弟は何かを企んでいる6

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 3週ごとに3回抜けば週1抜いたのと変わらない。なんてのは詭弁だってわかってるし、そもそも3週間前のオナニーでは3回も抜いてないし、さらにその前がいつだったかって問われたら最後にラブホ行った日だから、つまり1ヶ月半で1回しか抜いてないのが事実ではある。
 冷静に分析してしまうと、確かに頻度が少なすぎる気はするし、間違いなく溜まってるけど。だからって、急いで出さないと危険、なんて状態ではない。というか抱かれに来てるんだから、今すぐにって言ったところで、縮まるのはせいぜい数時間だ。そんなの誤差の範囲だろう。
 でも急かされるままトイレでお腹の準備をしたあと、弟とともにバスルームに入るのを拒むことはしなかった。
 今回、1週間も休みをもぎ取ったのだから、どこかしらで風呂場エッチはあるだろうと思ってたし、それが家についた最初のエッチになるのも、実のところ全く想定外ではない。ただまぁ、弟が待てなくて準備を手伝わせろって突撃してくる可能性の方を考えていたんだけど。
 事前準備の手伝いはかなり長いこと拒んでいたけど、中出しの事後処理を何度かされたあとは、諦めてというか押し切られてと言うかで受け入れてしまったし、手伝うだけですまずにそこで取り敢えず1回目、というのはあるあるだ。
 ただ、自宅とラブホの風呂しか知らなくて、ここのマンションの風呂の換気扇が、共用廊下に繋がってるなんてのは完全に想定外だった。あと、1ヶ月半も開くのは初めてだからとか、連日ヤル気でいるんだから体になるべく負担をかけたくないだとかで、随分丁寧に時間を掛けて解されたのは辛かった。
 こんなに長々と指で弄られるのは久々な上に、必死に声を噛むなんて、ほぼほぼ初めての経験だ。しかも自分で抜いてなかったことがバレているからか、イクのを焦らされることはないどころかむしろ積極的にイカせに来ていると言うか、指で弄られながら1回イッて、このままだと2回目も指でイカされるって段階で、いい加減突っ込んでほしいと懇願して、やっと抱いてもらえた。
「ぁ、あ、あああ」
 背後から久々の質量に貫かれて、安堵と喜びで蕩けた声が漏れていく。
「はぁっ、すげぇ、興奮してんね」
 中めっちゃうねってる、とこぼす声だって、めちゃくちゃ興奮してる。
「あ、も、はやくぅ」
 腰を揺すって急かせば、わかってるの言葉とともに律動が始まった。
「あっ、あっ、すご、いいっっ、んぅうっ」
「ごめ、さすがに声、響きすぎ」
 弟の手に口をふさがれて、そうだった、と思い出す。弟が喜ぶから、抱かれているときは積極的にキモチイイを伝える癖がついているけど、今はあんまり喘いじゃ駄目なんだった。
「ん、んっ、んんっ」
「息、苦しくねぇ?」
 必死に首を横に振れば、じゃあ気持ちぃんだ?、と笑うみたいな嬉しそうな声がかかる。
「すっげ締め付けてくんの、興奮してるだけなら、このまま続けるけど、いい?」
 いいよ、と言えない代わりに、やっぱり必死に首を縦に振った。
「りょーかい。じゃ、うんと気持ちくなって、このまま、イッて?」
 さっき指でイカされたときはペニスも同時に弄られたけれど、どうやら次はトコロテンでと思っているらしい。口をふさぐのに使われていないもう片手が触れてきたのは胸の先だった。片側ずつ弄られるもどかしさはあるが、それでも間違いなく、キモチガイイ。
「んんんっ」
「あー、いー締め付け。おれも、イキそ」
 腰の動きが早くなって、グッグッと前立腺を狙って突かれれば、慣れた体はあっさりと高みに押し上げられていく。
「んぅううっっ」
「くっ」
 ペニスの先から熱を吐き出しながら、キュウキュウとお尻を締め付ける。それを受けて、弟も射精に至ったらしい。お腹のかなり浅い位置、弟のペニスが精子を吐き出し震えているのがわかってしまう。
 朝に抜いたと言っていたからそこまで量も勢いもないのか、お腹の中に出されているという感覚はそう強くないけれど、じわりと温かなものがお腹の中に染みる感じはする。
 手前で出してすぐに洗えば、お腹を壊すことは殆どない。というのは過去の経験から確認済みなので、最初っからゴムは持ち込んでいなかった。
 弟的には、手前で出すと抜いてすぐにお腹の中から垂れてくるのが見れるのもいい、らしい。変態って思う気持ちと、言いたいことはわかる気持ちとで複雑だ。
 過去に彼女相手に中出しをしたことはないから、自身が、それを眺める楽しさを実感したことはないんだけど。でもそういう動画を見て興奮した過去なら自分にもある。

