Wバツゲーム1

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 昼休み中の下らない遊びの中で、告白されたら相手が誰だろうと最低一ヶ月はお付き合いする。などという罰ゲームを言い渡された翌日の一限が終わった直後、三年の教室に自分を訪ねてきたその一年生男子に見覚えはなかった。それどころか相手だって、多分こちらのことはたいして知らない。
 相手が待つ教室の入口まで歩く途中、相手の顔が苦々しげに変わったのが印象的だったが、理由はすぐに理解した。
「好きです。付き合って下さい」
 意を決した様子でよく通る大きな声で告白してきたくせに、最後に小さく舌打ちした上に、男じゃねぇかと呟いた声まで聞こえてしまったからだ。
 なるほど。確かに男女どちらにも使われるような名前だが、どうやら相手はこちらの性別すら知らずに訪ねてきたらしい。
「何? 罰ゲーム?」
「そおっす」
 正直でよろしい。
 こちらの罰ゲームについては内容が内容なので、昨日の放課後には既にかなり広範囲に周知されていたと思う。だって万が一、知らずに本気の告白なんてしてくる子が居たら大変だ。
 そんなわけで、今の自分に告白なんて真似事をしてくる可能性が高いのは、同じように罰ゲームでだろうと思っていたし、相手が男なのもはっきり言えば想定の範囲内だった。むしろ、罰ゲームで良かったとすら思う。
「いいよ。じゃあ宜しく」
「えっ!?」
 今後一ヶ月ほどは、この見知らぬ一年生と恋人ごっこをするんだなぁなんて思いながら了承を告げたら、相手が心底びっくりした声を上げるから、こちらの方こそ驚いた。
「何驚いてんの。俺の罰ゲーム知ってて来たんでしょ?」
「なんすか、それ」
 本気で驚かれた上、訝しげに眉を寄せるから、もしかしなくても本当に知らないらしい。マジかと思いながら苦笑する。
 知らずに来たなら可哀想に。
「俺今、最初に告白してきた相手と一ヶ月以上お付き合いする罰ゲーム、発動中なんだよね」
 目の前の一年生はゲッと呻いた後、忌々しそうにやられたと呟いている。
「そっちの罰ゲームの内容は?」
 聞けば、自分相手に好きだから付き合ってくれと言ってくるだけだったらしい。相手まで指定されてた事に多少の疑問を持ちつつも、見知らぬ一年生に告白されてオッケーするわけがないと気楽に考え、だったらさっさと済ませてしまえと一限終了と同時にやってきたようだ。
「まぁどう考えても嵌められたよね、君」
「そっすね」
「でもまぁあんな堂々と告白してきた以上、俺の罰ゲームにも付き合ってくれるよね?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
 素直に肯定が返されて、ペコリと頭まで下げた相手に驚く。てっきり、冗談じゃないとゴネられると思っていた。
「じゃあ昼休みになったらまた来て。一緒にご飯食べよ」
「はい」
 やっぱり素直に了承を告げる相手に、授業始まるからそろそろ戻りなと告げて、慌てて去っていく背中を見送る。
 そういや制服のネクタイから学年だけはすぐにわかったけれど、名前すら聞かないままだった。こんな罰ゲームをやらされていることや、本人の雰囲気的にも、何がしかの運動部に所属しているのだろうとは思うが、何をやっているのかも聞きそびれてしまった。
「かわいー年下の恋人ゲットおめっとさん」
 自分の席に戻る途中、そう声を掛けてヒヒヒと笑ったのは、もちろん昨日のゲームに参加していた友人の一人だ。
「お前、あいつ知ってる?」
「うちの後輩」
「てことはあいつの罰ゲーム考えたのお前かよ」
 正解と笑った相手はバスケ部だ。期待の新人君だよーと続いた言葉は軽かったが、そこに嘘はないだろう。長身の自分と並んで目線がそう変わらなかったことだけでも、バスケではきっと重宝される。
「こっちの事情知らされてないとか、可哀想だろ」
「それなのにお前の罰ゲームにも付き合うって言ってくれるいい子だったろ?」
「まぁな」
「可愛がってあげてね。練習とか見に来てもいいからね」
 罰ゲームを使って後輩をけしかけてきた本当の目的は多分それなんだろうと思った。自分も過去にバスケをやっていたことをこの友人は知っているし、辞めてしまったことを未だに随分と惜しんでくれている。
「行くわけ無いだろ」
「気にしないのにー」
「俺が気にするんですー」
 相手の口調に乗ってこちらも軽く返しながら、一ヶ月とは言え恋人ごっこをする相手がバスケ部だったことに、小さなため息を吐き出した。

