理解できない49

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 そんなこちらの安堵も伝わっているのか、相手の纏う気配も、こちらを見つめる表情も、なんだか随分と満足げで穏やかだ。
「お前、ほんっと、可愛いな」
 どういう部分を指して可愛いと言っているのかを確かめようとは思わないけれど、本心からの言葉だってことはわかっている。
「知ってる」
 平然とそう返すのは、きっと可愛げがない行為だと思うのだけれど、でもなぜか彼は、更に満足げに、楽しげに笑った。笑いながら、彼自身の準備を進めている。つまりは服を脱ぎ捨て、ゴムを装着している。
 そんな彼を前にして、ドキドキソワソワするのは、間違いなく期待だった。
「好きだよ」
 開かされた足の間に準備を終えた彼を迎えれば、そんな甘やかな声が降ってくるから嬉しくなる。顔がだらしなくニヤけそうで、恥ずかしくて、しっかり彼を見返せない。
「俺も、好き」
 視線を逸らしながら返した言葉はたどたどしくて、でも、相手にとってはなんの問題もなかったらしく、相手の放つ気配がますます甘く緩んだ気がする。
「お前の中、入るな」
「ん、来て」
 軽くうなずき促せば、お尻の穴に押し当てられたペニスの先に圧がかかって、そのままヌプリと入り込んでくる。久々のペニスとは言え、ここ一週間はほぼ毎晩彼の指を受け入れていたし、慣れた感覚に呼吸を合わせていく。
 慣れた感覚とは言っても、彼のはなかなかに立派なので、それなりに必死にはなったけれど。
「ぁ……は、……ぁあ……」
 ゆっくりと奥まで全部挿入された後、やっぱりゆっくりと彼の体が覆いかぶさってくるから、腕を伸ばしてその体を抱きとめた。
「苦しくない?」
「苦しい、けど、へーき」
 くっついた体が離れてしまわないようにと腕に力を込めてしまえば、辛いの我慢してるわけじゃないならいいんだと言われて、何度もキスが繰り返される。口だけじゃなくて、目や頬や鼻の頭にも。
 キスの合間に繰り返される「好き」の言葉に、同じように何度も好きを繰り返せば、そのたびに、相手が嬉しそうに笑ってくれるのがたまらなかった。ホッとして、嬉しくて、相手のことがますます好きになる気がする。
 だけど同時に、胸の奥がぐずぐずと崩れてしまうみたいに苦しくなって、目の前がぼやりと霞んでいく。やっと辿り着いた、いわば理想的なセックスが出来ているはずで、幸せの最中と言っていい状況のはずなのに、なんで涙が溢れてくるのかわけがわからない。
 言い訳するみたいに、嫌なわけじゃないんだとか、ちゃんと幸せなんだとか、本当に好きなんだとか、必死に言い募ってしまうこちらに、相手はいいよ、大丈夫だよと優しく頷くばかりで、なんで泣くのと責められることはなかった。ただ、そうやって優しくされると、ますます罪悪感のようなものが募って苦しい。
「ね、も、動いて」
 こちらが落ち着くのを待ってくれているらしい相手の欲の状態は、お腹の中でしっかりと感じている。せめてこれ以上待たせたくないと、お願いだからとせっつけば、少し迷う様子を見せた後、わかったと返された。

