イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった23

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 多少スッキリはしたが、胸の痛みもムカつきも消えず、結局、トイレから戻った後はそう長居せずに店を出た。
 時間はそこまで遅くなく、終電まではまだ時間がある。けれど当然どちらも2軒目などの話題は出さなかったし、言葉少なにただただ駅へ向かって歩いていた。
 時折酒で足元がふらつくのを、気をつけてと言いながら支えてくれる腕に、やっぱりなんだか胸が痛い。だって大学時代と違って、このまま家まで連れ帰ってもらえるわけじゃない。私立の男子校で双方電車通学だったから、今日は互いの実家の中間地点あたりで飲んでいて、駅へ着いたらそれぞれ逆方向の電車に乗るのだ。
 一緒にいたって話が弾むわけじゃないのに、というよりも友人と過ごす楽しい時間を潰したのはどう考えたって自分なのに、駅まであと数分のこの土壇場で、別れがたく思っているのがひどく苦しい。
 今日ので呆れられて、次の誘いが掛からなかったらどうしよう。
 そう思ったら足が止まってしまった。就職を機に住む場所の距離は開いたが、毎日通学するのは躊躇う程度の距離でしかないから、中間地点で会おうとするなら双方そこまで負担にならないとわかっていたのに。何度かあった誘いを今日までのらりくらりと躱していたくせに。次はもうないかもと思ったら、こんなにも惜しい。
「どうしたの?」
「あー……思った以上に酔ってる、っつか、こんなで無事、家に帰りつけんのかな、って、思って」
 ちょうど腕を支えられている時だったので、名残惜しい気持ちをそんな言葉で覆い隠して時間稼ぎをはかってしまった。きっと、酔いがもう少し覚めるまでどっかでお茶でも、という誘いを掛けても変には思われないはずだ。けれどこちらが口を開くより先に、相手が話し始めてしまう。
「じゃあタクシー捕まえる? それとも泊まるとこ探す?」
「へ?」
「家まで送ったらさすがに俺が帰れなくなりそうだし、お前の家からタクシーで帰るのはさすがにキツイんだよね。だからもしタクシーで帰るってなら、少しは俺もお金出すよ」
 こんなに酔わせた責任が俺にもありそうだしと、心配そうな顔で告げる相手の声は優しい。といよりも、さっき相手の恋人絡みの話で少し空気がオカシクなった以外、相手はずっと変わらずに優しいんだけど。
 でもそれがますます、これで最後かもと思わせてもいた。だって大学時代なら、店で吐くほど飲んだら多少は嗜める言葉があった。はっきり呆れる様子を見せていた。
「泊まるとこ、は?」
「そこそこ大きな駅だし、飛び込みで入れそうなビジネスホテルとかありそうじゃない?」
 少し離れた駅の反対側にラブホ街があることは知っているが、相手のいう泊まりはそこではなかったらしい。まぁ、向こうにラブホ街があるよ、なんて言われても、じゃあ泊まりでなんて言えるわけがないんだけど。
「じゃ、泊まる」
「わかった。じゃあ取り敢えず、あそこに見えるホテルで聞いてみようか」
 言われて指さされた方へ視線を向ければ、確かにホテルらしき建物がある。
 そして結果から言えば、無事に部屋は空いていて、あっさりチェックインが終了した。ただし、部屋はシングルで、今現在、この部屋の中にいるのは自分ひとりだ。
 ベッドに突っ伏しながら、恥ずかしさと後悔とで悶絶している。だってこんなの、想定外もはなはだしい。
 だって、ロビーの椅子に座らされていたから、カウンターでのやり取りは一切聞いていない。だから、鍵を手に戻ってきた相手に促されて部屋へ行き、一つしかないベッドを見た後でさえ、まさか自分ひとりのための部屋だとは思わなかった。
 足元がおぼつかないほど酔ってるのはこちらだけで、相手は自力で帰れるのだから必要がない。と言われてしまえば、お前も一緒に泊まれとは言えない。それでも一緒に部屋に来たってことは、それなりの下心があるのだろう。なんて思ったのさえ、どうやらこちらの勘違いだった。
 酔っ払いを無事に部屋まで送り届けるのが目的だったようで、一通り説明を済ませるとさっさと帰ろうとするから、思わず、する気かと思ったと告げてしまったのは多分未練で、そういう関係は終わったことと、彼女が出来たんだろうと指摘されたことが恥ずかしい。