続きました→

 
 
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気付いた時にはもう全部手遅れだった2(終)

1話戻る→   最初の話から読む→

 どれくらいそんな時間を過ごしていたんだろう。久々の深酒でふわふわに酔っていたのもあるし、眠気も押し寄せていたから、半分くらいどころか所々本気で寝落ちていたせいで、時間の感覚は曖昧だ。
 ただずっと、楽しくて、気持ちよくて、暖かくて、ひたすら幸せを感じていたのは確かだった。
 だから翌朝、どう考えてもセックスしてしまった自分たちの姿を目の当たりにしたって、相手を責める資格なんて多分ない。ないけど、騙されたという気になるのもきっと仕方がない。
 ベッドの上で上体だけ起こして愕然とする自分に、少し遅れて目覚めたらしい相手が、なんとも満足しきった幸せそうな顔でおはようと言った。
「お、はよ。つかさあ、これ、どういうこと……?」
 取り敢えずで朝の挨拶を返した後、恐る恐る尋ねる声は震えていたかもしれない。
「どういうこと、とは?」
「セックス、しないって言ったのに」
「しないなんて、俺もお前も一言だって言ってなかったが?」
「嘘。言った。絶対言った」
 半泣きの訴えに、同じように上体を起こした相手は、少しばかり首を傾げて見せた。
「まぁ、考えられない、とは言われたな」
「ほら、ちゃんと言ってる」
「でもしないとも、したくないとも、言ってないだろう?」
「屁理屈!」
「どこがだ。考えられないというのは、イメージが出来ないという意味じゃないのか?」
 イメージ出来ないのはしたくないからだ。と思っていたけれど、不思議そうに聞かれるとそんな自分の前提が揺らいでしまう。実際やれてしまったし、体の違和感に戸惑いはあるが、嫌悪や後悔がほぼないというのも大きいかもしれない。
「イメージできなくたって、実際に触れ合えばはっきりわかる。俺はお前を求めたし、お前だって俺を欲しがってくれただろ? 無理強いなんて一切しなかったし、昨夜のお前は欠片も嫌がってなんかなかったぞ?」
「欲しがった!? お前を?」
 確かに無理強いされた記憶も嫌がった記憶もないが、かと言って欲しがった記憶なんてものもない。
「もう挿れてくれと言ったのはお前の方だ」
「うっそ。ウソ嘘うそだ! 言わない。そんなこと絶対言ってない」
「そうは言うが、実際どこまで記憶があるんだ?」
 うっ、と言葉に詰まってしまった。だって抱かれた痕跡ははっきりと体に残っているのに、突っ込まれて揺すられた記憶がない。はっきり言えば、寝落ちた自分に勝手に突っ込んだんじゃと疑う気持ちはゼロじゃない。
「わかった。次回は証拠を残そう」
「証拠?」
「録音、もしくは録画でもしておけばいいだろう?」
「ちょ、待って!」
 慌てて声を張り上げたら、体というか腰に響いた上、めまいがした。めまいは発言内容に驚きすぎたせいかもしれないけれど。
「酔ってハメ撮りとかハードル高すぎ。それ絶対後で後悔するやつだから。黒歴史になるやつだから!」
「じゃあ次は素面でチャレンジしてみるか?」
「え、無理。それはそれでハードル高い」
 即座に否定すれば、相手がおかしそうにククッと喉の奥で笑いながら肩を揺らしたから、どうやら本気で言ったわけではないらしい。
「証拠なんか残さなくても、追々はっきりするだろ」
「どういう意味?」
「毎回すっからかんに忘れるほど酔わせる気はない。って意味だな」
 全身アチコチ触られて、キャッキャとはしゃいだ記憶まではある。とは言わない方が良さそうだ。ほんのりと頬が熱くなった気がするから、ある程度の記憶はあると、バレてしまったかもしれないけれど。
「取り敢えずは次を否定されなかっただけで十分だ」
「あっ……」
「これからはそういった行為も含めての恋人、でいいんだよな?」
「いい、よ」
 考えられなかったはずのセックスをしてしまっても後悔がないどころか、次を許す気になれているんだから、どう考えたってもう手遅れだろう。確かめるように問われて肯定を返せば、相手はベッドを買い替えて合鍵を作らないとと言いながら、幸せを振りまくように嬉しそうに笑った。
 どうにも自覚が追いつくのが遅くて困る。
 そんな彼の笑顔に胸が暖かくなってしまうくらい、自分だってしっかり彼に惚れているらしい。
「若干騙された感はあるけど、まぁいっか」
 仕方がないので相手の両頬をガシッと掴んで、笑顔が驚きに変わっていくのをニヤリと笑ってやる。この男をもっと喜ばせてやりたい。そんな気持ちを込めながらそっと顔を寄せて、ちぅ、と昨夜彼に与えられた最初のキスを思い出しつつ、軽く唇を吸ってやった。