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理解できない48

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 煽ったつもりは当然なかったからつい謝ってしまったけれど、そもそもどこまで本気でこのまま抱く気なんだろう?
 こんな忠告をするくらいだから、明日じゃなきゃ嫌だってもっと強く言えば、引いてくれるのかも知れない。ただまぁ、イキたい直前だったはずのペニスはだいぶ萎えてしまったし、だから結構余裕ぶって話してしまっているけれど、動かされていないだけで彼の指はまだお尻に嵌っているから、あっさり諦めて明日仕切り直す気も少なそうだ。
「繰り返すけど、気になってるのが食事の件だけなら、試させて。このまま、抱かせてくれ」
 こちらの迷いに気づいてか、直球で繰り返される要求に胸の奥が甘く疼く気がした。連動するようにお腹の奥まで疼いて、お腹の中の彼の指をキュムッと締め付けてしまったから、さすがに少し恥ずかしい。
「ダメ?」
 甘やかな声が、ねだるみたいに確認を取ってくるのはズルいなと思う。しかもこちらの体の反応から、絶対に脈アリって思ってる顔をしてるのが憎たらしい。
 事実、躊躇う理由は一応あるが、何かを試したいと思っていて、本人が構わないと言うなら、拒否するほどの問題ではない気がしてきていた。だって考えてみれば、抱かれる前の食事制限なんて、叩き込まれた習慣の一つでしかない。
 更に言うなら、前回彼に抱かれた時も、この件に関してはだいぶ不十分だった。でも特に問題はなかったはずだ。
「ダメじゃない、けど……」
 頭の中では、このまま抱かれても問題ないだろうと思っているのに、口からは躊躇いの残滓がこぼれていた。しかも相手はそういう僅かな躊躇いを、きっちり拾い上げてくるのだ。
「けど?」
「このまましたって大丈夫だとは思うけど、でも本当に経験なくて、だから、せっかく恋人同士でする初セックスなのに、何か失敗したらやだな、とは思う、というか……あの、試すのって、今日じゃないと、ダメなの?」
 経験がないとか、初恋人セックスだとか、煽られると言うなら煽られてくれと思った。今度は間違いなくわかってて口に出しているのだから、それを理由に今すぐ抱いてしまえばいい。
 でもさっきみたいななんとも言えない顔を見せたりはしなかったし、わかってて煽るなと怒る様子もなかった。
「ダメじゃないけど」
 さっき自分が吐いた言葉と同じ言葉を吐かれながら、お尻からゆっくりと指が引き抜かれていく。それを残念に思うのは間違いで、わかってくれたと喜ぶべき場面だと思う。
 なんの心配も不安もない状態で、明日、抱いて貰えるなら、その方が絶対にいいはずだった。
 これは慣らす行為なんだから、一時はイク直前まで熱を上げたとは言え、今はかなり落ち着いてしまったし、明日に持ち越しでも問題ない。むしろお預けされるわけだから、明日への期待値が上がるってものだろう。
 なのに、なんでこんなにガッカリした気持ちになるんだろう。
「そんな顔すんなって。お前の言い分は間違ってないし、俺に引く気もない」
「んん?」
 間違ってないし、の後に続く言葉としては、何かが変な気がした。けれど、変だ、というのはわかるが、何がどうと説明できるわけではなく、結果、首をかしげるしかない。
「お前が言ってることはおかしくない。けど、わかった、じゃあ明日にしよう。とはまだ言ってないだろ。でもってそんな顔されたら、余計にそんなこと言えなくなるって」
 こちらの引っ掛かりも、その理由さえもわかった顔で説明されてしまったけれど、そんな顔ってどんな顔だとは聞けなかった。だって聞かなくたってわかる。
「なら、このまま、するの?」
 聞けばするよと即答されて、なんだか酷くホッとしてしまった。今日抱かれる予定は全く無くて、言われた最初はあんなに驚いたのに。いつの間にやら、このまま抱かれたい気持ちのほうが、断然大きくなってしまったらしい。

