彼女が欲しい幼馴染と恋人ごっこ(ホワイトデー)

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 本命大学に合格を決めた相手に、約束通り女の子を紹介した。今月中に童貞捨てさせてやってという赤裸々なお願いに、笑ってOKをくれるような女の子だけど、まぁ約束は約束だし、その後どうするかは本人たちが決めればいい。
 合格祝い渡すから出てこいと呼び出した相手は、こちらが女連れだったことに最初めちゃくちゃ驚いて、その女の子こそが合格祝いと気付いた後はめちゃくちゃ慌てていたのを覚えている。
 約束しただろと言いながら女の子を紹介した後は、自分だけさっさと帰宅したが、コミュ力の高い女の子だしなんとかなるだろと思っていた。その予想は外れることなく、夜には女の子の方から、お付き合いを開始した旨の連絡があった。正直ホッとした。
 引き止められたのを置いて帰ったからか、相手からはその後まったく連絡がない。でもまぁいいかと放置していたら、昨日、久々に彼が家に訪れた。
 玄関で対応したのは母だったから、要するに、気付いた時には自室に上がり込まれていた。
 ムッとした表情で突き出された袋を、反射的に受け取ってしまったが、最初それが何かはわからなかった。
「何これ?」
「ホワイトデー」
 律儀だなと思ったら少し笑ってしまった。
「お返しなんて要らなかったのに」
「でもなんか高そうなチョコだったし」
「まぁ安いもんではないけど。でもその分、量も少なかったろ」
「てかさ、あれ、本命チョコとは違ったの?」
「どういう意味?」
「あんな本気っぽいチョコ、くれると思ってなかったから、凄く嬉しかったんだけど」
 何やら不穏な発言を、どうやって受け流すかを考える。これは絶対、突き詰めたらいけない話題だ。
「本気っぽいって、そりゃあの時点では一応恋人だったんだから、それなりのもの渡すだろ」
「今は? というか、俺達ってやっぱ別れたの?」
「は? いやだってお前、そういう約束だったろ。お前が大学合格決めた時点で、終わりに決まってんだろ」
「そ、っか。まぁ、わかってたけどさ」
 でも俺、けっこう本気で好きになってたよ。という呟きのような言葉は、聞こえなかったふりをした。
「ね、最後に一回、キスさせて」
「ダメ」
「どうしても?」
「だってお前、彼女居るだろ。しかもそれ、俺の友人だからな?」
 不誠実だろと言ったら、苦笑しながら、意外と誠実だよねと返された。意外だなんて失礼だ、とは思えず、やはり自分も苦笑を返した。
「まぁ、性に緩いタイプと思われてるのは知ってる。別に間違いでもないよ。ただそれは、相手によるってだけ」
 お前にそういう真似はして欲しくない。とまでは言わなかった。
「キスがしたいなら、彼女としろって」
 そうすると返されて、胸の奥のほうが少し痛くなった。でもそれも、気付かなかったことにする。
「あのさ、本当に、ありがとう」
 何に対する礼かは聞かず、どういたしましてとだけ返した。
 そんな、昨日交わした久々の会話を、なんとなく繰り返し思い出す。あれで良かったのだとはっきり思うのに、少しずつ胸の痛みが広がっている気がする。
 机の上に置かれている小ぶりの可愛いデザイン缶を見つめた。昨日渡されたお返しだ。
 中身は飴だとわかっているけど、フタを開けることすらしていない。
 お返しの意味なんて考えているとは思えないけれど、これに彼の想いが込められている可能性を考えてしまったら、とても食べられる気がしなかった。これ以上、未練と向き合いたくなんかない。
「俺だって、けっこう本気で、好きになってたよ」
 伝えられたかもしれない最後のチャンスを、思いっきり跳ね除けたのは自分だ。でもきっとそれでいい。あんな形で始めたごっこ遊びの恋が終わったことを、安堵する気持ちも確かにある。
 ばかみたいな失恋に胸の奥が痛んでも、後悔はしてなかった。

続きました→

 
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