今更なのに拒めない8

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 次の木曜が、彼をこの家に住まわせてちょうど半年になる。なのに未だどちらからとも、半年が過ぎた後、どうするのかという話を出していなかった。
 敢えてその件には触れず、このままダラダラと同居生活が続くのかも知れない。別にそれでもいいかなと思っていた。だから、真剣な顔でお願いがあるんだけど、と言われた最初も、このまま一緒に住まわせてくれという話なのかと思った。
「今日はさ、勃ったら、というか多分勃つから、抱かせて欲しい」
「は? えっ? なんで?」
 なんで今日に限って勃つんだという意味での、なんで、だったのだけれど、相手はなぜ抱きたいなんて言い出したのか、という意味で受け取ったらしい。
「玩具じゃなくて、俺で、気持ちよくなってるお前が見たいから。あと、俺の勘違いじゃなきゃ、お前が俺に抱かれたがってるから?」
「え、いや、ちょっと」
 カッと顔が熱くなるのを自覚する。今の彼に抱かれてみたいなと思ったのは事実で、勘違いではないのだけれど、まさか気づかれていた上に、指摘までされるとは思っていなかった。
「やっぱ、抱かれたいって思ってくれてた?」
「あー……あー、まぁ、うん」
 赤面しているだろうところに重ねて聞かれて、誤魔化し方なんて思いつかずに、結局認めて頷いてしまう。
「それは俺に、ってことでいいんだよな?」
「それ、どういう意味?」
「ちんぽ大きな男なら、誰でもいいから本物で奥突かれてみたい、みたいな衝動でも湧いたかと思って」
「ち、違っ」
 確かに、抱かれたい気持ちが湧いたのは奥で感じるようになったせいだけれど、誰でもいいわけがない。
「抱かれたいのは、お前に、だよ。でも、お前、勃たないって……」
 相手は勃たないことをあっけらかんと口に出すから、その状態をどう捉えているのかイマイチわからないのだけれど、勃たないと言い切る相手に、冗談でも抱かれたいなんて口に出せなかった。原因は元嫁関連なのだろうなと思うから、こちらからはなるべくその事には触れないようにもしていた。
「うん。だからさ、医者、通ったわ」
「え、医者?」
「わざわざ治療するほどの事でもないかと思ってたけど、お前抱きたくなって、気が変わった」
 オナニー試して射精も出来たし、絶対本番もイケる。なんてことを、自信満々に言われて、マジマジと相手の顔を見つめてしまう。その視線を受けた相手がニヤリと笑って、だからさ、と続けた。
「上手に抱けたら、俺に、惚れてよ」
「は?」
「お前から惚れてくれるの、待とうって思ってたんだけど、でもほら、木曜には出てかないとだからさ」
「待って。出てくの?」
「ああ、うん。だって、最長でも半年って言ったの、俺だし」
 部屋ももう決まってると言い切られて、途端に泣きたいような気持ちになる。ちゃんと出ていく気があったなら、言っておいて欲しかった。
「このまま、居座る気かと、思ってた」
「このまましれっと居座っても、お前はそれも受け入れちまうんだろなぁ」
 苦笑混じりのそれは、なんだか批判的だった。気分が落ちている自覚はあるし、被害妄想という可能性もあるけれど。

続きました→

 
 
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