先輩のアパートはバスとトイレが別になっている作りで、それは先輩が高身長でそれなりにしっかり筋肉のついた大きな体をしているが故に譲れなかった部分らしい。前回トイレは何度か借りたので、その時に教えてもらった。
そして今日は、前回覗くことのなかった風呂場の方に、帰宅早々押し込まれている。ゆっくりあったまってこいと、ゆっくりの部分を強調されたので、どうやら準備的な何かで部屋の中に居て欲しくなかったんだろう。
なのでおとなしく風呂場で熱いシャワーを浴び続けているわけだが、正直少し困っても居た。出るタイミングが掴めない。それに、先輩と離れて一人きりになったせいか、少し冷静さが戻っているようだ。
今は了承されたという興奮が去って、不安と緊張とに襲われている。
あんな大見得を切っておいて、万が一緊張で勃たなかったら、絶対相手を傷つけてしまうだろう。可愛いとこ見せてとか言ったはいいけど、下手すぎてちっとも気持ちよくなってもらえなかったらどうしよう。
そんなことをグルグルと考えていたら、背後のドアがコンコンと鳴って肩どころか全身がビクッと跳ねた。
「は、はいっ!!」
「そろそろ代わってくれ」
「わ、わかりました。すぐでますっ!!」
大慌てでシャワーを止めて風呂場を飛び出せば、そこには当然先輩がいて、随分と驚いた顔をされたあと困ったように笑われて、用意されていたバスタオルを頭の上から被せられてしまう。そしてそのまま、なぜか先輩に体を拭かれている。しかも無言で。
タオル越しとは言え先輩に体の線をなぞられて、恥ずかしいのに興奮する。もしくは、恥ずかしいからこそ、興奮してしまう。
不安と緊張で勃たなかったらどうしようと思っていたはずが、あっさり股間が反応していて、しかも隠すすべがない。この状況では絶対に気づかれる。とはいえ、頭をもたげ始めたペニスをそのまま晒すわけにもいかず、そっと両手で覆い隠した。
「本当に、俺で、勃つんだな」
「そぅ、言ったじゃないすか」
ちょっと前まで勃たない可能性を考えてたなんてことは教えず、すねた口調で心外だと訴えておく。
「触ってもいいか?」
「え?」
「触らせてくれ」
「え……っと、でも先輩これからシャワー使うんですよね?」
「そうだな」
「俺、先輩の準備終わるまで、待てます、けど……? んん?」
言いながら、何か違う気がすると思って、頭の中で首をひねる。
「そうか。じゃあ、部屋で待っててくれ。部屋は温めてあるが、寒ければ布団の中に潜っていてもいい」
「え、あ、はい」
「それと、反応したお前が辛そうだから先に抜いてやろう、みたいな意味じゃなく、俺のこのでかい手で握っても萎えないのか確かめたかっただけだからな」
そう言って、大きな手が軽く頭をなでていく。
「あー……なるほど?」
「ほら、早く部屋にいけ」
こっちは今まさに裸体を晒しているのに、先輩はこちらを追い出してから脱ぐ気でいるようだ。
なんかずるいなと思いはしたが、脱がすの手伝いますよという軽口は出なかった。大丈夫です、萎えたりしません。そう断言できなかった悔しさと後ろめたさを抱えていたせいだ。
「じゃあ、待ってますから」
それだけ告げてその場を後にする。
戻った部屋の中は、クリスマスの時と一変していた。鍋を食べた座卓が仕舞われ、布団が敷かれている。しかも、枕元にはタオルとティッシュとローションとゴムの箱が置かれていて、準備万端だった。
うわー、いかがわしい。
これからそれらを使うのは自分と先輩だとわかっているのに、目の前に突きつけられた馴染みのない景色になんとも言えない気持ちになる。目のやり場にこまるというか、どうしていいかわからない。
特に寒くはないけれど、布団の中に潜って目を閉じておこうか。それとも、臆せずしっかり眺めて、それらを使うシミュレーションでもしておくべきか。
「あれ?」
自分が使うことを想定したイメージプレイをなどと考えたせいで、ローションが開封済みなことに気づいた。中身も少し減っている。
ゴムの箱に手を伸ばし、そちらも確認してみれば、やはり開封済みで数個使われているようだ。
考えてみれば、まっすぐ帰宅した時点で気づくべきことだった。自宅には当然ローションもゴムも用意済みだけれど、先輩は今日突然、こんな誘いを受けただけのはずなのに。
恋人はいないけどセフレがいる可能性と、自慰行為に使われている可能性。できれば後者であって欲しいと思いながら、先輩が戻ってくるのをジリジリと待つ羽目になった。
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