7章 タク VS 翔
【土曜の夜】
翔のマンションへ向かって歩いている。
まだかなり距離はあるが入り口に佇む見知った顔に思わず足を止めた。
颯真:(あれってタクさん?)
:(なんでこんなとこに居るの)
:(ていうかあれじゃマンション入れないよ)
颯真LINE:翔さんもう帰宅してるよね?
翔LINE:どうした?
颯真LINE:マンションの前にタクさんが居るんだけど
:どうしよ
:顔合わせたくない
翔LINE:わかった俺が行こう
:安全が確認できたら呼ぶから
:それまでどこかに隠れてるといい
タクがこちらに気づいた様子で近づいてくる。
颯真LINE:ダメだ
:見つかっちゃった
翔LINE:すぐに着くから待ってろ
タク:久しぶりだねぇ立木颯真くん
颯真:なんで知って……
:(下の名前しか教えてないのに)
タク:まさか逃げられると思わなかったからさ
:ちょっと色々使って探したよね
颯真:(つまりあそこで俺を待ってたってこと?)
:俺に、何の用ですか
タク:わからないの?
颯真:わかりません
タク:この前の続きをして貰おうと思って
颯真:続きって……
タク:だって颯真くんもう非処女でしょ
:飼沼翔って男に毎週末ズコバコ嵌めてもらってるんだもんね?
颯真:ちょっ、そういう言い方止めて下さい
タク:どう言ったって事実変わんないでしょ
:今日だって抱かれるために来てるくせに
颯真:止めてって言ってるでしょ!
キツく睨んでもタクは飄々と受け流してしまう。
タク:そうカッカするなよ
:大事なことだろ?
颯真:どこが!?
タク:こんな初めてやだっ!って逃げたんだから
:初めてじゃないならいいって事でしょ
颯真:いいわけあるか!
:絶対イヤです
タク:そう言われてもねぇ
:まぁカメラは無事だったからいいとして
:颯真くんを家に呼ぶために買った
:大量のBL本の費用くらいは回収したいわけ
颯真:(お金払えってこと?)
:(抱かれろって話じゃないの?)
タク:うちのBL本持ってっていいからさ
:俺とハメ撮りしてよ
颯真:あっ!
:やっぱAV撮ってるんじゃん
タク:AV撮影ってほど仰々しくないって
:ちょっとした趣味だよ趣味
颯真:(売ってお金にしてたら同じようなもんだろ)
タク:てわけで、ほら、さっさと行くよ
颯真:ちょっ、やだ、放してっ
翔:颯真!
タクに腕を掴まれた所で翔の声が大きく響いた。
颯真:翔さん!翔さん!!
タク:ああ、面倒くさいのが来ちゃったよ
翔:おいお前、颯真を放せ
タク:あんたはお呼びじゃないんで帰ってくれます?
翔:お前が町山拓人か?
颯真:えっ?
タク:へぇ……
:そういうあんたは飼沼翔だろ?
:どうして俺の名前を知ってる?
翔:俺の仕事までは知らないのか?
タク:小さな不動産屋勤務だろ?
翔:そうだ
:親族経営の小さな店舗だが
:長年の信頼と実績でそこそこ近隣に顔が利く
:颯真のおかげでアパートの場所がわかったからな
:そこから色々辿らせて貰った
颯真:(タクさんのアパートの場所)
:(なんで知りたがるのかと思ったら)
タク:なんで俺を調べてる?
翔:お前のやってることが目に余るからだ
:あちこちのゲイ掲示板で被害が報告されてる
:既に充分犯罪の領域だぞ?
タク:俺のやったことって証拠でも?
翔:お前が流出させた動画類
:確認できる範囲全てが同じ部屋だった
:颯真に見せたらお前の部屋だって証言してくれるんじゃないか?
タク:あっそ
:で、確証取れたらどうすんの?
:俺を訴えてみる?
翔:警察には相談済みだし
:大家にも報告済みだ
タク:は?
翔:警察沙汰を嫌がる大家が多いから
:今は犯罪に使われている可能性を知らせただけだが
:もしこのまま颯真を連れて行くなら
:俺は躊躇わずに通報する
タク:なるほどね
翔:ついでに警告しておくが
:今後も今みたいなことを続けるなら
:俺の顔が効く範囲ではまともに部屋を借りれなくなると思えよ
:問題ある借主の情報はそれなりに共有されるもんだ
タク:えらっそーに
:そういうあんただって
:ほぼ毎週末、高校生家に連れ込んで楽しんでるくせにな
翔:は?
驚いた様子で翔が颯真に振り返る。
翔:大学生じゃなかったのか?
颯真:それは……
タク:幼いとは思ったけど高校生だったなんてな
:俺も逃げられて探さなきゃ知りようがなかった
颯真:(どうしよ)
:(まさかこんなバレ方するなんて)
タク:まぁ誕生日までは知らないし
:既に18って可能性もあるけど
:地域に根ざした信頼と実績ある不動産屋社員が
:男子高校生をお泊りさせてエロいことしてるなんて知られたら
:周りにどう見られるんだろうねぇ?
颯真:タクさん待って!
翔:颯真は黙って
颯真:そんな……
翔:それはそういう噂を撒いてやるという脅しのつもりか?
タク:だとしたら?
翔:好きにすればいい
:こちらも好きにさせてもらう
タク:チッ
動じる様子のない翔にタクが忌々しげに舌打ちした。
タク:余計なことをする気はないし
:当分は大人しくしてっから
:そっちもあんま余計なことすんなよ
:ってのでどうだ?
翔:当分は、というところが引っかかるが
:まぁ、いいだろう
タク:ったく、こんなんなら
:深追いすんじゃなかったわ
ブツブツと不平を漏らしながらもタクが去っていく。
翔:さて、颯真くん
颯真:はい……
硬い声に名前を呼ばれてその視線から逃げるように俯いた。
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