合宿の夜

 夏合宿最終日前日の夜、連日のハードな練習で疲れきった体は重く、初日は慣れずになかなか寝付けなかった布団でも、横になって早々眠りに落ちていた。このまま朝までぐっすりコースのはずだった。なのに無理矢理意識を浮上させられた。
 自業自得の尿意なんかじゃない。背後から誰かに抱き込まれている。その上、尻の穴で何かが蠢いてもいた。口元を大きな手の平で覆われていて、どこか息苦しいのも原因の一つかもしれない。
 だんだんと覚醒してきた頭が状況を飲み込んで、慌てて瞼を押し上げ、同時に体を起こそうとする。
「暴れないで」
 起き上がるのを阻止するように口元に当てられていた手にグッと力がこもって、耳元では優しい声が囁いてくる。こうなるのを見越していたようで、焦った様子は特になかった。
 声はよく知った友人のものだったし、友人と言いつつも時折一緒にエロいことをしあう仲になっているので、とりあえず部の誰かに襲われているわけではないらしい。ホッと体の力を抜いて身を委ねれば、押さえつける力もあっさり抜けていく。
 でも、だからといってこんな場所で寝込みを襲ってきたことを許したわけじゃない。
「そのまま大人しくしててね」
 尻穴に埋まる指が再度動き出して、しかも明らかにその場所を拡げる動きをしている。
 まさかここで突っ込む気か?
 今は合宿中で、周りには自分たちの他にもたくさんの部員が一緒に寝ているのにか?
 冗談じゃないぞと焦って、嫌がるように身をひねろうとしたが、やはりそれもあっさり押さえ込まれてしまう。
 今まで、体格差や力の差をこんな風に示されたことなんてなかった。一緒に抜きあうのがエスカレートした時、相手が抱く側になるのを許したのは、こちらを気遣い尽くし決して無茶なことはしないと信じられたからだし、事実、酷い目にあったと思ったことはないし、気持ちよくして貰っているから続いている。
 こんなのは嫌だ。場所とかももちろん問題だけれど、それよりも、いくら抱かれることにそこそこ慣れているからって、こちらの意思を無視して強引に進められるのが気に入らない。
 周りにバレる覚悟で騒ぎ立ててやろうか。でももしこんなことがバレたらどうなるんだろう?
 二人一緒に部を追い出される可能性やら、友人知人どころか親や先生にまで事情が伝わる可能性やらを考えてしまったら、やはり今だけは耐えて、朝になってから気が済むまでボコるのが正解なのかもしれない。
 嫌だ。嫌だ。悔しい。そう思いながらも奥歯をグッと噛みしめる。
「ゴメンね。本当に、ゴメン」
 泣きそうな囁きに、さすがにおかしすぎると少しばかり冷静になった。合宿中で抜けなくて溜まったから突っ込ませて、的な理由で襲われているわけではないのかもしれない。
 何があったと理由を聞いてやりたいのに、口元は依然覆われていて声は出せない。そして、うーうー唸って喋らせろと訴えるにはリスクが高すぎる。
 取り敢えず一発やれば気が済むんだろうか。
 どっちにしろ耐える気にはなっていたのだから、ボコる前にちゃんと理由を聞いてやろうと思いながら、抵抗したがる気持ちをどうにか抑えて相手に身を委ねることにした。
 こちらのそんな意思は相手にも伝わったんだろう。ありがとうと囁かれた後は黙々と尻穴を拡げられ、繋がり、ひたすら声を殺しながら互いに一度ずつ果てて終わった。
 どこに用意していたのか相手だけではなく自分も途中でゴムを装着されていたので、布団を汚すようなことはなかったはずだが、終えた後も余韻どころじゃなくテキパキと後始末を済ませていた友人が、二人分の使用済みゴムや汚れを拭ったティッシュやらを纏めてそっと部屋を出ていく。
 始めぼんやり見送ってしまったが、慌てて起き上がりその後を追った。こちらが追いかける気配にはすぐに気付いたようで、大部屋を出た廊下の少し先を歩いていた友人が苦笑顔で振り返る。
「ちゃんと見つかりそうにないとこ捨ててくるから、あのまま寝ちゃって良かったのに」
「寝れるわけ無いだろ。というか、何が、あった?」