続きました→

 
 
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弟は何かを企んでいる5

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「てか、何?」
「や、なんでもない」
「まぁいいや。確かに俺のベッドで抱きたいは言ったし、抱くし、兄貴の匂いが染み付くくらい、きっぱい気持ちぃってイッて貰う予定だけど、でも抱き潰したりの予定はないな」
「えっ」
「やっぱ抱き潰して欲しい?」
 ククッと喉の奥で笑われたから、どうやら、飲み込んだ言葉は音にならなくても伝わっていたらしい。しかも、ちゅっと耳裏の弱いところに吸い付かれて体が跳ねた。
「ぁあっ、ちょっ」
「俺だけのせいじゃないと思うけど、一ヶ月半もお預けしちゃって、ゴメンな?」
 嬉しそうだけど、でも絶対笑いをこらえている。顔が見れたらきっとニヤニヤと脂下がっているんだろう。
「えー、マジ嬉しいな」
 同じだけお預け食らってるはずなのにと思うと、ちょっと納得がいかないんだけど。でも本気で嬉しいらしいのが伝わってくるから、イマイチ感情の持って行き方がわからない。
「何が?」
「兄貴が、初日っから抱き潰される覚悟で来たことが」
「でも、しないんだろ?」
 不満が大きく膨らまなかった結果、ちょっと拗ねたみたいな声が出てしまった。そしてそれは間違いなく相手にも伝わっていて、拗ねんなよとは言われなかったけれど、ふふっと笑われた後に宥めるみたいな柔らかなキスが後頭部に落ちる。
「しないけど、それはそれとして嬉しいなって思って。だってもし初日からガッツリ盛って抱き潰したら、なんのための連休だって、怒るんだろうなって思ってたもん」
「あー……」
「前半抱き潰されて後半で回復予定とか、それこそ、言ってくれなきゃ想定外過ぎてわかんないって。あと、抱き潰さないけど、その分日数掛けて、抱き潰すのと同じかそれ以上にイッてもらうつもりはあるから」
「えっ」
「せっかくの連休、初日から抱き潰したら勿体ないだろ。そもそも連日抱き潰せるような体してないから、1回抱き潰したらその後回復に数日かかるんじゃないの。だからやらない」
「う、まぁ、そうかも」
 初めて恋人として抱かれたときが一番激しかったけど、確かにあの後は大変だった。主に筋肉痛、奥の方に中出しされた腹の痛みで、翌日は夕方までまともに動けなかった。だから動けるようになるまでホテルにそのまま滞在するという無駄金を使い、その翌日も、だいぶマシになったものの結局仕事を休んでいる。さすがにその翌日は出社したけど、出来るならもう1日休みたかった。
「けど、そういうの考えられないくらい、いっぱいされたくなってる兄貴、めちゃくちゃ貴重だなって」
 俺に抱かれるのが良すぎてオナニーじゃ満足できなくなってるって思っていい? なんて、肯定を期待しまくった声で聞かないで欲しい。まぁ、多分それは事実なんだろうけど。
 だってオナニーなんて滅多にしない。恋人になって抱かれる頻度は下がったけど、長くても1月以上開かなかったし、だいたい2〜3週間に一度くらいの頻度で、しかも一度に数回は吐き出しているのだから、それで充分だった。
 てか指摘されて気づいたけど、お預け期間は双方同じと思っていたのは、もしかしたら大きな勘違いなのかもしれない。
「なあ、お前が最後に抜いたのって、いつ?」
「え、今朝だけど」
「今朝ぁ!?」
「いやだって、初日からガッツリ盛るわけに行かないって思ってたし。で、兄貴は?」
「え……2……や、3週間くらい、前?」
 さすがに1ヶ月半も全く抜かなかったわけじゃないけど、正直、お盆休みをもぎ取るための仕事が忙しくてそれどころじゃなかった。
「は? え、っと、アナニーしたのが?」
「抜いたのが。てかアナニーなんてやったことねぇよ」
「え、ちょ、そんな放置してちんぽ破裂しねぇ?」
 最低でも週1は抜くもんじゃないのと言った弟は、俺は週3は抜くと続ける。うん、もう、基本性能が全然違った。多分知ってたけど、言葉にしてお互いに確かめたことはなかった。

