親睦会16

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 自分の気持ちも試してたんだって言ったろと続けた相手は、今更なのはわかってるけどお前に優しくしたいとも続けていく。だからそれが罪悪感と下心からだろって話なのに。
「あー、難しいな。どう言えばいいんだ」
 何言ってんだというこちらの気持ちに気づいたようで、相手はますます困った様子で考え込んでしまう。
「だからさ、例えば罪悪感と恨まれたくない下心、だけ、ならお前に優しい態度取る必要ないだろって話なんだけど」
 だけって部分をいやに強調した言い方だった。
「お前への謝罪の気持ちだけなら、酷い真似してたって自覚出来たからもう止めるって言って、謝って、誠意って形で慰謝料包んで終わりにする。それでお前の気が済まない場合、俺の顔を二度と見たくないってなら寮を出るとか、仕事辞めるとか、そういう話に発展する可能性はあるけど、謝罪の意思とお前に優しくしたいは違うものなんだよ」
「優しくするのは罪悪感と恨まれたくない下心から、って言ったのあなたですけど」
「だーかーらー、それ ”だけ” じゃないって話だろ」
「でもその ”だけ” じゃない部分、言わないじゃないですか」
 自覚はあるようで、一瞬、言うかどうかを迷う素振りを見せた。けれど結局、その口から次の言葉が告げられることはない。
「結局言えないんですか」
「だってお前に、俺を好きって自覚あると思ってなかった。ついでに言うと、お前の食いついてくる部分が一々なんか俺の想定とズレてて、わかってて話逸らしてるのかと思ったりもして悩んでる」
 彼の何かをわかっていて、意識的に話をズラしているつもりはないけれど、彼の過去も後悔も自分への謝罪も、積極的に聞きたいわけじゃない自覚はある。だから、無意識に避けようとしている可能性はあるし、実のところ、相手の真剣具合に比べたら、そこまで真剣に彼と向き合っているとは言えない状態にあるのかもしれない。
「わざと話を逸してるつもりはないですけど。それより、俺にあなたを好きって自覚があると、何かマズイんですか?」
「マズイっていうか、そもそもお前に自覚があってもなくても、その好きの出処が問題だと思ってて、既に自覚があるってなるとさすがに慎重にもなる」
「好きの出処……ですか」
 なんでこんな男を好きなのかなんて、本気でわからないのだけれど。それとも相手には、何かしら理由となるものがわかっているんだろうか。
「俺の何を好きか、わからないんだろ?」
「あなた自身、なんだって俺なんか、って言ってたじゃないですか。それくらい、オカシナ感情だってことはわかってますよ」
「うん。だからそれさ、多分、本当には好きなわけじゃないと思う」
「は?」
 意味がわからなすぎて、咄嗟に口から溢れたのは疑問符の乗った音だけだった。気持ちを落ち着けるように、一度深い呼吸をしてから再度口を開く。
「どういう意味ですか」
 深呼吸はしたものの、それでも結局、言いながら相手のことを睨みつけてしまった。
 だって本当に勝手だ。この胸の中のしんどい気持ちが、あの切ない胸の痛みが、相手にどれだけわかるって言うんだろう。
「多分自己防衛本能みたいなものの一種でさ、酷い目にあってメチャクチャ傷つくと、わざと似たような経験繰り返して、こんなの大した事ないって思い込むようなやつ。の発展形で、酷い形で始まったセックスでも、ずっと続けてられるのは相手のことが好きだから、好きでもない相手とセックスしてこんなに気持ちいいはずがない、って思い込んだ……のかと思ってる」
 お前が誰相手でも気持ち良くなれるのかって方向に走って、色んな男に抱かれる経験積み始めるよりは、好きだからって思い込んでくれて良かったけどと続いた声は、既にどこか遠くの方で響いている感じがした。
 頭の中がグラグラと揺れている。彼の言葉にショックを受けたのだと言うことに気付いて、それから、なぜこんなにもショックなのかと考え、彼が告げた理由を心の何処かで正解として受け入れたせいだと思い至った。

続きました→

 
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