが一番強いのは入口付近で、上から順にキュッ、キュッ、キュッ、っと竿の根本までをゆっくり締め付けられていくのが、たまらなく気持ちがいい。
 深呼吸は繰り返されていて、相手はきっと快感なんて拾っていないと思うのに、一生懸命にその体内に迎え入れてくれる姿に胸の奥が熱くなった。
 より強い刺激と快感とを求めて腰をゆすりたいのを、こらえるのが難しい。どうにか耐えていられるのは、相手の必死さが伝わってくるせいだ。
 やっと好きな相手と体を繋いでいる、という感動や興奮ももちろんあった。しかも、相手がこんなにも頑張ってくれている、という喜びやら愛しさやらが混ざって、更に、体が直接受け取っている快感までが混ざって、頭の中がグチャグチャだ。グチャグチャだけど、幸せで、嬉しくて、気持ちがいいのは間違いなくて、こみ上げてくる何かで視界がぼやける。
「はい、った」
 むにっと相手の尻タブが肌に触れたとほぼ同時に、相手がホッとしたようにそう呟き、顔を上げた。
 ずっと相手を見つめていたこちらと目があって、滲む涙に気づいて驚いた後。おかしそうに、幸せそうに、嬉しそうに、笑う。それが最後のひと押しだった。
「あっ! あ、……あぁ……」
 体の中でグチャグチャに絡み合った幸せと喜びと快感が弾けて、次に押し寄せてくるのは絶望だ。
 肉の筒に包まれたペニスがピクピクと震えるのを感じながら、持ち上げた両腕をクロスさせて顔の上に置き、一転して情けなさで溢れる涙を隠した。

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