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理解できない47

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 土日はさすがに彼もイッたというか、抜きあった後の流れでお尻の穴を慣らし始めた感じだったけれど、月曜から先は本当に自分だけだ。先週までは週の途中で一緒に抜き合うタイミングが有ったのに、今週はこちらが疲れてしまってそれどころじゃなかった。
 でもこの調子なら、明日の土曜にはとうとう抱いて貰えそうだ。彼もそのつもりでいるからこそ、毎晩しつこく弄って広げることに余念がないのだろう。
 そう思っていたからこそ、こちらだって彼の手を出来る限り受け入れてきた。イッたら終わってくれるのも、耐えるほどに疲れるのもわかっていて、限界ギリギリまでイカせてと口に出すのを我慢した。なのに。
「入っていい?」
 聞かれた最初は意味がわからなくて、というよりも多分殆ど聞こえてなくて、全く反応が出来なかった。
 だって、お尻の穴にはずっぷりと三本の指が埋まっていて、たっぷり注がれたローションをぐちゅぐちゅ鳴らしながら、揺らされたりゆっくりと出し入れされたりかき回されたりしている最中だ。股間のペニスはすっかり反応しきって痛いくらいで、早くイキたい気持ちが、いい加減こぼれてしまう直前でもあった。
「いい?」
「ん? え……? なに、が?」
 指の動きを止められて、ようやく彼の声がはっきりと耳に届いたけれど、その前の言葉を聞き逃していたせいで、やっぱり何を問われているのかわからない。
「抱かせて?」
「ええっ!?」
 盛大に驚いてしまったのは、今夜そう言われるとは欠片も思っていなかったせいだ。ただ、驚き過ぎたおかげか、快感に散っていた意識がはっきりしてきた。
「な、なんで?」
「なんでって、週末には抱けたらいいなと思ってたし、そう言っても来たろ?」
「えっ、え、でも……」
 金曜の夜を週末に含むなんて聞いてない。いやでも翌日仕事がないのは事実で、夜ふかししようと、いつも以上に疲れようと、体力的な問題はないと言えばない。躊躇う理由があるとすれば、昨夜も今朝も昼も、普通に食事をしてしまった事くらいだろうか。
「それは明日で、俺、そのつもりで……」
 そうだ。そのつもりで、夕飯は食べていない。というかそれは相手だって知っているはずなのに。
「わかってるよ。夕飯は外で食べてこいって連絡してきたことの意味くらいは、わかってる」
「なら、今夜は、まだ」
「それなんだけど、試させて欲しい気持ちが結構でかい」
「試す? って何を?」
「恋人同士のセックスに、そこまで食事制限する必要があるのかどうか」
「え?」
 どういう意味かわからなくて戸惑えば、大事なのは恋人同士ってとこな、と念を押されてしまった。でもそこを強調されたからって、わからない事に変わりはない。
 もしかして、自分には気づけないだけで、恋人同士の当たり前、みたいな何かがあるんだろうか。自分の知識が歪んでいるのも、行為慣れはしてても恋愛初心者だってことも、自覚はある。
「あの、ごめん、」
「違う。待って。お前が謝るような話じゃない」
 思わず謝罪が口から漏れてしまえば、相手が少し慌てた様子で否定の声を上げた。
「試させてって、言ったろ。抱かれる側が食事内容や時間や量を気にするのは、割とある話らしいし、だからお前の認識のが多分正しい」
「でも俺、恋人同士のセックスは、経験ない、から……」
 んぐっと喉から呻くような音を漏らして、相手がなんとも言えない顔をする。
「あの、ごめん?」
 事実を伝えただけという認識だった上に、その事実を相手だって知っているはずなのに、という気持ちから、今度は語尾が上がって疑問符が付いてしまった。
「この状況で、あなたが初めて、とか言ってくるのがわざとじゃないなら気をつけろよ、お前」
「あー……それは、ごめん」
 なるほど。経験がない=あなたとが初めて、と解釈されたらしい。

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理解出来ない46

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 ただ、当初の目的である準備の方は、あまり順調とは言えなかった。
 まず、ある程度こっちでの生活に慣れてからだと、最初の二週間くらいは家事を仕込まれていたし、一人で勝手に慣らし始めるのは帰宅時間と部屋数の問題で無理だった。
 当然、彼の職場に近い場所に彼の家があるわけで、今の所、彼より先に帰宅できた日はない。部屋の方も、一人暮らしとしては余裕がある広さとは言っても、一部屋が大きいだけで、寝るのは当然同じ部屋だ。セミダブルとは言えさすがに同じベッドで眠るのは休まらないだろうと、自分は持ち込んだ布団をベッド脇に敷いて寝ている。
 そもそも、一人で勝手に慣らしてでも急ぐ理由がない。でも、一緒に住んだら即、更にえっちな関係に進展するのかと思っていた節はあって、ちょっと拍子抜けだったのはある。もちろん、毎日会っているのだから、スキンシップの類は大幅に増えたけれど。そのまま流れで抜き合うような夜もあったけれど。
 しかも、慣らし始めたら始めたで、想定外の問題が発生した。
 暫く使っていないと言うだけで、どうすればいいかは当然わかっている。体だって覚えているはずで、そう大きな問題なんて起こるはずがないと思っていたのに。
 想定外だった、というだけで、原因ははっきりとわかっている。自分で慣らして広げるのと、相手の手で慣らされ広げられるのが全然違ったせいだ。
 人に慣らされるのだって、厳密に言えば初めてではないのだけれど、真っ更だった子供の体と、お尻で気持ちよくなった経験のある今の体では感じ方が違いすぎる。つまるところ、彼の指に感じすぎて困っていた。
 隠れてこっそり慣らす必要もなく、時間だってそれなりに使えて急ぐ必要がない、というのもかなり大きい。自宅だと、こっそり風呂場にローションを持ち込み手早く指を突っ込んで、軽く馴染ませたら広げるように何度か出し入れして終わり、というのが多かった。自室は鍵が掛からないし、ローションまみれのタオルを洗濯してもらうわけにいかないし、ティッシュでとなるとゴミ箱に大量のティッシュが溜まる羽目になる。
 でもここでの慣らすは大きく違う。まず場所が風呂場じゃなく、彼のベッドの上だ。なぜなら、風呂場が自宅よりもだいぶ狭い。湯船に二人一緒に浸かるのはどう考えたって無理なレベルで、洗い場もそれに見合った狭さだった。
 万が一汚れても構わないようにと、腰の辺りに大判のバスタオルを敷いてくれるが、頭の下は当たり前みたいに彼の枕だったり、そのままベッドシーツだったりする。だから時折、ふっと彼の匂いを感じてしまう事がある。それが嬉しいような、恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちになって、ドキドキした。ドキドキして、彼の指の動きをより一層、意識してしまう。感じてしまう。
 広げるのが目的だから、感じる必要はないし、正直あまり感じたくもない。だっていちゃいちゃくっついてキスして、気持ちが盛り上がって抜き合ってしまうのとは全然別だった。彼は服を着たままだし、イカせてはくれるけど、一緒にイッてはくれない。
 だいたい、イキたくて仕方なくなるまで弄らなくたっていいのに。広げるだけなら、とりあえず毎日突っ込んで揺すってしておけば、だんだん指の本数は増やしていける。まぁ、多少時間は掛かるけれど。
 でも、可愛くてつい、だとか、今週末には抱けるといいね、だとか。そんな事を言われながら弄られたら、嫌だとは言えないし、感じたら当然イキたくなってしまう。
 あんまり感じさせないで欲しいというこちらの訴えを聞いて、中の弱い場所を狙って弄られたりはしないけれど、でも時間を掛けてじっくりと何度も指を出し入れされれば、我慢なんてできようがなかった。
 おかげで、慣らし始めた先週末から先、自分ばっかり毎晩射精している。