 彼女が出来たのだから、相手の誘惑にも勝てるはずと思っていたはずが、自分から誘ってどうする。彼女が出来たのは最近で、まだそこまで深い関係にないとはいえ、その瞬間、彼女の存在をすっかり忘れていた自分に嫌気がさす。自分自身に裏切られたような気持ちだった。
 宿泊先を探そうかと言われて、自分だけがその気になっていたなんて。これはもう、恥ずかしいというよりは、なんだか惨めだった。
 部屋を出る間際に、じゃあまた、と告げていった相手の言葉には少しばかり救われているけれど。でも本当に次の誘いが来るかわからないし、次の誘いが来たとして、その誘いに乗れるかもわからない。
「はぁ〜……」
 深い溜め息が、顔を埋めた枕に吸い込まれていった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった22

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 相手の恋人絡みの話題は地雷だったのかも知れない。大学時代だって、お前がその気になりゃすぐに彼女なんて出来そうなのに、程度のことは口に出していたが、それ以上を追求したことはない。というかあれだけ一緒にいたら、恋人の有無なんて聞く必要がない。
 自分以外の男友達にも手を出してるのかな、と考えたことはあるが、仮にそういうことがあったとしても、それは継続的なものではなかったと思う。そんな相手がいれば気づいたはずだからだ。
 それくらい、大学時代の彼の生活の中心は自分だった。側に居たら大学卒業できそうだから、なんて理由を聞かされたことはあるし、実際彼の苦手な部分を手伝ったりもしたけれど、自分が居なければ彼の卒業が危うかったとも思えない。大学時代の彼ならば、自分じゃなくたって他に手伝ってくれる誰かを見つけられたはずだ。けれどそれ以外の意図については結局探らなかったし、彼のくれる快楽を対価として、それを受け入れていたのは自分なのだけれど。
 こちらを見つめる相手の表情はわかりにくく、怒っているようには見えないが内心どう思っているかはわからない。だからか、焦る気持ちよりも懐かしさが勝ってしまった。酔ってたせいもあるかも知れないが、こちらも相手の顔をただただ見つめ返してしまった。
 だってこの顔を知っている。高校時代の彼はいけ好かない孤高のイケメン扱いだったが、感情が読み取れないこの無表情感というか無愛想加減が、その頃と同じだった。あの頃、こんなにマジマジと見つめたことはないけれど。
 大学に入学したら、本当に同一人物かよ、と思うような変貌を遂げてしまったし、その彼と4年も共に過ごしてきた上に、高校時代なんてさして仲が良くもなかったのに、こんなにも懐かしいのがいっそ不思議だ。
「あっ……」
 思い出すと同時に、言葉が漏れた。
「おふくろさん、元気にしてる?」
「へっ?」
 突然の話題変換に相手は虚をつかれたようで、無感情だった顔に表情が戻る。その顔を見て、何を言っているんだろうと思ってしまった。ついさっきまで大学時代と変わらないにこやか顔を見てもいたのに。
 無表情顔を見ても焦らなかったのに焦ってしまう。
「あ、いや、なんか高校の時のお前と同じ顔してて、だから、もしかしてまた家族に何かあったのかも、とか、つい。てかお前、さっきまで笑ってたのに、なんでそんなこと思ったんだろ?」
 ごめん酔ってる、と酒のせいにしてしまえば、相手も気まずそうにしながら曖昧に頷いている。
「母は元気。それと、次の相手なんて、そう簡単には出来ないよ」
「え?」
「恋人は居ないし、恋人になりたいって思うような相手もいないし、気楽に解消するための特定の相手なんてのも居ないし、作る気もないよ」
「え、あ、そう……なんだ。って卒業してから誰とも?」
「そ、いうわけじゃ、あー……できれば今のは聞かなかったことに……」
 言葉の途中でハッとしてそんな事を言い出した相手は、ますます気まずそうだった。
「別に、隠すことないだろ」
「いやだって、特定の相手は作る気ないって言った側から、やることやってますってのは、ちょっと……」