あなたは『気付いた時にはもう全部手遅れだった』誰かを幸せにしてあげてください。shindanmaker.com/474708
有坂レイさんは、「朝のアパート」で登場人物が「喜ぶ」、「めまい」という単語を使ったお話を考えて下さい。shindanmaker.com/28927

 
 
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気付いた時にはもう全部手遅れだった1

我ながら悪趣味だなあの続きです。  最初の話から読む→

 酷い我儘だと呆れながらもどこか嬉しそうに笑った相手が、空の酒坏に酒を注いで勧めてくれたのが嬉しくて、潰れるつもりで注がれるまま杯を重ねていく。
 許された。受け入れられた。そう思ってしまったからだ。
 実際、あの後は明らかに自分たちを包む気配が柔らかに変化したと思う。
 おかげでふわふわに気持ちよく酔うことが出来たし、相手はそんな自分を仕方がないという顔をしながらもアパートへ連れ帰ってくれたし、ベッドに座らせた後で飲んでおけとグラスに注いだ水を運んでくれた。
 ああ、これは全部、告白される前と同じだ。
 嬉しくて、安心して、急激に襲う眠気にしたがい瞼を下ろす。くすっと笑った気配と、可愛いなと聞こえた言葉に眉を寄せたが、そんな細やかな抗議に、相手は益々笑ったようだった。
 まぁいいやと目を閉じたまま体を倒そうとしたら、それを阻止するように両腕を掴まれる。もう眠いのになんで邪魔をするのだと、さすがにムッとして渋々重い瞼を押し上げれば、思いの外近くにあった相手の顔に驚き息を飲んだ。
 ちゅ、と小さく響いた音と、軽く吸われた唇と、ぞわっと背筋を走った何かと。
 キスされた。そう気付いて、ますます驚き目を見張る。そうしているうちに二度目のキスが唇の上に落ちた。
「な、んで……」
「恋人になったんだから、キスくらいしてもいいだろう?」
 ああやっぱり、自分たちは恋人になったのか。なんてことをぼんやり思う。
 じゃあ恋人として宜しく、などという宣言は何もなかったが、どう考えたって自分の言葉は恋人になってというお願いだったし、相手はそれを受け入れたから自分をこうして連れ帰っている。酔っていたって、それくらいはちゃんとわかっていた。
 わかっては、いたけど。
「でもお前とセックス、考えられないよ?」
「わかってる。考えなくていい」
 大丈夫だと囁く甘い声。抱きしめるように背に回った腕が、優しく背をさすってくれる。
 そうか、考えなくて、いいのか。
 安堵とともに再度瞼を降ろせば、優しくて柔らかなキスが繰り返された。もう、驚かなかった。だって恋人になったんだから、キスくらい、したっていい。
 優しく甘やかしてくれるキスにうっとりと身を任す。任せきってしまえば、与えられるキスはなんとも気持ちが良かった。
 唇を柔らかに吸われるのも、時折繰り返し聞こえてくる可愛いという囁きも、心ごとなんだかこそばゆい。クスクスと笑う声は遠くて、笑っているのは自分自身だと、頭の隅ではわかっているのにどこか現実感が乏しかった。
「んっ、……んっ、……ぁ、はぁ……ふはっ」
 誘い出されるようにして差し出した舌を、ピチャピチャチュルチュルと舐め啜られて鼻から甘やかな息が抜ける。ぞわぞわと粟立つ肌がオカシクて笑う。
 ゾワゾワゾクゾク擽ったいのは舌だけじゃなかった。いつの間にか相手の唇は唇以外にも落とされていて、温かで大きな手も体中のアチコチをさわさわと撫でていた。
 ふはっと熱い息を吐けば、そこを重点的に舐めたり吸ったり撫で擦る。そうするとゾワゾワが這い上がって、笑いが溢れていく。ゾワゾワするのは楽しくて、多分少しキモチガイイ。
「ぁ、あっ、きも……ちぃ……」
 素直に零せば、嬉しそうにそれは良かったと返ってくるのが、自分もなんだか嬉しかった。