「それは、ほんと、ゴメン」
 困ったように視線を逸らされて、ムッとしながら両腕を上げた。相手の両頬を思いっきり挟んでやって、無理矢理こちらを向かせて視線を合わせる。
「俺が聞いてるのは理由。理由によっては許してもいいって言ってんだよ。わかるだろ?」
「もし許せないような理由、だったら?」
「取り敢えずボコる。気が済むまで」
 許してやる場合はボコらない、とまでは言わないけど。
「え、それだけ?」
「どういう意味だ」
「絶交だとか、友達辞めるとか、部活ヤメロとか」
 言われてなんだか血の気が引く気がした。つまり絶交するとか友人辞めるとか部活やめろとか言わせたくて、あんな無茶をしたって言うんだろうか。
「それを俺に、言わせたいのか?」
 吐き出す声が緊張で少しかすれた。
「ち、違うっ」
 すぐさま慌てたように否定されて、ホッと安堵の息を吐く。
「じゃ、なんだよ」
「気が済むまでボコっていいけど、聞いても嫌いにならないでくれる?」
 あんな無茶しておいて、嫌いにならないでくれなんてよく言えるな。とは思ったが、嫌いになれるような相手なら理由なんてわざわざ聞かないし、速攻縁切って終わりにするだろうし、つまりはこんなバカな事を聞いてくることに湧き出す怒りのほうが大きい。
「ごちゃごちゃうるせぇ。早く言えよ」
「嫉妬、した」
「は? 嫉妬? 誰に?」
 渋々と言った様子で告げられたのは、一つ上の先輩の名だった。確かに最近アレコレ構ってくれることが多くなった気はしたし、こちらもそれなりに慕ってはいるけれど。
「最近お前可愛がってるのあからさまになってたし、この合宿で一段と距離縮めてきたし、お前も満更じゃなさそうで、なんかもう不安になりすぎて、いっそ先輩にお前は俺のだって、俺のチンコ突っ込まれて気持ちよくなってるとこ見せつけてやりたくなって、無茶、した」
「ツッコミどころ多すぎんだけど」
「わかってるよ。満更じゃなさそうでもお前に先輩と付き合う気がないこととか、お前は俺のものなんかじゃないってこととか、先輩が寝てた位置的に、先輩が気づくほど派手にやったら周り中知れ渡るとか」
「先輩が俺を狙ってるみたいなのだって、お前の勘違いだろ」
「いやそこは譲れない。というか先輩に直接お前貰うって宣言されて焦ったのもある。というか多分それが、あんな無茶した一番の、理由」
「っは、マジかよ」
 マジだよと返ってくる声は確かに、嘘や冗談を言っている感じではない。
「でも俺にそんな気ないのはわかってたんだろ」
「そんなの、先輩が本気で告白してきたら、お前がどうなるかなんてわからないよ。俺とノリで抜き合って、流されるみたいに抱かれるのまでオッケーしたお前なら、先輩とだってノリと勢いで恋人になるかもしれないだろ」
 男同士で恋人とか正直イマイチわからないのだけれど、もし先輩と恋人になったら、こいつと抜きあったりセックスしたりを続けるのは浮気って事になってしまうんだろう。それが嫌なのは、今後も都合よくエロいことをし合える友人で居たいから。なんて思えるほど、鈍いつもりはなかった。
「まぁ先輩ともノリで抜き合えるかっつったら多分平気ではあるな」
「ほらぁ」
「それより、告白されたらその気なくてもノリと勢いで恋人になるかもって思ってんのに、お前が俺の友人続けてる理由ってなに?」
「えっ?」
「嫉妬して無茶してあんな風に俺を無理矢理抱いて所有権を主張するくせに、俺とは友人として気持ちよくエロいことし続けたいってのは、あまりにお前に都合良すぎじゃねぇか?」
「え、えっ、つまり……?」
「下らない嫉妬でアホな無茶するくらいなら、お前が俺の恋人になれよって言ってんだけど」
 男同士で恋人なんてと思う気持ちがないわけじゃないけれど、でもまぁこいつとならそれも有りか、という程度には友情以上の感情も既に湧いているらしい。
 心底安堵した顔で、嬉しそうに、そのくせ泣きそうに、俺の恋人になってと告げる友人を見上げながら、きっとこれで良いんだと思った。

