無い物ねだりでままならない14

1話戻る→   目次へ→

 開脚して座る足の間、身を丸めるようにして先輩が股間に頭を寄せている。しかもその口の中には、勃起した自身のペニスの先端が収まっているのだ。
 上手く出来る自信がないと言った先輩の技巧は、多分、ちっとも下手じゃない。
 正直に言えば、下手くそと聞いて、歯を当てられてヒヤリとするようなフェラをされるのかと思っていたのだ。痛い思いをするのはさすがに嫌だけれど、でもそんなぎこちなさだってきっと嬉しい。そう思うだろう自信があったのに。
 ただ、舐めるところや咥えるところをこちらに見せつけ煽るような真似は一切しないし、先程手でいじっていたとき同様に、一人で熱中していて、必死に格闘しているという印象がどうにも拭えない。なので、若干置いてきぼり感はあった。
 必死にしゃぶりついてて可愛い、という脳内変換は余裕なので別に構わないけれど、もし過去に下手くそと言われた経験があったとしても納得だなとは思ってしまう。
 先輩を抱いた他の男のことなんて考えたくなくて忌々しいが、これを可愛いと思えない男が先輩の恋人ヅラをする方がもっと忌々しいので、体だけの関係で終わってよかったと思うしか無い。
「ね、先輩」
 呼びかければ、少し頭が上がって視線だけがこちらを窺ってくる。
 頭が上がったことで、先輩の口に咥えられた自身のペニスが目に入るようになり、ズンと腰が重くなった。口の中で膨らみを増したペニスに、先輩が少し驚いた様子で目を大きくしたのがわかって笑ってしまう。
「先輩の口に俺のちんこ入ってるの見たら、ね」
 原因を教えてあげれば、困ったように眉を寄せた後、その口の中からペニスが吐き出されてしまった。
「あれ? 終わっちゃうんです?」
 余計なことをしてしまったかと残念に思っていると、身を起こした先輩は申し訳無さそうに、喉を突かれるのは苦手で、と言う。
「喉? そんな奥まで咥えてくれなくても、充分気持ちよかったですけど?」
「え、あ……いや、……そう、か、勘違い、か。スマン」
「先輩が俺のちんこ咥えてるとこ、もっと見たかっただけなんですけど。あと、俺が感じてるのも、ちゃんと見て欲しくて」
 何を勘違いしたんだろうと思ったけれど、それを追求するよりも、何がしたかったか訴えるのを優先した。追求して出てくるのは過去の男関係だろうな、と思ってしまったのも大きい。
 気にならないかと言えば当然気になるし、何をされたかは知りたいのだけど。でも先輩の反応的にあまりいい思い出ではないのだろうし、先輩が嫌な思いをした過去を知って、冷静でいられる自信がないからだ。
 過去に嫉妬を膨らませても仕方がないのはわかっているし、場合によっては先輩を追い詰めそうで怖い。何かしら引きずっているらしい先輩を、これ以上追い詰めたいわけじゃなかった。
「気持ちよかった、のか?」
「萎えてませんでしたよね、俺」
「でももっと気持ちよくなれる、というのを示したかったんだと思ったんだ」
「それは間違ってないです。先輩が俺のちんこ美味しそうにペロペロもぐもぐしてるの見たら、絶対もっと興奮しますもん。今も、先輩の唇濡れてるの見てるだけで、そこに俺のちんこ入ってたんだなって興奮してますよ。ちゅっちゅ吸われて、舌先でおしっこの穴つつかれて、溢れる先走りペロペロ舐められてたんだなって考えるだけで、ちんこガチガチですけど」
 言えば先輩の視線が股間に向かったので、見せつけるみたいに少し腰を押し出してやる。
「お前は思ってたよりずっと、随分とあけっぴろげだな」
 突きつけられた勃起ペニスからそっと視線を逸らした先輩は恥ずかしそうだ。
「先輩に体拭かれただけで勃っちゃうのを隠したい程度の羞恥心はありますけど、でも今、隠す必要感じないですし。むしろ、こんなに興奮してんだぞって見せつけてやりたいって思ってますし。てか、先輩のせいでこうなってんですよ、って突きつけられるの、嫌ですか?」
「いや、……ではない、な。むしろ嬉しい気持ちもある。ただ、どうしていいかわからなくなる。恥ずかしくて」
 すまない、と謝罪される意味がよくわからない。
「思ってたよりめちゃくちゃ恥ずかしがり屋だった先輩、可愛いですよ?」
 出会い系なんて単語が出たくらいだし、もっと積極的なのかと思っていた。でも先輩の様子を見る限り、出会い系で遊びまくってたとは思えないし、飽きてやめたとかでもないんだろうと思う。むしろ、いい出会いが得られなかった結果が、この余裕の無さなのかなと考えてしまう。
「それ、は……うん、ありがとう。気を遣わせて、すまない」
「あ、まだそういう事言うんです?」
 本気で可愛いって言ってんのにとむくれて見せれば、先輩は困ったように小さく笑った。
「それはわかってる。わかってるんだが、本当に、どうしていいか……」
「そんなの、嬉しいって笑ったり、もっと可愛がってって甘えたり、とか」
「難易度が高い」
「じゃあ俺が言いましょうか。もっと可愛がりたいんで、そろそろ先輩も服、脱ぎませんか?」
 まだ俺に裸見られるの無理ですかと聞けば、先輩はゆるく首を横に振って服に手をかける。
「あ、待って。脱がせたいです!」
 先程、風呂場の前でそう声を掛けれなかったことが、心に引っかかっていたんだろう。軽口どころか、食い気味に訴えてしまった。
 でも、困ったような顔をして謝ってばかりだった先輩が、小さく吹き出すように笑ってくれたから、結果オーライで良しとする。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です