雷が怖いので19

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 両手はベッドマットから持ち上がらないよう括られているせいで、どうしようもなく流れてしまう涙や鼻水を拭うことも出来ず、ぐすぐすと鼻をすすっていたら、大きなため息と共にお尻から玩具が抜かれていく。
 プレイ中にあんなため息を吐かれるのは初めてだ。相手の言葉を信じていつか抱いてくれる日を待てなかったから、怒らせたか呆れられたかしたのだろうか。
 自己嫌悪にますます悲しくなって、彼の気配が離れていくのと同時に頭を伏せた。手が上げられないなら、顔を寄せればいい。動かせないのは両手だけで、足は拘束されていなかったので、膝も引き寄せ背を丸めてうずくまる。
 もう一度大きなため息が、今度は頭に近い方から聞こえてきてビクリと肩が揺れた。
「おい。泣いてないでちょっと顔上げろ」
 硬い声が降ってきて、ああやっぱり怒っているのだと思う。
 何かを取りに行っていたらしい彼が、ベッドの上にその何かを置いたのは気配でわかっていた。顔をあげた先には何が置かれているんだろう?
 けれど顔を上げるのは怖かった。怖いのは何が置かれているかわからないことではなく、怒っているのだろう彼を直視することがだ。
「別に、怒ってるわけじゃねぇから。だから顔上げろって」
 少し和らいだ声に、おずおずと頭をあげる。目の前に置かれていたのは、色んな形と大きさの、大人の玩具が三つほど。しかしその玩具はすぐに見えなくなった。
「あーもーひでぇ顔して」
 そんな言葉とともに、柔らかなタオルが顔に押し当てられたからだ。
「俺はお前の泣き顔好きだけど、好きなのは恥ずかしくて気持ち良すぎてどうしていいかわかんなくなってる泣き顔だからさ、悲しい泣き顔が見たいわけじゃねーんだよ」
「……ごめん、なさい」
「いや、ちゃんと説明しないでお前追い詰めたのは俺だから」
 顔を汚す色々な水分を拭い取ったあとは、手の拘束が外された。
「じゃ、お前をまだ抱けない理由、もっと詳しく説明するからここ座って」
 ベッドに腰掛けた相手が、その隣をぽんと叩く。頷いてその隣へ同じように腰掛ければ、先ほど見た玩具のうちの二つが膝の上に乗せられた。
「この二つはわかるよな?」
「はい」
 一つは今日つい今しがたまで使われていたスティックで、もう一つは前回使われたバイブだ。並べてみると、今日使われていたスティックは随分と細身だった。というか、前回使われていたものが意外と大きい。
「お前、毎回気持ちく終わってるからあんま自覚ないのかも知れないけど、前回どうやって気持ちくなったかどれくらい思い出せる?」
「前回?」
「これでお尻んなかぐりぐりされても、きもちぃもっとーとは、なかなかなれなかったろ。というかこれ突っ込まれて、きもちぃより苦しくなかったか?」
 バイブを差し出されて、確かに最初はかなり苦しかったと思い出す。でもちゃんと入ったし、最後は気持ちよくもなれた。
「でも、ちゃんと、イきました、よ」
「最後はな。でもそれだってイケるほど気持ちよかったのはお尻じゃなくてちんこの方だろうが」
「そもそもお尻だけでイッたことないんですけど」
「そうだな。だからまずはそれが一つ目」
「一つ目?」
「ちんこ同時に弄らなくても、お尻だけでもイケるようになろうなって話」
「両方同時にされるの、凄く気持ちいい、です、よ?」
「でもお尻だけ弄られてても、ちゃんと気持いいって思うようになってきてるだろ?」
「まぁ、はい」
「で、そこからが二つ目だけど、お前がお尻気持ちぃってなれるの、まだこのサイズなわけ」
 そう言って差し出されたのは、今日使われていた方のスティックだ。確かに細身というか、多分自分のフルサイズと比較しても小さいとは思う。
 というところで、なんとなく話が飲み込めてきたような気がした。
「おっきいんですか?」
「何が?」
「あなたの」
 いつもされるばっかりで、そういえば一度だって、この人が脱いだ姿を見たこがない。
「あー、それな。というわけで、はいこれ」
 そう言って渡されたのが、まだ使われたことのない、三つ目の玩具だった。前回使われたバイブよりも、さらに一回り以上大きい。
「まさか……」
「俺のサイズ、それくらいあるから」
「嘘だ」
「なんだとこら」
「だって触ったことも、見たことも、ないし」
「まぁな。されるの好きじゃないからな」
 そうなのか……
 抱いてもらえなくても、せめて他の方法で、相手を気持よくさせることが出来たらいいのに。なのにあっさり拒否されてしまってがっかりだった。
「本当に、このサイズだとして、入れるの無理、ですか?」
「お前、俺の話聞いてた? お前が気持ちよくなれるの、このサイズだっつってんじゃん」
「でもこっちのバイブは入ったし、最後は気持ちよくなれたじゃないですか」
「ちゃんとじっくり慣らせば、俺サイズで気持よくなれるから、いい子で待っとけっての」
「だってそれ、凄く時間かかりそう」
「そりゃそれなりに掛かるだろうけど、お前まだ暫くはこのバイト続けるんだろうし、別に焦んなくたっていいだろ?」
「でも早く、あなたに抱かれたいです」
「なんで?」
「なんで、って……あなたのものに、して欲しい、から?」
「それは愛人契約じゃ不満ってこと? お前、俺のペットか奴隷になりたいの?」
「えっ……?」
 違うの? という問いかけに、咄嗟に違いますよと返したものの、じゃあどういう意味かと聞かれると良くわからない。
 なんで自分は、こんなにもこの人に早く抱かれたくてたまらないんだろう?

続きました→

 
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