今更嫌いになれないこと知ってるくせに21

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 汗だくになって戻ったら、玄関先で待ち構えていた姉に、義兄と二人、夏の昼時に1時間近くも散歩なんてバカじゃないのと怒られた。義兄が姉をなだめつつも追加でお叱りを受けている間に、先にシャワーを借りて汗を流す。
 取り敢えずで借りたラフな短パンとTシャツでリビングに戻れば、入れ替わりで義兄が汗を流しに行った。
 キッチンの姉に喉が渇いたと言えば、勝手に飲んでと麦茶のボトルとグラスが渡される。姉は本日の昼食を作っているようで、どうやら昼メシは冷やし中華らしい。
 一応形だけ何か手伝うかと声をかけたが断られ、しかしなんとなくその場にとどまったまま、麦茶を飲みつつ出来上がりを待ってしまった。
 義兄は姉に何かを伝えただろうか?
 何か聞いたかと問えば良いのかも知れないが、ヤブヘビになっても嫌だなと言う気持ちから躊躇ってしまう。やがて盛り付けを終えた姉は、ようやくこちらをしっかりと振り向き、呆れ混じりの苦笑を見せた。
 あんたって昔はそんなに臆病者じゃなかったハズなのにねとため息混じりに告げると、仲直りできたとしか聞いてないわよと、やはり呆れた口調で続ける。そもそも喧嘩してたのも初耳だけど根掘り葉掘り聞かれたくないから逃げてたんだろうし、過ぎたことを今更どうこう言う気もないからこれから先のことを考えてと言いながら、姉は大きめのお盆に冷やし中華2皿と空のグラス1つを置いて差し出してくる。
 意味がわからずそのお盆を見つめてしまえば、甥っ子の部屋に持っていくようにと言われた。そういえば最近は部屋に引きこもって勉強しているという話だったか。というよりも、どうやら義兄と顔を合わせることを避けているらしい。
 理由はわかりきっている。ひしひしと負い目を感じながら、手の中のグラスをお盆の上に置いた。2つのグラスになみなみと麦茶を注いでから、じゃあ行ってくると言ってそのお盆を受け取り甥の部屋へと向かう。
 姉の家に上がること自体が10年ぶりくらいだけれど、何も言われていない以上、甥の部屋の場所も変わっていないんだろう。迷うことなく辿り着いた部屋のドアを叩けば、少ししてドアがそっと開かれる。
「手ぇ塞がってっからもっと開けて」
「えっ? ってかええっ!?」
 あんまり驚いているから、どうやら何も聞いていなかったようだ。肩でドアを押すようにして部屋に入り込んでも、甥っ子は呆然とこちらを見ているだけだった。
「これどこ置けばいい?」
 勉強机の上は参考書やノート類が広げられているし、まさか床に下ろすわけにも行かず、お盆を持ったまま問いかける。
「何しに来たんだよ」
 ようやく最初の驚きが収まったようで、甥の発した声は不審げで、苛立ちを抑えている様子が窺えた。
「進路、変えたいんだって?」
「進路を変えるわけじゃない。希望大学を変えただけ」
「あー、うん。だからそれ。随分遠くの大学らしいな」
「にーちゃんに関係ない」
「関係おおありだよ。それでこっち戻ってるんだから」
「なんでだよっ」
「それよりこれどーすんの。昼メシ。このままこれ持って突っ立ったまま話しろって?」
 参考書の上に置いても良いのかと聞いたら、軽い舌打ちの後でテーブル出すよと返された。引っ張りだされてきた折りたたみ式のローテーブルは、自宅のよりも更に一回り小さくて、二人分の冷やし中華の皿と麦茶のグラスを置いたらほぼいっぱいだ。
 そんな小さなテーブルを挟むように向い合って座れば、慣れない距離の近さになんだか落ち着かない。それは相手も同じようで、頂きますと小さく呟くように告げた後は無言のまま、勢い良く皿の中身をかっこんでいく。
「そんな慌てて食べなくても……」
 鋭い視線に一瞥されて、言葉は尻すぼみになって最後は小さな溜息を漏らす。
 結局、こちらが半分ほどを食べた辺りで、皿をカラにした甥っ子は立ち上がってさっさと距離を置いた。しかも、こちらの背後の勉強机へ向かうのではなく、正面に位置するベッドに腰掛けてこちらをジッと見ている。

続きました→

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