理解できない47

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 土日はさすがに彼もイッたというか、抜きあった後の流れでお尻の穴を慣らし始めた感じだったけれど、月曜から先は本当に自分だけだ。先週までは週の途中で一緒に抜き合うタイミングが有ったのに、今週はこちらが疲れてしまってそれどころじゃなかった。
 でもこの調子なら、明日の土曜にはとうとう抱いて貰えそうだ。彼もそのつもりでいるからこそ、毎晩しつこく弄って広げることに余念がないのだろう。
 そう思っていたからこそ、こちらだって彼の手を出来る限り受け入れてきた。イッたら終わってくれるのも、耐えるほどに疲れるのもわかっていて、限界ギリギリまでイカせてと口に出すのを我慢した。なのに。
「入っていい?」
 聞かれた最初は意味がわからなくて、というよりも多分殆ど聞こえてなくて、全く反応が出来なかった。
 だって、お尻の穴にはずっぷりと三本の指が埋まっていて、たっぷり注がれたローションをぐちゅぐちゅ鳴らしながら、揺らされたりゆっくりと出し入れされたりかき回されたりしている最中だ。股間のペニスはすっかり反応しきって痛いくらいで、早くイキたい気持ちが、いい加減こぼれてしまう直前でもあった。
「いい?」
「ん? え……? なに、が?」
 指の動きを止められて、ようやく彼の声がはっきりと耳に届いたけれど、その前の言葉を聞き逃していたせいで、やっぱり何を問われているのかわからない。
「抱かせて?」
「ええっ!?」
 盛大に驚いてしまったのは、今夜そう言われるとは欠片も思っていなかったせいだ。ただ、驚き過ぎたおかげか、快感に散っていた意識がはっきりしてきた。
「な、なんで?」
「なんでって、週末には抱けたらいいなと思ってたし、そう言っても来たろ?」
「えっ、え、でも……」
 金曜の夜を週末に含むなんて聞いてない。いやでも翌日仕事がないのは事実で、夜ふかししようと、いつも以上に疲れようと、体力的な問題はないと言えばない。躊躇う理由があるとすれば、昨夜も今朝も昼も、普通に食事をしてしまった事くらいだろうか。
「それは明日で、俺、そのつもりで……」
 そうだ。そのつもりで、夕飯は食べていない。というかそれは相手だって知っているはずなのに。
「わかってるよ。夕飯は外で食べてこいって連絡してきたことの意味くらいは、わかってる」
「なら、今夜は、まだ」
「それなんだけど、試させて欲しい気持ちが結構でかい」
「試す? って何を?」
「恋人同士のセックスに、そこまで食事制限する必要があるのかどうか」
「え?」
 どういう意味かわからなくて戸惑えば、大事なのは恋人同士ってとこな、と念を押されてしまった。でもそこを強調されたからって、わからない事に変わりはない。
 もしかして、自分には気づけないだけで、恋人同士の当たり前、みたいな何かがあるんだろうか。自分の知識が歪んでいるのも、行為慣れはしてても恋愛初心者だってことも、自覚はある。
「あの、ごめん、」
「違う。待って。お前が謝るような話じゃない」
 思わず謝罪が口から漏れてしまえば、相手が少し慌てた様子で否定の声を上げた。
「試させてって、言ったろ。抱かれる側が食事内容や時間や量を気にするのは、割とある話らしいし、だからお前の認識のが多分正しい」
「でも俺、恋人同士のセックスは、経験ない、から……」
 んぐっと喉から呻くような音を漏らして、相手がなんとも言えない顔をする。
「あの、ごめん?」
 事実を伝えただけという認識だった上に、その事実を相手だって知っているはずなのに、という気持ちから、今度は語尾が上がって疑問符が付いてしまった。
「この状況で、あなたが初めて、とか言ってくるのがわざとじゃないなら気をつけろよ、お前」
「あー……それは、ごめん」
 なるほど。経験がない=あなたとが初めて、と解釈されたらしい。