お題箱から <合宿の寝静まった大部屋で布団の中、友人にやられちゃう話>
大遅刻すみません。長くなりすぎました。分けて出そうかと思ったんですが、サクサクお題消化していきたいので全部出しです。

 
 
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寝ている友人を襲ってしまった

 尿意で目覚めてしまった早朝、さっさとトイレを済ませて二度寝しようと思ったはずが、トイレから戻る時に目にしてしまったソレが気になって、ベッドに入っても再度眠気がやってくることはない。
 早朝とは言え、起きた時に部屋は既に薄明るかった。ベッドの横に敷いた布団には、昨夜泊めた友人が気持ちよさそうに寝息を立てていたのだが、夜中に暑かったのか掛布は脇に押しやられた上、シャツがめくれて腹が見えていた。
 余計なお世話かもと思いながらも、家に泊めたせいで風邪でも引かれたら申し訳ないので、取り敢えずでシャツを引き下ろし腹を隠してやったが、今にして思えば余計な親切心など出さずにいれば良かった。
 その時、意図せずして友人の股間に手の甲が軽く掠ってしまったのだ。
 んっ、と漏れた吐息にドキリと心臓が跳ねたのは一瞬で、友人は起きる気配もなく健やかに眠り続けていたから、鼓動が早くなっていくのを感じながら、探るように見つめていた友人の顔から視線をそっとずらしていった。
 ほんの一瞬、それも手の甲に触れただけでも、友人の股間が硬く膨張しているのはわかっていた。いわゆるアサダチというやつだ。
 視線を移動した先、ラフでゆったりめの部屋着なのに、股間部分だけはっきりと盛り上がっていた。
 大っきそう。
 そう思ったらますます鼓動が早くなって、体の熱が上がった気がする。
 そこそこ長い付き合いなので、合宿やら旅行やらで一緒に風呂に入ったことはある。さすがにそうジロジロと見たりはしなかったが、通常時でも自分に比べたら断然立派だったのだから、大っきそうではなく事実大きいんだろう。
 見てみたいという衝動をどうにか堪えてベッドに潜り込んだが、そんなわけで、二度寝どころじゃなくなってしまった。
 ソワソワするような、モヤモヤが腰に溜まるような、とある場所がなんとなく切なくキュンとなってしまう、その理由ははっきりわかっている。
 好奇心から尻穴を弄る遊びを始めたのはもう随分と前で、最近では気分と体調によっては尻穴を玩具で擦って絶頂を決めれる程度に自己開発済みだ。
 別にホモってわけじゃないから男と付き合ったことはないし、付き合いたい気もサラサラないけれど、無機物じゃない本物のペニスで尻穴をズコズコされる想像を、したことがないとは言えない。というよりも最近はかなり興味がそちらへ傾いている。
 布団の中、もぞもぞと動いてズボンと下着を脱ぎ去った。どうにも我慢ができない。
 ベッド脇の棚の引き出しをそっと開けて、ローションボトルを取り出した。極力アチコチ汚さないようにと考えた結果、蓋を開けたそれを直接アナルへ押し当て、アナルを意識的に拡げながら中身を押し出していく。
(あっ、あっ、入って、く……)
 声は噛んだが、ローションを強制的に流し込む初めての感覚にゾワゾワと肌が粟立った。