続きました→

 
 
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我ながら悪趣味だなあ

結果から言うと、告白は大失敗だったの続きです。視点は逆になってます。

 我ながら悪趣味だなあ、と目の前の男をながめながらしみじみと思った。
 目の前で届いたばかりの焼き鳥の串を口に運んでいる男は職場の同期で、こんな風に仕事帰りに一緒に食事を摂るようになったのはもう随分と昔だ。
 仕事の愚痴を聞いてもらって、慰めるように酒を注がれて、気分良く酔っ払ったついでに相手の家に上がり込んで泊めて貰う。長いこと続いていたそんな生活は、けれど二ヶ月ほど前に終わりになった。
 好きだから恋人になって欲しいと告白されてしまったからだ。
 既に酔い始めていたのもあって、最初は相手が本気だなんて全く気づかなかった。なんの冗談だと、無理過ぎる提案だと、咄嗟に零した言葉に相手が驚いたように目を瞠って、それから自嘲するような笑みを見せたから、ようやく本気の告白だったと気付いて愕然とした。
 相手にそんな告白をさせたのも、そもそもそんな想いを抱かせたのも、自分だという自覚はある。多分、相手は色好い返事が貰えるものと思っていただろう。だから自分が零した言葉に、まずは驚いたように目を瞠ったのだ。
 もちろん意図的に誘惑したわけではないが、振り返ってみればそう思われても仕方がない態度を取り続けていた。相手が大した文句も言わずに受け入れてくれることに胡座をかいて、無神経に甘えきっていた結果だ。
 そして今現在も、ある意味無神経に甘え続けている。酔い潰れさえしなければ、多少の愚痴には今後も付き合ってやると言った相手を、遠慮なく食事に付き合わせている。
 悪趣味だなと思うのは、自分に惚れている男を、その気もないのに食事に誘い続けている点だ。誘えば嫌がることなく応じるが、告白から先、相手から誘われることは一切なくなった事を考えたら、相手は自分との食事をもう楽しんでなんか居ない。
 それに自分だって、この時間を楽しんでいるかと言えばかなり微妙だった。
 深酒をしたらもう食事に付き合わないと宣言されているから、こうして一緒に食事をする際に飲む酒の量は極端に減っている。仕事の愚痴は聞いてくれるが、慰めるように注いでくれる酒はなく、ふわふわと気持ちよく酔えはしない。
 なんて、つまらない。
「そんな顔しなくても、大丈夫だって」
「へ? 何が?」
「炎上しかけてるプロジェクト」
 助っ人が来てくれることになったんだろと続いた言葉に、そういやそんな愚痴を聞かせていたんだっけと思い出す。
「でも助っ人さんおっかない」
「そうか? あんま怖いイメージはないけど」
「見た目はな。でも機嫌悪いとメチャクチャ怖いよ、あの人」
「そうなんだ?」
「うん、そう」
 大きくため息を吐いて、酒を煽る代わりに机に突っ伏した。すぐに寝るなよの声が落ちてきて口を尖らせる。眠いわけじゃない。