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理解出来ない46

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 ただ、当初の目的である準備の方は、あまり順調とは言えなかった。
 まず、ある程度こっちでの生活に慣れてからだと、最初の二週間くらいは家事を仕込まれていたし、一人で勝手に慣らし始めるのは帰宅時間と部屋数の問題で無理だった。
 当然、彼の職場に近い場所に彼の家があるわけで、今の所、彼より先に帰宅できた日はない。部屋の方も、一人暮らしとしては余裕がある広さとは言っても、一部屋が大きいだけで、寝るのは当然同じ部屋だ。セミダブルとは言えさすがに同じベッドで眠るのは休まらないだろうと、自分は持ち込んだ布団をベッド脇に敷いて寝ている。
 そもそも、一人で勝手に慣らしてでも急ぐ理由がない。でも、一緒に住んだら即、更にえっちな関係に進展するのかと思っていた節はあって、ちょっと拍子抜けだったのはある。もちろん、毎日会っているのだから、スキンシップの類は大幅に増えたけれど。そのまま流れで抜き合うような夜もあったけれど。
 しかも、慣らし始めたら始めたで、想定外の問題が発生した。
 暫く使っていないと言うだけで、どうすればいいかは当然わかっている。体だって覚えているはずで、そう大きな問題なんて起こるはずがないと思っていたのに。
 想定外だった、というだけで、原因ははっきりとわかっている。自分で慣らして広げるのと、相手の手で慣らされ広げられるのが全然違ったせいだ。
 人に慣らされるのだって、厳密に言えば初めてではないのだけれど、真っ更だった子供の体と、お尻で気持ちよくなった経験のある今の体では感じ方が違いすぎる。つまるところ、彼の指に感じすぎて困っていた。
 隠れてこっそり慣らす必要もなく、時間だってそれなりに使えて急ぐ必要がない、というのもかなり大きい。自宅だと、こっそり風呂場にローションを持ち込み手早く指を突っ込んで、軽く馴染ませたら広げるように何度か出し入れして終わり、というのが多かった。自室は鍵が掛からないし、ローションまみれのタオルを洗濯してもらうわけにいかないし、ティッシュでとなるとゴミ箱に大量のティッシュが溜まる羽目になる。
 でもここでの慣らすは大きく違う。まず場所が風呂場じゃなく、彼のベッドの上だ。なぜなら、風呂場が自宅よりもだいぶ狭い。湯船に二人一緒に浸かるのはどう考えたって無理なレベルで、洗い場もそれに見合った狭さだった。
 万が一汚れても構わないようにと、腰の辺りに大判のバスタオルを敷いてくれるが、頭の下は当たり前みたいに彼の枕だったり、そのままベッドシーツだったりする。だから時折、ふっと彼の匂いを感じてしまう事がある。それが嬉しいような、恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちになって、ドキドキした。ドキドキして、彼の指の動きをより一層、意識してしまう。感じてしまう。
 広げるのが目的だから、感じる必要はないし、正直あまり感じたくもない。だっていちゃいちゃくっついてキスして、気持ちが盛り上がって抜き合ってしまうのとは全然別だった。彼は服を着たままだし、イカせてはくれるけど、一緒にイッてはくれない。
 だいたい、イキたくて仕方なくなるまで弄らなくたっていいのに。広げるだけなら、とりあえず毎日突っ込んで揺すってしておけば、だんだん指の本数は増やしていける。まぁ、多少時間は掛かるけれど。
 でも、可愛くてつい、だとか、今週末には抱けるといいね、だとか。そんな事を言われながら弄られたら、嫌だとは言えないし、感じたら当然イキたくなってしまう。
 あんまり感じさせないで欲しいというこちらの訴えを聞いて、中の弱い場所を狙って弄られたりはしないけれど、でも時間を掛けてじっくりと何度も指を出し入れされれば、我慢なんてできようがなかった。
 おかげで、慣らし始めた先週末から先、自分ばっかり毎晩射精している。