 邪魔でしかない掛布を外せないまま弄るのも、感じても声を出してしまわないよう飲み込むのも、もちろん初めての経験だ。
 ベッドと布団とで多少の段差はあるものの、もし途中で友人が起きてしまったら、異変に気づかれずにすむはずがない。なのに、不自由さも友人に気づかれるかもしれない危険も、快感を倍増させていくばかりだ。
「……っは、ぁ、……ぁんっ、んんっ」
 少しずつ吐き出す息が荒くなり、堪えきれずに時折音を乗せてしまっても、未だ友人が動き出す気配がない。
 さきほど見た股間の膨らみを思い浮かべ、友人の朝勃ちペニスを引きずり出してハメたらどれほど気持ちがいいんだろう、なんてことを考えながら弄り続けたせいか、あまりに起きない友人に少しずつ大胆になる。
 まるで、友人に気づかせたいみたいだと思った所で、小さな笑いが零れ落ちた。
 気づかれたらもう友人では居られないだろう。それを残念に思う気持ちはあるが、このままだといつかまったく知らない男とアナルセックスを経験する日が来るだろうことを思えば、初めてはこいつが良いなと思ってしまっているらしい。
 そっとベッドを降りて、覚悟を決めて眠る友人のズボンと下着とを引きずり下ろした。
 少し身じろがれたが、大きな反応はなく、友人の目は閉じたままだ。
(ああ、これは……)
 もしかしなくても起きてるんじゃと思ったが、起きていて止めないのなら、それはもう合意ってことで良いんじゃないだろうか?
 勝手すぎかなと思いながらも、少しだけ勇気だか希望だかを貰ってしまったのも事実だった。
 そのまま友人を跨いで腰を落としていけば、堪えきれずに漏れる声が二種類。
「あ、ぁあっ、ぃいっっ」
「くぅっ、ぁ……」
 もちろん一つは自分ので、もう一つは友人のものだ。
「ね、全部入った、けど」
 尻が完全に相手の腰の上に乗った所で一息ついて、今更だけどようやく声を掛ければ、見下ろす先で友人の目が気まずそうに開いていく。
「おはよ」
「はよ……って、おいコラ。これ、のんきに挨拶交わせるような状況じゃなくね?」
「いつ起きたか知らないけど、起きてて止めなかったんだから同罪でしょ」
「それは、まぁ……つか、お前、これ、いつから? 普通に女好きだったよな?」
 そこそこ付き合いが長いので、実は互いの彼女を交えてのダブルデート、なんてことをした過去もある。
「あー……それは後で説明するから、取り敢えず、俺が動くかお前が動いてくれるか、どっちか選んで欲しいんだけど」
 このまま話してて萎えられたら残念すぎるという、それこそ残念すぎな思考で続きを急かした。
「え、てっきりこのまま逆レイプ的にお前が腰振るのかと思ってたけど、俺が動くのもありなの?」
「あり。ていうか、してくれるなら、されたい」
 本物チンコは初めてだから、と言ったら驚いた様子で目を瞠った後、上体を起こしてきた相手に体勢を入れ替えるように押し倒された。
「色々聞きたいことありまくりだけど、取り敢えず、いいんだな?」
「うん。あ、でも、出来れば俺も一緒に気持ちよくなれるようにやって、欲しいかも?」
 言えば、何を言っているんだとでも言いたげな顔で当たり前だろと返ってきたから、寝ている友人を襲ってしまってホント良かったと思った。

