イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった29

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「だから、お前が、そのお綺麗な顔面で!」
 再度、一区切りごとにけっこう強めに吐き出していく。けれど、相手の戸惑いに不安が混じってきたのを察して、そこで一度口を閉じた。何度か深めの呼吸を繰り返し、頭にのぼった血を下げる。勢いで相手を責めたって仕方がない。
「その、お前がアチコチで愛想振りまいて色々引っ掛けてくるから、俺とエロいことするのに、そこまで特別な意味ないだろって思ってたんだっつの」
「はぁ? 俺かなり特別扱いしてたはずなんだけど?」
「知ってる。けどそれも、愛想振りまいて寄ってきた奴等の相手するのが面倒で、俺を特別扱いすることで、余計なトラブル回避に使われてるのかなって思ってたんだよ。寄ってきたのと軽い気持ちで関係持ったりしたら絶対揉めるの、容易に想像できたし」
「えー……まって、まって、それは、かなり……誤解、です」
 違くて、だの、そうじゃなくて、だのウダウダ言いながらも、どうやら何かを考えている。どう言えばこちらの誤解が解けるか、告げる言葉なりを探しているんだろうか。
「その、女の子と出会いがないって嘆いてる奴等が多かったから、ちょっと出会いの場を提供してただけっていうか。円滑な友達付き合い? のために、わかってて利用されてたと言うか、自分の顔に利用価値があるってわかったから、使えるものは使ってただけ、みたいな。でも、女の子集めるのにこの顔を利用したの事実だし、その、俺狙いだった子に嫌な思いさせられたことあるのも知ってるし、トラブル回避のためにとは思ってなかったけど、お前ならどうにかしてくれそうというかギラギラした女の子たちから守ってくれそうっていうか、頼ってたのは、事実、かも」
 大きくため息を吐いてから、情けない声でゴメンと謝られてしまった。
 言われた言葉を脳内で繰り返しながら、頭の中は目まぐるしくあれこれ思い出している。愛想のない孤高のイケメンだった高校時代とか、一転して愛想を振りまき人を集めまくるこいつに度肝を抜かれた大学入学初期の頃とか、レポートが書けないと泣きつかれて聞いた彼の生育環境とか家庭の事情とか。そういや、母親が倒れてから大学に入学するまで、友人と遊んだ記憶がないと言っていなかっただろうか。
 4年も人の輪の中で愛想良く振る舞うこいつを見てきたから気づいてなかったけれど、言われてみれば大半はこいつの顔やら人当たりのよさやらに群がっていただけで、こいつが自分以外の誰かを頼ったり面倒を見られてたりする姿は見ていない気がする。いやでも四六時中一緒にいたわけじゃないし、バイトだってしてたし、自分が居ないところでは自分以外にも頼ることはあっただろう。だって、こいつの世話を焼きたい女なんていくらでもいそうだし。こいつに頼られたら張り切るだろう男だって絶対いる。
 ああ、でも、愛想がいい八方美人と思うことはあったが、要領がいいと思ったことはないかもしれない。その顔と頭の良さを使えば、もっと楽が出来るだろうに。とか、もっと上を目指せばいいのに。なんてことを思っていたのを思い出す。
「お前がいなかったら、断りきれなくて何回かは食われた、とは思う」
「え? なんだって?」
 思考に耽っていたからか、暫くしてポソリと追加された言葉を一瞬聞き逃した。でも相手は余計なことを言ったと思ったようで、なんでもないとごまかそうとする。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった28

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「なぁ、いつから俺を好きだった?」
「ただの友達じゃヤダって思ったのは、大学1年目の秋頃、かな」
「つまり、俺を好きだったから、俺に手ぇ出した?」
「そう」
「なんで、そういうの一度も言わなかったんだよ」
 大学時代からもっとわかりやすく好意を示してくれてたら、絆されて恋人になっていた可能性だってあったと思うのに。でもこいつは好きだと言わなかったし、自分も確かめることはしなかった。