「お前が相手なら、遊びだろうと一度きりだろうと抱かれたいって女が居たって全く不思議じゃないし、男はわかんないけど、でもまぁ、居ても驚きはしないって」
 そうだ。全く不思議はないし、彼がそれを受け入れたのだとしても、それを咎める立場ではない。でも、胸の奥がギュッとなってムカムカする。それはダイレクトに胃に響いたようで、せり上がってくるものを感じてとっさに口を手で覆った。
「わり、ちょっとトイレ」
 吐きそうな衝動をどうにか抑えて立ち上がる。こんなところでぶちまけるわけにはいかない、という理性は残っていた。次の衝動が来る前にと、慌ててトイレに駆け込んだ。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった21

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 卒業後に初めて顔を合わせたのは実家に戻っていた年末で、ほぼ一年ぶりと言っていい再会だった。メッセージアプリでの互いの近況報告などはそこそこしていたものの、どうにも顔を合わせるのを躊躇って、自分が逃げてしまっていたからだ。
 卒業後にまであんな関係を続ける気はない、というのは相手も了承していたけれど、あの綺麗な顔を前にして誘うような素振りや言葉を掛けられでもしたら、拒みきれる自信がなかった。
 それを今回、迷いながらも会うことを了承したのは、先日とうとう彼女が出来たからだ。自分自身の倫理観を信じているし、恋人という存在があれば、仮に相手の誘惑があっても拒めるだろうと思った。
 それは相手にも報告済みで、祝いのメッセージを貰ったし、先程彼自身の口からもおめでとうを言われた。なんの含みもない、というよりは本気で祝ってくれているのがわかる笑顔に、拍子抜けのような、安堵のような、そのくせ落胆だったり不満だったりの気持ちもあって、なんだか胸の中がぐちゃぐちゃで気持ちが悪い。
 気持ちが悪いのは、飲みすぎてる酒のせいとも言えそうだけど。
「ちょっと飲み過ぎじゃない? ほら、お水来たからこれ飲んどきなよ」
 先程追加注文するのに合わせて頼んだ水のグラスが運ばれてきて、受け取ったそれを相手が差し出してくる。素直に受け取り一息に半分ほど飲んだけれど、そんなのは焼け石に水のような気もする。胸の奥は以前、もやもやむかむか気持ちが悪い。
「お酒飲んでて機嫌悪いの珍しいよね。幸せ絶頂で、ノロケ聞かされまくる覚悟で来たのに」
 まるでそのノロケを聞くのを楽しみにしていたと言わんばかりに笑われて、頭がクラリとする。
「聞きてぇの?」
「ノロケを? そりゃあ、気にはなるよね。だってずっと欲しがってた初彼女なわけだし、彼女が居て楽しいって話、いっぱい聞きたいって思うよ」
 相手はニコニコ笑っていて、多分きっと本心なんだろう。
 彼女が出来た時の報告がテンション高めだったのは認める。そしてまだその報告をしてからそこまで日が経っていないのも事実で、そのテンションのままあれこれ聞かされる覚悟をしていたというのはなんらオカシクないのに。
 一緒になって初彼女が出来たことを祝ってくれようとするこの男は、間違いなく、いい友人だった。でもそれを素直に喜べていないのも事実だった。
「それより、お前の方はどうなんだよ。恋人、作んねぇの?」
 相手の近況報告には恋愛がらみとはっきりわかるようなものはなかったが、誰かと一緒に出かけたのだろう写真は何枚か貰っていた。
 どこそこのお店で食べたなんとかって料理が美味しかった。みたいな写真には、向かいに座っている人物のものだろう料理が写り込んでいたりするのだから、これはもう察するしかない。
「デートとかはしてるんだろ? あれって恋人じゃないの?」
「え? 何の話?」
「時々送ってくる美味しそうな料理の写真。あれってデートの時撮ったやつだろ?」
 相手の皿写ってるし、という指摘に、相手は少し驚いた後、あれはそういうのじゃないよと言う。
「相手、家族だったり、仕事関係だったりが主だもん」
 相手がそう言うのなら、多分嘘ではないんだろうけれど。でもそれと恋人候補が居ないかどうかは全く別問題でもある。
「へぇ。で、恋人は? それとも俺みたいなの見つけて気楽に解消してる感じ?」