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理解できない45

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 考えがまとまらないのか、気持ちが決まらないのか、なかなか次の言葉がない。
「準備、しないほうがいい?」
「それを聞くってことは、準備してきたから抱いて、ってする気はないんだよな?」
 とうとう待ちきれずに聞いてしまえば、確かめるようにそんなことを聞かれてしまった。もちろん、抱きたいと思ってくれている、という前提が必要なことはもう理解していたから、準備してって彼に言われるまでは勝手に進める気はない。
「それは、ない」
「なぁ、それって、どういう気持ちから?」
「どういう、って?」
 またわけがわからない質問が飛んできて、戸惑いながらも聞き返せば、気持ちを確認させてという話だと言われた。
「つまり、俺が求めなきゃしたいとは思ってない、ってことでいいんだよな?」
「まぁ、そうだね」
「それなら、俺が抱きたいとか言い出さないほうが良いよな?」
「なんで!?」
「いやだから、どうしてもしたいってわけじゃないなら、抱きたいとか言われないほうが、お前にとっては都合がいいはずだろ? ってのを確認したかったんだけど……」
 まぁでもわかったわ、と納得顔が近づいてくる。チュッと軽い音を立ててキスをされた後、そのまま少し横にずれた顔が更に近づいて、というよりも口元が耳に寄せられる。
「じゃあ、ちょっと一緒に暮らしてみようか」
「はぁあ?」
 全く想定外の言葉が耳に吹き込まれて、盛大に声を上げてしまった。顔を離した相手は、何やら楽しげに笑っているが、こっちは訳がわからなすぎて呆然と見ているしか無い。そんなこちらの反応さえも、相手はきっと楽しんでいる。だから頬を膨らませた所で、これもまた笑われるだけなんだろうけれど。
「ちょっと、意味分かんないんだけど!」
「うん、ごめん」
「ごめんじゃなくて! ってか今の、絶対、抱きたいから準備してきて、って言われる場面じゃないの?」
 そうだ。今度こそ絶対、じゃあ抱かせてって言って貰えると思ったのに。
「そうなんだけどさ。準備してきて、って言うより、準備手伝わせて、って方が良いかと思って」
「は?」
「抱かれる前の食事制限はともかく、お尻を慣らして広げるのは俺でも手伝えるだろ。週末会える時だけ使って慣らしてく、ってのでも良いけど、そうすると結局、お前が平日に自分で慣らしちゃう気がするし」
 実家よりここのが気を遣わずに慣らせるだろと言われて、まぁそれは確実にその通りだと思ってしまった結果、暫くは彼の家に住むことが決定していた。
 と言っても引っ越しみたいな大仰な話ではなく、当座必要な服やらを抱えて転がり込んだだけに過ぎない。一人暮らしとしてはそれなりに余裕がある広さかも知れないが、一緒に暮らそうか、なんて言われたって、私物を全て運び込めるほどの広さまではない、というのも大きかった。
 それと、どうやら一人暮らしの練習も兼ねているらしい。というよりも、それが彼の家に暫く住む理由として、おじさんたちに告げられている。
 もちろん、その言葉通り、家事はしっかりとやらされていた。とはいえ、料理経験がなかったの同様に、自室の片付けや掃除以外の家事的な事を殆どしたことがなかったから、やはり料理同様、教わりながら一緒にやっているし、それが楽しくもあるのだけれど。

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理解できない44

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「お前のせいで言えない、ってよりは……」
 慎重に言葉を選んでいるらしく、吐き出されてくる言葉はゆっくりで、どこか重々しい。
「今のお前を抱くことに、まだ、迷いがある」
「迷いって、どんな?」
「実際のとこ、どうなんだよ」
「どうって、何が?」
 質問に質問で返されてしまったが、何を聞かれているかがわからず、結局またこちらも質問を返してしまった。
「俺が抱かせてって言った場合、お前の負担、大幅に増えんじゃないの?」
「体の準備の話?」
「そう」
「抱きたいから準備してきてって言われたら、喜んで準備してくるけど」
 暫く弄っていない体だけど、急げば一週間でどうにかなるだろうか。それとももう少し余裕を貰ったほうがいいだろうか。
 仕事が終わる時間や、帰宅後に使える時間とを思い浮かべながら、どれくらいで可能かを即座に考え始めてしまったけれど、でもどうやらそういう話ではないらしい。
「いや、そうじゃなくて。というかそれは知ってるけど」
「え、じゃあ、何?」
 さっきから微妙に噛み合っていない様子のやり取りに、少しずつ苛つきが増していく。発した声も不機嫌さが滲んでしまった。
「抱きたいよって言ったら、お前があれこれ準備してくるのは知ってる。けど、その準備って、日頃から自分でお尻弄って広げたり、前日から食事減らしたり、ってのが含まれてるだろう?」
「そりゃだって、必要だし。あ、でも、今会ってる頻度で抱いてくれるなら、自分で弄って広げておかなくても平気かも」
「うん。だからさ、お前が平然とやろうとするそれらをな、俺がお前に突っ込みたいってだけで、して欲しいと思えないんだって」
 少し情けない顔になった相手が、疲れを滲ませた声でそんなことを言う。だって必要じゃん、という主張はダメだったらしい。というか、必要なのは相手だってわかっていて当然だった。
 突っ込みたいってだけでして欲しくない、と言われてようやく、何を問題としているかわかったような気がした。
「わかって貰えるか、わかんないけど」
「わかりたくないなぁ、って感じなら、する」
 彼の言いたいことはなんとなく理解出来たけれど、でもそれを嫌がられたら、いつまでもセックスできる関係になれないじゃん、と思ってしまうのだって仕方がないとも思う。だって、抱きたいと思ってくれているなら……
 そこまで考えて、ああそうか、と思う。抱きたいと思ってくれているなら、という前提が必要だけれど、自分だって彼に抱かれたいと思っているのだ。
 抱いて欲しいと迫って抱いて貰うことにはたいして魅力を感じないから、別に抱かれたいわけじゃないと思い込んでいた。セックスなんてしなきゃしないで楽だと思っているのに、抱きたい気持ちがなくなっていたらと思うと胸が苦しくなったのも、本当には抱かれたい気持ちがあったからだ。抱きたいと思ってくれている彼に、抱かれたい、という気持ちが。
「えっとさ、準備したのに抱いて貰えなかったら、面倒なことさせやがってとか、こっちの労力無駄にしやがって、とか思うかも知れないけど。でも、抱きたいって思ってくれてて、ちゃんと抱いてくれるなら、準備が面倒だとか大変だとかなんてちっとも思わない。だからもしそれを、俺の負担が増える、って思うなら、無駄にせず抱いてくれればいいと思うよ」
「そうだな……」
 そう言ったきり、彼は何事か考え始めてしまった。
 そうだな、というのは肯定なはずで、たぶんきっとこちらの気持ちはわかってくれたのだろうと思うけれど、それでも、彼が次にどんな言葉を告げるのか、ドキドキしながら待ってしまう。じゃあ抱かせて、って言ってくれたりしないだろうか。

