6章 元カノ訪問
【修司の家の寝室】
部屋は暗く、いつもの添い寝体勢でベッドに入っている。
修司:今日も、来てくれてありがとうな
ケイ:俺、言いましたよね?
:必要だよって言われたら駆けつけますよって
修司:そうだけど
:色々お断りしちゃってるしさ
:いつ愛想尽かされてもおかしくないし
ケイ:でもそれって
:今はまだ人と深く関わるのが怖いからでしょ?
:いつかまた人と関わりたくなった時に
:俺を友達とか恋人とかに選んで貰えればいいかなって
修司:ケイくんのそういう前向きなとこ良いよね
ケイ:惚れてくれていいですよ?
明るく言い放って笑えば釣られたように修司も笑う。
修司:んふふ
:考えとくよ
ケイ:ぜひ前向きにお願いしますね
:(この前気まずくなったけど)
:(ちゃんと話せてるし笑ってもくれるし)
:(今はこれで満足しないとな)
:さ、そろそろ目ぇ閉じて
修司:もう閉じてる
ケイ:じゃあお休みなさい、いい夢を
修司:うん、おやすみ
すぐに修司の寝息が聞こえてくる。
しばらくはそのまま様子を見て深く寝入るのを待った。
ケイ:(もういいかな?)
:(この後予定ないし今日も泊まっちゃお)
眠るつもりで目を閉じたその時。
【ピンポーン♪】
ケイ:(あれ、こんな時間に客?)
:(このまま出なければ留守と思って帰るかな?)
【ピンポーン♪】
ケイ:(あ、ダメだ)
:(修司さん起こしたくないし、とりあえず俺が出るか)
そっとベッドを抜け出して玄関へ急いだ。
ケイ:どちら様ですか?
由香:修司?
:私、由香
ケイ:(由香?)
:(修司って呼び捨てたし、もしかして元カノ!?)
由香:お願い開けて、話があるの
:ねえ、お願いだから
【ピンポーン♪】
ケイ:(あ、またチャイム鳴らしやがった)
:(まさか出るまで鳴らす気か?)
【ガチャ】
修司が起きてしまわないよう渋々ドアを開ける。
由香:良かった修司!
:って、誰?
ケイ:初めまして由香さん?
由香:修司のお友達?
ケイ:ではないですね
:(お断りされちゃったしね)
由香:じゃあなんで修司の家にいるの?
:え?まさか引っ越した?
女は焦った様子で表札を確認している。
その間にケイ自身も部屋の外へ出てしまう。
絶対に入れないと思いながら背中でドアを塞ぐように立った。
ケイ:修司さんの家で間違いないですよ
:彼、今、眠ってるんで静かにして貰えます?
由香:眠ってるって具合でも悪いの?
:看病に来てる知り合いだってなら私が代わるわ
:あなたもう、帰っていいわよ
ケイ:そういうわけに行きません
:そもそもあなたが何者かも知りませんし
:(元カノだろうとは思ってるけどね)
由香:彼女よ
ケイ:恋人は居ないって聞いてますが
由香:それは……
ケイ:恋人を語る得体のしれない女なんて
:ますます家に上げるわけには行きませんね
由香:違うわ
:今はちょっと別れてるだけで
:本当に恋人なのよ
ケイ:(は?何言ってんだコイツ)
:(二股の挙げ句、婚約して修司さん振ったんじゃないのかよ)
:今は別れてるなら恋人じゃないでしょ
:元カノはお呼びじゃないんでお帰り下さい
:でもって二度と来んな
キツめに吐き捨てれば嫌そうに顔を歪める。
由香:というか本当にあなた何者なの?
:寝てるって言っても修司居るんでしょ?
:だったら本人に確かめてきなさいよ
:由香が来たよって
:絶対喜んで部屋に上げてくれるわよ
ケイ:本当に自分勝手なんですね
:寝てるって言ってるのに確かめてこいって
:つまり彼を起こせってこと?
由香:そこまで具合が悪いわけ?
:ちょっとくらいなら平気でしょ?
ケイ:ダメです
:そもそも俺が、あなたを修司さんに会わせたくない
由香:なんでよ!
:というか私のこと知らないでしょ
ケイ:会うのは初めてでも最悪な元カノの話は聞いてますって
由香:修司は私を最悪な元カノだなんて言わないわ
ケイ:(確かにそうは言ってないけど何だこの自信)
:(修司さん優しいから相当この人甘やかしてたんだろうなぁ)
:(ダメとか迷惑とか、ほんっと全然言わない人だし)
:婚約者居るんでしょ
:そんな女性が夜に別の男性宅を訪れていいんですか?
由香:だからちょっとそのこと含めて相談というか
:とにかく修司と話がしたいのよ
ケイ:修司さんを余計なトラブルに巻き込まないで欲しいんですけど
:別れてるならもう修司さん無関係でしょ
由香:無関係じゃないわよ
:付き合ってたんだから
ケイ:まさか自分からフッたんだから
:未練があるはずとか思ってませんよね?
:そんなもん残ってないし、
:むしろあなたとのことはトラウマになってますし
:つまりこれ以上修司さんに関わるなって言ってんですよ
由香:トラウマ?
ケイ:そうですよ
:人間不信と睡眠障害であの人ボロボロでしたよ
由香:人間不信と睡眠障害?
ケイ:俺は頼まれて添い寝してる添い寝屋です
由香:添い寝って、え、修司と一緒に眠ってるってこと?
:え、うそ、気持ち悪い
:なんでよりによって男なんかに添い寝頼むの
ケイ:それだけあなたが残した傷が大きかったってことですってば!
:女性とは同じベッドに入れないそうですよ
由香:つまり私にフラれてゲイになったってこと?
:それ本当なの?
ケイ:(違うけど訂正する気になれない)
:最近だいぶマシになってきたんです
:あなたのことは極力思い出させたくないんです
:だからお願いします、帰って下さい
:そして二度と修司さんと関わらないで下さい
由香:あなたは修司が好きなの?
ケイ:好きですけど
:それが?
由香:なんだ
:じゃあ私と復縁されるとあなたが困るってだけじゃないの?
ケイ:はぁ!?
:復縁なんかするはずないだろ
:というか婚約者いるだろ
:その状態でまた二股かける気かよ
:どんだけ修司さん傷つける気だよ
由香:婚約は破棄するかもしれないし
:そうしたら別れるし二股にならないわよ
ケイ:身勝手なのもいい加減にしろ
:本気で修司さんとやり直したいなら
:せめて婚約破棄されたあとで来いよ
:絶対奪わせないけど
由香:恋人でもないくせに
ケイ:恋人じゃないのはお互い様だろ
:とにかく俺が居る時は絶対会わせないから
:諦めて帰って
由香:わかったわよ!
女の姿が見えなくなってからホッと安堵の息を吐いた。
寝室に戻って修司が眠っているのを確認する。
ケイ:修司さん
起こさぬように小声でそっと呼びかけた。
ケイ:元カノ、追い返しちゃったけど……
:(もし知られたら何て言われるかな)
:(余計なことしたって言われないといいんだけど)
:元カノに未練なんて、ない、よね?
不安から微かに声が震えている。
ケイ:泊まるつもりだったけど今日は帰りますね
:いい夢、見て下さい
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