4章 友だちになりたい
【修司の家の寝室】
ベッドで二人とも横になっている。
ケイ:修司さん眠そう
修司:うん、ごめん……
ケイ:ううん、謝らないで
:俺と一緒に横になってると安心して眠くなるってのは
:普通に嬉しいと思ってるし
修司:でも
ケイ:それにほら
:今夜はロングコースで朝まで一緒だしさ
修司:今夜は、って言うけど
:最近は後の予定なかったら勝手に泊まってくよね?
ケイ:それは、そうなんだけど
:でも俺が泊まっても、迷惑、ではないでしょ?
:シュンさんにもずっと内緒にしてくれてるし
:(それが二人だけの秘密っぽくて嬉しいんだよな)
修司:迷惑ではないけどやっぱり申し訳ないよ
:毎回ロングで朝までお願いできればいいんだろうけど
:さすがにそこまで懐に余裕がない
ケイ:そこは気にしないでって言ったよね?
:というか無理してロング頼まなくていいんだからね?
修司:そうは言っても、先輩に黙ってる負い目もあるしさ
:たまにはお店の売上に貢献しとかないと
ケイ:でも俺が、修司さんともっとお話したくて勝手にやってるだけだし
:後に予約あればちゃんとそっち行くし
:つまり空き時間の有効利用なだけだから!
修司:んふふ
柔らかに笑う気配がする。
ケイ:(笑った?よね?)
:(滅多に笑ってくれないのにこのタイミングって)
:(ああ、暗くて顔よく見れないの残念だな)
修司:夜は俺がさっさと寝ちゃうからってのはわかってるんだけど
:なんでそんな必死なの
ケイ:だって気にされてロング頼まれると泊まりにくくなっちゃう
修司:無理はしてないつもりだから安心してよ
ケイ:それ、信じてますからね?
修司:うん、信じて
ケイ:(とは言っても、休職中って知っちゃってるし)
:(正直、もうお店通さなくたっていいくらいなんだけど)
:(もともと正規のお客ってわけでもないんだし)
:(ああでも、シュンさんはどう思うんだろ)
:(もし俺がやってることバレたとして……)
:(売り上げどうこう言わない気もするんだけどなぁ)
修司:スー……
ケイ:修司さん……?
:寝ちゃった?
修司:スー……
ケイ:(この安らかな寝息聞けるのって俺だけなんだよな)
:(シュンさんだって知らないんだ)
:(って思うとすっごい優越感)
:(ああああもー)
:(俺もちょっと仮眠とろ)
:(明日、修司さんに寝不足顔見せれないし)
【翌朝】
ケイが作った朝食を二人で食べている。
修司:うん、美味しい
ケイ:ありがとうございます
修司:というか凄いよね
:この朝食作ってくれるサービス
ケイ:希望者にだけですけどね
:だって朝までってお願いしてくれるお客さんに
:何か特別感出したいじゃないですか
修司:そういうとこも人気なんだろうなぁ
ケイ:あ!
修司:え、何?
ケイ:勝手なお泊りを黙っててくれるお礼に
:今度から泊まったら朝ごはん作りましょうか?
修司:いやいやいや
:悪いよ
ケイ:えー、作りたい〜
修司:だって朝までコースなお客さんへのサービスだろ?
ケイ:そうだけど
:俺が帰ったって朝まで眠れるんだから
:朝まで居る必要ないのわかってるし
:でも修司さん、ダメって言わないし
修司:俺、利害が一致してるからって言わなかった?
ケイ:それ、修司さんのメリットよくわかんなくて
:俺が朝まで居ると何かいい事あります?
修司:んー……リハビリ的な?
ケイ:リハビリ……?
修司:なんせ夜はすぐ寝ちゃうからね
ケイ:それってつまり、修司さんも
:俺ともっと話したいって思ってくれてる?
修司:思ってるよ
:人間不信酷くて仕事もままならないって言ったろ
:でもケイくん相手だとそんな気負わず話せるんだよね
:なんせ隣で安心しきって眠れるような相手だし
ケイ:あー相性がいい、みたいな?
修司:ケイくん選んで派遣してくれるあたり
:先輩は俺を良くわかってるよね
ケイ:(俺もシュンさんには感謝してるけど)
:(でもなんかちょっと面白くないよね)
:(って俺、シュンさんに嫉妬してる?)
:俺だって修司さんのこと
:もっともっとわかりたいって思ってますよ?
修司:うん、知ってる
穏やかに頷く姿に何かが引っかかる。
何が気になるのかと思っていると。
修司:本当に先輩が言ってた通りだよ
ケイ:え?
修司:うちのキャストは優秀だからって自慢したくなるの、わかる
ケイ:あ、わかったかも
:(修司さんのこと知りたがるの仕事でって思われてる)
修司:何がわかったって?
ケイ:あーその、俺
:修司さんと友達になりたい、です
修司:友達?
ケイ:うん、友達としてなら昼間会いに来たっていいでしょ?
:俺、修司さんのこと、もう
:あんまりお客さんって思えてないとこあるし……
修司:あー……
:ケイくん相手にリハビリしてるとは言ったけど
:でも友達になりたいとは思ってないと言うか
:今はまだ、新しい人間関係を構築するのに
:不安と抵抗が強すぎると言うか
ケイ:そ、ですか……
修司:せっかくの申し出、断ってごめんね
ケイ:いえ、俺こそ無理言ってごめんなさい
【別の日の夜】
隣で修司が安らかな寝息を立てている。
そっと頭を撫でれば甘やかな吐息が漏れた。
修司:んふ……
ケイ:ふふっ
:(気持ちよさそな寝息)
:(この前、断られちゃったけど)
:(でもやっぱり修司さんと友達になりたいなぁ)
:修司さん……
:(もっともっと修司さんのこと教えて欲しい)
:(もっと修司さんに近づきたい)
:(特別になりたい)
:(だって俺、こんなに修司さんのこと……)
:すき……
:(ああ、そうか)
:(いつの間にかこんなにも……)
:(だからシュンさんに嫉妬したりしちゃうんだ)
:(これ、気づいちゃって良かったのか?)
:(これからどうしよう……)
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