 けっこう酔っていたからか、相手の気配が変わったことにはすぐには気づけなかった。相手の返答がないことに気づいて、相手のニコニコ顔から逃げるように見つめていた手元のグラスから視線を上げれば、相手がジッとこちらを見つめていた。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった20

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 そして、気持ちは良いがもどかしさも募っていく。だってこんな事をされるのは初めてだし、やっぱりちゃんとイケる刺激としては弱い気もする。もっとイケるくらいに強い刺激が早く欲しい。
「も、ちゃんと、やれ、ってぇ」
 言いながら、足を開く力に逆らって腿を閉じようと力を込めた。足を閉じれば更に狙いが定まるはずで、きっと固定された方がもっと強く擦れるだろうと思った。
「しょうがないなぁ」
「ぁあ?」
 しょうがないってなんだと、反射的に相手を睨んでしまえば、相手はへらっと笑ってごめんと言った。言いながら、足が閉じる形に抱え直してくれる。
「ぁんっ……」
 隙間の具合を確かめるようにゆっくりと腰を使われて、先程までとはまたちがった気持ちよさに、甘く上がる声を飲みそこねてしまった。
「はぁ……これは……」
 相手も相当気持ちいいらしいのが、小さく漏れた声とその表情とでわかる。うっとりと感じ入る様子で、ぬこぬこと隙間を出入りさせる腰の動きが止まらない。
 目のやり場に困って、思わずギュッと瞳を閉じた。
 結構前から、相手のとろけるみたいな気持ち良さげな顔を見ていると、なんとも言えない胸の締め付けを覚えるようになってしまったから、なるべく相手の顔は見ないようにしていた。かといって下半身がどうなっているかをマジマジと見るのだって無理だ。だって、閉じた隙間を抉じ開けるみたいに、相手のペニスがそこを何度も往復して、自身のペニスの裏側にそのペニスを押し付けてくる様子なんて、正気を保って見ていられるわけがない。
 けれど目を閉じたところで、気配や音や肌の感覚から相手の動きも自身の状態も把握してしまうし、相手の顔も狭い隙間を出入りするペニスのいやらしい動きだって余裕で想像が出来てしまう。与えられる刺激からだけではなく、興奮が増していくのを自覚していたし、漏れる声が抑えきれない。
「ぁ……ぁっ……ぁ、…ぁあ…ぁっ、ぁっ」
 相手の腰の動きがだんだんと早くなって、塗りつけられたローションがくちゅくちゅぬちゅぬちゅ派手に音を立てている。そんな中、さらにぐっと抱えられた膝を持ち上げられて、というよりは腹に付くくらい体を折り曲げられて、相手の気配が近くなる。
「ねぇ、こっち見てよ」
 名前を呼ばれて思わず目を開いてしまうと同時に、唇が塞がれて深く口の中を舐められた。既に知られた気持ちがいい場所を舌先で擦られれば、当然気持ちよさが増していく。快感に没頭して、このままイケそうかもと思ったその時。
「ん、んぅっっ!!??」
 突然左の乳首に強い刺激が走って慌てた。すぐに宥めるようにさわさわと柔らかな刺激に変わって、ようやく相手の片手が胸の先を弄っているのだと気づく。
「ちょ、やぁ、んぅ、んんぅっ」
 キスの合間に抗議の声をあげようとしたが、すぐにまた口を塞がれ続行される。最初は驚いた胸への刺激だって、これだけ体が昂ぶってあちこち気持ちよくなっている中じゃ、あっさり快感に変わっていった。一緒に弄られれば、乳首もちゃんと気持ちがいい。というのは先程実証済みでもある。
「んっ、んんっ、ぁ、ぁあっ、んっ、ぁ、いぃっ」
「イケそう?」
「ん、うんっ」
 じゃあイッての言葉と共に放置されていたもう片側の乳首に相手が吸い付いてきた。と同時に、グッグッと強く押し付けるようにペニスの裏側を擦られて、頭の中がチカチカと明滅する。
「ぁあああっっ、や、やあああっ」
 ビクビクと体を跳ねさせながら射精すれば、体を起こして膝を抱え直した相手がガツガツと腰を振り始めたので、たまらず悲鳴をあげた。
「ごめん、少しだけ」
 さすがに一緒にはイケなかった相手の、切羽詰まった声にそれ以上何も言えなくなる。
 チラリと見てしまった、快楽を追って必死に腰をふる相手のいつになくオス臭い顔に、慌ててギュウと目を閉じた。
 素股なんて許可するべきじゃなかったのかも知れない。
「んんっ」
