バレバレだろうと一応AVだの設定だのの話題は避けて、出来る限りでいいから「気付いたら閉じ込められていた初対面の二人」というていでいて欲しい。という注意を受けて何度も謝ってしまったが、初心者に設定有りの出演をしてもらってるんだからそんなに気にしなくてもいいし、問題があればまた止めたり最悪編集でどうにかするからと言われてホッとする。
そんな中、最悪編集でどうにかなるならよほどのことがなきゃノンストップでも良いのではないかと言い出したのは相手役だった。
「えっ?」
「まぁ、閉じ込められて仕方なくセックスする辺りの設定は意識して貰うとしても、初対面の二人には違いないわけですし、別に演技なんて必要ないんじゃないかと」
むしろ中断されると萎えると言った相手は、次からはこちらが失言しても釣られて反応はしないのでと言い切る。
「なんでそんな自信満々なの。そっちも今日が初撮影って言ってたよね?」
「それ、AVは、って注釈が付くやつです」
「AVは?」
「撮影したりされたりは慣れてんですよ。部活的なやつで」
「あー……なるほど。なんか妙にカメラに慣れてると言うか、気にならないの凄いとは思ってたけど、そういう」
「そうです。元々卒業したら即こっちの世界来たいと思ってて、童貞で処女なのも、初物は高く買ってもらえるんじゃないかなぁという目論見というか下心?」
「へぇ」
金に困って仕方なく応募した自分とはえらい違いだ。カメラの前で童貞やら処女やらを捨てて、それすら金に変えようという精神というか発想が凄い。年齢なんて一つしか違わないのに、見た目なんて下手すりゃ中学生でも通りそうなのに、自分よりよっぽどしっかり生きてそうだと思う。
卒業したらこの世界に来たかった、とか平然と言い切る辺り、かなり変な子っぽくはあるけれど。こちらは髪色まで変えておっかなびっくり撮影に来てるというのに、世間の目と言うか、身近な人たちへの身バレなど全く気にならないのだろうか。
そんな事を考えながら思わず相手をジッと見つめてしまえば、今の所そう簡単に処女を捨てる気はないと前置いてから。
「バリタチ希望の童貞です」
そんな事を言い切って可愛く笑ってみせるから笑ってしまう。
「俺に、抱かれてくれます?」
「うん。いいよ」
「キスは? しても?」
「え、まさか、それもファーストキスとか言い出す気じゃ……」
さすがにそれはないだろと思うものの、わざわざカメラの前で童貞を捨てようとする変な子だから、キスだって未経験の可能性はありそうだ。
「ファーストキスだって言ったら、キスもさせてくれる?」
「ま、じで……」
肯定も否定もないまま可愛い笑顔が近づいてくるのに合わせて、そっと瞼を下ろしてしまう。
軽く唇に柔らかに押し付けられるだけの唇。それを何度も繰り返されて、自分から口を薄く開いてその先を誘った。
けれどすぐに深いキスへとはならず、開いた隙間をチロチロと舐められてもどかしい。しかも、更に口を開いて相手の舌を絡め取ってやれと舌を伸ばせば、それを避けるみたいにスッと頭が離れてしまう。
なんでだよ。という不満に閉じていた目を開ければ、目の前のカメラに心底驚いて、うぎゃっと変な声を上げてしまった。
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