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理解できない43

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 もし隠しているなら暴かれたくないのかも知れないと思えば、尚更聞きにくい。ついでに言えば、何も隠されてなかった時にどうするのか、というのも問題だ。
 何かしら理由があって抱きたいと言わないだけで、巧妙に隠されているのだとしたら。もしくはこちらがぼんやりと見逃していただけなら。次にどうするかはそれなりに手がありそうだった。
 でも本気で、もう抱かなくてもいいと思われていた場合に、自分がどうしたいのかはわからない。というか、考えていなかった。
 そっちの可能性だって、ないわけじゃないのに。
「企みっていうか、の続きは?」
 黙ってしまったせいで続きを促されたけれど、こんな場面になって思い至った事実の方に気を取られて、続く言葉は出てこない。
 相手をじっと見返しながら、抱きたい気持ちがないのだと言われる事を想像してしまう。
 セックスなんて、しなきゃしないで楽だと思う気持ちは確実にあるし、相手も同じように考えているなら、それは喜ばしい事かも知れない。自分から求めようとは思わない、というだけなら、自分だって同じだった。なのに。
 嬉しいよりも、苦しい感じで胸が痛い。
「あー……とりあえず、今、何考えてるか口に出す気は?」
 大丈夫だから言ってみろと、何がどう大丈夫なのかもさっぱりわからないような事を言われて、でも、きっぱりと大丈夫と言われると、それだけでなんとなく安心してしまう。安心して、話してみようかと思ってしまう。
 自分のことなのによくわからない、この矛盾した気持ちを、彼なら上手に解きほぐして、わかりやすく教えてくれるかも知れない。だって、自分よりもよっぽど、自分を理解してくれている。いつかみたいに、どんだけお前を見てきたと思うのって、言ってくれるかも知れない。
「俺のこと、抱きたい気持ち、なくなっちゃった?」
「は?」
「前に、早くもう一度抱きたいって、言ってたの、どうなったのかなって、思って」
「ああ、そんなことも言ったか」
「やっぱ、今はもう、抱かなくていい、って、思ってる?」
 言われて思い出した、みたいな言い方に胸の痛みが強くなって、吐き出す声が少し震えてしまった。
「抱きたい気持ちはちゃんとあるよ!?」
 じわっと涙が滲んでしまえば、相手が焦った様子で声を上げる。
「今だって、早くもう一度抱きたいとは思ってるし、二回目をどう誘うかだって今も悩んでる」
「嘘だっ」
「嘘じゃないよ。ただ、急いではいないし、抱かなくても満足できてる部分は大きくて、そのせいで、もう抱かなくてもいいんだとお前に思わせたのはあると思う」
 気持ちのままに声を荒げてしまえば、こちらの気持ちを落ち着けようとしてか、相手の言葉はことさら柔らかにゆったりと吐き出されてくる。だからこちらも、気持ちを落ち着かせるように、一度大きく息を吸って吐いてから口を開いた。
「でも、早く抱きたいのに急いでないって、おかしくない?」
「おかしくないだろ。早く抱きたいとは思っても、お前を急かして抱くんじゃ意味がないんだって」
「でも俺、もう、気持ちは育ったと思うんだけど」
「まぁ、育ってはいると思うけど」
「つまり、まだ足りないから、抱こうとしないだけ?」
 これは想定外だぞと思いながら聞けば、そうじゃなくてと否定されてよくわからない。
「気持ちが足りないって話ともちょっと違ってて、何て言うか、お前がさ、そこまで俺に抱かれたいと思ってなさそうと言うか、今の状態を気に入ってそうというか、」
「えっ、待って。つまり、俺のせいで抱きたいって言えないって話?」
 これもある意味想定外だ。何かしらの理由があって巧妙に隠されている、って部分は想像通りなのかも知れないけれど。