 小さく息を詰める音と止まった動きに、相手もイケたのだとホッと安堵の息を吐きながらも、胸の内はかなりの動揺に襲われていた。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった19

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 一緒に気持ちよくなるなら、いつも通りペニスを重ねて扱くほうが確実だろうなと思ってしまうのは仕方がないと思う。けれど相手がいつも通りで済ます気がないのも明白だ。
 最後だから、という理由もはっきりわかっているし、応じる気だってあるけれど、でも自分が気持ちよくなれるかどうかは重要だろう。快感が足りない状態で、相手ばかりが気持ちよく感じている姿を見せつけられるのはなんだか怖い。目の前で、きれいな顔が色っぽく息を吐く姿を、変な男とどこか冷めた気持ちで見ていられた頃とは違うとわかっている。
 一緒に気持ちよくなる前提の行為だから、相手も気持ちよくなってもらわないと困るのに、相手が感じ入る姿に性的な興奮を覚えるようになったことを認めたくなかった。飽くまでも、体に直接与えられる快楽で興奮していると思っていたかった。
 だからはっきり気持ちがいいと言い切れる快楽が欲しい。
「んー、ちんこ同士擦れるはずだから気持ちよくはなれると思うけど。でも手で握って扱くほどの刺激はないだろうから、やっぱ焦れったいとか思わせる可能性はあるよね」
 それはつまり、結局の所焦らしプレイ続行って話ではないのか。口には出さなかったが、そんな不満を相手はどうやら察したらしい。
「萎えちゃったって感じでもないからこのまましてもいいかと思ったけど、じゃあもう少し気持ちよくなってからにする?」
 言いながら、未だローションで濡れたままの手が、躊躇いなくペニスを握ってきた。
「ぁあっ」
 ぬるぬるな手に包まれるだけで、腰の奥が痺れるように気持ちがいい。けれど握った手を上下させてくれたのは数度だけで、ペニス全体にローションをまぶし終えた後は、手のひらをペニスの裏側に押し当てるようにして上下させ始める。結構な圧をかけられているので、物足りなさはあるものの、充分に気持ちがいい。
「はぁ……」
 熱い息を吐き出せば、快感を拾っているのは相手にだって伝わってしまう。
「想像してみてよ。ここをさ、俺の硬いおちんちんがぬるぬる擦ってくるとこ」
 そう言われたら、想像せずには居られない。握って扱かれる方が絶対に気持ちがいいのに、ビクンと脈打つペニスは、まるでそれを求めて興奮しているみたいだった。
「どう? 気持ちよくなれそうでしょ?」
 んふふと笑う相手は満足げで、素股で一緒に気持ちがよくなれると確信したに違いない。
「も、いーから」
 わかったからさっさと始めろと促せば、敷かれたタオルで濡れた手を軽く拭った相手が、両足を抱えるように持ち上げてくる。
「ちょ、なんで!?」
 想像していた素股と違う。というか濡れた腿を合わせたその隙間にペニスを突っ込んで擦るんじゃないのか。なのに両足は開かれていて、相手のペニスがその合間をぬこぬこと擦りあげてくるたびに、自身の勃起ペニスがゆらゆらと揺れている。
「やっぱ足開いてると狙いがイマイチ定まらないね」
 どうやらこちらのペニスの裏側を擦り上げようとしているらしく、そう言いながらも成功率が上がっているのか、ちゃんと気持ちがいい瞬間があるから困る。
「ぁ、もっ、バカやってないで」
「そう言いながらもちょっと気持ちよくなってるよね?」
「うぁ、うっせ、ぇ」
「も、ちょっとだけ」
 開かれた足の間を擦るだけの行為で相手がどれくらい感じているかはわからないが、肉体的な快楽とは別の何かを楽しまれている気がする。いやまぁ徐々に成功率が上がっているのだから、何を狙って何を楽しんでいるかはわかるのだけれど。だんだんと気持ちいい時間が増えているこちらは気が気じゃない。
 素股がしたいと言われて、自分も一緒に気持ちよくなれるかは心配したが、自分ばかりが気持ちよくなる想定はなかった。

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イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった18