続きました→

 
 
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残りのリクエスト(雑記)

今日で11月も終わりですね。
というわけで、リクエスト受付の方は朝の時点で終了とさせてもらいました。
前回の雑記で、「その後の二人」もどんなその後を読みたいのか詳細書いてくれれば応じるよと書いたところ、新たに幾つかのリクエストを頂いたので、それを一覧で出しておこうと思います。
今書いてる「兄は疲れ切っている」のその後にエンドが付いたら一度お休み入れて、その後に順次消化予定です。

「二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった」
態度でも金銭面でも甘やかそうとする攻め×振る舞いがギクシャクする受け。双方長く続く関係と思ってない故に、一生懸命イチャイチャしようとする二人。

「エイプリルフールの攻防」
その後の初夜と翌年のエイプリルフールが気になるとのことですが、今回はその後の初夜をと思ってます。翌年のエイプリルフールは来年の4月1日前後に小ネタが書けたら良いな、の気持ち。

「彼女が出来たつもりでいた」
これは二人の方からリクエストを頂いたので、混ぜたものを書くことになります。
・男バレ後の初デートに女装で来ちゃう受け
・女装するところを見たがる攻め
・男の子のままデートとイチャイチャエッチ

あとこれは明確にリクエストとして頂いたわけじゃないんですけど、「酔った勢いで兄に乗ってしまった話」の乗られちゃってる時の兄視点を書こうかなと思ってます。

それと最後に、今書いてる最中の「兄は疲れ切っている」
リクエストは「弟エスコートでふわふわになる兄弟デート・社会人になる弟との同棲をめぐった一悶着・年月を経て繋がりが深まったことによる一層甘々でえっちな営み」で、前2つはサラッと流してメインはやっぱり甘々えっちだよな、なつもりで書いてます。つまり後はもうエッチするだけ! なんだけど、ベッドの上で甘やかされるメインの前に出来れば風呂場エッチがしたく……で、これまだもうちょっと続きそうなんですよね。
あとこの際なのでついでに、二人の年齢的な話というか時系列。
本編開始時 兄社会人2年目・弟大学2年の夏前くらいに兄が振られて、半年後の冬前頃に初雄っぱい。
兄社会人3年目・弟大学3年 の夏前くらいに初エッチ。
さすがに1年あれば恋人になってる(体だけの関係に限界迎える)でしょ、ってことで、兄社会人4年目・弟大学4年の夏前には恋人。
というわけで、「弟は何かを企んでいる」は兄社会人6年目・弟社会人2年目で、初エッチから3年、恋人になってから2年ほど経過している設定です。
なので、中洗うの手伝われたり、中出しされたの掻き出されたり、とかも、慣れるとまではいかなくても何度か経験してるだろうイメージ。(だから風呂場エッチを入れたい)

 
 