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理解できない45

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 考えがまとまらないのか、気持ちが決まらないのか、なかなか次の言葉がない。
「準備、しないほうがいい?」
「それを聞くってことは、準備してきたから抱いて、ってする気はないんだよな?」
 とうとう待ちきれずに聞いてしまえば、確かめるようにそんなことを聞かれてしまった。もちろん、抱きたいと思ってくれている、という前提が必要なことはもう理解していたから、準備してって彼に言われるまでは勝手に進める気はない。
「それは、ない」
「なぁ、それって、どういう気持ちから?」
「どういう、って?」
 またわけがわからない質問が飛んできて、戸惑いながらも聞き返せば、気持ちを確認させてという話だと言われた。
「つまり、俺が求めなきゃしたいとは思ってない、ってことでいいんだよな?」
「まぁ、そうだね」
「それなら、俺が抱きたいとか言い出さないほうが良いよな?」
「なんで!?」
「いやだから、どうしてもしたいってわけじゃないなら、抱きたいとか言われないほうが、お前にとっては都合がいいはずだろ? ってのを確認したかったんだけど……」
 まぁでもわかったわ、と納得顔が近づいてくる。チュッと軽い音を立ててキスをされた後、そのまま少し横にずれた顔が更に近づいて、というよりも口元が耳に寄せられる。
「じゃあ、ちょっと一緒に暮らしてみようか」
「はぁあ?」
 全く想定外の言葉が耳に吹き込まれて、盛大に声を上げてしまった。顔を離した相手は、何やら楽しげに笑っているが、こっちは訳がわからなすぎて呆然と見ているしか無い。そんなこちらの反応さえも、相手はきっと楽しんでいる。だから頬を膨らませた所で、これもまた笑われるだけなんだろうけれど。
「ちょっと、意味分かんないんだけど!」
「うん、ごめん」
「ごめんじゃなくて! ってか今の、絶対、抱きたいから準備してきて、って言われる場面じゃないの?」
 そうだ。今度こそ絶対、じゃあ抱かせてって言って貰えると思ったのに。
「そうなんだけどさ。準備してきて、って言うより、準備手伝わせて、って方が良いかと思って」
「は?」
「抱かれる前の食事制限はともかく、お尻を慣らして広げるのは俺でも手伝えるだろ。週末会える時だけ使って慣らしてく、ってのでも良いけど、そうすると結局、お前が平日に自分で慣らしちゃう気がするし」
 実家よりここのが気を遣わずに慣らせるだろと言われて、まぁそれは確実にその通りだと思ってしまった結果、暫くは彼の家に住むことが決定していた。
 と言っても引っ越しみたいな大仰な話ではなく、当座必要な服やらを抱えて転がり込んだだけに過ぎない。一人暮らしとしてはそれなりに余裕がある広さかも知れないが、一緒に暮らそうか、なんて言われたって、私物を全て運び込めるほどの広さまではない、というのも大きかった。
 それと、どうやら一人暮らしの練習も兼ねているらしい。というよりも、それが彼の家に暫く住む理由として、おじさんたちに告げられている。
 もちろん、その言葉通り、家事はしっかりとやらされていた。とはいえ、料理経験がなかったの同様に、自室の片付けや掃除以外の家事的な事を殆どしたことがなかったから、やはり料理同様、教わりながら一緒にやっているし、それが楽しくもあるのだけれど。