「少なくとも、4年の終わり頃なんてだいぶお前に毒されてたつーか、最後に一回抱かせてとかじゃなく、あのタイミングで真剣に恋人になってとか頼まれてたら、絆されてオッケーしたかも知んないのに。なんでただの友達に戻ろうみたいな提案した?」
「それは、まぁ、考えなかったわけじゃないんだけど」
 でもさぁと続く声はどこか不満げだ。
「俺が真剣に頼み込んだらお付き合いはしてくれたかもだけど、それって俺を好きで俺を選んでくれるのとは違うじゃん。俺に抱かれるのは本気で嫌そうだったし、童貞気にしてたっぽいし、卒業したら今度こそ彼女作るって意気込んでたし、そういう未練残した形で付き合ってもうまく行かないで別れるか浮気されるだろうなって思ったし、だったら友だちとしてでいいからずっと続けていける関係のが良いなって。というかそもそも好きになった最初から、卒業までに好きになって貰えなかったら諦めるつもりだったってのもある」
 好きって言って口説いたりはしなかったけれど、好きになって貰う努力はこれでもそれなりにしてた。という言い分を否定する気はない。そんな努力、言われなきゃわかんねぇよと言いたい気持ちはあるけれど。
 でもわからないなりに、その努力によって絆されまくっていたのは確実だ。だってズルズルとキスもフェラして貰うのも当たり前になって、酔ったら尻穴弄られて喘いだし、抱かれはしなかったけど素股まではした。
「いやそこは諦めずに、つか好きになってとか言えばよかったろ」
「なら、言ってたら女の子と付き合う未来諦めてくれたわけ? 童貞捨てれないままお尻の処女喪失しても良かったの?」
 さすがにそれには頷けない。うっと言葉に詰まれば、ほら見ろと言わんばかりのため息を吐かれてしまった。
「どっちかというと、あの頃って、俺のことは絶対好きになりたくないんだな、という強い意志を感じてたんだけど?」
「いやだって、それは……」
 相手がチラとも恋愛的な意味をもたせた好きを言わないのに、自分ばっかり好きになるとかどんな地獄だと思ったって仕方がないと思う。
「今俺を好きみたいに言ってくれるのだって、リアルの女の子相手に勃たなかったという事実があるからで、妥協と諦めなわけだし?」
「んなの、お前がモテモテなイケメンなのが悪いんだろ!」
 ひどい言いがかりだ、という自覚はあったが、それが正直な気持ちでもあった。
「は? え?」
 強い語調で吐き捨ててしまったので、相手は驚いた後でどうやら戸惑っている。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった27

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「とにかく、お前が相手なら勃つのか試したいんだって」
「それはいいけど、もし勃ったらどうすんの?」
 相手の反応的にダメと言われることはなさそうではあったが、了承の言葉にまずはホッとする。だって今更無理と断られる可能性も考えていた。なんせ、年末にはそういう関係はもう終わったからとあっさり帰られている。
「試していいってことは、お前にもまだ特定の相手は出来てないってことでいい?」
 あの時はダメで今オッケーなのはどう考えたってこちらがフリーになったことなのだろうから、これは一応の確認であって、もちろん否定が返るなんて思っていないから、相手の返答を待たずに続けてしまう。
「お前が今もフリーだってなら、俺はもう諦めて、お前を落とそうと思ってるよ」
「は?」
「これ、もしお前相手に勃ったらどうするか、の答えな」
 意味が理解できないのか、理解できるからその顔なのかはわからないが、なんとも微妙な渋面だった。眉間にシワが寄っている。
「それって、つまり……」
「お前に責任取らせたい」
「えっ?」
 想定外だっただろう返答に呆気にとられた顔になった相手に、ここは強気でニヤリと笑ってやる。
「俺の体こんなにしたのお前だから、お前が責任とって?」
「え、と、……いいの?」
「いいよ」
「わか、った」
 戸惑いはしたようだが、それでもあっさり了承されてしまった。ソワソワと落ち着きなく、しかも期待が滲む気配に、苦い笑いがこみ上げてくる。