お題箱から <尻穴をいじるのはまっていたら寝てる友人のあさだちに我慢できずについついそれを拝借してしまう話>

 
 
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気付いた時にはもう全部手遅れだった1

我ながら悪趣味だなあの続きです。  最初の話から読む→

 酷い我儘だと呆れながらもどこか嬉しそうに笑った相手が、空の酒坏に酒を注いで勧めてくれたのが嬉しくて、潰れるつもりで注がれるまま杯を重ねていく。
 許された。受け入れられた。そう思ってしまったからだ。
 実際、あの後は明らかに自分たちを包む気配が柔らかに変化したと思う。
 おかげでふわふわに気持ちよく酔うことが出来たし、相手はそんな自分を仕方がないという顔をしながらもアパートへ連れ帰ってくれたし、ベッドに座らせた後で飲んでおけとグラスに注いだ水を運んでくれた。
 ああ、これは全部、告白される前と同じだ。
 嬉しくて、安心して、急激に襲う眠気にしたがい瞼を下ろす。くすっと笑った気配と、可愛いなと聞こえた言葉に眉を寄せたが、そんな細やかな抗議に、相手は益々笑ったようだった。
 まぁいいやと目を閉じたまま体を倒そうとしたら、それを阻止するように両腕を掴まれる。もう眠いのになんで邪魔をするのだと、さすがにムッとして渋々重い瞼を押し上げれば、思いの外近くにあった相手の顔に驚き息を飲んだ。
 ちゅ、と小さく響いた音と、軽く吸われた唇と、ぞわっと背筋を走った何かと。
 キスされた。そう気付いて、ますます驚き目を見張る。そうしているうちに二度目のキスが唇の上に落ちた。
「な、んで……」
「恋人になったんだから、キスくらいしてもいいだろう?」
 ああやっぱり、自分たちは恋人になったのか。なんてことをぼんやり思う。
 じゃあ恋人として宜しく、などという宣言は何もなかったが、どう考えたって自分の言葉は恋人になってというお願いだったし、相手はそれを受け入れたから自分をこうして連れ帰っている。酔っていたって、それくらいはちゃんとわかっていた。
 わかっては、いたけど。
「でもお前とセックス、考えられないよ?」
「わかってる。考えなくていい」
 大丈夫だと囁く甘い声。抱きしめるように背に回った腕が、優しく背をさすってくれる。
 そうか、考えなくて、いいのか。
 安堵とともに再度瞼を降ろせば、優しくて柔らかなキスが繰り返された。もう、驚かなかった。だって恋人になったんだから、キスくらい、したっていい。
 優しく甘やかしてくれるキスにうっとりと身を任す。任せきってしまえば、与えられるキスはなんとも気持ちが良かった。
 唇を柔らかに吸われるのも、時折繰り返し聞こえてくる可愛いという囁きも、心ごとなんだかこそばゆい。クスクスと笑う声は遠くて、笑っているのは自分自身だと、頭の隅ではわかっているのにどこか現実感が乏しかった。
「んっ、……んっ、……ぁ、はぁ……ふはっ」
 誘い出されるようにして差し出した舌を、ピチャピチャチュルチュルと舐め啜られて鼻から甘やかな息が抜ける。ぞわぞわと粟立つ肌がオカシクて笑う。
 ゾワゾワゾクゾク擽ったいのは舌だけじゃなかった。いつの間にか相手の唇は唇以外にも落とされていて、温かで大きな手も体中のアチコチをさわさわと撫でていた。
 ふはっと熱い息を吐けば、そこを重点的に舐めたり吸ったり撫で擦る。そうするとゾワゾワが這い上がって、笑いが溢れていく。ゾワゾワするのは楽しくて、多分少しキモチガイイ。
「ぁ、あっ、きも……ちぃ……」
 素直に零せば、嬉しそうにそれは良かったと返ってくるのが、自分もなんだか嬉しかった。

続きました→

 
 