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弟は何かを企んでいる4

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「ぐぅ゛ぅ……」
 小さな唸り声に、やっぱり笑ってしまいながら。
「さすがに玄関でやる想定はないぞ」
 そう口に出しては見たものの、頭の隅では、絶対無理ってこともないかなぁなどと考えてしまう。なぜなら、体の準備を済ませた後で、一度出かけることが容易だからだ。
「一旦準備して、ちょっと散歩でも行く?」
「想定ないんじゃなかったのかよ」
「考えたら有りだった」
 ううっ、と悩むような呻くような音が聞こえて、どうやら葛藤している。てことは、弟的にも玄関先エッチは有りらしい。
 気持ちよく蕩けて喘ぎまくるのを見るのが好きそうだから、玄関先で声を押し殺しながらやるのなんて、そこまで興味ないかなとも思ったんだけど。むしろ衝動的にがっつかれるセックスとか、快感に喘ぐのを堪えるセックスで、興奮が増すのはこっちの方、という自覚はある。まぁ、たまのスパイス程度になら歓迎、ってやつだけど。
 というかこの良くわからない状況はなんだろう?
 最初は、ただいまと言ったのが嬉しかった的なハグかと思ったけど、唸られてちょっと自信がない。そして、今すぐ押し倒したい衝動を堪えている、にしては少々長すぎる気がする。
 だって、ラブホに入ったらまずは抱かれるこっちの体の準備から、というのは既に慣れきった手順だ。
 お腹の中を綺麗にしてなくたって、感じられないわけじゃないけど。でも心理的な抵抗感と言うか、抱かれている最中の安心感がけっこう違う。
 口に出して言ったこともあったような気がするし、弟もそれを理解してるから、お腹を洗うための時間を渋られることはなかったし、早くしたいなら、むしろさっさと準備してって話になるはずなんだけど。
 なんだこれ? このまま待ってたほうがいいのか? という気持ちはあるものの、弟の反応を待つのも限界だった。だって空調も効いてない玄関先だ。そろそろ暑さがキツイので移動したい。
 てか真夏に玄関エッチはやっぱ無しだな。早く空調を利かせた部屋の中、弟の匂いが染み付くベッドの上で、宣言通りにドロドロに甘やかされたい。
「準備してくるから、手、どけて?」
 背後から胸の前に回っている腕をポンポンと叩いて、開放するように促してみる。けれど。
「うう〜、こんな、つもりじゃっ」
 ぎゅっと抱きしめる腕の力が強まって、なぜかそんな泣き言が聞こえてきて首を傾げる。
「こんなつもりって?」
「こんな、家ついてすぐ盛る、みたいなのじゃなくて」
「じゃなくて?」
「まずは初めての俺の部屋、色々見て貰って、それから一緒に映画でも見ながら、お茶飲んでまったりしつつイチャイチャして、みたいな」
「え、マジで?」
 想定外過ぎるスケジュールに、あまりに驚いて声が裏返りそうだ。部屋に着いたらベッドに連れ込む気満々なんだと思ってた。だって家でヤりたいって話しか聞いてない。
「おかしいかよ」
「あー、まぁ、お前が自分のベッドで俺を抱きたいってだけで、俺と暮らしたいわけじゃないのはわかった。てか親がいるから出来なかったお家デート的なこと全般やりたいってことな」
「まぁ、そう」
 その中でも一番やりたいのが、自分のベッドで抱きたい、だってことか。
「そういうのは先にちゃんと言っとけって。まぁ、言われてても、初日は無理って言ってそうだけど」
「え、無理?」
「無理だろ」
 なんで、と問う声は不安と不満とを混ぜて揺れている。こっちとしては、むしろなんで可能だと思ったのか聞きたいくらいなんだけど。
「いやだってお前、最後にラブホ行ったの一ヶ月半前ってわかってる?」
 引越し前は弟が準備だ何だで忙しかったし、引越し後はこっちがお盆休みをもぎ取るために、仕事を前倒しで詰めて忙しかったせいだ。毎日のように顔を合わせているのにヤレない、が原動力だった部分もあるかもしれないが、最低でも月に1度は致していた関係なのに、1ヶ月半ぶりに二人きりになって、エロいことお預けでお茶なんてお互い無理に決まってる。
「え?」
「遊びに来た初日にお茶してイチャイチャしたかったなら、前日ラブホ泊まってやった流れで遊びに来ました、くらいにしないと無理だって。あと、お家デートしたいって誘われてないどころか、俺のベッドで抱きたいとか、ベッドにマーキングしてって言われて来てるんだぞ。休み前半はベッドの中で抱き潰されて、後半はお前に世話して貰いながら回復に努める、みたいになるかなって思ってたよ。てか、……」
 抱き潰してくれるわけじゃないの? と出かかった言葉を慌てて飲み込む。だってなんか、自分ばっかりがっついてるみたいで恥ずかしい。

