7章 手放せないなら恋人に
【ピコン♪】
ケイ:(あれ、修司さんからLINE?)
:(今夜の依頼はないはずなのに)
修司LINE:昨日の夜、由香と会ったって本当?
ケイ:(なんで知って……)
:(って、どう考えてもあの女が話したんだよな)
ケイLINE:本当です
修司LINE:泊まらず帰ったのはそのせいだったりする?
ケイLINE:多少は……
修司LINE:直接会って話聞きたいんだけど
:今日、家来れる?
ケイLINE:はい
ケイ:(添い寝関係なく呼ばれるの初めてなのに)
:(ちっとも嬉しくないよ)
:(むしろ何言われるか怖い)
【修司の家のリビング】
促されて緊張しながら対面の席に座る。
ケイ:それで聞きたいことっていうのは……
修司:由香から聞いたんだけど
:俺にこれ以上関わるなって言って追い返したの?
ケイ:そうですね
修司:由香との事が俺のトラウマになってるとか
:だからケイくんに添い寝頼んでるとか
:そういうのも言ってくれたんでしょ
ケイ:すみません
修司:なんで謝るの
ケイ:余計なことまで話しすぎたと言うか
:腹立って守秘義務守れなかったと言うか
修司:ああ、そうか
:でもケイくん、俺のことお客ってあまり思えない
:みたいなこと言ってたしね
ケイ:でも仕事として、お金貰ってる立場ですし
:それはもっと自覚してなきゃいけないのに
修司:由香から追い返されたって聞いて
:嬉しかったから気にしなくていいよ
ケイ:嬉しかったんですか?
修司:うん
ケイ:良かった……
:余計なことするなって、怒られるのかと思ってました
修司:なんで?
ケイ:だってあの女、じゃないや由香さんが
修司:由香に何言われたの?
ケイ:すっごい自信満々に
:修司さんが復縁を喜ぶはずだって
自信満々の部分を強調すれば修司から苦笑が漏れる。
修司:それはさすがにないけど
ケイ:ですよね〜
修司:でも由香らしいというか
:俺がそう思わせるような彼氏だったせいだな
:不快な思いさせてゴメンな
ケイ:不快というよりは不安ですかね
修司:不安?
ケイ:もし由香さんに未練あったらどうしようかと
修司:そういや由香にも俺を好きって言ったって?
ケイ:事実ですから
修司:由香を追い返したのは客の俺を起こさないためだけじゃない?
ケイ:当たり前でしょう
:少なくとも来客の報告くらいはしますよ
:結局由香さんから聞いちゃったみたいですけど
修司:由香が俺に接触してこなかったら
:何もなかったことにしたかった?
ケイ:そうですね
:知られたくなかったです
:だって聞いてますよね?
修司:何を?
ケイ:俺が、絶対奪わせないって言ったのとかも
修司:ああ、うん、聞いた
ケイ:恋人でもないくせにって言われたし
:それは事実で……
胸に痛みが走ってつい俯いてしまう。
修司:困ったな
ケイ:えっ?
慌てて顔を上げれば確かに困り顔だけれど笑っていた。
修司:添い寝依頼も未だ止められないのに
:こんなの知ったらますます君が手放せなくなりそうで
ケイ:えっ、じゃあ
:(これってチャンスだよな?)
:俺を恋人にしちゃえば……
修司:そうしたい気持ちは確かにあるかな
ケイ:それなら!
修司:でも両想いなら即恋人にってわけにも行かないでしょ
ケイ:え、なんで!?
:俺と恋人になるの怖いですか?
修司:いや、ケイくんとなら
:もっと関係を深めていけそうって思えてる
ケイ:なら他に何が問題ですか?
修司:俺の独占欲?
ケイ:ってのはどういう意味です?
修司:だって恋人が他の誰かと添い寝してるの
:嫉妬しないでは居られないよ
ケイ:あ、なんだそんなこと
辞めると告げれば何故か慌てられてしまう。
ケイ:(あれ?ホッとしてくれるんじゃないの?)
修司:そんな簡単に言わないで
:ケイくんは先輩のとこの売れっ子でしょ
:結構な額稼いでるんだろうし
:それを手放せとは言いにくいよ
:今の俺じゃ金銭的フォローは何も出来ないし
ケイ:俺、本業大学生って知ってますよね?
:今度の春卒業ですよ
修司:それは知ってるけど
:まだそれなりに先だよ
ケイ:ほんの数ヶ月ですって
:もともと続けられるかわからないんだし
:今辞めたって惜しいことなんかないです
修司:でもその数ヶ月でも先輩としては
ケイ:それもです
:多分シュンさんおめでとうって言ってくれますよ
修司:え、何がおめでとう?
ケイ:俺、シュンさんに報告済みなんです
:修司さん好きになっちゃったって
修司:ええっ!?
ケイ:修司さんを諦めずに支えてやってって
:俺の背中押してくれたのシュンさんです
修司:ま、じで……
ケイ:マジですね
:あ、じゃあシュンさんに聞いてみましょうよ
携帯を取り出して軽く振ってみせる。
修司:聞くって何を?
ケイ:修司さんとお付き合いするから仕事辞めていいですかって
修司:本気で?
ケイ:もちろん
ケイLINE:修司さんと付き合いたいから仕事辞めたいんですけど
ケイ:はい、送りました
LINE画面が見えるよう修司の前に置いてやる。
【ピコン♪】
ケイ:あ、返信早い
修司:……まじか
ケイ:なんて返ってきました?
修司:ほら自分で確かめなよ
シュンLINE:わかった
:店のことは心配しなくていいから
:修司のこと、よろしく頼むな
ケイ:ね、大丈夫だったでしょ
ケイLINE:任せて下さい!
ケイ:シュンさんにも任せてって送っちゃったし
:これで恋人にしてくれなかったら泣いちゃいますよ俺
修司:これで断るわけ無いだろ
:好きだよケイくん
:俺の恋人になって下さい
ケイ:やった!
:修司さん大好き!
:これからは恋人の俺をよろしくお願いします
喜びで頬が緩むのを抑えられない中、修司の顔が近づいてきてそっと唇が塞がれた。
<終>
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