 以前なら、こんな時は戯れに伸ばされた手が頭を撫でてくれたのに。
 その手がもうなくなってしまったことを、こうして繰り返し確かめながら、胸を痛めている自分はもしかしたらマゾかもしれない。
 たいして楽しくもない時間をわざわざ作り出して、戻らない時間に思いを馳せて、自分自身を傷つけて。でもそうやって繰り返さなければ、胸を痛めて苦しまなければ、変わってしまった自分たちの関係を受け入れられないのだ。
「しんどい……」
 優しくされたい。甘やかされたい。でも恋人になりたいわけじゃない。男とセックスする自分なんて考えられない。
 もう一度大きくため息を吐き出したら、呆れる様子の小さなため息が返されて、それから大きくて温かな手が頭の上に乗せられた。
「よしよし。お前は頑張ってるよ」
 優しく頭を撫でてくれる手にキュウンと胸が締め付けられる。なんだか泣きそうになる。なのに。
「婚活でもしてみたらどうだ?」
「は?」
 唐突な話題にビックリして、慌てて頭を上げた。
「まぁ結婚はともかく、彼女を作ってみたらいいのにとは思ってる」
「な、なんで?」
 尋ねる声は上擦ってしまった。だって自分と恋人になりたいと思っているはずの男に、そんなことを言われる意味がわからない。
「愚痴を聞いた後、慰めて甘やかして元気づけるのは恋人の役目だと思ってるから、かな。母性の強そうな、優しい彼女を作ったらいい」
 平然とそう告げる穏やかな顔をマジマジと見つめてしまう。
「本気で、言ってんの?」
「ああ」
「俺を好きって言ったくせに?」
「もう、振られてる」
「そんな簡単に諦められる想いで、人振り回してんのかよ」
「告白なんかして、済まなかったとは思ってる」
 思わず荒れてしまった語気に相手はやっと苦々しげな表情になったけれど、吐き出されてきた言葉は更にこちらを苛立たせた。
「後悔してんのかよっ」
「後悔は、してる。だからこそ、お前に彼女が出来たらいいのにと思うのかもしれない」
「なんで!?」
「お前に彼女が出来て、俺と離れて、それでお前が幸せそうに笑っているのを見れたら、きっと今度こそ本当に諦めが付くから」
 まだ、諦めきったわけじゃない。そう言っているのも同然の言葉に、ホッとしている自分がいて忌々しい。だってそれじゃまるで……
「お前が、いいよ」
 諦めるように言葉を吐いた。だってもう認めるしかない。
「どういう意味だ?」
「愚痴を聞いてもらった後、慰めて、優しく甘やかしてくれるのは、お前が、いい」
「俺と恋人なんて、無理すぎるんだろう?」
「お前とセックスとか、考えたくない。けど、甘やかすのが恋人の役目だってなら、それは、お前がいい」
 酷い我儘だなと呆れた声が返されたけれど、でもその顔はどこか嬉しそうに笑っていた。

続きました→

ちりつもの新刊は『我ながら悪趣味だなあ、と目の前の男をながめながらしみじみと思った。』から始まります。shindanmaker.com/685954

 
 
