君の口から「好き」って聞きたい1

秘密の手紙」の逆視点話です。

 高校入学後に知り合って、なんとなく気が合ってツルムようになって、今現在、間違いなく一番仲が良いと言える友人と、先日恋人になった。
 ふとした瞬間に見せる優しい顔に、何故かドキドキするようになったのはもう結構前で、自身の中に湧いた恋情を認めてしまえば、次に胸の中に湧いたのは期待だ。優しい顔は一種類じゃなくて、愛しげという表現が似合いそうな柔らかな時もあれば、どこか憂いを含んで寂しげな時もある。
 もしかして、相手もこちらに対して恋情と呼べるような想いを抱いているんじゃないのか。
 そう考えて当然の態度に思うこともあれば、相手への想いがそう思わせているのではと疑うこともあった。
 相手の気持ちが知りたくて、でも、せっかく築いた友情を壊すのも怖い。そしてそんな葛藤はお構いなしに自身の恋情は膨らんでいくから、だんだん友人で居続けることがキツくなって、追い詰められていたんだと思う。
 だから賭けをするような気持ちで、相手の下駄箱にメモを入れた。
 最初に入れたメモは「お前の想い人を知っている」だ。そのメモそのものは怪文書として捨てられて終わりでも、友人の立場でそのメモの話が聞けるかも知れない。そうしたら、想い人誰だよって、聞けるかも知れない。
 居ないなら居ないでいいし、そこで別の誰かの名前を聞かされたら諦められるかも知れないし、ワンチャン、その流れから告白してもらえるかも知れない。なんていうアホな計画でしか無かったけれど、相手はなんと封筒を自身の下駄箱に置くという方法で返信してきた。
 どうやら脅迫されているとでも思ったらしい。要求は何だ、と書かれた短なメモを前に、想い人が居るのは確定かなと思う。あと、言いふらされたらマズいような相手である可能性も高そうだ。
 これってやっぱり相手は自分なんじゃないの。なんて思って浮かれた結果、「告白すればいいのに」というメモを返したら、その日は朝からずっと何やら思い悩むような顔を見せていた。
 試しに軽く指摘して何があったか聞いたけれど、そのメモの話は教えてくれなかったから、やっぱり想い人って自分じゃないの、という気持ちが強くなる。だって無関係なら、こんなことがあって、って相談してくれるはずだから。
 だから、その想い人とは両想いだよ、とか、告白待ってるんだけど、とか、男同士ってとこで迷ってるなら、今どきそこまでダメって感じでもなくない? とか書き綴って、相手の下駄箱に置いた。その時に、告白すればいいのにの返事を受け取ったけれど、中のメモには「無理」の二文字しかなくて、もし無理な理由が、好きな相手が友人だからとか同性だからとかなら気にせず早く告白してよね、なんて思ってちょっと浮かれてすら居たのに。
 そんな浮かれた気持ちが吹き飛んだのは放課後の、大半の生徒が帰った後の閑散とした昇降口だった。
 用事があるから早く帰るなんて言っておきながら待ち伏せしていた相手が、「やっぱりお前だったんだな」って出てきた時の、呆れと憤りが混ざったような顔に、血の気が引く思いをした。
 相談してくれなかったのは、想い人が自分だったからじゃなくて、このメモが自分の仕業だってわかってたから。という可能性に、その時まで全く思い至っていなかったせいだ。
 きっと両想いだと浮かれて、早く告白してくれないかとワクワクしていた気持ちが一気に萎れて、泣きそうだった。まぁ、泣くことにはならなかったんだけど。
 つまりは予想通り自分たちは両想いで、無事にお付き合いが開始した。のだけれど。
 結局自分たちの関係は恋人である前に友人なのかも知れない。だって恋人になったからって何かが劇的に変わるなんてことはなかった。
 恋人らしいやり取りも、恋人っぽい触れ合いも、ほとんど無い気がする。どころか、もしかしなくても「好き」すら言って貰ってないのでは?
 両想いだと認めていたし、ぜひお付き合いしたいと言ったのは向こうだし、からかってないとも、笑ったのは可愛かっただけだとかも言ってたけど。でもこっちの気持ちを知った相手が、泣きそうになりながら「ふられるの?」なんて聞いたこちらに、同情した可能性はある気がする。
 優しいから、同情して付き合うことにしたなんて言わずに、恋人ごっこをしてくれているだけかも知れない。だから、キスどころか手を繋ぐこともないし、好きとすら明言はしてくれないのかも知れない。

続きました→

 
 
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