親睦会15

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 釣られたように、こちらも深く息を吐く。
「もし俺が、あなたが起きたことに気付かず朝になってたら、どうするつもりでした?」
「逃げて疎遠になって終わりにしたかって話?」
「そうしたかったですか? と聞いてます」
 わざわざ離婚した過去だのを話すことなく、もうそういう気にならないと、一方的に切って捨てることも出来たはずだ。クズでクソな自覚があるなら、その道を選んだと言い切ってくれたほうが、いっそスッキリするかもしれない。
 けれどやはり相手は、そうしたかったとは言わなかった。
「元嫁に対しては裏切られたって気持ちがはっきりあったけど、今回の場合はお前に落ち度なんもなくて、お前はただの被害者なのに、それ切って捨てて平然と生きてくのはちょっと俺には難しい、かな」
 つまり、口では許せとも恨むなとも言えないだとか、でも出来れば付けた傷を癒やしたいだとか償いたいだとか言っていたって、結局は自分自身の心の平穏のためにそうしたいってだけだ。なんてことを思ってしまうくらいには、自分も随分と思考がひねくれている自覚がある。
 酷い真似をしたという自覚があるなら、本当に申し訳ないと思っているなら、下手な言い訳なんか一切無しで恨ませてくれればいいのに。優しさの欠片なんて見せないまま、非情に切り捨ててくれれば良かったのに。泣いたからって手を引かず、強引に突っ込む快楽の伴わないセックスをして、そのまま宣言通り終わっていたら良かったのに。
「じゃあもしさっき、俺が泣いたりしなかったらどうしてたんです? 結局最初っから、最後まで抱く気なんかなかったって事ですか?」
「ゴメン」
「ゴメンじゃわかりません」
 今更謝罪が欲しいわけじゃない。そんな気持ちのまま吐き捨てれば、最後まで抱く気はなかったと返された。
「簡単に言うと、お前を試した……んだと、思う」
 思う、という言い方に多少引っかかったものの、それよりも何を試されていたかのほうが気にかかる。
「試したって、何を?」
「お前の気持ちを」
「俺があなたを好きだって、気づいてたってことですか?」
「気づいてたっつーか、そんなわけないって否定ならしてた、かな。だって俺なんかを好きになる要素がないだろ」
「ないですね」
「でもお前は誘えばホイホイついてくるし、ちょっと強引だったけど結局こうやって旅行にも来てる。しかも俺が、普段は一回イケばもう十分って感じのお前を、しつこく何度も抱こうとしてるって気づいてて、受け入れようとしたろ」
 しましたねと返してから、ああ、そういうことかと思う。試されていたのはきっと、自分が相手をどこまで受け入れているのかだ。
「つまり、あなたの無茶な欲求を、どこまで許すか試したと?」
「ああ、うん、それに近い、かも」
 とことんクズだと言えば、相手はそうだなと苦笑する。
「ただやっぱり、お前が俺をどこまで許すかよりも、お前の気持ちを試してたんだと思う。さすがにあの時はもう、お前が俺を好きになってる可能性をそこそこ意識してた。だから同時に、俺自身の気持ちも試してたんだと思う」
「思う、思う、ばっかりですけど」
「振り返ってみれば、って話だろ」
 そもそも、こちらが目を覚まして風呂場に突撃してくる、なんて想定がなかったらしい。しかも風呂でヤりたくて来たんじゃないのか的な誘いを受けて、あの時内心ではそれなりに焦ってもいたようだ。
「そんなときでも冷静にあれこれ考えて行動できるなら、お前や自分の気持ちを試すにしたって、もーちょい言葉選んで優しくしただろうよ」
 それはどうだろう。だって今は色々諦めたみたいにあれこれ話してくれているけれど、あの時点でそんな態度が取れていたかは謎だ。焦った顔すら隠して意地悪く「お前がそういうプレイをしたいんだろ」と笑ったこの人が、冷静な判断ができた所で素直に優しくしてくれるイメージがない。
 この人がガラリと態度を変えてきたのは、はっきりと泣き顔を晒してしまったからだと思っていたのだけれど。
「無理じゃないですかね。あなたは意地悪な方がらしいですよ。今は、俺が泣いたから、罪悪感と恨まないで欲しい下心で、優しくしてくれてるだけでしょ」
 若干どころじゃなく今更な感じですけどと言えば、相手は困ったように眉尻を下げて、それだけじゃないよと言った。

続きました→

 
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