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結果から言うと、告白は大失敗だった

 結果から言うと、告白は大失敗だった。相手に同じ意味での好意があると思っていたのは気のせいだった。
 今、目の前で驚き戸惑う相手は職場の同期で、仕事帰りに何度も一緒に食事に行った仲だ。この個室居酒屋だって、いつもはもっと遅い時間だけれど何度か利用している。
 酔ってほんのり頬を上気させた相手が、職場では決して見せない緩んだ顔で、甘えるように愚痴を吐き出す姿がたまらなく好きだった。それに相槌を打って、空の酒坏に酒を注いでやって、酔いつぶれる寸前の相手を仕方ないという体で家に連れ帰り、自分のベッドに押し込む。さすがに同じベッドに潜り込む真似はしたことがなく、その場合の自分の寝床は狭いソファになってしまうが、それすら翌朝、申し訳なさそうに何度も頭を下げる相手の姿を思えば苦ではなかった。
 最初は完全に潰れた相手を仕方なく連れ帰っただけだったが、今では故意に相手を潰れる手前まで酔わせている。
 そんな日々の中で育ってしまった想いに、どうやら目が曇っていた。
 繰り返し潰れる寸前まで酔いつぶれるのは、相手だって何かしらの思惑があるのだろうと思ってしまった。一緒に住んだらお前をソファで寝かさなくて済むからいっそルームシェアでもする? なんて言い出した相手に、一緒に生活をしてもいいほどに相手の気持ちも育っているのだと期待してしまった。
 実は自分のベッドの中で寝息を立てる相手を前に、これは据え膳で手を出さないのはむしろ失礼なんじゃ、なんて事まで思ったことがあるのだが、今にして思えば実行に移さなくて本当に良かった。
 慎重で真面目な自分の性格を疎ましく思う事も多々あるが、きっとそのお陰で目の前の相手を酷く傷つける結果にはならなかった。そう思うことで、この気まずい空気ごと、諦め飲み込む覚悟を決める。
「驚かせたなら悪かった。気持ち悪いと思うなら今すぐ帰ってくれて構わない」
「気持ち悪い、とまでは思わないけど、正直よくわかんない。お前の考えてること」
「そうか?」
「大事な話があるって言うから、この前俺が軽い気持ちで言ったルームシェアの話、なんか真剣に考えちゃったんだろうとは思ってたけど、だからってまさか告白されるとは思ってなかったし」
 確かにルームシェアをしないかと持ちかけられたりしなければ、告白をもっと先延ばしにしていた可能性は高い。
「そうか」
「そうか、じゃなくてさ」
 不満げな声に、けれど何を言えばいいかと迷っているうちに、まぁいいやと相手は言葉を続けていく。
「つまり、お前とのルームシェアが無理だって事は、わかった」
「すまない」
「もし俺が、お前の告白を受けて恋人になったとして、同棲だったら、するの?」
「何言ってんだ。俺の恋人になる気なんてないだろう?」
 お前が好きだから恋人になって欲しいと告げた最初の、「え、何その冗談、無理過ぎ」という相手の素直な言葉が、自分たちの関係の全てを物語っている。
「だからもしもの話だってば」
「だとしても、いきなり新しく広い部屋を借りて一緒に住むことはしないだろうな」
「あれ? じゃあ、ルームシェアしたいって言ったのと、この告白って無関係?」
「なわけないだろ。俺をソファで寝かせるのが気になるってのが理由だったんだから、お前が恋人になってくれたら、ベッドを買い替えてお前には合鍵を渡すつもりだった」
「あー……なるほど。お試し半同棲な」
 相手はうーんと唸りながら、空になった酒坏に自ら日本酒を注ぎ入れて一息に煽った。更にもう一杯と徳利へ伸びる手から、慌てて徳利を遠ざけるように取り上げる。
 さすがに完全素面での告白はできなくて、ある程度腹を満たして酒も進んだ上で告白したから、このペースで残りの酒を煽ったらまたはっきりと酔われてしまうと思った。今日はさすがに酔われても困る。今日はと言うか、これから先は。
「これ以上飲むな」
「なんでだよ」
「お前が酔いつぶれても、もう連れて帰らないからな」
「え、なんで? って……あーまぁ、当たり前だよなぁ……」
「多少の愚痴には今後も付き合うが、酒は控えろよ。出来ないなら、お前と飲みに行くことそのものをやめるからな」
「マジか」
 酔い潰れる手前まで相手に酒を注いでいたのは自分なので、自分さえ気をつければそうそう連れ帰らねばならないほどの状態にはならないはずだけれど、相手はいたく不満そうに口を尖らせた。

続きました→

有坂レイの新刊は『結果から言うと、告白は大失敗だった。』から始まります。shindanmaker.com/685954
有坂レイさんは、「夕方の居酒屋」で登場人物が「言い訳する」、「鍵」という単語を使ったお話を考えて下さい。shindanmaker.com/28927

 
 