 相手の誘いに乗ってエロいことを受け入れてきたのはこちらなので、本音では相手だけの責任ではないと思っているけれど、そういう指摘がいっさいないどころか、責任取れの言葉にこうも嬉しそうにされてしまったら、相手の気持ちなんて聞くまでもなさそうだ。まぁ、確認も兼ねて聞くんだけども。
「お前、俺のこと好きだよな?」
 もちろん恋愛的な意味でと付け加えてやれば、相手はまた眉間にシワを寄せて黙り込んでしまう。
「あれ? 違ったか?」
「ちが、わない……けど」
「けど?」
「なんか……なんか、」
「なんか、なんだよ」
「期待してた展開と、なんかぜんぜん、違う……」
 へにょっと眉尻を下げて、大きなため息とともに俯いてしまう。しかも顔を両手で覆い隠して。
「ふはっ」
 思わず笑ってしまえば、笑わないでよと力ない抗議が返ってくる。
「つか期待って、どんな期待してたんだよ」
「そんなの、俺にしか勃たないから俺でいいや、みたいな妥協とか諦めじゃなくてさぁ。俺のこと、好きになって欲しかったっていうか」
「だってお前が好きって言わないのに、俺から好きっていうの、なんか悔しいだろ」
「えっ!?」
「くふっ……」
 バッと顔をあげてマジマジと見てくるから、やっぱり苦笑がこぼれ落ちた。
「あ、からかってる!?」
「ってない。俺だってお前が好きだよ。多分」
「たぶん……」
「お前に触られたら勃つと思ってるし、だからお前に責任とってもらうつもりだし、お前が俺を好きって認めるなら恋人になってもらう気満々だし?」
「こいびと……」
「お前に恋人作る気ないなら、セフレとかでもいいけど。まぁそこらの誰かととりあえずで性欲解消のセックスすんのは止めろ、とは言うけどな」
「しないよ。てかセフレでいいとかも止めてよ。恋人に。恋人になるから!」
 必死かよと思ったら、やっぱり笑いがこみ上げた。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった26

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 部屋に一つしかない椅子に腰掛け、項垂れたままの相手を見つめて待つこと数分。恐る恐るといった様子で頭を上げた相手の顔は随分と不安げだ。
「さっきのだけど、あれは抱かれろって、意味?」
「は?」
「俺のせいで彼女と別れたなら、俺にその彼女の代わりをやれって話かな、と」
 不安そうにしているのは、お前のせいで別れたなんて言ったせいで、何かしらの責任を感じてでもいるのかと思っていたのに。どうやら全然違ったらしい。
「あー……」
 正直、その発想は全く無かった。
 彼女相手に勃たなかった、というのを3回も繰り返してしまった結果、見事にフラレてしまったが、でも完全に勃たなくなったわけじゃない。一人では出来ると言うか、オナニーは普通に女性を対象にしたオカズで抜いていたから、まさか生身の女性の体を前にして萎えるなんて思ってなかった。今日、こんなバカみたいなお願いをしに来たのだって、こいつが相手なら今も勃つのか試したいのが一番の目的で、そもそも勃たない可能性だってある。
「もしかして、まだ童貞だったりする?」
「わりぃかよ」
「てことは、彼女とうまくできなかった?」
 ぐぅ、と唸ってしまえば、それはもう肯定も同然だ。
「俺のせいで?」
「……そ、だよ。多分、だけど」
 彼女相手に勃たなかったのはこいつが原因とは言い切れないけれど、でもこいつのせいなんだろうとは思っている。
「つまり、俺のせいで童貞捨てれなかったから、俺で童貞捨てさせろよ、みたいな?」
「そんなこと言ってないだろ。つかお前抱きたいとか思ったことねぇよ」
 そうだ。そんなことをチラッとでも考えたことがあったなら、大学時代に口に出していたに決まってる。自分が突っ込まれるのは嫌だけど、お前が突っ込まれる側なら試してもいい、という提案をする機会なんていくらでもあったのだから。
「じゃあセックスって俺が抱く側やっていいわけ?」
「最悪、それもありかもしんねぇ、とは思ってる」
「え、嘘。マジで? いいの?」
 あんなに嫌がっていたくせにと言いたいのはわかるが、一転して嬉しそうにされるのもなんだか腹が立つ。抱いてくれという意味でセックスしてと言ったわけではないし、積極的に抱かれたい気持ちがあるわけでもないので尚更だ。