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弟は何かを企んでいる3

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 7月の半ば、弟は家を出て一人暮らしを始めた。といっても、一緒に暮らすなんて嫌だとか、同棲とか何言ってんだと、弟の提案を拒否ったわけではなく、もっと手順を踏めってだけの話だ。
 家事を負担してでも二人で暮らしたい、もっと言うなら家の中でエロいことがしたい弟の訴えは理解したし、そのために初期費用を貯め自炊スキルを磨いた努力は認める。ただ、兄弟で恋人、という事実を可能な限り親に隠しておきたいって部分が、弟の頭の中からはすっぽ抜けていた。
 つまり、二人同時に家を出て、しかも二人で同じ部屋を借りて住む、という理由が親に説明できない。だから時間差でどちらかが先に家を出るべきだと、あの日、一緒に住みたいと相談しに来た弟には話した。
 金銭面と必要性という意味では、多分、自分が先に家を出るのがいいんだろう。頻繁に激務でボロボロになる自分が家を出るなら、少しでも会社に近いところに住みたい、辺りで親は多分すんなり納得するとは思う。
 でも家事スキルをめちゃくちゃ心配されると思うし、事実、自分でも一人暮らしなんて無理だと思うし、先に自分が家を出て弟を後から引き込む作戦は考えるだけ無駄だ。
 それよりも、一緒に住むのを断られてもとりあえず家は出て、一人暮らしの部屋に連れ込めば「俺のベッドで抱きたい」は可能、などと考えて準備していた弟が、先に家を出るのが妥当だと判断したに過ぎない。
 とにかく家を出て一人暮らしがしたい。そのためにバイトもした。という自立心を前面に出せば、親も不思議には思わないだろう。
 考えたのは、激務の時に泊まらせて貰ううちに、やっぱりもっと会社に近い場所に住みたくなったが、自分の家事スキルに自信がない。弟が家事を負担する分こちらが多めに金銭負担すれば、弟にとっても有り難いだろうし弟もいいって言ってる。という流れで、つまりは、後から自分が合流する算段になっている。
 なので、弟が新しく住む場所にはけっこう口出しした。だけでなく、実はすでに金銭的にも少しばかり援助している。まだ住んでもいない家だけど。でも今後お世話になる気満々で。
 その時に、弟が選ぶデート先が小さな駅の特別有名ってわけでもない店になった理由も知った。つまりは、今後住みたい地域の選定だ。町や店に対するこちらの反応も、それなりに見られていたらしい。
 家を出て二人暮らしをする理由、にまでは考えが及ばなかったようだけれど、弟にしては随分早くから周到に準備していたと思う。
 ほんのりと怖いのが、弟に入れ知恵している存在が居る可能性なんだけど、さすがに怖くて聞けていない。弟に、実は兄貴が恋人、を知ってる友人やらが居ないことを願うばかりだ。
 そして弟が家を出た一月後、世間ではお盆休みと言われる時期に、初めて新居にお邪魔する予定になっている。しかも、今年のお盆休みは全日弟の新居に居続け予定だ。
 ラブホにお泊りは何度か経験があるが、それ以外で弟と泊まりで過ごしたことはない。つまりは初めて、恋人という関係のまま長時間一緒に過ごすことになる。それを考えるたび、少しの不安と、期待と興奮とで、なんだかソワソワしてしまう。


 一人旅の趣味なんてないので、今年のお盆は泊まりで出かけるから食事の用意は要らないと母に話した際には、かなり珍しがられたけど。そこは曖昧に濁して、大きなカバンに着替えやらを突っ込み家を出たのはお盆休み初日の昼前だった。
 待ち合わせた弟新居の最寄り駅近くで昼食をとった後、案内されるまま弟に付いて新居へ向かう。色々口出しはしたが、さすがに一緒に内見まではしていないので、全く初めての道のりを、なるべく覚えられるように目印になりそうなものを探しつつ歩くこと20分弱。ようやく弟が住むマンションにたどり着いた。
 駅からの距離が遠いほど家賃が安くなるのは当然で、弟的には30分くらいまでは有りと思っていたようだが、いずれ合流する身としてはさすがに30分はキツイ。それと、壁が薄そうなアパートは論外。というこちらの意見を考慮した、立地と建物というわけだ。
「あ、鍵、俺の使っていい?」
 玄関ドア前に立ちポケットを探る弟に声を掛ければ、振り返った弟が嬉しそうにニヤけるのがわかった。
「もちろん。てか、ぜひ」
 ポケットから手を抜いて、ドア前を譲るように横にズレた弟に代わってドア前に立つ。
 思いつきの発言だったので、自分のキーケースを出すのに少し手間取ってしまった以外は、なんの問題もなく自分の鍵でこの部屋のドアが開いた。
 キーケースの中にぶら下がっているのは、弟が家を出る直前に、兄貴の分ねと言って渡してきたスペアキーだ。
「ん、ふふ」
 こみ上げる笑いとともに玄関に入って、ただいまと告げながら靴を脱げば、鍵が閉まる音とほぼ同時に伸びてきた腕に、背後から抱きしめられてしまった。

続きました→

 
 