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鐘の音に合わせて

 大晦日は泊まりに来いよと言われて、当然そういうつもりで訪問していたから、やり納めと笑いながらベッドに誘われるのも想定内で、紅白最後まで見たいんだけどなんて事は言わずに素直にその手を取った。
 慣れた手順で繋がって、けれど普段とは違うことに気づくのはすぐだった。
 酷くゆったりと、長いストロークで穿たれる。ゆるい動きなのに、グッと最奥を抉られれば痺れるような快感が背を貫いていく。じわじわと追い詰められていく。
「あ…、あぁっ……ィイ……っん……も、っと……」
「ふはっ、かっわいい。まさかお前がこんななると思わなかった」
 早くもっと激しく突かれたい。ねだる言葉を吐いて、はしたなく腰を揺すって。なのに相手は悪戯真っ最中と言わんばかりの子供みたいな笑顔で、変わらぬゆったりとしたリズムを崩すことがない。
「ひっ、……ひぃんっ、も、イきたい、よぉ」
「ばっか、そんな煽んなって」
 啜り泣くまで焦らされて、相手の興奮が増しているのもわかるのに、何を意地になっているのか変わらないリズムがもどかしすぎる。
 こんな風に焦らされるのは初めてだった。ひたすらゆっくり捏ねられるのが、こんなにたまらなく気持ちがいいのも初めて知った。
 でもガツガツ突かれて押し上げられるように精を吐き出す、トコロテンの快楽を知っている。早くいつもみたいに貪られたい。奥を優しく捏ねられるだけでは、いくら気持ちよくても達せない。
「な、っで……も、して、よ……も、っと、……いっぱい、突いて」
「もーちょい我慢だって。後30回」
「さんじゅ、っかい……??」
 何の話だと思った矢先、会話をしながらも変わらず動いていた相手がまた深く奥を穿ってくる。それと同時に、微かに耳に届いた鈍い響き。
「まさ、か……」
「気付いてなかったか」
 そ、除夜の鐘。と笑った顔はやっぱり子供の顔だ。というか後30回ってことは、ずっと数を数えていたのか?
「ば、っかじゃ、ない……の」
「でもお陰で、今まで知らなかったお前が見れてる」
 ゆっくり奥突かれるのキモチィんだろと、また一つ鐘が鳴るのに合わせて奥を突かれる。
「っぁあ」
「ほら、すっげ善さそ。こんな気持ちぃならさ、トコロテンじゃなくてメスイキってのも出来んじゃね?」
 メスイキってのは確か、吐精もないままお尻だけでイッちゃうことだっけ?
「む、りぃ」
「ま、今日は無理でも、いつかな」
 お前はきっとイケるようになるよと、そんな断言嬉しくない。
「そ、なの、やだぁ」
「なんで? 俺は見たいけどなぁ」
 今度トコロテン出来ないように根本押さえたまま突いてみようかなんて、また新たな遊びを思いついたとばかりに言われて、嫌々と首を横に振った。でもきっと、忘れた頃にやられてしまうんだろう。そんな予想に、吐き出せないままガツガツ突かれて無理矢理押し上げられることを想像して、ブルリと体を震わせる。
「あ、期待した?」
 そんな言葉とともに性器の根本をキュッと握られた。慌てて止めてと声を上げたが無視されて、そのまま数度、鐘の音に合わせた律動が繰り返される。
 ゆっくりとした動きは元々イケるような刺激ではないのに、吐精を許されないと思うとなぜか余計に追い詰められる。さっきよりも更に気持ちがいい、気がする。
「やぁあ……」
「嘘ばっか。中、めっちゃうねってんだけど」
 イケそうならこのままイッてと言いながら、結局、除夜の鐘が鳴り終わるまでそのままゆっくりと突かれ続けた。つまりキモチイイは増したものの、やはり達するまでには至らなかった。
「はは、残念。じゃ、年も明けたみたいだし、焦らすのはここまでな」
 俺ももうさすがに限界との言葉を最後に、根本を押さえ続けていた手が外される。そうして漸く、いつも通りガツガツと貪られて、あっと言う間に頭の中が真っ白に爆ぜた。

明けましておめでとうございます。
昨年はたくさんのご訪問・閲覧・ランキング応援・コメントなどなど、ありがとうございました。とても励みになってます。
本年も基本一日置き更新を頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
2日からは通常通り偶数日午前中更新の予定です。

 
 
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