「最悪の場合、な」
「最悪の場合、って?」
「お前相手でも勃たなかったら、尻弄られるのも試してもいい」
 もしこいつに触られても勃たないなら、尻で気持ちよくなるのを試すのもありかと、チラッとだが考えたのは事実だ。なんせ尻を弄られて気持ちよくなってしまった過去があるのも事実なので。
 まぁでも、こいつ相手でも勃たない可能性はあるとは思いつつも、こいつに触られたら勃つんだろうなと思ってもいるので、尻の出番はない予定ではあるのだけれど。
「は? 勃たない?」
「オナニーは出来るからインポってわけじゃないと思うんだけど、彼女相手には反応しなかった」
「え、まさか俺にしか反応しなくなったとか、そういう話!? オカズは? それも俺?」
 食い気味に腰を浮かせて来るから、思わず椅子の上で背を反らせてしまった。
「ばか、落ち着けよ。オカズは普通に女だっつーの」
「なんで? 俺との思い出使ったりしないの?」
「しない」
 お前はするのかよ、と聞き返すのはやぶ蛇になりそうで止めておく。不満げな顔も無視決定だ。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった25

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 待ち合わせた時刻は年末の時と同じだったが、空はまだ充分に明るい。もうすっかり夏だなぁと思いながらも相手の到着を待つこと10分。こちらに気づいて駆け寄ってきた相手は、遅れてごめんと謝った。
「まだ5分前だぞ」
「そうだけど、もっと早く来れるはずだったから」
 待たせたくなくてと言った相手は、その後心配そうに、何かあったって言ってたしと続ける。彼からすれば、約束時間の5分前にここに自分がいること自体が、ことの重大さを意識せずにいられないのかも知れない。
 屋外待ち合わせなら季節関係なく、どこかで時間を潰してギリギリ到着になるように調整するタイプなのは認める。相手の心配を煽ろうと狙ってやったわけじゃないし、無自覚ではあったけれど、確かに、そんな調整をする余裕を失くしてはいるようだ。
「どれくらい待たせた?」
「気にすんなよ。それより行くぞ」
 歩きだしてしまえば、相手も黙ってついてくる。行き先は食事のできる店ではなく、今夜泊まる宿の部屋だ。相手は泊まらないだろうけれど、一応ちゃんとツインの部屋をとってある。
「どういうこと?」
 ホテルに入った辺りからずっと何か言いたげな気配を感じていたが、それでも黙って部屋の中にまでついてきた相手が、部屋のドアが閉まると当時に口を開いた。
「お前に、頼みたいことがあって」
「頼みたいこと? 誰にも聞かれたくない何かヤバい相談ってこと?」
 なにか変なことに巻き込まれてるのかと焦りだす相手は、どうやら何かを誤解している。でもまぁ、そんな誤解も当然かも知れない。
 年末にはホテルの部屋に酔った状態で二人きりになっても手は出されずに帰られているし、相手の中ではもう、自分はそういった対象からは外れたただのオトモダチなのだろうから、ラブホでもない普通のホテルの部屋に連れ込んだところで、エロ目的だなんて思うはずもないんだろう。それに彼女と別れてしまったことだってまだ知らせていないから、相手はいまだこちらを彼女持ちと思い続けているはずだった。
 まずはそこから伝えるか。
「お前のせいで彼女に振られた」
「へ?」
 言いがかりだと言わせるつもりはないし、説明をする気もあるが、取り敢えずで単刀直入に結果だけ伝えれば、相手はなんとも間抜けな顔で口を半開きにしている。イケメン台無しザマァと思うのに、その間抜け面にさえ胸の奥がキュンと疼く気がして鬱陶しい。
「だからお前、俺とセックスしてくれねぇ?」
「は?」
 若干イラっとして、投げやり気味に今日の目的を口に出せば、相手は欠片も想像もしていなかっただろうセリフに目を瞠っている。想定外なのはわかっているが、それでもその反応がどうにも腹立たしくて、零れそうになる舌打ちをどうにか飲み込んだ。
「てか待て待て待て。え、ちょ、なんで!?」
 意味がわからないと苦々しげに吐き出した相手は、ふらふらと部屋の中に進んでいくと、片側のベッドにドサッと腰を下ろして項垂れてしまう。
「「はぁ〜……」」