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弟は何かを企んでいる2

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 ノックの後、部屋に入ってきた弟の機嫌は良さそうだった。
 家の中でエロいことはしない、というのは恋人になったところで変える気はなかったのだけれど、さすがに軽く触れるキスくらいならと許容するようになっている。つまりは恒例になりつつある、おやすみのキスをねだりに来ただけではないようで、弟はそのままどかりと部屋の真ん中辺りに腰を下ろしてしまう。
「何かいいことあった?」
「うん。そろそろ家を出ようと思って」
 その報告がしたいんだろうと思って話を振れば、そんな言葉が返ってきて、一瞬何を言われたかわからなかった。
「ようやく色々準備整ったんだ。だから、兄貴にも一度ちゃんと相談したくて」
「……は?」
 随分間を開けて、それでもまだ理解が及ばず、間抜けな音が一つ口から漏れる。
「あー、兄貴にとっては急だと思うけど、ずっと家は出たいって思ってて、」
「待て待て待て。え、家出るって、お前が? 一人暮らし? 出来んの?」
 ようやく何を言われたかは理解したけれど、何を言っているんだという気持ちは大きい。すぐに理解できなかったのも、この弟に一人暮らしなど出来るイメージがないせいだ。
 いやまぁ、自分が家を出ないのだって、似たような理由ではあるんだけど。
 必要ないと連絡しない限りは日々食事が用意され、汚れた衣服も洗濯かごに突っ込んでおけば、後日綺麗に畳まれ自室のベッドの上に乗っているような生活をしているのだ。それらを自分の手でと考えただけで、あっさり白旗を揚げてしまう。
「だぁから、そのために色々準備してたんだって。あと、一人暮らしになるかは兄貴次第かな」
「俺?」
「一緒に暮らさない?」
「はぁ?」
「兄貴と同棲したい」
「いやいやいやいや」
「やっぱ嫌?」
 そうじゃない。てか嫌かどうか以前の話だろう。
「嫌かどうかより、まず無理だろ。お互いに。家出てどう生活すんだよ。ってか準備したって何?」
「あー、引っ越し資金というか初期費用的なの貯めてたのと、あと、自炊できるように料理覚えたり。掃除と洗濯は元々そこそこ出来る、はず」
「え、お前、休みの日にこっそり何やってんのかと思ってたけど、料理習ったりしてたの? え、で、さらに初期費用まで貯めたって、お前、入社一年目でそこまで稼げるような会社、入ってた? そこまで残業もないような会社で???」
 頭の中を疑問符が巡りまくる。
 若干ブラック気味の自社は入社一年目でもけっこう容赦なくこき使ってくれたし、でもその分が給料に上乗せされていたから、その気になれば1年足らずで初期費用くらい貯まっただろうけど。料理教室的なものに通う費用も出せなくないかもだけど。かくいう自分も、結婚資金と思って結構貯め込んでいたんだけど。
 まぁ、結婚に至る前にその激務のせいで振られたし、そのおかげで、今じゃ弟相手に抱かれる側で恋人だ。
「いや、アルバイト。てか副業?」
 知り合いの飲食店で、料理を教わりながら手伝いをしていた、らしい。知り合いというか、友人の親の店だそうだ。
「それ、なんで言わなかったんだよ。ずっと隠れてなにかやってるとは思ってたけど、バイトしてるならしてるって言えば良かったのに」
「えー、だって、阻止されたくなかったし」
「つまり? お前は俺が、お前の自立を反対すると思ってる、ってことでいい?」
「まぁね。だって兄貴、今の生活で満足そうだもん。その満足を維持するために、俺を今のまま、側に置いておきたいかなって」
 確かに今の生活になんら不満はないし、むしろ幸せを満喫しているところがあるし、その幸せをもたらしているのがこの弟だってこともわかっている。
「お前は不満ってこと?」
「不満っていうより、欲張りなだけ。手に入れたいもののために、出来そうなこと頑張るのは基本だろ」
「手に入れたいもの? 恋人ってだけじゃまだ何か足りないのか?」
「わざとはぐらかしてる? 兄貴の言い分わかるから引いてるけど、お願い自体は何度かしてる」
 そう言われて思い当たることはあった。
「あー……家でヤりたい、って?」
「そう。正確には、俺のベッドで抱きたいってやつな」
 弟の匂いが染み付いたベッドの中で、ドロドロに甘やかされながら乱れまくる姿を見たい、らしい。兄貴の匂いで俺のベッドにマーキングして、とかなんとか言ってたような気もする。

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