ここがオメガバースの世界なら14

1話戻る→   目次へ→

※ ここから攻めの視点になります

 退院初日に衝動的に手を出してから先、相手とはたまに抜き合うような妙な関係が続いている。一緒に同じBL本を読んだ結果、こいつ相手なら有りかもと思ってしまった気持ちに間違いはなく、腐男子でもなければ彼女しか居たことがない異性愛者だったはずが、彼の手で気持ちよく果てれてしまったせいだ。
 入院生活で溜まっていた、というのも絶対に大きな要素の一つだったと思うが、初回はともかく、退院してたやすく一人で処理出来る状態でも手を伸ばしてしまう程度には、相手との行為を気に入ってしまっている。
 相手も気持ちよさそうにしているし、アルファもオメガもない世界で番の機嫌を取るために嫌々言うことを聞いているとは思えないし、多分きっとそれなりに、何かしら得るものがあってこちらの誘いに乗ってくれているんだろう。
 まぁ突っ込ませろと言ったことはないし、恋人が居たことのない相手とではキスすら躊躇ってしまうし、初回にあちこち触りまくったのは嫌そうにしてたので、現状やっていることといえば互いの性器を握って扱きあうだけだから、自慰の延長程度に思っているのでも、腐男子としての好奇心で応じているのでも構わないと思っている。
 でももし姉がこの状況を知ったら、相当怒られそうだとも思っていた。さすがに相手もこんな関係になってしまったことを知らせる気はないようだし、自分から言うはずもないので、姉に怒られる日はきっと来ないけれど。ただ、確実に、後ろめたい想いはある。
 時間に余裕があったせいで、姉が送ってきた本を読み切った上、彼のオススメなどにまで手をだしているのもあって、余計に後ろめたさを感じている可能性は高い。男同士の恋愛物語をいきなり大量に摂取したせいか、自分たちの今の状況が、めちゃくちゃ中途半端に感じてしまう。
 実のところ、いっそ恋人になってしまえば良いのかも知れない。と思ったこともあるのだけれど、恋人になんてなってしまったら現状で満足できなくなりそうな予感があるというか、恋人を免罪符に今以上の行為を要求してしまいそうで、どう考えてもBL本に毒され過ぎと判断せざるを得ない。
 だいたい相手だって、こんな関係を長く続ける気はないというか、こちらに次の彼女が出来次第きっぱりさっぱり応じるのを止めると宣言されている。浮気はしたくない、という気持ちが強いようで、彼女が出来たら絶対すぐに知らせると約束していた。
 怪我の後まともに学校に行っていなかったから、学校へ行きだしたら、彼女と別れたことを知って告白してくる女子も出てくるだろう。とは彼に指摘されるまでもなく自分自身思っていたし、実際、学校が始まってから先、告白してくれた女子はいた。
 断ったけど。
 今までだって相手は選んで付き合ってきたし、恋人が居ない状態で告白をお断りするのも初めてではなかったけれど、彼とのことがなかったらOKしていた可能性はある。どちらかというと、彼のようにせっせと世話をしてくれるようなタイプは遠慮したいのに、なぜ、恋人を作って彼との関係を終えようと思えなかったのかは不思議だ。
 部活復帰はまだ難しいものの杖は外れたし、親からのバイト代だってもう出ていないのだから、ずるずると性欲処理まがいの行為につき合わせ続けるのは止めるべきだとも思うのに。
 やはりBL本に毒され過ぎなんだろうか。
 双方、ここがオメガバースの世界なら相手が番、という変な認識を持っているのも、良くないのかも知れない。
 いっそここが本当にオメガバースの世界なら。相手がオメガで自分がその番のアルファだったなら。恋人だとか恋愛感情だとかを取り敢えず脇において、発情期だとかフェロモンだとか本能だとかのせいにして、相手を抱いてしまうことが出来るのに。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です