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「どうしたの? 俺を気持ちよくしてくれるんじゃないの?」
「気が削がれた」
「えーもー、期待だけさせてお預けとか意地悪すぎない?」
「俺が切れるまで焦らしプレイしようとしてたお前に言われたくないんだけど」
「じゃあそのヌルヌル、どうすんの? 俺に使わないなら、自分に使う?」
「は?」
 思わず聞き返したが、すぐに意味は理解した。
「オナ」
「ぜってーしない」
 相手の言葉を遮ってオナニー披露なんて絶対にしないと宣言すれば、相手はその勢いの良さがおかしかったらしく、だよねと言いながらも笑っている。笑いながら伸びてきた手が両手を包んで、手の中のヌルヌルをこそげ取るようにして奪っていった。
 ホッとしたし、当然期待もした。奪っていったヌルヌルで、自分を気持ちよくしてくれるだろうと考えたからだ。
 けれどその手は自分には伸びてこなかった。
「え……?」
 奪われていったヌルヌルは、相手の手によって、当初の予定通り相手のペニスを濡らしてく。袋や竿や亀頭を包み込んで、ローションを塗りつけるように動いている手に、もしかしなくても絶対しないとお断りしたローションオナニー披露を、相手の方が始めたらしいと知る。
「んっ」
 やがてゆるゆると握った竿を扱き出すとともに、甘く鳴った息にドキリとした。けれどその顔を見るのはためらわれて、視線は股間から外せずにいる。視線が外せないのはそれだけが原因でもないけれど。
 だって、自分の勃起ペニスを相手の勃起ペニスと一緒に擦り合わせて扱かれ、気持ちよく果てる行為を何度となく繰り返してきたが、相手のペニスをこんなにマジマジと見たことはなかった。
 見たことはなくとも感触でなんとなくわかっていた通りに結構でかいし、張り出すエラや浮いたスジを相手の指が上下するたび、まとわりつくローションがテラテラ光ってエロいと言うよりはなんだかグロい。
 顔に似合わなすぎだろと若干引き気味になるのは、あれを尻穴に突っ込まれることを思わず考えたせいかもしれない。いや、そんな許可は出さないし、許可なく突っ込まれる心配だってしてないけど。でも、抱きたいって言われた事実だって消せはしない。
「……はぁ、そんなじっくり見られると、興奮、するね」
 そんな事を言われて、さすがに慌てて顔をあげた。
「ちょ、おまっ、変態すぎ」
「ん、知ってる」
 相手の股間を凝視し続けていた自分を棚上げしても、相手はそれを指摘しては来ず、あっさり同意を返してくるから困る。
「認めんなよ。てか焦らしプレイやめろって言ってんだろ」
「っふ、これ、焦らしプレイなんだ?」
「そりゃ、だって」
「俺だけ気持ちよくてズルい?」
「まぁ、……」
「じゃあ、そろそろちゃんと一緒に気持ちよくなろうか。俺も今のでけっこうイキたくなったしね」
 やっとイケると思って安堵の息を吐きながら、そういやこちらばかりが弄られていたから、相手は直接的な刺激が足りなかったのかも知れないと思う。
「って、何する気だよ?」
 手の平にローションをたらして捏ねていた相手が濡れた手で触れてきたのは、結構な時間放置されながらも、相手のオナニーを見せつけられて中途半端な硬さを維持しているペニスではなく内腿だった。
「ここ、挿れさせてよ」
 挿れさせてと言われたけれど、触れられているのは依然として内腿でしかない。
「ここ、って、つまり……」
 素股かと聞けば、そうだと頷かれてしまった。なんとなくの知識はあるが、当然したこともされたこともない。
「本当に抱くわけじゃないから、いいよね?」
「ダメ、ではないけど……」
「ないけど?」
「お前はともかく、俺がそれで気持ちよくなれるのか疑問なんだけど」
 多分する方は問題なく気持ちがよくなれるんだろう。自分が名称を知っている程度には浸透しているプレイなわけだし。でもそれで、される側がどう感じるのかはあまり聞いたことがないと言うか、知らない。もし仮に女性も一緒に気持ちがよくなれるのだとしても、それが男である自分に適用されるとも思えない。

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