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酒に酔った勢いで

 酒にはあまり強くないが、酒を飲むのは好きだった。というよりも飲み会の雰囲気が好きだった。アルコールでちょっとふわっとした気分になって、くだらない話にもゲラゲラ笑って、素面じゃ言えないような話を聞く。
 どんな話をしたかなんて翌日には半分以上忘れてるけど、楽しかった~って気持ちと、断片的な会話の記憶が面白い。
 学生時代からずっとそんなで、社会人になってからも声がかかれば出かけるし、暇を持て余したら自分から声かけてでも飲みに行っていた。
 そう頻繁だと、さすがにメンバーはだんだんと固定されていく。たまに飛び入りで懐かしい顔や新しい顔もあるけれど、しょっちゅう顔を合わせているメンバーはだいたい五人位だった。もちろん五人揃わないことも多くて、その時々で都合がつく相手が顔を出すだけだ。
 付き合いが長いと酒での失敗なんかも色々知られているし、互いの許容量もだいたい把握できている。飲み過ぎそうな時は途中で止めてくれるか、それでも飲まずにいられないって時はゴメン後は宜しくって潰れるまで飲んだりもできる。だからこの五人の誰かと飲む時は凄く気楽で、気が抜けているという自覚もわりとある。
 そんなだから警戒心なんて欠片も持ってなかったし、きっと油断もしまくりだっただろう。
「だからってこれはねーんじゃねーかなぁ……」
 ムクリと体を起こしてみたものの、自身の肉体の惨状に頭を抱えたくなった。
 若干の二日酔いで痛む頭と、全く別の理由で痛む腰。というか尻。もっと言うなら尻の穴がヤバイ。
 小さなベッドの中、隣にはメンバーの中では比較的古く、学生時代から一緒になって飲んでいた男が、自分と同じく服を着ずに寝ている。
 しかも場所は良く知った自宅だ。多分ほぼ潰れた自分を連れ帰ってくれたのだろうが、まさか送り狼に変貌を遂げるとは。
「あー……いや違うな」
 引き止めたのは自分で、誘ったのも多分自分。……という気がする。
 昨夜は五人揃ってて、それどころか二人くらい初めましての顔もいた。友人の友人も基本ウェルカムなので全く構わないのだが、ちょっとだけタイミングが悪くて、自分は片思い相手に恋人発覚で少しばかり荒れていた。最初っから潰れたい気持ちで飲んでいた。
 初めましての片方がバイだとか言ってて、なんなら慰めようかと言われた記憶は朧げにある。それに笑って、お願いしまーすとか返した記憶もだ。
 なのになんでコイツなの。
 何度確認したって一緒なんだけど、もう一度隣で眠る男の顔を確かめてしまう。
 相当飲んだし、記憶はいつも以上に途切れ途切れだから、正直どういう流れでコイツに送られて帰ることになったかなんてわからない。後、慰めてくれるとか言ってた男が最終的にどうなったのかもさっぱり記憶に無い。いや別に知りたいわけじゃないけど。
 体の痛み的に、多分突っ込まれたんだろうなーと思うと、酒の失敗にしても今回のは相当だなと思う。あーあ、これでまた黒歴史増えちゃった。
 そして問題は自分よりもむしろ相手。いっそ初対面だった男のがまだマシだったかも知れない。自分が酔い潰れたせいでこんなことになって、あのメンバーがギクシャクしてしまったら残念過ぎる。あそこまで付き合いのいい気心知れた飲み友を、今更手放したくなんかないのだ。
「なかったことに出来ねぇかなぁ」
「忘れたほうがいい?」
 独り言に返事があるなんて思ってなくて、思わず体が跳ねてしまった。
「痛ててててて」
「大丈夫か? だから無理だって言ったのに」
 相手が慌てたように起き上がって、いたわるように腰をさすってくれる。うんこれ、相手は完全に記憶あるね。
「あー……やっぱ俺が誘った?」
「記憶あるの?」
「ない。でも多分そうかなって」
「荒れてた上におかしな男におかしな誘惑されて、色々混乱してたんだろ」
「おかしな男?」
 というのはやはり、バイ公言してたご新規さんだろうか。
「覚えてないなら忘れときな。後お前、突っ込まれたって思ってるかもしれないけど、入らなかったから安心していいよ」
「は? 体めっちゃ痛いんですけど。体っていうか、腰と尻の穴」
「腰はお前がベッドから落ちて打ち付けたの。尻穴は無理だっつってんのにお前が入れろって煩いからちょっと真似事はした。けどすぐ痛いって泣いて逃げて落下したからそこで終わり。でもまだ穴が痛むってなら、少し裂けたりしたのかも」
 ゴメンと言われて、どう考えても今の話にお前が謝る要素なかったよなと思いながらも、流れのまま頷いてしまった。
「で、酔った勢いだから忘れて、ってなら、忘れることにしてもいいんだけどさぁ」
 なんとなく含みのある言い方な気がして、けどなに、と続きを促す。だって凄く聞いて欲しそうだったから。
「俺のものになって。ってのは俺も割と本気で言ったから、そこだけ改めて言っとくわ」
「は?」
「俺がお前狙いなの、他の奴らも知ってるから今後も気にせず飲みにいけるぞ。良かったな」
「えっ?」
 唐突過ぎる告白についていけずに疑問符ばかり飛び回った。
 そんなこと言われたっけ? 飲み過ぎたら忘れるタイプってわかってて適当言ってない?
 焦るこちらに、相手は自嘲と愛しさとを混ぜたような、不思議な笑みを見せている。ドキッとしたのは、この顔を知ってると思ったからだった。
「てかお前、俺のものになって、なんて殊勝なこと言ってたか?」
 思わずこぼれた自分の言葉に、少しだけ連動した記憶がよみがえる。
 お前は俺のものなんだから、気安く他の男に慰められたりするのは許さない。
 そんなセリフと熱い視線を受けたのは店の中か外かこの部屋だったか思い出せないけれど、確かその台詞のあとで、今と同じような顔を見せられたと思う。
 体の熱が上がっていくのを感じる。これ絶対顔とかも赤くなってそう。
 だって酔ってたとはいえ自分からお前誘ったのって、お前のこと受け入れたい気持ちがあったからじゃないの?
「あ、あのさ」
 酔った勢いだから忘れよう、なんて言ったら駄目だ。それだけは確実にわかる。
 だから飛んでしまった分の記憶を彼の言葉で補完しながら、昨夜のことと今後の話をしなければと思った。

有坂レイへの今夜のお題は『朦朧とする意識 / 酒に酔った勢いで / 「俺のものだ」』です。
shindanmaker.com/464476

 
 
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