5章 恋人になりたい
【朝のリビング】
ケイの作った朝食を一緒に食べている。
修司:結局、ケイくんが朝ごはん用意するようになっちゃったよね
ケイ:だって、修司さんに俺が作ったご飯食べて欲しくて
修司:って言われちゃうから
:俺もついつい甘えちゃうんだよなぁ
:ケイくんのご飯美味しいし
ケイ:もっと甘えてくれていいですよ?
:(ちゃんと嬉しいのに……)
:(でも好きって気づいちゃったから)
:(胸の中もやもやする)
修司:どうかした?
ケイ:え?
修司:少し浮かない顔してる
:お泊りの頻度多すぎて、ケイくんが寝不足になってない?
ケイ:(ないとは言い切れないかも……)
:大丈夫ですよ
:だから泊まるのなしって言わないで?
修司:そうは言ってもさ
ケイ:俺が泊まるの、迷惑じゃないでしょ?
:添い寝の依頼も続けてくれてるし
:嫌ならはっきりダメって言うなり
:俺を呼ぶの止めるなりしてるはずだよね?
修司:迷惑ではないけど心配はするよ
:ケイくんの添い寝があるのとないのとで
:睡眠の質が違うの自分でわかってるから
:ケイくんの体調が悪くなれば俺の睡眠にも関係してくる
ケイ:(俺を心配するのは安眠確保のためか)
:(そりゃそうだって思うのに)
:(胸、痛い……)
修司:ああ、本当に具合悪そうだな
:食べ終えたら今日は帰るといい
:それとも、今すぐ帰るかい?
ケイ:や、やだ!
修司:ヤダって言われても……
ケイ:本当に平気だから
:帰れなんて言わないで
:だって俺が修司さんとこ来れるの
:添い寝の依頼入ったときだけなんだよ?
:少しでも長く修司さんと一緒に居たいよ
必死に言い募るが逆効果だったかもしれない。
微妙な顔をされて、しまったと焦る。
ケイ:あ、その……
:ごめんなさい、俺
:あまりに必死過ぎだった
:あの、もしかしてドン引き……?
修司:ドン引き、ではないけど
ケイ:ないけど?
修司:お金になるわけじゃないのに
:ケイくんが俺と一緒に居たがる理由がわからなくて
:前に友達になりたいって言われたときも驚いたけど
:トラウマ持ちの引きこもりで睡眠障害まである男の
:何がそんなに興味をひくのかなって
ケイ:そんなの……
:(どうしよ、なんかずっと胸痛い)
:好きになっちゃったから、ですよ
:(ああ、言っちゃった)
修司:ん?
:今、好きって言った?
ケイ:言いました
:この前、友達になりたいって言ったけど
:でも多分本当は
:恋人になりたいんだと、思う
修司:恋人……
ケイ:眠れないなら毎晩だって隣で一緒に寝てあげたいし
:気持ちよさそうに眠ってると嬉しくて仕方ないし
:添い寝屋キャストやる上でいっぱい研修受けたり
:売れっ子って言われるくらい実績出したり
:そういうの全部、修司さんと出会うためだったのかもって
:最近は、そんな事まで考えてる
修司:いやちょっと、待って
ケイ:やっぱ男の俺じゃ、ダメですか?
修司:そうじゃなくて
:あー……
修司が言葉を探すのを、ただじっと待ってしまう。
修司:驚いたけど気持ちはありがたいと思うよ
:ただ友達にはなれないって言ったのと同じ理由で
:今はとてもじゃないけど
:恋人なんて作る気になれないんだ
ケイ:そ、ですよね……
その後、気まずいまま時間だけが過ぎていく。
結果、朝食後には修司の家を後にした。
ケイLINE:シュンさん、ごめんなさい
シュンLINE:どうした?
ケイLINE:俺、修司さんのこと好きになりました
シュンLINE:え?
ケイLINE:客に本気になるなんてキャスト失格ですよね
:俺のこと、クビにしますか?
シュンLINE:気が早いな
:というか二人で俺をからかって遊んでないよな?
ケイLINE:そんなことするわけないでしょう
シュンLINE:なら本気ってのを信じるけど
:それ恋愛感情でって意味だよね?
ケイLINE:そ、です
シュンLINE:修司には?
ケイLINE:言いました
:気まずくなりました
:もう俺ホント何やってんだろ
シュンLINE:ホント何やってんだよ
:で、修司はなんて?
ケイLINE:今は恋人作ろうと思えないからって
:俺が男だから無理とは言われなかったけど
:それは気を遣ってくれただけかも?
シュンLINE:実際、今は恋人どころじゃないんだろ
:そういやケイはどこまで事情聞いてるの?
ケイLINE:元カノの話は聞いてます
シュンLINE:知ってて告白したのか
ケイLINE:だってなんかもう抑えられなくて
:どんどん好きになっちゃうから
:なんか苦しくって
シュンLINE:なるほどな
:相性いいだろうなとは思ってたけど
:そうか、どんどん好きになっちゃうか
ケイLINE:シュンさんのせいですよ!
:ってことにしたいくらい、やらかしてる自覚はあります
:なのでクビでも受け入れるので
シュンLINE:修司だけが特別で、他の客で問題起きそうにないなら
:オーナーとしては辞められる方が困るかな
ケイLINE:修司さんだけが特別です
シュンLINE:なら処分は修司次第かな
:クレーム来たら考えるわ
ケイLINE:クレームはわからないですけど
:さすがに次の依頼はないと思うんですよね
シュンLINE:それはどうかなぁ
:あっちはあっちでケイのことかなり気に入ってるから
ケイLINE:未練残っちゃうから止めてくださいよそういうの
シュンLINE:はいはい
:じゃあ、修司の件は俺の預かりで
ケイLINE:わかりました
【数日後】
シュンLINE:【朗報】
:喜べ、修司から次の依頼が来たぞ
ケイLINE:素直に喜べません
:ていうか行かないとダメですか?
シュンLINE:行きたくないの?
ケイLINE:気まずいですって
:そもそも行っていいんですか
:オーナーとして止めるべきとこじゃないですか?
シュンLINE:でも修司がケイ以外じゃ眠れそうにないって言ってるし
:アイツのこと、諦めずに支えてやってよ
:あ、これ、オーナーとしての指示じゃなくて
:アイツの先輩からのお願いなんだけど
:どう?
ケイLINE:どうなっても知りませんよ?
シュンLINE:俺は自分とこのキャストも可愛い後輩も信用してる
ケイLINE:もー!
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