雷が怖いので プレイ29

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 この部屋を人に貸すことはそれなりにあるらしい。しかも、極稀にAV撮影に使われることもあるそうで、基本は男女で女性が責められる側のプレイが多いというのは納得だが、興味あるなら今度呼んでやろうかと続いた言葉には驚いた。
 思わず顔を上げてマジマジと相手の顔を見つめてしまえば、すぐにおかしそうに笑いをこらえる顔になったから、からかわれたのだとわかって少しだけ唇を尖らせた。
「びっくりして涙止まったろ?」
 ふふっとこぼれた笑いは思ったより柔らかく、その笑顔が近づいて目尻にそっと唇が押し当てられる。確かに、あまりの驚きに涙は引っ込んでしまった。
「からかって、る」
「別に嘘は言ってねぇよ。ただ声は掛けてやるけど、見学だけで出演はなしな」
「当たり前だっ! ていうか、呼ばなくていい、です」
「お前、動画も結構見てるって言ってたけど、現場には興味なし?」
 男としての単純な興味ならもちろんあるけれど、目の前でどんなプレイを見せられるかわからないのは怖すぎる。それに。
「この部屋で撮影ってことは、いつか自分もされる可能性があるって考えられるのに、冷静に見てられるわけ、ない」
「残念だな。俺はそれ見たお前の反応が見たかった」
 目的はそこか。好奇心に負けて迂闊に飛びつかなくて本当に良かった。
「タイトル教えてくれたら、こっそり見るくらいは、する、かも」
「あー……一般流通してるようなのは、多分、ない。特に、お前が見てこの部屋だってわかるようなものは絶対ないはずだから、探そうとすんなよ」
「絶対なんだ」
「部屋主の俺が許可してねーもんが流通してたらオカシイだろっての。逆に万が一何かで見つけた時、知らせてくれたら報奨金出してもいいレベル」
「それは、あなたも出演してる、から?」
 彼の仕事についての興味は尽きないのだけれど、もしかして、仕事でセックスだったりSMのプレイだったりをする人なんだろうか? そこで性欲を発散するから、自分相手に気持ち良くなる必要がないんだろうか?
 さすがに今までその可能性を考えたことはなかったのだけれど、AV撮影なんて話が出てきたら、ありえる気がしてきてしまう。
「いや。さすがにそれはもう断ってる。そもそもよっぽどのことがなけりゃ、部屋貸すだけで撮影に同行なんてしないし興味もない」
「でも昔は、出てた?」
 もうってことは、断ってなかった頃があったって事だ。確かめるように聞けば、相手はあっさりそれを認めてしまった。
「どうしても断れない事情があった頃はな。それも流通はしてないはずだから、探すなよ」
「それって、仕事?」
「厳密には違うが、近いものではあるかもな。ついでに言うと、映像残さないプレイの誘いになら、金積まれて応じることは今もある。部屋を貸すことも含めて、副業と言えないこともない」
「えっ……」
「お前以外に愛人も奴隷もペットも持ってないし、個人的にプレイを楽しむような相手も作ってないが、全く誰ともしてないわけじゃないのは事実だって話だ」
 AV撮影なんて全く現実感のない話から、唐突に今現在の話に戻って、とうとうはっきりとお前以外の相手を抱いていると告げられたわけだが、唐突過ぎて感情がついていかない。
「今回は部屋貸しただけで俺は参加しなかったけど、頼み込まれて参加する場合はある。ただ頼まれて応じるのはせいぜい複数プレイがしたいって場合くらいで、別の誰かに調教させたいとかされたいって話も断ってる。今現在、一対一で関係を持ってるのはお前だけだよ」
 安心したかと問われても、やっぱり思考がついていかない。というよりも、今言われたことを、素直に喜んでしまっていいのか判断がつかなかった。
「意図的に隠してたつもりはないし、お前がお前以外の存在をここまで気にすると思ったこともなかったから、今日は可哀想なことをしたな」
 さっき、プレイの痕跡で気が散っていることを、すぐ彼に知らせなかったことを全く理解できないと言っていたけれど、それでも、こちらがそのことで酷く動揺したりショックを受けたのだという事は、事実として受け止めてくれているようだ。
 そして、ようやっと、彼の言葉が頭のなかに届いて、理解とともに胸の中に落ちてくる。
 そこに嫉妬の感情はなかった。だって自分とのぬるいプレイを考えたら、他の誰とも関係を持たずに居ることのほうが不自然だし、今現在、彼と一対一で関係を持っているのは自分だけだということに、やはりホッとしたし嬉しいとも思う。
 なのに、嬉しいことが、切ない。これを素直に喜べそうにはなかった。
 自分の持つ感情が、一方的なものだという自覚はある。彼が継続して関係しているのが自分だけだとしても、特別なただ一人として、彼に想われているわけじゃないことは嫌というほどわかっていた。なのにお前だけだよなんて言葉を聞いてしまうと、無駄だとわかっていてさえ、期待を持ってしまいそうになる。

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