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理解できない42

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 いつだったか、早くもう一度抱きたいと思っていると、言われたことがあったはずなんだけれど。こちらの気持ちが育つのを楽しみに待っている、とも。
 でもそう言われたのは一度だけだし、今も同じように思っているとはとても思えない。
 気持ちが離れたわけでもなさそうだし、不満がある様子だってないし、多分間違いなく、交際は順調に進んでいるはずだ。なのになんで、抱きたいと言ってくれないんだろう。抱きたいと思っていたはずの気持ちは、一体どこへ行ってしまったんだろう。
 気にはなるものの、はっきりと問い詰めるべき問題なのかがわからない。だって不思議には思うけれど、不都合は特になかった。むしろ抱きたいと言われない方が都合がいい面も多い。
 なんせ、抱かれるには何かと準備が必要だ。いつ相手がその気になってもいいように、常に体を準備しておく、なんて態度を相手が望んでいないのは明白だったし、そうやって準備をしてしまったら、せっかく準備したんだから抱いて欲しいと考えてしまうだろう。そんな理由で抱かれたがるのだって、絶対に望まれていない。
 つまり、そう思って体の準備なんて全くしていないから、いざ抱きたいと言われたら、慌てて体を慣らす羽目になってしまう。今日は抱きたい気分だ、なんていきなり言われたって断るしかないだろうから、抱きたいなんて言い出さないなら、それはそれでありがたい事じゃないかとすら思えてくる。
 でももし、相手もそれをわかっていて、気持ちが盛り上がってこのまま抱きたいって思っても、どうせ無理だと口に出さずに居るだけだったら……
 いやでも、このまま抱きたい、みたいなギラついた様子は見た記憶がない気がする。触れ合う時の相手は、だいたいいつも、満足げで楽しげで、甘やかな優しい顔をしていると思う。
 それとも、見逃している可能性はあるだろうか。そういえば抜き合うような時はいつも、安心しきって相手の手に心ごと体を委ねてしまうし、素直に喘ぐ方が相手が喜ぶようだから、相手のくれる快楽に浸ってばかりで、相手のことを注意深く観察するなんて真似はしたことがなかった。
 しかし、そう思って相手の様子を探ろうとしたら、あっさり気づかれ、今日は気が乗らないのかと問われてしまった。
「そういうわけじゃ……」
「じゃあまた、何か企んでる?」
 今回は何? なんて聞かれたって、正直に言えるわけがない。まぁ抗った所で、気づかれた以上は聞き出されてしまうんだろうけれど。でもそう思ったからって、こういうわけでと素直に事情を言えるかは別問題だ。
「というかさ、なんですぐ、何か企んでるって思うの」
「いやでも実際、何か企んでんだろ?」
「だからなんでそう言い切れるのって聞いてんだけど」
「何も企んでなかったら、というか思い当たることがなかったら、お前はこういう反応しないから」
「こういう反応って?」
「教えるわけ無いだろ。意図的に反応が変えられるかはわからないけど、もし今後、出来るようになられると俺が困る」
 気づけないと大事なものを見逃しそうだと続けた相手の手が頬に添えられ、すっと顔が近づいてきて、ちゅっと唇に軽い音を立てた。
「で、どうしたら教える気になる?」
 頬に添えられていた手が頭に移動して、あやすみたいに何度か撫でられる。髪を梳いて頭皮を滑る指先が気持ちいい。
「企みっていうか、」
 促されるまま口を開くものの、どこまでなら口に出せるかを瞬時に考える。だってまだ迷っていた。抱きたい気持ちがどこへ行ってしまったのか、こちらが気づいてないだけで今も隠し持っているのか、直接問いただしていいのかどうか。

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