 二人分の大きなタメ息が重なって部屋に響く。それでも、その一息で、多少は気持ちが落ち着いた。
 相手のせいだけど、相手のせいだけじゃないのもわかっている。
「悪かった。ちゃんと説明する」
「や、待って、ホント、待って」
 八つ当たりじみたことをしてしまった謝罪と、あとは唐突すぎる無茶を言った自覚もあるので、ちゃんと説明しようとしたのに。
 ちょっと思ってた反応と違う。とは思ったものの、相手がこちらの話を聞ける状態にないのは見ていてなんとなくわかっていたので、仕方なく相手の復活を待つことにした。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった24

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 年末に酔い潰れたに近い醜態を晒した後も、相手の反応は特に変わりがなかった。一度は、都合がつくなら会えないかという、日時も場所も指定された誘いも貰った。残念ながら都合がつかないと言って断ったけど。
 相手の誘いはいつもこんな感じで、日時と場所が指定されているが、これは間違いなく、断りやすいようにと気を遣ってくれていると思う。事実、本当に別の予定が入っていて都合がつかなかったことなんてない。
 誘いに乗らなくても、付き合いが悪いと責められもしないし、じゃあまたの機会にとあっさり引き下がり、しかも数カ月後には本当に「またの機会」がやってくる。でもさすがに、誘われる頻度は少しずつ減っていた。
 都合がつかないと断っているのは自分なのに、誘われる頻度を気にして、少しずつ相手との距離が離れていくような錯覚に胸が痛いなんてバカらしい。相手とはもうとっくに、物理的にも心理的にも結構距離が取れているのに。
 今更、どう接していいかがわからなかった。そもそも自分と相手とは友人だったのかすら、今はもう自信がない。せっかく友だちになれたんだから、とか、卒業しても友だち止めないでしょ、とか、そんなようなことは言われたから、相手の中では今も昔も自分は友人なのだろうけれど。でも自分にとっての彼は、やっぱり友人の括りからは大きく外れた存在だと思う。
 友人として、気軽に会って酒を飲みながら近況報告や思い出話で盛り上がって、楽しい数時間を過ごして終われる相手じゃない。彼女の存在を忘れてホテルに誘うなんて、彼以外が相手ではありえない行動だった。
 卒業したあとも友人関係が続く、というのが想定外だったのだから、いっそ関わりを全て断った方がいいのかと考えたこともある。けれどその決心は未だにつかないままだった。
 多分、友人として付き合い続けたい気持ちは自分の中にもある。今はまだ、大学時代のあれこれが身に染み付いたままで、エロいことをしない友人関係に馴染んでいないだけだ。彼としか経験がないのも、もしかしたら原因の一つかもしれない。
 エロいことなしの友人関係にあっさり移行できた相手は、もともと童貞ではなかったし、卒業後も特定の相手は作っていないものの、やることはやってるって話だった。なのにこちらは、やっと彼女が出来はしたものの、童貞を捨てるには至っていない。
 彼意外と気持ちがいいことを経験すれば、それが当たり前になれば、彼とのあれこれを過去のものにして、ただの友人関係が築けるだろうか。そうなればいいなと思った。
 なのに。
 会いたいと自分からメッセージを送るのは初めてだった。相手のように、時間や場所を指定して、都合が付けばなんていう逃げ道を作らず、都合のつく日に合わせて相手の住まい近くまで行くからそっちの予定を知らせろと送った。
 何かあった? という心配するメッセージがすぐに届いたが、相手の予定は記されていない。あった、とだけ短いメッセージを送って、続けて、だから都合のつく日を遅れと再度催促してやれば、少しして、いくつかの数字が戻ってきた。当たり前だがその殆どが土日で、一番近い土曜の夕方を指定して会う約束を取り付ける。
 何があったかの詳細をメッセージでやり取りする気がないことは伝わっているようで、それ以上の追求はなく、可愛らしい了解のスタンプだけが送られて行きた。

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