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理解できない44

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「お前のせいで言えない、ってよりは……」
 慎重に言葉を選んでいるらしく、吐き出されてくる言葉はゆっくりで、どこか重々しい。
「今のお前を抱くことに、まだ、迷いがある」
「迷いって、どんな?」
「実際のとこ、どうなんだよ」
「どうって、何が?」
 質問に質問で返されてしまったが、何を聞かれているかがわからず、結局またこちらも質問を返してしまった。
「俺が抱かせてって言った場合、お前の負担、大幅に増えんじゃないの?」
「体の準備の話?」
「そう」
「抱きたいから準備してきてって言われたら、喜んで準備してくるけど」
 暫く弄っていない体だけど、急げば一週間でどうにかなるだろうか。それとももう少し余裕を貰ったほうがいいだろうか。
 仕事が終わる時間や、帰宅後に使える時間とを思い浮かべながら、どれくらいで可能かを即座に考え始めてしまったけれど、でもどうやらそういう話ではないらしい。
「いや、そうじゃなくて。というかそれは知ってるけど」
「え、じゃあ、何?」
 さっきから微妙に噛み合っていない様子のやり取りに、少しずつ苛つきが増していく。発した声も不機嫌さが滲んでしまった。
「抱きたいよって言ったら、お前があれこれ準備してくるのは知ってる。けど、その準備って、日頃から自分でお尻弄って広げたり、前日から食事減らしたり、ってのが含まれてるだろう?」
「そりゃだって、必要だし。あ、でも、今会ってる頻度で抱いてくれるなら、自分で弄って広げておかなくても平気かも」
「うん。だからさ、お前が平然とやろうとするそれらをな、俺がお前に突っ込みたいってだけで、して欲しいと思えないんだって」
 少し情けない顔になった相手が、疲れを滲ませた声でそんなことを言う。だって必要じゃん、という主張はダメだったらしい。というか、必要なのは相手だってわかっていて当然だった。
 突っ込みたいってだけでして欲しくない、と言われてようやく、何を問題としているかわかったような気がした。
「わかって貰えるか、わかんないけど」
「わかりたくないなぁ、って感じなら、する」
 彼の言いたいことはなんとなく理解出来たけれど、でもそれを嫌がられたら、いつまでもセックスできる関係になれないじゃん、と思ってしまうのだって仕方がないとも思う。だって、抱きたいと思ってくれているなら……
 そこまで考えて、ああそうか、と思う。抱きたいと思ってくれているなら、という前提が必要だけれど、自分だって彼に抱かれたいと思っているのだ。
 抱いて欲しいと迫って抱いて貰うことにはたいして魅力を感じないから、別に抱かれたいわけじゃないと思い込んでいた。セックスなんてしなきゃしないで楽だと思っているのに、抱きたい気持ちがなくなっていたらと思うと胸が苦しくなったのも、本当には抱かれたい気持ちがあったからだ。抱きたいと思ってくれている彼に、抱かれたい、という気持ちが。
「えっとさ、準備したのに抱いて貰えなかったら、面倒なことさせやがってとか、こっちの労力無駄にしやがって、とか思うかも知れないけど。でも、抱きたいって思ってくれてて、ちゃんと抱いてくれるなら、準備が面倒だとか大変だとかなんてちっとも思わない。だからもしそれを、俺の負担が増える、って思うなら、無駄にせず抱いてくれればいいと思うよ」
「そうだな……」
 そう言ったきり、彼は何事か考え始めてしまった。
 そうだな、というのは肯定なはずで、たぶんきっとこちらの気持ちはわかってくれたのだろうと思うけれど、それでも、彼が次にどんな言葉を告げるのか、ドキドキしながら待ってしまう。じゃあ抱かせて、って言ってくれたりしないだろうか。

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